こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
1か月の労働時間に、すべての会社・働き方に共通する「合計○時間まで」という一つだけの上限があるわけではありません。
原則となる1日8時間・1週40時間の法定労働時間に加えて、36協定による時間外労働の上限や、変形労働時間制を採用している場合の総枠を分けて考える必要があります。
たとえば、31日の月について177.1時間という数字を見かけることがありますが、この数字だけを見て「177.1時間を超えたら直ちに違法」「177.1時間までは残業ではない」と判断するのは適切ではありません。
通常の労働時間制では、原則として1日と1週間の単位で法定時間外労働を確認します。
一方、1か月単位の変形労働時間制では、月の暦日数から計算する総枠が重要になります。
この記事では、月の法定労働時間としてよく使われる計算方法、月平均所定労働時間との違い、36協定の月45時間、特別条項の100時間未満・複数月平均80時間以内、変形労働時間制まで順番に整理します。
従業員の方が自分の勤務状況を確認するときにも、会社の担当者が勤怠管理をするときにも使える考え方です。
- 1か月の労働時間を考えるときの基本ルール
- 月160時間・171.4時間・177.1時間の意味
- 36協定による月45時間と特別条項の上限
- 変形労働時間制を含めた確認方法

1か月の労働時間の上限はどう決まる
1か月の労働時間を確認するときは、まず「総労働時間」「所定労働時間」「法定労働時間」「時間外労働」を分けることが大切です。
実際の相談でも、月160時間、173時間、177時間、200時間といった数字だけが一人歩きしているケースがあります。
それぞれ何を表す数字なのかを順番に整理していきましょう。
法定労働時間は月ごとに異なる
労働基準法における法定労働時間の原則は、 1日8時間・1週間40時間 です。
ここが労働時間を考えるときの出発点です。
ただし、「では1か月では何時間なのか」と考えると少し注意が必要です。
インターネット上では、28日の月は160時間、30日の月は171.4時間、31日の月は177.1時間と説明されることがあります。
これは週40時間を月の暦日数に応じて換算した数字であり、特に1か月単位の変形労働時間制における総枠を確認するときに重要になります。
通常の労働時間制では、177.1時間が一律の月間上限になるわけではありません。
通常の労働時間制における法定時間外労働は、原則として1日8時間、1週40時間を基準として判定します。
そのため、月の総労働時間だけを見て残業時間を確定することはできません。
たとえば、所定労働時間が1日8時間の会社で、ある日に10時間働けば、原則としてその日の2時間は法定時間外労働になります。
月全体の勤務時間が177時間以内だから、その2時間が消えるということではありません。
逆に、会社の所定労働時間が1日7時間30分の場合、7時間30分を超えて8時間まで働いた時間は「所定外労働」ではありますが、直ちに労働基準法上の法定時間外労働になるとは限りません。
会社の就業規則や賃金規程で別の取扱いを定めている場合もあります。
月の数字を見る前に、自分の会社が通常の労働時間制なのか、変形労働時間制なのかを確認すること が重要です。
就業規則、労働条件通知書、勤務カレンダーなどを見ると判断しやすくなります。
「1か月何時間働いたか」という総量はもちろん重要ですが、法的な判断では、その時間がどの日、どの週、どの休日に発生したのかまで確認する必要があります。
ここを分けて考えるだけでも、労働時間に関する多くの疑問が整理できます。
月の法定労働時間の計算方法

月の法定労働時間としてよく検索される数字は、週40時間をその月の暦日数に換算する方法で求められます。
計算式は、 40時間×その期間の暦日数÷7日 です。
1か月単位の変形労働時間制では、この計算によって変形期間における法定労働時間の総枠を求めます。
一般的な週40時間の事業場について計算すると、次のようになります。
| 月の暦日数 | 計算式 | 40時間の場合の総枠 |
|---|---|---|
| 28日 | 40×28÷7 | 160.0時間 |
| 29日 | 40×29÷7 | 約165.7時間 |
| 30日 | 40×30÷7 | 約171.4時間 |
| 31日 | 40×31÷7 | 約177.1時間 |
このため、「月の労働時間は177時間まで」と説明されることがあります。
ただ、177.1時間になるのは31日の月です。
30日の月なら約171.4時間、28日の月なら160時間となるため、暦日数によって数字が変わります。
さらに重要なのは、この表を 通常の労働時間制における残業時間の単純な判定表として使わないこと です。
通常の労働時間制では1日8時間・1週40時間という基準が先にあります。
一方、1か月単位の変形労働時間制では、対象期間全体の総枠としてこの計算が直接的な意味を持ちます。
計算式を覚えるより、何のための数字かを理解することが大切です。
