こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
障害年金は、原則として働きながらでも受給できます。
老齢厚生年金の在職老齢年金のように、給与が一定額を超えたことだけを理由として障害年金が減額・支給停止される仕組みはありません。
ただし、ここで注意したいのが、収入による支給停止と障害の程度による等級判定は別の話だという点です。
特に精神の障害では、どのような仕事をしているのか、勤務時間、欠勤の状況、職場から受けている援助や配慮などが、障害の程度を判断する材料になります。
また、20歳前の傷病による障害基礎年金には、例外として本人の前年所得による支給制限があります。
働き始めると年金が止まるのではないか、給料はいくらまでなら大丈夫なのか、更新に影響しないのかと不安な方に向けて、就労と障害年金の関係を実務目線で整理します。
- 働きながら障害年金を受け取れる条件
- 給与や所得による支給停止の考え方
- 就労状況が等級判定や更新に与える影響
- 障害者雇用や職場の配慮を伝えるポイント

障害年金は働きながらでも受給できる
障害年金と仕事の関係を考えるときは、最初に 収入による支給制限と、障害状態の認定を分けて考える ことが重要です。
障害年金は「働いたら終了する制度」ではありません。
一方で、働けている状況が障害の程度を判断する材料になる場合があります。
この2つを混同すると、「働き始めたらすぐ止まるのではないか」「月収を一定額以下に抑えなければならないのではないか」と必要以上に不安になったり、逆に「収入制限がないなら働き方は審査に一切関係しない」と考えたりしやすくなります。
実務では、まず「何の障害年金を受けているのか」「20歳前傷病に該当するのか」「現在の等級は何級か」「どのような障害で認定されているのか」を確認します。
そのうえで、収入の問題と就労実態の問題を一つずつ整理していくのが分かりやすいですよ。
働いても収入だけでは支給停止されない
障害年金には、原則として「給与が月○万円を超えたら年金を止める」という仕組みはありません。
たとえば、障害厚生年金を受給している方が就職し、会社の厚生年金に加入して給与を受け取るようになった場合でも、 在職していることや給与額だけを理由として障害厚生年金が支給停止されるわけではありません。
障害年金は、原則として給与額に上限を設けて支給する制度ではありません。
「障害年金をもらいながら働くなら月収○万円まで」といった一律の基準は、20歳前の傷病による障害基礎年金を除いてありません。
実際によくある相談が、「パートを始めたいのですが、月10万円を超えると障害年金が止まりますか」「社会保険に入ると障害年金を返さなければなりませんか」「フルタイムになった時点で自動的に停止されますか」というものです。
この点は、まず制度を切り分けて考える必要があります。
一般的な障害基礎年金や障害厚生年金には、働いて得た給与を毎月合算し、一定額を超えたらその月の障害年金を減額するという仕組みは設けられていません。
障害厚生年金を受けている方が再就職し、厚生年金の被保険者になったとしても、それだけで障害厚生年金が消えるわけでもありません。
また、原則として「仕事を始めた」という事実だけを理由に、日本年金機構へ就職届のようなものを提出する仕組みもありません。
勤務条件が健康保険・厚生年金の加入要件を満たすのであれば、通常どおり会社で社会保険に加入します。
そして、厚生年金に加入して働いた期間は、将来受け取る老齢厚生年金の計算にも反映されていきます。
障害年金を受けているから厚生年金保険料を納めなくてよい、という扱いになるわけではありません。
ここで特に注意してほしいのは、 「収入だけでは止まらない」という説明と、「どのように働いても障害認定に影響しない」という説明は全く別 だということです。
たとえば、うつ病で障害厚生年金を受給している方が、以前は週3日の短時間勤務だったものの、その後、職場の配慮を受けずに週5日のフルタイム勤務を長期間安定して継続できるようになったとします。
この場合、給与がいくらになったかというよりも、「以前より日常生活能力や労働能力が改善しているのではないか」という観点から、更新時の障害状態の判断材料になる可能性があります。
逆に、給与がある程度あっても、障害者雇用で仕事内容を限定してもらっている、頻繁に休憩が必要である、欠勤や早退がある、上司の継続的な援助を受けているという実態があれば、その事情も含めて判断されます。
月収だけを見て、障害年金が続くかどうかを判断しないことが大切です。
障害年金では、「いくら稼いだか」と「どの程度の障害状態にあるか」を分けて考える必要があります。
もう一つ実務上確認したいのが、傷病手当金など別制度との関係です。
障害年金自体に給与による支給停止がなくても、同一の傷病について健康保険の傷病手当金を受ける場合には、障害厚生年金との間で給付調整が行われることがあります。
