社会保険・年金

年金受給者が死亡したときの手続き|期限と必要書類を整理

こんにちは。

もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

年金を受け取っていた親や配偶者が亡くなった場合、年金関係では大きく分けて、死亡の届出、未支給年金の請求、遺族給付の請求という3つの手続きを確認します。

特に注意したいのは、市区町村へ死亡届を提出したからといって、年金に関するすべての手続きが自動的に終わるわけではないことです。

マイナンバーが日本年金機構に収録されていれば年金受給権者死亡届を省略できる場合がありますが、未支給年金や遺族年金は必要に応じて別途請求します。

葬儀や相続、金融機関などの手続きが重なる時期ですので、年金については何を、いつまでに、どこへ提出するのかを順番に整理することが大切です。

この記事では、死亡後の年金手続きを初めて行う方にも分かるよう、実務の流れに沿って解説します。

  • 年金受給者が死亡した後に必要となる手続きの全体像
  • 死亡届や未支給年金の期限と必要書類
  • 死亡後に振り込まれた年金の取り扱い
  • 遺族年金・寡婦年金・死亡一時金の確認方法

年金受給者が死亡したときの手続き|期限・未支給年金を解説

年金受給者が死亡したときの手続きの全体像

年金受給者が亡くなったときは、一つの手続きをすれば終わると考えるのではなく、目的の異なる手続きを分けて考えると整理しやすくなります。

特に、亡くなった方への年金を止める手続きと、亡くなった方に残っている年金を遺族が受け取る手続き、さらに遺族自身に新しく発生する年金の手続きは、それぞれ別のものです。

まずは死亡の届出、未支給年金、遺族自身の給付という3つの関係を押さえましょう。

死亡後の年金手続きは3つに分ける

年金受給者が亡くなった後の手続きは、基本的に 「年金受給権者死亡届」「未支給年金の請求」「遺族給付の請求」 の3つに分けて考えます。

死亡後に確認する3つの年金手続き

  • 年金受給権者死亡届:亡くなったことを日本年金機構へ知らせる
  • 未支給年金の請求:死亡月分までの未払い年金を遺族が請求する
  • 遺族給付の請求:遺族年金など遺族自身の給付を請求する

死亡届と未支給年金は目的が違う

最初の年金受給権者死亡届は、亡くなった方に対する年金の支払いを終了させるための手続きです。

年金を受ける権利は本人の死亡によって消滅するため、その事実を年金側で確認する必要があります。

これに対して未支給年金は、亡くなった方に支払われるはずだった年金のうち、まだ本人が受け取っていない部分について、一定の要件を満たす遺族が請求するものです。

公的年金は亡くなった月分まで支給対象となるため、死亡したからといって、その月までの年金がすべて消えるわけではありません。

たとえば、父が老齢年金を受け取っており、月の途中で亡くなったケースを考えてみましょう。

父自身はその後の振込を受け取ることができませんが、死亡月までの年金については、要件を満たす遺族が未支給年金として請求できる可能性があります。

遺族給付は遺族自身の権利として確認する

さらに、配偶者や子などが一定の要件を満たす場合には、遺族基礎年金や遺族厚生年金などを請求できることがあります。

こちらは亡くなった方の未払い年金を受け取るものではなく、 遺族自身に新しく発生する年金の権利 です。

国民年金の第1号被保険者としての期間などがある場合には、遺族年金とは別に寡婦年金や死亡一時金を確認することもあります。

このため、「父の年金を止める手続きだけ済ませればよい」と考えてしまうと、遺族が受けられる給付を確認しないまま終わってしまう可能性があります。

実際によくあるのが、「市役所へ死亡届を出したので年金の手続きも終わったと思っていた」という相談です。

しかし、市区町村に提出する死亡届と、日本年金機構で行う年金関係の手続きは目的が違います。

また、現在はマイナンバーが日本年金機構に収録されている場合、年金受給権者死亡届そのものを省略できるケースがあります。

ここから「年金については何もしなくてよい」と思ってしまいやすいのですが、 省略できる可能性があるのは死亡届であり、未支給年金や遺族年金の請求まで自動的に完了するわけではありません。

死亡後の年金手続きで迷ったときは、「亡くなったことを知らせる手続き」「亡くなった方の残った年金を受け取る手続き」「遺族自身が受ける給付の手続き」の3つに紙を分けるようなイメージで整理すると分かりやすいですよ。

この3つを最初に切り分けておけば、その後に必要書類や期限を確認するときも混乱しにくくなります。

死亡後は年金以外にも、健康保険、介護保険、預貯金、相続、公共料金など多くの手続きが重なります。

だからこそ、年金についてはまず全体像をつかんでから、一つずつ進めるのが実務的です。

(出典: 日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」 )