- 通常の労働時間制:原則として1日8時間・1週40時間で時間外を判定
- 1か月単位の変形労働時間制:暦日数から計算した総枠も使って判定
- 36協定:発生した法定時間外労働について別途上限を管理
勤怠管理では、「今月は177時間以内だったから問題なし」と月末の合計時間だけで確認するのではなく、採用している労働時間制度に合わせて日・週・対象期間の順に確認することが大切です。
月平均所定労働時間との違い
1か月の労働時間について特に混同されやすいのが、 月平均所定労働時間 です。
求人票、給与計算ソフト、賃金規程などに「月平均所定労働時間160時間」「162時間」と記載されていることがあります。
月平均所定労働時間とは、会社が年間を通して設定している所定労働時間を1か月平均にした数字です。
月給制の従業員について1時間あたりの賃金額を計算するときなどに使われます。
基本的には、年間の所定労働時間を12か月で割って算出します。
たとえば、1日の所定労働時間が8時間、年間休日が121日という単純な例であれば、年間所定労働日数を244日として計算すると、次のようになります。
計算例
(365日-年間休日121日)×8時間÷12か月=約162.7時間
ただし、実際には会社の年間勤務カレンダー、所定休日、1日の所定労働時間などから年間所定労働時間を確認して算出します。
うるう年や勤務カレンダーの設計によっても数字は変わるため、上の計算例はあくまで一般的な目安です。
ここで一番大切なのは、 月平均所定労働時間は「1か月に働いてよい上限時間」ではない という点です。
たとえば、月平均所定労働時間が160時間だからといって、161時間目から必ず法定時間外労働になるわけではありません。
所定労働時間を超えた時間と、労働基準法上の法定労働時間を超えた時間は別に判定します。
また、月給から残業代の時間単価を計算するときには、どの賃金を基礎に含めるか、会社の年間所定労働時間が適切に設定されているかといった確認も必要です。
実務でも、「求人票に月平均所定労働時間160時間と書いてあるので、月160時間を超えたら違法ですか」という確認を受けることがあります。
160時間という数字だけを見るのではなく、 何を計算するために使っている数字なのか を確認するのがポイントです。
月177時間は何を意味するのか
「労働時間は月177時間まで」と聞いたことがある方もいると思います。
この177時間という数字は、31日の月について週40時間を暦日数で換算すると約177.1時間になることから出てくる数字です。
計算式は40時間×31日÷7日で、約177.1時間です。
特に1か月単位の変形労働時間制では、31日を変形期間とする場合の法定労働時間の総枠として重要な数字になります。
一方、通常の労働時間制の会社について、 月177時間以内なら何時間でも自由に配分してよいわけではありません。
たとえば、通常の労働時間制で月の合計が170時間だったとしても、1日10時間働いた日があれば、その日の法定時間外労働を確認する必要があります。
177時間を「残業込みの絶対上限」と考えないでください。
177.1時間は、31日の月を週40時間で換算した数字です。
36協定の月45時間や特別条項の上限とは別の数字であり、それぞれ役割が異なります。
また、「月200時間働いているから、177時間との差の23時間が必ず残業になる」という単純な計算も、正確な法定時間外労働の算定には使えません。
所定労働時間、日ごとの勤務時間、週ごとの勤務時間、法定休日労働、変形労働時間制の有無などを確認する必要があります。
月200時間という具体的なケースについては、 月200時間の労働時間が違法になるかの考え方 で、総労働時間と残業時間を分けて詳しく整理しています。
実務で数字を見るときは、「177時間を超えたか」だけではなく、勤怠表を日単位、週単位、月単位で確認します。
総労働時間と法定時間外労働時間は同じものではない という点を押さえておくと判断しやすくなります。
所定労働時間と残業時間の考え方

1か月の労働時間を正しく確認するためには、少なくとも「所定労働時間」「所定外労働」「法定時間外労働」「休日労働」を分ける必要があります。
所定労働時間 とは、会社が就業規則や労働条件通知書などで定めた通常の勤務時間です。
たとえば、9時から17時30分まで、休憩1時間で実働7時間30分という会社であれば、1日の所定労働時間は7時間30分です。
この従業員が18時まで働けば30分の所定外労働が発生します。
しかし、通常の労働時間制であれば、実労働時間が8時間以内の部分については、原則として労働基準法上の法定時間外労働にはなりません。
これを一般に法定内残業と呼ぶことがあります。
| 区分 | 意味 | 確認するポイント |
|---|---|---|
| 所定労働時間 | 会社が定めた通常の勤務時間 | 就業規則・雇用契約 |
| 法定内残業 | 所定時間を超えるが法定枠内の労働 | 賃金規程の取扱い |
| 法定時間外労働 | 原則として1日8時間・週40時間を超える労働 | 36協定・割増賃金 |