つまり、「給与があるから障害年金が停止される」のか、「他の社会保険給付との調整がある」のか、「障害状態が変化したため等級が見直される」のかは、それぞれ別の論点です。
ここを整理しておくと、制度がかなり理解しやすくなるかなと思います。
障害年金そのものの受給要件については、 障害年金の受給条件と初診日・納付要件・障害等級 で詳しく整理しています。
20歳前障害には所得制限がある

給与による支給停止が原則としてない障害年金ですが、重要な例外があります。
それが 20歳前の傷病による障害基礎年金 です。
20歳前に初診日がある傷病については、そもそも公的年金に加入して保険料を納付する前に障害の原因となる傷病が発生している場合があります。
そのため、一般的な障害基礎年金とは異なり、保険料納付要件を問わず受給できる一方、本人の所得に応じた支給制限が設けられています。
2026年度時点の基準では、扶養親族がいない場合、おおむね次のように扱われます。
| 前年所得 | 支給の扱い |
|---|---|
| 3,761,000円以下 | 全額支給 |
| 3,761,001円~4,794,000円 | 年金額の2分の1を支給停止 |
| 4,794,000円超 | 全額支給停止 |
ここでかなり間違えやすいのが、基準になるのは 給与収入そのものではなく前年の所得 だという点です。
会社員であれば、一般に給与として受け取った年間の総支給額と、税法上の給与所得は同じ金額ではありません。
そのため、「年収376万円を超えた瞬間に半額停止になる」と考えるのは正確ではありません。
同じように、勤務先を2か所持っている場合、副業収入がある場合、事業所得がある場合などは、給与だけを見て判断できないことがあります。
「手取り額」でもありません。
前年の所得額を基準として判定する点を押さえておきましょう。
また、扶養親族がいる場合には所得制限額に加算があります。
一般の扶養親族は1人につき38万円、老人控除対象配偶者や老人扶養親族は48万円、一定の特定扶養親族等は63万円が加算されます。
所得によって支給停止となる場合の対象期間は、原則としてその年の10月分から翌年9月分までです。
たとえば今年になって急に給与が増えたからといって、その給与を受け取った月に直ちに障害基礎年金が停止される仕組みではありません。
前年所得を基準として、所定の期間について支給制限が判定されます。
「障害年金には収入制限がない」とだけ覚えないようにしてください。
相談実務では、まず初診日が20歳前かどうかを確認します。
20歳前傷病による障害基礎年金であれば、就労による所得が支給額に直接影響する可能性があります。
なお、「20歳前に病気を発症したか」だけではなく、障害年金でいう初診日がいつなのかが重要です。
病気そのものは子どもの頃からあったとしても、障害年金上の初診日の整理によって取扱いが変わる可能性があります。
特に発達障害や精神疾患では、幼少期から困りごとがあったものの、医療機関を受診したのは成人後だったというケースもあります。
反対に、20歳前に精神科や小児科などを受診していた経緯が後から確認されることもあります。
ですから、「自分は20歳前障害だと思う」「20歳を過ぎてから請求したから20歳前障害ではない」といった自己判断ではなく、初診日の事実関係から確認することが大切です。
20歳前傷病による障害基礎年金では、所得制限と障害状態の審査は別々に考えます。
所得が基準額以下でも、更新時に障害等級に該当しないと判断されれば支給停止となることがあります。
反対に、障害状態が変わっていなくても、前年所得が基準を超えれば所得による支給停止が生じることがあります。
所得制限額や扶養親族の取扱いは制度改正等によって変わる可能性があります。
正確な金額は年度ごとに確認してください。
(出典:日本年金機構「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」)
在職老齢年金との違い
障害年金について「働くと給料に応じて年金が止まる」と誤解される理由の一つが、老齢厚生年金にある 在職老齢年金 との混同です。
在職老齢年金は、厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受給する人について、老齢厚生年金の基本月額と賃金等を基にした総報酬月額相当額との合計が一定額を超える場合、老齢厚生年金の一部または全部を支給停止する仕組みです。
2026年4月からは、この支給停止の判定に使われる基準額が月65万円となっています。
なお、この基準額は毎年度の賃金変動などに応じて改定されるため、将来も65万円で固定されるとは限りません。
| 比較項目 | 障害年金 | 在職老齢年金 |
|---|---|---|
| 対象 | 障害基礎年金・障害厚生年金 | 老齢厚生年金 |
| 給与による支給調整 | 原則なし | あり |
| 一定額以上働くと停止するか | 原則しない | 基準を超えると支給停止あり |