年金受給権者死亡届はいつまでに出す

年金受給権者死亡届はいつまでに出す

年金受給権者死亡届を提出する必要がある場合、原則として 厚生年金保険の年金受給者は死亡から10日以内、国民年金の年金受給者は14日以内 に手続きを行います。

年金の区分 死亡届の期限 確認のポイント
厚生年金保険の受給権者 死亡から10日以内 マイナンバー収録時は原則省略できる場合あり
国民年金の受給権者 死亡から14日以内 マイナンバー収録時は原則省略できる場合あり

まず死亡届が必要なケースなのかを確認する

ここで最初に確認したいのは、「期限まであと何日あるか」だけではありません。

現在は、日本年金機構に亡くなった方のマイナンバーが収録されている場合、年金受給権者死亡届を原則として省略できるため、そもそも届出が必要なのかを確認することが先になります。

葬儀直後は非常に忙しく、役所、葬儀社、金融機関、勤務先などへの連絡が同時に発生します。

その中で「厚生年金だから10日以内」とだけ覚えてしまうと、必要以上に慌ててしまうこともあります。

一方で、提出が必要なのに長期間放置するのも避けたいところです。

亡くなった方の年金証書、年金振込通知書、年金額改定通知書などが手元にあれば、まず受け取っていた年金の種類を確認してください。

書類が見つからなくても、通帳の入金記録や基礎年金番号が分かる資料などが手掛かりになる場合があります。

届出が遅れると過払いが発生することがある

死亡の情報が年金の支払いに反映されないまま次回の支給処理が行われると、死亡後の期間について年金が振り込まれてしまうことがあります。

届出が遅れた場合は年金の過払いに注意してください。

死亡月より後の期間について支払われた年金は、本来受け取ることのできない年金となるため、後日返還を求められる場合があります。

もっとも、「死亡後に振り込まれた年金=すべて過払い」という意味ではありません。

年金は後払いですので、死亡後に入金された金額の中に、死亡月分までの正当に支給される年金が含まれていることもあります。

この点は後ほど詳しく説明します。

期限を過ぎてしまった場合も、「もう手続きができない」と考えて放置するのは適切ではありません。

死亡届の提出期限と、未支給年金や遺族給付を請求できる期間は同じではありませんので、気付いた時点で年金事務所などに確認してください。

また、年金受給権者死亡届を提出すれば未支給年金も自動的に支払われる、というものでもありません。

未支給年金を受け取れる遺族がいる場合には、原則として所定の請求を行います。

死亡後に最初に確認する順番

  • 亡くなった方が受けていた年金の種類を確認する
  • マイナンバー収録により死亡届を省略できるか確認する
  • 未支給年金が発生していないか確認する
  • 遺族給付の対象者がいないか確認する

実務では、死亡届の期限だけを単独で考えるより、この4点をセットで確認したほうが手戻りが少なくなります。

特に配偶者が残されているケースでは、死亡届と未支給年金だけでなく遺族厚生年金などの確認まで一度に行うと効率的です。

マイナンバーで死亡届を省略できる場合

亡くなった方の マイナンバーが日本年金機構に収録されている場合、年金受給権者死亡届は原則として提出を省略できます。

市区町村に提出された死亡情報とマイナンバーを通じた情報連携によって、日本年金機構側でも死亡の事実を確認できる仕組みがあるためです。

以前の年金手続きを経験したことがある方ほど、「年金を受けている人が亡くなったら必ず死亡届を年金事務所へ出す」と覚えていることがありますが、現在は必ずしもそうではありません。