| 休日労働 | 法定休日に行った労働 | 36協定・休日割増 |
この区分が重要なのは、36協定の上限が「月の総労働時間」を規制しているわけではないからです。
月45時間という数字は、基本的に法定労働時間を超えて行わせる時間外労働についての限度時間です。
同じように、月60時間を超える時間外労働について50%以上の割増賃金が必要になるというルールも、月の総勤務時間が60時間を超えたという意味ではありません。
法定時間外労働が1か月60時間を超えた部分 が対象です。
深夜労働が重なれば、別途深夜割増も考える必要があります。
給与計算や勤怠管理では、総勤務時間から月平均所定労働時間を単純に引くだけで終わらせず、日・週・休日の順に正しく分類しておくことが大切です。
特例事業場は週44時間が基準
法定労働時間は原則として1週40時間ですが、一定の小規模な事業場については、特例として 1週44時間 まで認められる場合があります。
これを特例措置対象事業場といいます。
対象となり得るのは、常時10人未満の労働者を使用する一定の商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業などです。
単に会社全体の従業員が10人未満なら自動的に44時間になるわけではなく、事業場の規模と業種を確認する必要があります。
また、週44時間の特例が使える事業場であっても、 1日の法定労働時間は原則8時間 です。
「週44時間だから、毎日8時間48分まで通常勤務にできる」という意味ではありません。
実際の勤務時間の組み方によっては、変形労働時間制の導入など別の検討が必要になります。
1か月単位の変形労働時間制で週44時間の特例が適用できる場合には、総枠も44時間を基準に計算します。
たとえば31日の月であれば、44時間×31日÷7日で約194.8時間となります。
週44時間の特例で間違えやすいポイント
- すべての中小企業が対象になるわけではない
- 会社単位ではなく事業場の状況を確認する
- 1日8時間の原則まで44時間に合わせて広がるわけではない
- 法定労働時間を超える場合は36協定の確認が必要
実際の労務相談では、「昔から週44時間でやっている」というケースもあります。
ところが、現在の従業員数や事業内容を確認すると特例の対象ではなくなっていることもあります。
特例が使えるかどうかは給与計算や残業時間にも影響しますので、会社側は就業規則だけでなく、現在の事業場の人数と業種を定期的に確認しておくと安心です。
1か月の労働時間の上限と36協定
ここからは、法定労働時間を超えて働く場合の上限を確認します。
「月45時間」「100時間未満」「平均80時間」という数字はいずれも36協定と時間外労働の上限規制に関係しますが、対象となる時間の範囲が同じではありません。
月の総労働時間と混同せずに整理していきましょう。
残業の上限は原則月45時間
会社が従業員に法定労働時間を超える時間外労働や法定休日労働をさせるためには、原則として36協定を締結し、所轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。
36協定を届け出れば何時間でも残業させられるわけではありません。
一般的な時間外労働の限度時間は、 原則として月45時間・年360時間 です。
まず押さえたい基本
- 法定労働時間は原則1日8時間・週40時間
- これを超えて時間外労働をさせるには原則36協定が必要
- 時間外労働の限度は原則月45時間・年360時間
- 月45時間は月の総労働時間ではなく時間外労働の限度
ここは実際によくある誤解ですが、「所定労働時間160時間+45時間=月205時間までは必ず合法」という計算にはなりません。
日ごと・週ごとの法定時間外労働や休日労働、会社が36協定で実際に定めた延長時間などを確認する必要があります。
また、法律上の限度が月45時間だからといって、会社の36協定で必ず45時間まで設定されているとは限りません。
会社が36協定で月30時間までと定めていれば、その協定の範囲で管理する必要があります。
対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制では、一般的な限度時間より短い 月42時間・年320時間 という基準が適用される点にも注意が必要です。
36協定の限度時間と特別条項については、 36協定の時間外労働の限度時間と特別条項 でも詳しく解説しています。
会社側では、36協定を提出したかどうかだけで終わらせず、毎月の実績が協定で定めた時間以内かを確認する仕組みが必要です。
従業員側でも、給与明細の残業時間だけでは分からない場合は、勤怠記録と勤務先の36協定を確認すると状況を整理しやすくなります。
特別条項でも月100時間未満

繁忙期や突発的な業務など、通常予見できない臨時的な特別の事情がある場合には、特別条項付き36協定を締結することで、原則となる月45時間を超える時間外労働を行わせることがあります。
ただし、 特別条項があっても上限がなくなるわけではありません。