| 主な例外・注意点 | 20歳前障害の所得制限、障害状態の変化 | 基本月額と総報酬月額相当額による調整 |
つまり、 障害年金に在職老齢年金と同じ仕組みを当てはめることはできません。
たとえば、障害厚生年金を受けている方が月30万円の給与を受けるようになったとしても、「給与30万円+障害厚生年金○万円」という計算をして、一定額を超えた分の半分を障害厚生年金から差し引くという処理は行いません。
一方、老齢厚生年金では、制度上の計算式に基づいて在職中の支給停止額が計算されます。
この違いはかなり重要です。
ネット上で「年金をもらいながら働くと減額される」といった情報を見たときは、それが 老齢厚生年金の話なのか、障害年金の話なのか を確認してください。
「年金」という言葉だけで制度を一括りにしないことが大切です。
老齢年金、障害年金、遺族年金では、支給要件も就労時の取扱いも異なります。
また、障害年金を受給している方が65歳前後になると、別の論点が出てきます。
老齢基礎年金や老齢厚生年金の受給権が発生すると、障害年金との併給や選択について検討する必要が生じるためです。
ここでは、「障害年金を受けながら働く」というテーマと、「65歳以降に複数の年金受給権がある」というテーマを分けて考えた方が分かりやすいでしょう。
さらに、65歳以降に老齢厚生年金を選択しながら働く場合には、その老齢厚生年金について在職老齢年金の調整が問題になることがあります。
障害年金そのものが在職停止されるという意味ではありません。
実務では、このあたりを一緒にしてしまうと、「就職したから障害年金が減った」「65歳になったから障害年金が在職停止された」という誤解につながります。
何の年金について、どの制度上の調整が行われているのかを確認することが基本です。
フルタイムやパートでも受給できる

障害年金には「週20時間まで」「月80時間まで」「フルタイムは禁止」といった勤務時間の一律の上限もありません。
そのため、パートやアルバイトだけでなく、状況によってはフルタイムで働きながら障害年金を受給している方もいます。
一方で、勤務時間が長くなれば何の影響もないという意味ではありません。
重要なのは、 どのような状態でその勤務を続けられているのか です。
たとえば同じ週30時間勤務でも、次のようなケースでは実態が大きく異なります。
- 通常業務を一人で行い、欠勤もなく安定して勤務している
- 業務内容を限定してもらい、上司の確認を受けながら勤務している
- 通院日の休暇や時差出勤などの配慮を受けている
- 体調悪化による欠勤、早退、遅刻が繰り返しある
- 勤務後は疲労が強く、家族の援助がなければ生活を維持できない
勤務時間という数字だけを比べても、障害の程度は判断できません。
たとえば、週30時間を継続できている方でも、電話対応や顧客対応を免除され、毎日決まった単純作業だけを担当し、体調が悪いときにはすぐ休める職場環境が整っていることがあります。
一方で、同じ週30時間でも、他の従業員と同じ業務を担当し、残業や出張にも対応し、欠勤もなく、自分で仕事の優先順位を判断しながら働いているケースもあります。
障害年金の認定を考える場合、この2人を単純に「週30時間だから同じ」と評価することはできません。
社会保険の加入と障害年金の受給も別の問題です。
勤務条件が健康保険・厚生年金の加入要件を満たせば通常どおり社会保険へ加入しますが、それだけで障害年金が停止されるわけではありません。
また、「パートなら安全」「正社員になったら危険」と雇用形態だけで考えるのも適切ではありません。
正社員でも障害者雇用で勤務時間や担当業務について配慮を受けていることがありますし、パートでも一般従業員と同じように高度な業務を一人で担当していることがあります。
精神障害や発達障害では、雇用契約の名称よりも、現実にどの程度の援助を受けて就労できているのかを見ることが重要です。
身体障害や内部障害についても、働いていることだけで等級が決まるわけではありません。
たとえば人工透析、心疾患、肢体障害などでは、それぞれ障害認定基準に応じて検査所見や身体機能、日常生活上の制限などを確認します。
ただし、障害厚生年金3級などでは「労働に著しい制限を受ける」程度が認定基準に関係します。
そのため、就労状況が完全に無関係になるわけでもありません。
勤務時間に「ここまでなら受給できる」という安全ラインはありません。
週20時間、週30時間、フルタイムといった数字だけから、障害年金の継続可否を予測することはできません。
就職や復職を考えているのであれば、障害年金を止めないために無理に勤務時間を抑えるというより、まず現在の体調で継続できる働き方を考えることが大切です。
結果として勤務時間が増えて体調も安定し、日常生活上の制限も大きく改善していけば、将来の更新で障害状態が軽くなったと判断される可能性はあります。
それは「働いた罰として年金を止める」という話ではなく、現在の障害状態を改めて確認した結果です。