省略できるのは死亡届であることに注意する

ここで最も注意してほしいのは、 死亡届が省略できることと、死亡後の年金手続きがすべて不要になることは別 だという点です。

死亡届を省略できても、未支給年金の請求まで不要になるわけではありません。

たとえば、父が老齢基礎年金と老齢厚生年金を受けており、亡くなったとします。

父のマイナンバーが日本年金機構に収録されていれば、死亡したことを報告するためだけの年金受給権者死亡届は原則として省略できる可能性があります。

しかし、父がまだ受け取っていない死亡月分までの年金が残っており、父と生計を同じくしていた母がいるのであれば、母について未支給年金の請求を検討します。

また、父の厚生年金加入歴などの要件を満たしていれば、母について遺族厚生年金の請求も検討することになります。

つまり、マイナンバーによって自動化される部分と、遺族が自ら請求しなければならない部分を分けて考える必要があります。

マイナンバーカードの有無とは別に考える

「マイナンバーが収録されている」と聞くと、亡くなった方がマイナンバーカードを持っていたかどうかを確認したくなるかもしれません。

しかし、確認したいのはカードそのものの有無だけではなく、日本年金機構に個人番号が収録されているかどうかです。

そのため、「カードを持っていなかったから死亡届が必ず必要」「カードを持っていたから絶対に何も出さなくてよい」と単純に判断しないほうが安全です。

判断に迷う場合は、亡くなった方の基礎年金番号などが分かるものを用意して、年金事務所などで確認するとよいでしょう。

実務では、「役所で死亡届を出したときに年金も連携されると言われたので、何もしなかった」という話を聞くことがあります。

その場合でも、未支給年金や遺族年金の対象がないかは別に確認してください。

また、未支給年金を請求する場合には、死亡の手続きと未支給年金の請求を兼ねた書類を使用する形があります。

そのため、死亡届単独では省略できるケースでも、未支給年金を請求するために結果として書類を提出することがあります。

要するに、「死亡届が必要か」という問いだけで年金の死亡手続きを終了させないことがポイントです。

死亡届の要否、未支給年金の有無、遺族給付の有無をそれぞれ独立して確認する と、手続き漏れを防ぎやすくなります。

未支給年金は誰が受け取れるのか

年金は亡くなった日までを日割り計算するのではなく、 亡くなった月分まで支給対象 となります。

しかし、公的年金は後払いで支払われるため、死亡した時点では、まだ本人の口座へ振り込まれていない年金が残っていることがあります。

このように、亡くなった方に支給されるはずだったものの、本人が受け取る前に死亡した年金などを、一定の遺族が請求する仕組みが未支給年金です。

未支給年金には決められた請求順位がある

未支給年金は、遺族であれば誰でも自由に請求できるわけではありません。

亡くなった方と生計を同じくしていた一定の親族について、請求できる順位が決められています。

順位 未支給年金を受け取れる遺族 実務上の確認例
1 配偶者 夫・妻、要件を満たす事実婚関係を含む場合あり
2 子 配偶者がいない場合などに確認
3 父母 本人に配偶者・子がいない場合など
4 孫 先順位者の有無を確認
5 祖父母 先順位者の有無を確認
6 兄弟姉妹 先順位者の有無を確認
7 その他3親等内の親族 甥・姪などを含め個別確認

先順位の遺族がいる場合、後順位の遺族が未支給年金を受け取ることはできません。

たとえば、父が亡くなり、母と長男がいるケースを考えてみましょう。

長男が喪主となり、葬儀代を支払い、役所や銀行の手続きをすべて担当していたとしても、それだけで長男が未支給年金の請求者になるわけではありません。

母が亡くなった父と生計を同じくしており要件を満たしているなら、配偶者である母が先順位です。

未支給年金の順位は、誰が喪主か、誰が相続手続きを担当したかでは決まりません。

相続の順位と未支給年金の順位は別

ここは非常に間違いやすいポイントです。

未支給年金は、一般的な相続財産を法定相続人が相続する仕組みとは異なります。

そのため、遺産分割協議で誰が財産を相続することになったかと、未支給年金を誰が請求できるかは分けて考えます。

さらに、親族関係だけでは足りず、原則として 亡くなった当時にその方と生計を同じくしていたこと が必要です。

同居していた場合は比較的説明しやすいのですが、別居していると判断が少し難しくなります。

ただし、別居しているから直ちに生計同一ではない、というわけでもありません。

たとえば、施設に入所している高齢の父へ子が生活費を送っていた、遠方で暮らす母の費用を定期的に負担していた、といった事情があれば、生計同一関係を確認する材料になります。

反対に、親族ではあるものの長期間交流がなく、経済的な関係もない場合には、単に続柄だけで判断することはできません。

別居していた場合は、仕送りの記録、生活費の負担状況、健康保険上の扶養関係、定期的な訪問や連絡状況など、生計同一関係を確認できる資料を早めに整理しておくと手続きが進めやすくなります。

