こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
遺族年金には、原則として所得税も住民税もかかりません。
また、公的な遺族年金は相続税の課税対象にもならず、遺族年金だけを受け取ったことを理由に確定申告をする必要もありません。
ただし、ここで注意したいのが、税金では収入として扱われなくても、健康保険の扶養判定では遺族年金も収入に含めて考えるという点です。
また、亡くなった方が受け取るはずだった未支給年金については、通常の遺族年金とは税金の扱いが異なります。
実際の相談でも、遺族年金が非課税と聞いて、税金だけでなく扶養や社会保険料にもまったく影響しないと考えてしまうケースがあります。
同じ年金でも、制度によって収入の捉え方が違うため、分けて整理することが大切です。
この記事では、遺族年金にかかる税金、確定申告、相続税、税制上の扶養、健康保険の扶養、国民健康保険料や介護保険料への影響まで、実務で迷いやすいポイントを順番に整理します。
- 遺族年金に所得税・住民税がかかるか
- 確定申告や相続税の申告での扱い
- 税制上の扶養と健康保険の扶養の違い
- 未支給年金や保険料に関する注意点

遺族年金の税金は非課税が原則
まず押さえておきたいのは、国民年金法や厚生年金保険法などに基づいて支給される公的な遺族年金は、税金の面では原則として非課税だということです。
老齢年金とは取扱いが異なるため、「年金だから課税される」と一括りに考えないことが重要です。
一方で、亡くなった方の未支給年金や、企業年金など公的遺族年金とは異なる給付については、同じ考え方がそのまま当てはまらない場合があります。
ここでは、まず所得税、住民税、確定申告、相続税を順番に確認します。
遺族年金に所得税はかからない
国民年金法や厚生年金保険法などに基づいて支給される 遺族基礎年金や遺族厚生年金は、原則として所得税が非課税 です。
受け取った遺族年金の金額を、給与所得や事業所得などに足して所得税を計算する必要はありません。
たとえば、夫を亡くした方が遺族厚生年金を受けながらパート勤務をしている場合、所得税の計算対象になるのは基本的にパートによる給与所得です。
遺族厚生年金を給与収入に合算して所得税率を決めるわけではありません。
税金を考えるときは、「遺族年金」と「老齢年金」を分けることが重要です。
遺族年金や障害年金は原則として非課税ですが、自分自身の老齢基礎年金や老齢厚生年金は、原則として公的年金等に係る雑所得として所得税の対象になります。
この違いは、65歳前後で特に分かりにくくなります。
遺族厚生年金を受けていた方が65歳になり、自分自身の老齢年金も受け始めると、口座に複数の年金が入ってくることがあります。
その場合でも、税務上はそれぞれの年金の性質を分けて考えます。
また、非課税となる公的な遺族年金については、通常の老齢年金のように所得税を源泉徴収するための「公的年金等の源泉徴収票」は交付されません。
年金額を確認したい場合は、年金振込通知書など別の書類を確認することになります。
遺族年金そのものの受給条件については、 遺族年金の受給条件と対象者の解説 もあわせて確認してください。
公的な遺族年金の課税関係については、国税庁の 「No.1605 遺族の方に支給される公的年金等」 で確認できます。
遺族年金に住民税はかからない

所得税だけでなく、 公的な遺族年金は原則として住民税についても非課税 です。
そのため、遺族年金として受け取った金額をそのまま住民税の課税所得に加えるわけではありません。
たとえば、遺族年金が年間150万円あり、ほかに課税対象となる収入がまったくないケースを考えてみます。
遺族年金150万円があるという理由だけで、150万円を所得として住民税が計算されるわけではありません。
ここで実務上よく迷うのが、自治体が発行する所得証明書や課税証明書との関係です。
遺族年金は非課税所得であるため、通常は給与や課税対象となる老齢年金と同じ形で課税所得として証明書に反映されません。
課税証明書に表示されないことと、すべての行政制度で収入がないものとして扱われることは同じではありません。
行政サービスや社会保障制度には、住民税上の所得を基準にするものだけでなく、非課税収入を含めて独自に判定するものもあります。
この違いは非常に大切です。
住民税がかからないからといって、健康保険の扶養認定や各種給付の所得・収入判定でも必ず除外されるとは限りません。
「非課税」と「収入として数えない」は別の話 と考えておくと、制度ごとの違いを整理しやすくなります。
遺族年金は確定申告が不要
公的な遺族年金は所得税が非課税であるため、 遺族年金を受け取ったこと自体について確定申告をする必要はありません。
確定申告書に遺族年金の年間受給額を収入として記載する必要もありません。
会社員やパート勤務の方であれば、勤務先では通常どおり給与について年末調整が行われます。