「今は週3日だから大丈夫、週5日になったら必ず止まる」という明確な境界線はありません。
勤務時間だけから受給の可否を自己判断しないことが大切です。
障害年金2級・3級と就労の考え方
働きながら障害年金を受ける場合、「2級で働いていてもよいのか」「3級ならフルタイムでも問題ないのか」という疑問もよくあります。
まず制度上、障害基礎年金には1級と2級があり、障害厚生年金には1級・2級・3級があります。
2級は、障害によって日常生活が著しい制限を受ける、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度が基本です。
一方、障害厚生年金3級では、労働について著しい制限を受ける、または著しい制限を加えることを必要とする程度も認定基準になります。
この基準だけを見ると、「2級は日常生活がかなり制限されるのだから、仕事をしていれば2級にはならないのでは」と感じる方もいるでしょう。
しかし、特に精神障害については、 就労の事実だけで機械的に等級が決まるわけではありません。
たとえば、障害者雇用で業務を限定されている、常時の指導を受けている、短時間勤務である、頻繁に休憩を必要とする、通院や体調不良による欠勤が多いといった事情があれば、それらを含めて実際の障害状態を評価します。
また、会社では何とか働けていても、その反動で帰宅後は食事の準備や入浴、服薬管理、金銭管理などを家族に頼っているケースもあります。
障害年金の認定でいう日常生活能力は、勤務先で仕事ができているかどうかだけではありません。
家庭や地域での日常生活をどの程度自立して送れるのかという点も重要です。
重要なのは「働いているか、いないか」という二択ではありません。
仕事の内容、勤務時間、継続状況、欠勤、援助、職場での意思疎通、就労後の日常生活まで含めて障害の実態を確認することが必要です。
一方で、一般雇用で特段の配慮を必要とせず、責任ある業務を長期間安定してフルタイムで行い、家庭生活でも援助を必要としない状態になっている場合には、以前より障害の状態が軽くなっていると評価する方向の材料になり得ます。
ここでも、「正社員だから不支給」「障害者雇用だから2級」という決まりはありません。
3級についても同様です。
障害厚生年金3級を受給している方がフルタイムで勤務しているケースはあり得ますが、フルタイムであることだけで今後も3級が保障されるわけではありません。
たとえば、職種転換によって負担の軽い仕事を担当している、残業を免除されている、管理職業務を外してもらっている、体調に合わせて在宅勤務を利用しているなど、「労働について著しい制限を受けながら勤務している」という実態があることもあります。
反対に、以前は強い制限が必要だったものの、治療によって状態が改善し、現在は配慮をほとんど必要とせず勤務できているのであれば、更新時にはその変化が確認されることになります。
「2級だから働いてはいけない」「3級なら何時間働いても大丈夫」という理解は避けましょう。
等級と就労の関係は、障害の種類や実際の勤務状況、日常生活上の制限を含めて個別に考える必要があります。
私が相談を受ける場合も、勤務時間だけを聞いて判断することはありません。
どのような仕事をしているか、誰からどの程度助けてもらっているか、欠勤はあるか、勤務後の生活はどうなっているかまで確認して、全体像を整理します。
障害年金を働きながら受ける注意点
ここまでのポイントは、働いて収入を得ること自体と、障害の程度の判定を分けることです。
特に精神障害、知的障害、発達障害では、就労の実態が等級判定の重要な材料になります。
働き始めた後や更新を迎えるときには、「勤務している」という一言ではなく、その仕事をどのような支援や制限のもとで続けているのかを正確に整理しておきましょう。
また、本人は配慮だと思っていなくても、実際には会社側がさまざまな調整をしていることがあります。
仕事内容を固定している、急な業務変更を避けている、対人業務を減らしている、体調不良時の休憩を認めているといったものです。
こうした具体的な事情を、診察時や更新時にどのように整理するかが大切になります。
精神障害は就労実態が重視される
うつ病、双極性障害、統合失調症など精神の障害で障害年金を受けている場合は、就労状況が特に重要です。
厚生労働省の精神の障害に係る等級判定ガイドラインでは、 労働に従事していることだけをもって、直ちに日常生活能力が向上したと判断しない という考え方が示されています。
これは非常に重要な考え方です。
精神障害のある方の中には、仕事という決められた場面では強い緊張感で何とか勤務できるものの、帰宅後にはほとんど何もできなくなる方がいます。
また、本人だけを見ると普通に仕事をしているように見えても、会社側が仕事内容や勤務時間を大きく調整していることで、初めて継続勤務が成り立っているケースもあります。
実際の認定では、主に次のような事情を確認します。
- どのような仕事を担当しているか
- 勤務日数や勤務時間はどの程度か