未支給年金の請求者が誰になるのか分からない場合には、相続の感覚だけで判断しないことが大切です。

先順位者の有無と生計同一関係をセットで確認してください。

未支給年金の必要書類、生計同一関係、税金の扱いなどについては、 年金の未支給請求と必要書類・期限 でも詳しく解説しています。

死亡後に振り込まれた年金の扱い

死亡後に振り込まれた年金の扱い

死亡後に亡くなった方の銀行口座へ年金が振り込まれると、「もう亡くなっているのに入金された。

全部返さなければならないのか」「家族が引き出してもよいのか」と迷う方が少なくありません。

まず押さえておきたいのは、 死亡後に振り込まれたという事実だけでは、全額が過払いなのかどうかは判断できない という点です。

年金は死亡月分まで支給される

公的年金は、原則として亡くなった月分まで支給対象になります。

また、年金は原則として偶数月に前2か月分を支払う後払いの仕組みです。

そのため、たとえばある月に亡くなった方について、その後の年金支給日に死亡月以前の年金が振り込まれることがあります。

「死亡後に振り込まれた」というだけで、本来受け取る権利のないお金とは限らないわけです。

判断するときは「入金された日」ではなく「何月分の年金として支給されたのか」を確認します。

死亡時点でまだ支払われていなかった年金や、死亡後に振り込まれた年金のうち死亡月分までに相当するものは、一定の遺族が未支給年金として受け取れる場合があります。

一方、死亡月より後の期間について年金が支給されているのであれば、その部分は本来支給されない年金です。

そのため、後日返還が必要となる可能性があります。

通帳の入金額だけで自己判断しない

実務で難しいのは、通帳を見ただけでは入金された金額が何月分なのか分かりにくいことです。

年金の支払日と死亡した日が近いケースや、複数種類の年金を受け取っていたケースでは、なおさら判断しづらくなります。

また、亡くなった方名義の預金口座については、金融機関側の相続手続きも別にあります。

年金制度上「未支給年金として遺族が受け取れる」ことと、亡くなった方名義の口座から自由に引き出せるかどうかは別の問題です。

死亡後に振り込まれた年金を、返還不要だと自己判断して使わないようにしてください。

亡くなった日、最後の年金支給日、振込額、対象となる月を整理し、未支給年金として扱われる部分と返還が必要な部分を年金事務所などで確認するのが安全です。

たとえば、「父が5月に亡くなり、6月に年金が振り込まれた」という事実だけでは結論は出せません。

6月の振込が何月分に対応するものなのかを確認する必要があります。

逆に、死亡月より後の月分まで支給されているのであれば、その部分は過払いとして整理する必要があります。

死亡後の入金を見ると、遺族としては「年金機構が振り込んだのだから受け取ってよいのでは」と考えたくなるかもしれません。

しかし、年金の支給処理には一定の時間差があります。

死亡情報が反映される前に支払処理が進むこともあるため、入金された事実そのものが受給権を意味するわけではありません。

年金事務所へ確認するときは、亡くなった方の年金証書などに加え、最後に年金が入った通帳の記録も確認できるようにしておくと話が整理しやすくなります。

未支給年金として受け取れる部分がある場合には、請求できる遺族の順位や生計同一関係を確認したうえで手続きを進めます。

死亡後の振込については、入金日だけで判断せず、必ず対象期間を見る。

これが一番大切なポイントです。

遺族年金は死亡届とは別に請求する

亡くなった方が年金受給者だった場合、死亡届や未支給年金だけでなく、残された配偶者や子などが 遺族年金を受給できないか も確認します。

ここで重要なのは、遺族年金は亡くなった方が受けていた年金を、そのまま配偶者や子へ名義変更する制度ではないということです。

遺族年金は遺族に新しく発生する給付

遺族年金には、主に遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。

亡くなった方がどの年金制度に加入していたか、保険料の納付状況はどうか、どのような遺族が残されているかなどによって、受給できるかどうかが決まります。

給付 主な対象 確認するポイント
遺族基礎年金 一定の要件を満たす子のある配偶者または子 子の年齢、亡くなった方の加入・納付状況など
遺族厚生年金 厚生年金の加入歴などの要件を満たす方に生計を維持されていた一定の遺族 加入期間、続柄、年齢、生計維持関係など

たとえば、老齢厚生年金を受給していた夫が亡くなった場合、残された妻について遺族厚生年金の受給可能性を確認することがあります。

ただし、「夫が厚生年金を受け取っていたから、妻は必ず遺族厚生年金をもらえる」と単純に判断できるわけではありません。

亡くなった方の年金加入期間などの要件に加え、遺族側にも続柄や生計維持関係などの条件があります。

また、遺族自身が老齢年金を受けている場合には、年齢や年金の組み合わせによって実際の支給関係を確認する必要があります。

死亡届を出しても遺族年金は自動支給されない

死亡届の提出や、マイナンバーによる死亡情報の連携によって、日本年金機構は年金受給者が亡くなったことを把握できます。

しかし、それだけで残された家族の個別事情まで確定し、遺族年金が自動的に振り込まれるわけではありません。

遺族年金については、原則として受給要件を確認したうえで、遺族側から請求手続きを行います。

死亡届を提出したことと、遺族年金を請求したことは別です。

死亡後の年金手続きを行うときは、「残された家族に新しい年金の権利が発生しないか」まで確認してください。

実務では、配偶者が高齢の場合、本人がすでに老齢基礎年金や老齢厚生年金を受けているケースも多くあります。

その場合、「自分の年金を受けているから遺族年金は関係ない」と思ってしまうことがありますが、年金の組み合わせによって取り扱いが異なるため、最初から対象外と決めつけるのはおすすめしません。