その際も、遺族年金を給与以外の所得として年末調整に加える必要はありません。
ただし、「遺族年金をもらっている人は確定申告をしなくてよい」という意味ではありません。
遺族年金とは別に申告が必要な所得や控除がある場合には、通常どおり確定申告が必要になることがあります。
たとえば、給与以外の課税所得がある場合、自分自身の老齢年金を受給している場合、不動産所得や事業所得がある場合などは、遺族年金とは別に確定申告の要否を判断します。
また、医療費控除や寄附金控除などを受けるために自分から確定申告をする場合でも、非課税である遺族年金を課税対象の収入に加える必要はありません。
相談を受ける際には、「確定申告をするかどうか」と「遺族年金を申告するかどうか」を分けて考えるようにしています。
確定申告自体が必要な人でも、遺族年金そのものは申告対象ではないというケースがあるためです。
遺族年金は相続税の対象外

公的な遺族年金については、原則として 相続税の課税対象にもなりません。
亡くなった方が持っていた財産を相続によって引き継ぐものではなく、法律上の要件を満たした遺族自身に発生する年金受給権だからです。
そのため、遺族厚生年金を今後毎年受け取ることになったとしても、その将来の年金受給額を計算して相続財産に加えるという取扱いは通常行いません。
ここは、死亡保険金や死亡退職金と混同されやすいところです。
生命保険金や死亡退職金には、一定の場合に相続税法上の「みなし相続財産」として扱われるものがあります。
一方、公的な遺族年金は、それらとは制度上の性質が異なります。
公的な遺族年金は、亡くなった方の預貯金を相続するものではありません。
一定の要件を満たした遺族自身の権利として支給されるため、所得税だけでなく相続税についても原則として課税対象外です。
ただし、「遺族に支給される年金」という名称だけで、すべての年金が同じ扱いになるわけではありません。
確定給付企業年金など、公的な遺族年金とは異なる制度については、相続税の課税関係が異なることがあります。
相続税について判断するときは、その給付が国民年金法や厚生年金保険法に基づく公的な遺族年金なのか、それとも企業年金、個人年金、生命保険など別の制度なのかを最初に確認してください。
公的年金とその他の年金受給権の相続税上の違いについては、国税庁の 「No.4123 相続税等の課税対象になる年金受給権」 も確認しておくと整理しやすくなります。
未支給年金は一時所得になる
遺族年金の税金を考えるうえで、特に注意してほしいのが 未支給年金 です。
通常の遺族年金と未支給年金は、名前に「年金」が付いていても税務上の扱いが同じではありません。
未支給年金とは、亡くなった年金受給者に支給されるはずだったものの、死亡した時点ではまだ本人に支払われていなかった年金です。
公的年金は後払いで支給されるため、死亡後に一定の未支給分が残ることがあります。
たとえば、亡くなった方が老齢年金を受けていて、その未支給分を一定の要件を満たす遺族が請求して受け取った場合、 原則として受け取った遺族の一時所得 として扱われます。
一般的な一時所得は、次の考え方で計算します。
一時所得 = 総収入金額 − 収入を得るために直接支出した金額 − 特別控除額(最高50万円)
さらに、原則として計算した一時所得の2分の1を他の所得と合算して課税所得を計算します。
未支給年金の金額だけを見ると50万円以下であるケースもありますが、注意したいのは、 一時所得の50万円の特別控除は、未支給年金だけに個別で使える枠ではない ということです。
同じ年に生命保険の満期保険金など、ほかにも一時所得に該当する収入がある場合には、それらをまとめて計算します。
そのため、「未支給年金が50万円以下だから必ず申告不要」とだけ判断するのは避けた方がよいでしょう。
なお、未支給年金も通常の相続財産として相続人が取得するものではなく、一定の要件を満たした遺族が自分自身の権利として請求するものです。
誰が請求できるのか、必要書類や税金まで詳しく確認したい方は、 年金の未支給請求と必要書類・税金の解説 をご確認ください。
遺族年金の税金と扶養の注意点
遺族年金について最も混乱しやすいのが、税金では非課税なのに、別の制度では収入として扱われることがある点です。
特に税制上の扶養と健康保険の扶養は、同じ「扶養」という言葉を使いますが、判定方法がまったく同じではありません。
さらに、国民健康保険料や介護保険料もそれぞれ別の仕組みで計算されます。
ここからは、「遺族年金を受けながら家族の扶養に入れるのか」「働きながら受けると税金はどうなるのか」という実務上よくある疑問を整理します。
税制上の扶養では所得に含めない
所得税の配偶者控除や扶養控除などでは、原則として対象となる人の 合計所得金額 をもとに判定します。