- 安定して勤務を継続できているか
- 欠勤、早退、遅刻がどの程度あるか
- 業務を限定してもらっているか
- 上司や同僚からどの程度の援助を受けているか
- 臨機応変な対応ができるか
- 職場で意思疎通に困難がないか
- 仕事をした結果、家庭生活にどの程度影響が出ているか
たとえば1年以上仕事を続けている場合でも、それだけで「安定就労だから障害は軽い」と決まるわけではありません。
その期間中に頻繁な欠勤があったり、仕事内容を大幅に限定してもらっていたり、継続のために常時援助を受けていたりすれば、その実態も考慮されます。
ガイドラインでは、援助や配慮が常態化している環境で安定して働けている場合には、その援助や配慮がないとどのような状態になるのかも考慮するとされています。
つまり、「配慮があるから問題なく勤務できています」という状態を、そのまま「障害がなくなった」と見るのではなく、 配慮によって勤務が成立しているという事実そのもの も確認するということです。
逆に、以前は短時間勤務だった方が、配慮を必要とせずフルタイム勤務を長期間安定して続けられるようになった場合には、障害状態の改善を示す一つの材料になり得ます。
「収入が増えたから止まる」のではなく、「その働き方から現在の障害状態をどう評価するか」が問題になります。
精神障害では、仕事中だけを見るのも適切ではありません。
仕事の日は何とか出勤できていても、帰宅すると何もできず家族が食事や服薬管理をしている、休日はほとんど寝て過ごしている、といったケースもあります。
反対に、仕事だけでなく、買い物、食事、掃除、金銭管理、通院、対人関係なども一人で安定して行えるようになっている場合には、その変化も障害状態を考えるうえで無視できません。
私が相談を受ける際も、「仕事には行っています」という一言だけでは判断しません。
「仕事に行くために家族が毎朝起こしている」「服薬を家族が管理している」「職場では上司が仕事を一つずつ指示している」といった具体的な状況まで聞いていきます。
こうした情報は、診察室で短時間話すだけでは主治医に十分伝わっていないこともあります。
診断書を書く医師に事実を正確に把握してもらうためにも、普段の状況を具体的に伝えることが重要です。
就労と日常生活を切り離さず、生活全体を正確に把握することが大切です。
(出典:厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」)
うつ病の場合の認定や働き方については、 うつ病の障害年金と等級・働き方・申請のポイント でも詳しく解説しています。
障害者雇用や就労支援も考慮される

障害者雇用で働いている場合も、「会社で働いているから障害年金は受けられない」ということにはなりません。
精神の障害に係る等級判定では、障害者雇用制度の利用、就労継続支援A型・B型、就労移行支援などの利用状況も考慮されます。
これは、同じ「働いている」という状態でも、一般の従業員と同じ条件で勤務しているケースと、相当程度の支援を受けることで初めて就労が成立しているケースでは、障害の実態が異なるためです。
たとえば、一般企業で週5日働いている方でも、障害者雇用枠で仕事内容が限定され、職場の担当者が毎日進捗を確認し、体調が悪いときには業務量を減らしてもらっている場合があります。
外から見れば「週5日勤務」ですが、その勤務を支えている仕組みまで確認しなければ実態は分かりません。
特に知的障害や発達障害では、一般企業で勤務している場合であっても、保護的な環境のもとで単純かつ反復的な業務を担当している場合や、常時の管理・指導が必要な場合には、その事情を踏まえて2級の可能性も検討するとされています。
ただし、これは 「障害者雇用なら2級になる」という意味ではありません。
雇用区分だけではなく、実際に受けている援助や業務内容が重要です。
就労継続支援A型やB型を利用している場合についても、単にサービス名を記載するだけではなく、どの程度の作業ができるのか、職員からどのような援助を受けているのか、休まず通所できているのか、体調によって利用日数が変わるのかといった具体的な状況を整理しておくとよいでしょう。
就労移行支援を利用している方についても、「就職に向けた訓練を受けられているから障害は軽い」と一律に考えるものではありません。
支援機関のサポートを受けながら、生活リズムの調整や対人訓練、作業訓練を行っている段階であること自体が、その人の現在の状態を理解する材料になります。
具体的な支援内容を整理する
就労しながら障害年金を請求したり、更新を迎えたりするときは、「障害者雇用です」とだけ説明するよりも、具体的な配慮内容を整理しておくことをおすすめします。
- 勤務時間を短縮してもらっている
- 残業や夜勤を免除されている
- 電話対応や接客を免除されている
- 担当業務を固定してもらっている
- 定期的に上司との面談がある
- 指示を一つずつ具体的に出してもらっている
- 通院日に休めるよう調整されている