一方で、子がいない高齢夫婦の場合など、遺族基礎年金の対象にはならなくても遺族厚生年金を確認するケースがあります。

逆に、子のある配偶者については遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を確認することがあります。

遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給条件については、 遺族年金の受給条件と対象者 で詳しく解説しています。

(出典: 日本年金機構「遺族年金」 )

死亡届、未支給年金、遺族年金は、それぞれ目的の異なる手続きです。

窓口では一連の流れとして案内されることがありますが、制度上は別々に確認する必要があります。

3つを分けて考えることで、「死亡届は済ませたのに遺族年金を請求していなかった」といった漏れを防ぎやすくなります。

年金受給者の死亡後に必要な手続きと期限

ここからは、実際に年金の死亡手続きを進めるときの必要書類、提出先、期限を整理します。

死亡直後は、年金以外にも市区町村、健康保険、介護保険、銀行、生命保険、相続などの手続きが集中します。

そのため、最初から思いつく書類をすべて集めるのではなく、自分のケースで必要となる年金手続きを特定してから書類を準備するほうが効率的です。

年金の死亡手続きに必要な書類

年金受給者が亡くなったときに必要となる書類は、死亡届だけを提出するのか、未支給年金も請求するのか、さらに遺族年金まで請求するのかによって異なります。

そのため、「死亡したら戸籍と年金証書を持っていけばよい」と一律に考えるのではなく、 何の手続きをするための書類なのか を意識して準備することが大切です。

未支給年金を請求するときの基本書類

未支給年金を請求する場合に基本となるのが、 年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書 です。

名称のとおり、死亡の報告と未支給年金等の請求を一つの書類で行う形になっています。

一般的には、次のような書類を確認します。

  • 年金受給権者死亡届兼未支給年金・未支払給付金請求書
  • 亡くなった方の年金証書
  • 死亡の事実を確認できる戸籍抄本や住民票の除票など
  • 亡くなった方と請求者との続柄を確認できる書類
  • 必要に応じて生計同一関係を確認するための書類
  • 請求者本人の口座情報を確認できるもの
  • 請求者のマイナンバー確認書類

ただし、必要となる添付書類は、マイナンバーの利用状況、請求者と亡くなった方の関係、同居・別居の状況、事実婚関係の有無などによって変わることがあります。

たとえば、死亡の事実を確認する書類として戸籍抄本などを使用する場合には、死亡日以後に発行されたものを求められるケースがあります。

「手元に昔取った戸籍があるから使えるだろう」と考えず、必要な時点の証明内容が記載されているかを確認してください。

別居していた場合は生計同一の資料を意識する

特に注意したいのが、亡くなった方と未支給年金の請求者が別居していたケースです。

同じ住所であれば住民票などで関係を確認しやすいのですが、住所が異なると、生計同一関係について追加の確認が必要になることがあります。

たとえば、高齢の母が介護施設に入所しており、子が施設費や生活費を負担していたケース、進学や仕事の都合で別居しているものの定期的に仕送りしていたケースなどです。

このような場合には、送金記録など実態を確認できる資料が重要になることがあります。

別居のケースでは、「何を証明すればよいのか」が分かってから資料を集めたほうが効率的です。

銀行の送金記録や扶養関係の資料など、後から探すと時間がかかるものは早めに所在を確認しておくとよいでしょう。

遺族年金は別の請求書類が必要

未支給年金の書類を提出すれば、そのまま遺族基礎年金や遺族厚生年金まで自動的に請求したことになるわけではありません。

遺族年金については、別途、年金請求書や受給要件を確認するための書類を準備します。

亡くなった方の年金加入歴、請求者の続柄、子の状況などによって必要書類が変わるため、複数の給付が関係しそうな場合には、先に年金事務所などで必要書類を確認する方法が実務的です。

実際の相談でも、「念のため戸籍を何種類も取ったものの、結局使わなかった」ということがあります。

戸籍には発行手数料もかかりますし、遠方の本籍地が関係すると取得にも手間がかかります。

必要書類は個別の状況によって変わることがあります。

書類を大量に取得する前に、亡くなった方の年金の種類と、誰がどの給付を請求するのかを整理しておくと無駄が少なくなります。

年金証書が見当たらない場合も、それだけで手続きができないと決めつける必要はありません。

基礎年金番号が分かる通知書などが残っていないか確認したうえで、見つからなければ年金事務所へ相談してください。

年金の死亡手続きの提出先と方法

年金の死亡手続きの提出先と方法

年金受給者の死亡に関する手続きは、主に 年金事務所や街角の年金相談センター などで行います。

郵送による提出が可能な手続きもあり、電子申請に対応しているものもあります。

ただし、亡くなった方が受け取っていた年金の種類や加入していた制度などによって、提出先や確認先が異なる場合があります。

そのため、「死亡したら必ずこの窓口」と一律に決めるのではなく、受給していた年金を確認してから動くとスムーズです。

分からないことが多い場合は窓口相談が整理しやすい

たとえば、「父の年金の種類が分からない」「未支給年金を母と子のどちらが請求するのか分からない」「母に遺族年金が出るのか確認したい」というように、複数の疑問がある場合には、年金事務所などでまとめて確認する方法があります。