遺族年金は非課税所得であるため、税制上の扶養を判断するときの合計所得金額には通常含めません。
そのため、遺族年金を受給しているという理由だけで、税制上の扶養から外れるわけではありません。
たとえば、母親が遺族年金を受けており、ほかに課税対象となる収入がない場合、遺族年金の年額だけを見て「収入が多いから子どもの税法上の扶養には入れない」と判断するものではありません。
一方、パート勤務による給与や、不動産収入など課税対象となる所得がある場合には、それらの所得をもとに税制上の扶養要件を確認する必要があります。
税制上の扶養では、遺族年金そのものは合計所得金額に含めないのが基本です。
ただし、給与所得や事業所得など別の所得がある場合は、その所得を使って扶養要件を判定します。
税制上の扶養に関する所得要件や控除額は税制改正によって変わる可能性があります。
特に給与収入がある場合は、遺族年金の金額ではなく、その年の給与やその他の所得を確認したうえで判断してください。
健康保険の扶養では収入に含める

ここが遺族年金で最も間違えやすいポイントです。
健康保険の被扶養者認定では、非課税の遺族年金も年間収入に含めて判定するのが基本 です。
つまり、「所得税がかからないから健康保険でも収入ゼロ」という考え方にはなりません。
税務と社会保険では、それぞれ別の目的と基準で収入を確認しています。
協会けんぽでは、一般的な被扶養者の年間収入基準は130万円未満です。
認定対象者が60歳以上、または一定の障害がある場合には、一般に180万円未満という基準が用いられます。
年齢などによって別の基準が適用される場合もあるため、実際の認定時には最新の基準を確認する必要があります。
| 収入の種類 | 税制上の扶養 | 健康保険の扶養 |
|---|---|---|
| 遺族年金 | 原則として所得に含めない | 原則として収入に含める |
| パート給与 | 給与所得として判定 | 年間収入として判定 |
| 老齢年金 | 課税対象部分を所得として判定 | 年間収入として判定 |
たとえば、58歳の方が遺族厚生年金を年間100万円、パート給与を年間50万円受け取る見込みであれば、健康保険上は原則として合計150万円の年間収入として考えます。
一般的な130万円未満という基準を超えるため、被扶養者として認定されない可能性があります。
一方、62歳の方で同じ年間150万円の収入であれば、60歳以上に適用される一般的な180万円未満という基準との関係では金額要件を満たす可能性があります。
ただし、これだけで扶養が確定するわけではありません。
同居している場合には被保険者の収入との関係が、別居している場合には仕送り額なども確認されます。
加入する健康保険組合によって必要書類や具体的な確認方法が異なる場合もあります。
税の扶養には入れる一方、健康保険の扶養には入れない ということは十分にあり得ます。
「扶養」という言葉だけで判断せず、税金の扶養なのか健康保険の扶養なのかを最初に確認してください。
健康保険の収入基準については、勤務先や加入している健康保険のほか、 全国健康保険協会の被扶養者に関する案内 などで最新情報を確認してください。
国民健康保険料への影響
家族の健康保険の扶養に入れず、自分で国民健康保険に加入する場合には、国民健康保険料と遺族年金の関係も気になるところです。
国民健康保険料の所得割などは、原則として住民税上の所得を基礎に計算されます。
そのため、 非課税である遺族年金そのものは、通常は所得割を計算するための所得には含まれません。
たとえば、遺族年金だけを受け取っている人について、その遺族年金全額を給与所得と同じように所得割の計算基礎へ入れるという考え方ではありません。
ただし、だからといって国民健康保険料が必ずゼロになるわけではありません。
国民健康保険料には、所得に応じて計算される部分だけではなく、加入者数などをもとに計算される部分が設けられていることがあります。
遺族年金が非課税であることと、国民健康保険料が発生しないことは別です。
給与所得、事業所得、課税対象となる老齢年金、世帯の所得状況などによって保険料は変わります。
また、低所得世帯に対する保険料の軽減制度についても、世帯全体の所得状況などを使って判定されます。
遺族年金を受けている本人だけを見て結論を出せないことがあります。
国民健康保険料の計算方法や料率は自治体によって異なります。
実際の保険料を確認するときは、お住まいの市区町村が公表している最新年度の計算方法を確認してください。
介護保険料への影響
介護保険料についても、遺族年金が非課税だからといって、単純に「影響する」「影響しない」とだけ説明するのは適切ではありません。
年齢や加入区分によって介護保険料の仕組みが異なるためです。
65歳以上の第1号被保険者については、市区町村が所得や住民税の課税状況などをもとに保険料段階を決定します。