- 体調悪化時に別室で休憩できる
- ジョブコーチや支援機関の援助を受けている
このほかにも、「急な予定変更を避けてもらっている」「複数の仕事を同時に任されないよう配慮されている」「ミスがあったときに上司が再確認している」「対人トラブルが起きないよう担当者が間に入っている」といった支援があります。
本人にとっては毎日のことなので、こうした支援を「特別な配慮だと思っていなかった」と話す方も少なくありません。
しかし、障害年金の就労状況を考えるうえでは、その支援がなければ同じ仕事を継続できるのかという視点が重要です。
実務では、「週5日働いている」という情報だけでは実態が分かりません。
週5日の勤務を可能にしている職場の配慮があるなら、その内容まで整理することが重要です。
また、本人が障害者雇用ではなく一般雇用で働いていても、事実上の配慮を受けていることがあります。
たとえば、長年勤務している会社で病気を発症した後、正式に障害者雇用へ切り替えることなく、以前より軽い部署へ異動しているケースです。
この場合、「一般雇用」という名称だけを見るのではなく、発病前と現在で仕事の内容がどう変わったのかを確認する必要があります。
診断書や申立書などで就労状況を説明するときは、制度名や雇用区分だけではなく、「何を一人ではできないのか」「どのような援助があって初めて勤務できているのか」まで具体化すると、実態が伝わりやすくなります。
こうした事情は、外から見ただけでは分かりません。
本人も「みんなに迷惑をかけているわけではないから」と遠慮して、医師に詳しく話していないケースがあります。
必要以上に障害を大きく表現する必要はありませんが、逆に配慮を受けている事実を「大したことではない」と省略してしまうのも適切ではありません。
実際に起きていることを、そのまま整理して伝えることが大切です。
更新では勤務時間や職場の配慮を確認
有期認定で障害年金を受給している方は、指定された時期に障害状態確認届を提出して、引き続き障害等級に該当する状態かどうかの審査を受けます。
障害状態確認届は、通常、提出が必要となる年の 誕生月の3か月前の月末ごろ に日本年金機構から送付され、誕生月の末日までに提出します。
毎年必ず提出するとは限らず、障害状態に応じて次回の診断書提出時期が指定されています。
精神の障害用の診断書には就労状況を記載する項目があるため、前回の更新後に就職した、勤務時間を増やした、復職した、仕事内容が変わったといった変化があれば、現在の就労状況も確認されます。
ここでも、仕事を始めたという一つの事実だけで支給停止になるわけではありません。
ただし、前回の認定時には働けない状態だった方が、その後長期間安定して働けるようになったのであれば、それは障害状態の変化を判断する一つの材料になります。
一方、働き始めたものの、短時間勤務に限定されている、欠勤が多い、業務を大幅に軽減されている、上司のサポートが不可欠といった事情がある場合には、その実態まで含めて確認してもらうことが重要です。
更新前に整理しておきたい情報
私が更新について相談を受ける際には、単に「現在パート勤務」と整理するのではなく、次のような情報まで確認するようにしています。
- 週何日、1日何時間勤務しているか
- 以前と比べて勤務時間が増えたか
- 具体的にどのような業務を担当しているか
- 通常の従業員と業務内容が異なるか
- 欠勤、遅刻、早退があるか
- 職場からどのような配慮を受けているか
- 上司や同僚の援助が必要か
- 仕事によって家庭生活に影響が出ているか
加えて、直近数か月の勤怠状況や、体調悪化によって勤務時間を減らした時期がなかったかも確認しておくとよいでしょう。
たとえば「週5日勤務」とだけ伝えると、毎週安定して5日勤務しているように見えます。
しかし実際には、月に何度も欠勤や早退があり、有給休暇をかなり使って勤務を維持していることがあります。
こうした事実は、就労実態を把握するうえで重要です。
| 確認項目 | 整理しておきたい具体例 |
|---|---|
| 勤務時間 | 週3日・1日5時間、時短勤務、残業免除など |
| 仕事内容 | 単純作業中心、電話対応免除、担当業務固定など |
| 勤怠 | 欠勤、遅刻、早退、休職歴、有給休暇の使用状況など |
| 職場の援助 | 上司の確認、ジョブコーチ、定期面談、指示方法の配慮など |
| 家庭への影響 | 帰宅後に家事ができない、家族による服薬・金銭管理など |
医師はあなたの職場で毎日の勤務状況を見ているわけではありません。
診察室で「仕事はどうですか」と聞かれて「何とか行けています」とだけ答えると、実際に受けている配慮や欠勤状況まで十分伝わらないことがあります。
特に、真面目な方ほど「仕事に行けている以上、弱音を言ってはいけない」と考えてしまい、診察時に困っている部分をあまり話さないことがあります。
しかし、障害状態確認届は現在の障害の程度を確認するための診断書です。
就労できている部分だけでなく、就労を続けるために何が必要なのかも主治医に知ってもらう必要があります。