死亡後の年金手続きは、それぞれの制度を個別に見ると複雑ですが、亡くなった方の加入記録を確認しながら整理すると全体像が見えやすくなります。

窓口へ行く場合には、予約制度を利用できるか確認しておくとよいでしょう。

必要書類を持参したつもりでも、個別事情によって追加書類が必要になることがあるため、事前に「誰が亡くなったのか」「どの年金を受けていたのか」「誰が請求する予定なのか」を整理しておくと相談が進みやすくなります。

郵送は必要な手続きが明確な場合に便利

一方、未支給年金を誰が請求するのかが明確で、必要書類もそろっている場合には、郵送で手続きを進める方法があります。

遠方に住んでいる場合や、平日に窓口へ行くことが難しい場合には利用しやすい方法です。

ただし、郵送の場合には、その場で書類の不足を確認してもらうことができません。

記入漏れや添付書類不足があると、後日照会や追加提出が必要になり、結果として時間がかかることがあります。

提出方法を選ぶ目安

  • 制度や請求者が分からない:窓口でまとめて確認
  • 手続きと必要書類が明確:郵送も検討
  • 電子申請を利用したい:対象手続きと添付方法を事前確認

受給していた年金の種類も確認する

亡くなった方が老齢基礎年金や老齢厚生年金だけを受けていたとは限りません。

障害年金や遺族年金を受給していた方が亡くなるケースもあります。

また、共済制度に関係する期間などによって、提出先の確認が必要になることもあります。

年金証書、年金振込通知書、年金額改定通知書などが残っていれば、まずそれらを確認してください。

「毎月ではなく偶数月に年金らしいものが入っていた」という程度しか分からない場合でも、通帳の摘要欄などが手掛かりになることがあります。

亡くなった方の書類を探すときは、年金証書だけでなく、日本年金機構から届いた封筒や年金額改定通知書などもまとめて確認すると、受給していた年金の種類を把握しやすくなります。

また、電子申請の対象や具体的な操作方法は変更される可能性があります。

利用する場合には、その時点の日本年金機構やe-Govの案内を確認してください。

死亡後の手続きでは、「どこに出すか」だけでなく、「誰が何を請求するのか」が整理できていることのほうが重要です。

提出先に迷うときは、書類を準備し始める前に確認する。

この順番が結果的に一番早いことも多いですよ。

未支給年金の請求期限と時効

未支給年金は、亡くなった後でいつでも無期限に請求できるものではありません。

未支給年金を受け取る権利には5年の時効 があります。

死亡後の年金手続きには複数の期限があるため、ここを混同しないようにしましょう。

特に、年金受給権者死亡届の10日・14日という期限と、未支給年金の時効は全く別のものです。

手続き・給付 主な期限・時効 注意点
厚生年金保険の年金受給権者死亡届 原則10日以内 マイナンバー収録時は原則省略できる場合あり
国民年金の年金受給権者死亡届 原則14日以内 マイナンバー収録時は原則省略できる場合あり
未支給年金 5年で時効 生計同一の遺族と順位を確認
死亡一時金 死亡日の翌日から2年 未支給年金より短いため注意

死亡届の期限を過ぎても未支給年金まで消えるわけではない

死亡届について「10日以内」「14日以内」と聞くと、その期限を過ぎた場合、未支給年金も受け取れなくなると思う方がいます。

しかし、死亡届の提出期限と未支給年金の時効は別に考えます。

仮に死亡届の手続きが遅れてしまったとしても、それだけを理由に未支給年金の権利が直ちに消滅するわけではありません。

期限を過ぎたことに気付いた場合には、放置せず、その時点で必要な手続きを確認してください。

一方で、5年という期間があるからといって、長期間放置することをおすすめするわけでもありません。

時間がたつほど生計同一の確認が難しくなることもある

未支給年金では、請求者と亡くなった方との続柄だけでなく、生計を同じくしていたかどうかが重要になります。

死亡直後であれば、通帳の送金記録、健康保険関係の資料、生活費の負担状況などを確認しやすいですが、数年後になると資料を紛失したり、金融機関の記録を探すのに手間がかかったりする可能性があります。