その際、公的な遺族年金は非課税年金であるため、一般的には課税対象となる老齢年金と同じ形で所得に加算されるものではありません。
一方で、介護保険料の段階判定では、本人だけではなく世帯の住民税課税状況や、課税対象となる年金収入、その他の所得などが関係する場合があります。
また、40歳から64歳までの第2号被保険者は、加入している健康保険の保険料とあわせて介護保険料を負担する仕組みとなっています。
この場合は、会社の健康保険なのか国民健康保険なのかによって計算方法が異なります。
遺族年金が非課税だからといって、介護保険料全体を遺族年金だけから計算することはできません。
年齢、世帯の課税状況、ほかの所得、加入する医療保険などをあわせて確認する必要があります。
自治体ごとに保険料段階や金額が異なり、年度によって改定されることもあります。
具体的な介護保険料については、市区町村から届く介護保険料決定通知書や最新の案内を確認してください。
働きながら受給する場合の税金

遺族年金を受けながら働くこと自体に税務上の問題があるわけではありません。
パートや会社員として働いている場合には、 給与には通常どおり所得税や住民税がかかり、遺族年金は非課税のまま という整理になります。
たとえば、年間100万円の遺族年金と年間120万円の給与を受け取っている場合、所得税の計算で単純に220万円を課税対象の給与収入とするわけではありません。
遺族年金と給与は分けて考えます。
勤務先の年末調整についても同様です。
遺族年金を受けていることを理由に、その年金額を給与に加えて年末調整を行うものではありません。
一方、健康保険の扶養に入ることを検討している場合には話が変わります。
健康保険では、パート給与と遺族年金の両方を収入として確認するのが基本だからです。
働きながら遺族年金を受ける場合は、次のように分けると整理しやすくなります。
- 所得税・住民税では給与を課税対象として考える
- 遺族年金そのものは原則として非課税
- 健康保険の扶養では給与と遺族年金の両方を確認する
- 未支給年金など別の収入があれば個別に課税関係を確認する
さらに65歳以降、自分自身の老齢基礎年金や老齢厚生年金を受け始めると、税金の見え方が変わります。
自分の老齢年金は原則として課税対象となるためです。
遺族厚生年金と自分自身の老齢厚生年金については、税金とは別に年金制度上の支給調整が関係することもあります。
「65歳になったら遺族年金も課税される」という意味ではありませんので、それぞれを分けて確認してください。
また、遺族年金の請求自体について確認したい場合は、 遺族年金の必要書類・提出先・請求手続きの解説 で手続きの流れを整理しています。
遺族年金の税金で迷う点を整理
最後に、遺族年金と税金の関係を制度別に整理します。
| 確認する制度 | 遺族年金の基本的な扱い |
|---|---|
| 所得税 | 公的な遺族年金は原則非課税 |
| 住民税 | 公的な遺族年金は原則非課税 |
| 確定申告 | 遺族年金そのものは原則申告不要 |
| 相続税 | 公的な遺族年金は原則として相続財産に含めない |
| 税制上の扶養 | 遺族年金は原則として合計所得金額に含めない |
| 健康保険の扶養 | 遺族年金も原則として年間収入に含める |
| 未支給年金 | 老齢年金等の未支給分は原則として遺族の一時所得 |
| 国民健康保険料 | 遺族年金は通常、所得割の所得には含めない |
最も大切なのは、 遺族年金が非課税であることと、すべての制度で収入として扱われないことは同じではない という点です。
特に健康保険の扶養では、遺族年金も収入に含めて判断します。
このため、「税法上は扶養に入れるが、健康保険では扶養に入れない」という結果になることがあります。
また、亡くなった方が受け取るはずだった未支給年金は、通常の遺族年金とは分けて確認してください。
一般的な老齢年金の未支給分を遺族が受け取る場合は一時所得となり、同じ年に生命保険金など他の一時所得がある場合は合算して考える必要があります。
児童扶養手当などは別の基準で確認する
税金以外の給付制度についても注意が必要です。
たとえば児童扶養手当などは、公的年金との調整が設けられている場合があります。
「遺族年金が非課税だから他の給付には影響しない」と判断せず、それぞれの制度の支給要件を確認してください。
遺族年金については、日本年金機構の 遺族年金ガイド でも受給要件や他の年金との調整、請求手続きなどを確認できます。
税金、扶養、社会保険料は、それぞれ異なる法律や基準で判断されます。
税制改正や社会保険制度の変更によって基準が変わることもあるため、正確な情報は公式サイトをご確認ください。
個別の収入状況や家族構成によって結論が変わる場合があります。
税務については税務署や税理士、年金・社会保険については年金事務所や社会保険労務士など、最終的な判断は専門家にご相談ください。