事実を大きく見せる必要も、小さく見せる必要もありません。
現在の働き方と、その働き方を維持するために必要な援助を具体的に医師へ伝えることが大切です。
更新時は「働いていることを隠す」のではなく、 働けている理由や必要な配慮まで含めて正確に伝える ことが重要です。
支給停止になっても受給権が消えるとは限らない
更新の結果、障害の程度が軽くなったと判断されれば、等級が下がったり、障害等級に該当しないとして支給停止になったりすることがあります。
たとえば障害厚生年金2級だった方が3級相当と判断されれば等級が変更される場合がありますし、3級にも該当しないと判断されれば支給停止となることがあります。
ただし、支給停止は必ずしも障害年金の受給権そのものが消滅することを意味しません。
その後、同じ傷病による障害状態が再び重くなり等級に該当する状態になった場合には、支給停止事由消滅届に診断書を添えて、支給再開を求めることができます。
ここは、「一度止まったら二度と障害年金を受けられない」と誤解されやすいところです。
また、現在受給している等級より障害状態が重くなった場合には、額改定請求ができる場合があります。
原則として受給権発生日や前回の障害状態の診査を受けた日から1年を経過した後でなければ額改定請求ができないという制限がありますが、一定の障害について明らかに障害状態が増進した場合には、1年を待たずに請求できる例外があります。
更新には「継続」「等級変更」「支給停止」といった結果があります。
支給停止後に状態が悪化した場合の手続きや、受給中に状態が重くなった場合の額改定請求も含め、障害年金はその後の障害状態の変化に対応する仕組みを持っています。
なお、支給停止になったからといって、自己判断で「もう受給権はない」と考え、状態が悪化しても何もしないのは避けたいところです。
反対に、体調が悪くなったからといって、必ず額改定が認められるとも限りません。
障害認定基準上、上位等級に該当する程度に障害状態が増進している必要があります。
更新や支給停止の通知が届いた場合には、通知の内容と現在の障害状態を確認したうえで、その後どのような手続きが考えられるか整理しましょう。
更新から支給停止、額改定請求までの詳しい流れは、 障害年金の更新と診断書・提出期限・支給停止のポイント で整理しています。
会社に障害年金を伝える義務はない

「働き始めたら会社に障害年金を受けていることが分かるのではないか」という相談もよくあります。
いわゆる「障害年金をもらっていることが会社にバレるのでは」と心配されるケースです。
障害年金を受給しているという事実について、一般的に勤務先へ申告しなければならない義務が設けられているわけではありません。
また、障害年金は所得税上非課税の給付です。
通常の給与のように年末調整の対象となる収入でもないため、会社の給与計算や年末調整を通じて障害年金の受給額が勤務先へ通知される仕組みではありません。
社会保険についても、障害年金を受給しているという理由だけで給与に対する健康保険料や厚生年金保険料の計算方法が変わるわけではありません。
厚生年金に加入して働けば、通常どおり標準報酬月額などを基に保険料が計算されます。
「障害厚生年金を受けているので厚生年金保険料は不要」という制度ではありません。
会社に伝える必要があるかどうかと、職場で配慮を受ける必要があるかどうかは別の問題です。
たとえば通常勤務に支障がなく、会社へ特別な配慮を求めないのであれば、障害年金の受給そのものを会社へ説明する必要がないケースもあります。
一方、短時間勤務、業務内容の制限、通院への配慮、体調悪化時の休憩などを求める場合には、必要な範囲で健康状態や配慮事項を会社と共有したほうが働きやすいことがあります。
ここで大事なのは、「障害年金を受けていることを伝えるか」という問題と、「仕事を続けるために必要な健康上の情報を伝えるか」という問題を切り分けることです。
会社として知りたいのは、障害年金の受給額ではなく、通常は「どのような業務なら安全に行えるのか」「どのような配慮が必要なのか」という就業上の情報です。
企業側も、従業員が障害年金を受けているかどうかを必要なく聞き出すのではなく、 仕事を安全かつ継続的に行うためにどのような配慮が必要なのか という視点で確認することが重要です。
従業員本人にとっても、「障害年金を受けています」と説明することと、「月1回の通院があるため勤務調整が必要です」「連続した残業は難しいです」と具体的な配慮を相談することは別の話です。
また、障害者雇用を希望する場合や、法令上の障害者雇用率の算定に関係する手続きを行う場合には、障害者手帳など別の情報を会社へ提示する場面があります。
しかし、障害者手帳を持っていることと、障害年金を受けていることも同じ制度ではありません。
障害者手帳を会社へ提示したからといって、障害年金の受給状況まで自動的に伝わるわけではありません。