また、請求できる親族の状況も時間とともに変わります。

先順位者が誰なのか、同順位者がいるのかといった確認も、死亡から時間がたつほど複雑になることがあります。

時効まで5年あることと、5年間放置してよいことは同じではありません。

葬儀などが一段落した段階で、未支給年金の有無と請求者だけでも確認しておくことをおすすめします。

未支給年金は一般的な相続財産とは扱いが違う

未支給年金については、「亡くなった父のお金だから遺産として分ければよい」と考えやすいのですが、通常の相続財産とは異なる仕組みで受給者が決まります。

一定の遺族が、自分自身の権利として未支給年金を請求します。

そのため、遺産分割協議の内容だけを見て未支給年金の請求者を決めるものではありません。

税務上も、未支給年金は相続税の対象となる一般的な相続財産とは異なる取り扱いとなり、受け取った方の一時所得として扱われます。

実際に所得税の申告が必要になるかどうかは、未支給年金の金額だけでなく、その年の他の一時所得などによっても変わります。

税金の申告について個別判断が必要な場合は、年金事務所ではなく税務署や税理士へ確認する分野となります。

年金の受給資格と税務上の取り扱いは分けて整理しましょう。

未支給年金については、「期限にまだ余裕があるから後で」というより、死亡後の各種手続きが落ち着いた時点で早めに確認するほうが実務上は安全です。

寡婦年金や死亡一時金も確認する

寡婦年金や死亡一時金も確認する

亡くなった方に国民年金の第1号被保険者としての加入期間がある場合には、遺族基礎年金や遺族厚生年金だけでなく、 寡婦年金や死亡一時金 が関係することがあります。

会社員として厚生年金に長く加入していた方でも、ずっと会社員だったとは限りません。

就職前、自営業だった期間、退職後の期間などに国民年金の第1号被保険者であった可能性があります。

そのため、現在受け取っていた年金だけを見て判断するのではなく、過去の加入記録まで含めて確認することがあります。

寡婦年金は一定の妻が60歳から65歳まで受ける年金

寡婦年金は、国民年金の第1号被保険者としての保険料納付済期間や免除期間などが一定以上ある夫が亡くなった場合に、所定の要件を満たす妻が受け取ることのできる年金です。

代表的な要件として、夫との婚姻期間が10年以上継続していることなどがあり、原則として妻が60歳から65歳になるまでの間に支給されます。

このため、夫が亡くなった時点の妻の年齢によっても、実際にどのような確認をするかが変わります。

また、夫がどの年金をすでに受給していたのかなどによっても取り扱いを確認する必要があります。

死亡一時金は36月以上の納付期間などを確認する

死亡一時金は、第1号被保険者として保険料を納めた期間が一定以上ある方が亡くなった場合に、一定の遺族が受け取れる可能性のある給付です。

一つの基準として、 第1号被保険者として保険料を納めた期間が36月以上あるか を確認します。

ただし、一部免除期間などについては単純に1月を1月として数えない場合もあるため、加入記録を見ながら確認することが大切です。

また、死亡一時金は、亡くなった方が老齢基礎年金や障害基礎年金を受けていないことなど、ほかの要件も関係します。

つまり、「国民年金を3年以上払ったことがあるから必ず死亡一時金がもらえる」と考えるのは適切ではありません。

死亡一時金の請求期限は、死亡日の翌日から2年です。

未支給年金の5年より短いため、死亡後の給付を確認するときは早めに対象の有無を確認してください。

寡婦年金と死亡一時金は選択になることがある

さらに重要なのが、寡婦年金と死亡一時金の両方の要件を満たす場合です。

寡婦年金と死亡一時金の両方を受けられる場合には、原則としてどちらか一方を選択します。

そのため、「死亡一時金ならまとまった金額が早く受け取れそうだから先に請求する」と金額だけで判断するのはおすすめしません。

寡婦年金として将来的に受け取る金額との関係も含めて、どちらを選ぶのか検討する必要があります。

国民年金の第1号被保険者期間があるときの確認項目

  • 遺族基礎年金の対象にならないか
  • 寡婦年金の対象にならないか
  • 死亡一時金の対象にならないか
  • 寡婦年金と死亡一時金の選択が必要ではないか

また、遺族基礎年金を受けられる場合には死亡一時金が支給されないなど、他の遺族給付との関係もあります。

制度ごとに一つずつ見れば対象になりそうでも、併給調整を含めると結論が変わることがあります。

実務では、亡くなった方の職歴だけを見て「会社員だから国民年金独自の給付は関係ない」と判断しないことが大切です。

会社員になる前や退職後の加入状況まで含め、年金加入記録全体から判断します。

特に死亡一時金は2年という時効があるため、「遺族年金の対象ではなかったから年金関係は終わり」と考えず、国民年金第1号被保険者期間がある場合には一度確認しておくと安心です。