なお、傷病手当金を受給している方が、同一の傷病を理由とする障害厚生年金などを受給する場合には、健康保険法上の給付調整が生じることがあります。
この場合、傷病手当金と障害厚生年金等の額によっては、傷病手当金が支給されない、または差額支給となることがあります。
これは「会社に障害年金がバレたから止まる」といった話ではなく、社会保険の給付同士を重複して満額支給しないための制度上の調整です。
仕事を始めるとき、復職するとき、傷病手当金から障害年金へ移行するときなどは、複数の制度が同時に関係することがあります。
何の給付が、どの理由で調整されるのかを一つずつ確認すると分かりやすいでしょう。
障害年金を働きながら受ける要点
障害年金は、原則として働きながらでも受給できます。
まず押さえておきたいのは、 障害年金には在職老齢年金のような給与額による一律の支給停止制度がない という点です。
パートだから受給できる、フルタイムだから受給できないという単純な仕組みでもありません。
「月収はいくらまでなら大丈夫なのか」という質問に対しても、20歳前傷病による障害基礎年金を除けば、「月○万円まで」という一律の答えはありません。
ただし、20歳前の傷病による障害基礎年金には本人の前年所得による支給制限があります。
また、精神障害などでは就労状況そのものが障害の程度を判断する重要な材料になります。
- 20歳前障害を除き、給与額だけで障害年金が止まる仕組みは原則ない
- フルタイムやパートという勤務形態だけで受給可否は決まらない
- 精神障害では仕事内容、勤務時間、欠勤、援助や配慮まで確認される
- 更新時は現在の就労実態を医師へ具体的に伝える
- 支給停止後に障害が重くなれば再開を求められる場合がある
特に注意したいのは、「働くと障害年金が止まる」という情報を恐れて、本来であれば体調に合わせて挑戦できる仕事まで諦めてしまうことです。
障害年金は、働かないことを条件として支給する制度ではありません。
一方で、「収入制限がないのだから、どのような働き方をしても更新には関係ない」と考えるのも正確ではありません。
たとえば精神障害の場合、以前は家族の援助を受けながら短時間勤務をしていた方が、その後、配慮なしで責任ある仕事を長期間安定して続けられるようになったのであれば、それは障害状態の改善を示す事情の一つになり得ます。
反対に、週5日勤務していたとしても、障害者雇用で業務が限定され、頻繁な休憩や上司の援助を受け、帰宅後の日常生活でも家族の支援が不可欠という状態であれば、「週5日働いている」という情報だけで障害状態を判断することはできません。
収入による支給停止と、障害状態を判断するための就労評価は別のものです。
この二つを切り分けると、障害年金を働きながら受ける場合の考え方がかなり整理しやすくなります。
| 気になること | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 働くと障害年金が止まる? | 働いた事実だけで直ちに停止される仕組みではない |
| 給料はいくらまで? | 20歳前障害を除き、一律の給与上限はない |
| フルタイムは不支給? | 勤務形態だけでは決まらず、就労実態を含めて判断される |
| 障害者雇用なら大丈夫? | 雇用区分だけでなく、具体的な援助や配慮の内容が重要 |
| 更新で注意することは? | 勤務時間、仕事内容、欠勤、配慮、家庭生活への影響を整理する |
就職や復職を考えている方は、年金を維持することだけを目的に勤務時間を決めるのではなく、まず主治医や支援者と相談しながら、現在の体調に合った働き方を考えることが大切です。
無理をして勤務時間を増やした結果、再び体調を崩して休職してしまえば、本人にとっても会社にとっても負担が大きくなります。
そのうえで、職場から受けている援助や実際の勤務状況を記録しておくと、将来の更新時にも状況を説明しやすくなります。
たとえば、勤務日数や勤務時間、欠勤・遅刻・早退の日数、仕事内容の変更、職場で受けている配慮などを簡単に記録しておくだけでも、数年後の更新時に「以前と比べてどう変わったのか」を整理しやすくなります。
また、主治医の診察では「仕事には行けています」で終わらせず、仕事を続けるためにどのような援助が必要なのか、仕事をした後の日常生活がどのようになっているのかまで伝えておくとよいでしょう。
障害年金と就労は、どちらか一方を選ばなければならない関係ではありません。
大切なのは、制度を正しく理解したうえで、あなたの障害状態と体調に合った働き方を考え、その実態を必要な場面で正確に伝えることです。
障害年金の認定は、傷病、障害の状態、診断書の内容、就労実態などによって個別に判断されます。
また、所得制限額や在職老齢年金の基準額など、年金制度の数値は年度や法改正によって変更される可能性があります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
個別の受給可否や更新への影響については、 最終的な判断は専門家にご相談ください。