年金受給者の死亡手続きを順番に整理する

年金受給者が死亡したときは、死亡届、未支給年金、遺族年金、寡婦年金、死亡一時金、過払いの返還など、複数の言葉が一度に出てきます。

すべてを同時に理解しようとすると複雑に感じますが、実務では確認する順番を決めれば整理しやすくなります。

実務では次の順番で確認すると整理しやすくなります。

  1. 亡くなった方が受け取っていた年金を確認する
  2. 年金受給権者死亡届の提出が必要か確認する
  3. 未支給年金を受け取れる遺族がいるか確認する
  4. 未支給年金の必要書類を準備して請求する
  5. 遺族年金の対象になる遺族がいないか確認する
  6. 寡婦年金や死亡一時金の対象も確認する
  7. 死亡後の年金振込があれば内容を確認する

最初に亡くなった方の年金を確認する

まず確認するのは、亡くなった方がどの年金を受け取っていたのかです。

老齢基礎年金だけなのか、老齢厚生年金もあるのか、障害年金や遺族年金を受けていたのかによって、その後の確認内容が変わります。

年金証書、年金額改定通知書、年金振込通知書などがあれば確認してください。

見つからない場合には、基礎年金番号が分かる書類や通帳の入金記録なども手掛かりになります。

次に、マイナンバーの収録状況を踏まえて、年金受給権者死亡届の提出が必要なのかを確認します。

死亡届を省略できる場合でも、そこで手続きを終わらせないことが重要です。

次に未支給年金の請求者を確認する

死亡月分までの年金がまだ支払われていない可能性がある場合には、未支給年金を請求できる遺族がいるかを確認します。

配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、その他3親等内の親族という順位だけでなく、亡くなった方と生計を同じくしていたかどうかも確認します。

特に別居の場合には、仕送りや生活費の負担などを確認できる資料が必要になることがあります。

死亡から時間がたつほど資料を探しにくくなるため、対象になりそうな場合には早めに整理しましょう。

遺族自身に新しい給付がないか確認する

その次に、残された配偶者や子などが遺族年金の受給要件を満たさないかを確認します。

亡くなった方に厚生年金の加入歴がある場合は遺族厚生年金、子のある配偶者などについては遺族基礎年金の可能性を確認します。

さらに、国民年金の第1号被保険者期間がある場合には、寡婦年金や死亡一時金も候補になります。

ここでは、「老齢年金を受けていた人が死亡した」という現在の状態だけを見るのではなく、亡くなった方がこれまでどの制度に加入していたかを見ることがポイントです。

最後に死亡後の振込を確認する

死亡後に年金が振り込まれている場合には、入金があったという理由だけで使ったり、逆に全額を過払いだと思い込んだりせず、何月分の年金なのかを確認してください。

死亡月分までの未払い年金であれば、未支給年金として遺族が受け取れる可能性があります。

一方、死亡月より後の期間に相当する年金が含まれている場合には、返還が必要になることがあります。

迷ったときに手元へ準備しておきたいもの

  • 亡くなった方の年金証書や年金関係通知
  • 基礎年金番号が分かる資料
  • 最後の年金振込を確認できる通帳
  • 請求予定者との続柄が分かる情報
  • 別居の場合は仕送りなど生計同一を確認できる資料

年金を受け始めるときの手続き全体について確認したい場合は、 年金受給手続きの流れと必要書類 も参考にしてください。

年金制度や提出方法は改正・変更されることがあります。

正確な情報は公式サイトをご確認ください。

また、亡くなった方の加入記録、生計同一関係、遺族の年齢や家族構成、他の年金の受給状況などによって結論が変わる場合がありますので、最終的な判断は専門家にご相談ください。

年金受給者の死亡手続きでは、「死亡届を出せば終わり」と考えないことが一番大切です。

死亡の届出、未支給年金、遺族給付の3つに分けて確認する ことで、何をしなければならないのかが見えやすくなります。

まず亡くなった方が受け取っていた年金を確認し、死亡届の要否を判断する。

次に未支給年金を誰が請求できるのかを確認し、そのうえで残された家族の遺族年金や国民年金独自の給付を確認する。

この順番で進めれば、複数の制度が関係していても整理しやすいかなと思います。

死亡後は年金以外にも多くの手続きがあります。

その中で年金だけを何度もやり直すことのないよう、最初に全体像を把握し、必要な手続きと期限を一つずつ確認して進めてください。

-社会保険・年金