一般的な上限規制が適用される事業・業務では、次の基準を同時に守る必要があります。
特別条項があっても超えられない主な上限
- 時間外労働は年720時間以内
- 時間外労働と休日労働の合計は単月100時間未満
- 時間外労働と休日労働の合計は2~6か月平均80時間以内
- 月45時間を超える時間外労働は年6か月まで
特に注意したいのが、「100時間以内」ではなく 100時間未満 という点です。
時間外労働と休日労働の合計が100時間に達してはいけません。
また、年720時間という上限と、月100時間未満という上限では対象となる時間の考え方が異なります。
年720時間は時間外労働についての上限であり、単月100時間未満と複数月平均80時間以内の判定では時間外労働に休日労働を加えて確認します。
「特別条項を出しているので月80時間くらいなら毎月残業させても大丈夫」という理解も適切ではありません。
月45時間を超えられる回数は年6か月までですし、特別条項は通常予見できない臨時的な特別の事情がある場合に使う仕組みです。
なお、建設事業、自動車運転の業務、医師など、一部の事業・業務では一般則と異なる特例があります。
自社が該当する場合には、一般的な100時間未満・80時間以内の数字だけで判断しないようにしてください。
時間外労働の上限規制については、 厚生労働省の時間外労働の上限規制 でも確認できます。
制度は業務区分などによって取扱いが異なるため、実際の運用では一次情報まで確認することが大切です。
複数月平均80時間以内のルール
特別条項を利用するときに見落とされやすいのが、 2か月から6か月までの複数月平均80時間以内 というルールです。
これは「6か月平均だけ80時間以内ならよい」という意味ではありません。
2か月平均、3か月平均、4か月平均、5か月平均、6か月平均のそれぞれについて、時間外労働と休日労働の合計が1か月当たり80時間以内になっているかを確認する必要があります。
たとえば、ある月の時間外・休日労働が90時間で、その前月が70時間であれば、2か月平均は80時間です。
ただし、それだけで適法性を判断できるわけではありません。
単月100時間未満、年720時間以内、月45時間超の回数など、ほかの上限も同時に確認します。
複数月平均は毎月スライドして確認します。
特別条項を使った月だけを抜き出して平均するのではなく、対象となる連続した期間について2か月、3か月、4か月、5か月、6か月の平均を確認することが重要です。
会社側では、勤怠システムで単月の残業時間だけ警告を出していると、この複数月平均を見落とすことがあります。
月末の締め処理では、当月だけではなく直前の数か月も含めて確認する運用にしておく必要があります。
また、100時間や80時間という数字は非常に長い時間外・休日労働です。
脳・心臓疾患の労災認定基準でも長時間労働との関連を評価する際に重要な水準が示されており、一般に過労死ラインと呼ばれることがあります。
80時間以内なら健康上安全という意味ではありません。
法律上の上限ぎりぎりまで働かせることを通常運用にするのではなく、疲労の蓄積、睡眠時間、本人からの申出、健康診断結果なども含めて早めに対応することが大切です。
従業員の方も、単月の残業時間だけでなく、「ここ数か月ずっと長時間労働が続いている」という場合には、勤怠記録を数か月分並べて確認してみてください。
継続して負荷が高い状態は、単月だけを見るより実態を把握しやすくなります。
変形労働時間制の月間上限

変形労働時間制を採用している場合は、通常の1日8時間・週40時間だけを機械的に当てはめることができません。
代表的なのが1か月単位の変形労働時間制です。
1か月単位の変形労働時間制では、1か月以内の一定期間を平均して1週間あたりの労働時間が法定労働時間以内になるように、あらかじめ各日・各週の労働時間を設定します。
週40時間の事業場で変形期間を1か月とする場合、総枠は次の計算式で求めます。
1か月単位の変形労働時間制の総枠
40時間×変形期間の暦日数÷7日
31日の月:約177.1時間
30日の月:約171.4時間
28日の月:160時間
ただし、総枠以内なら勤務表を自由に変更できるわけではありません。
変形労働時間制では、対象期間が始まる前に、どの日に何時間働くのかを適切に特定しておくことが重要です。
たとえば、あらかじめ10時間勤務と定めた日については、制度が適正に導入・運用されていれば8時間を超えたことだけを理由に直ちに法定時間外労働になるわけではありません。
一方、その日にあらかじめ定めた時間をさらに超えた場合や、週・対象期間の基準を超えた場合には時間外労働の判定が必要になります。
つまり、1か月単位の変形労働時間制でも、 月末に総労働時間だけを見て残業を判定するわけではありません。
日、週、対象期間の順番で確認する必要があります。
制度の具体的な導入方法と残業時間の判定については、 1か月単位の変形労働時間制と残業代の実務 で詳しく整理しています。
1年単位の変形労働時間制についても、対象期間を平均して週40時間以内にする考え方は共通していますが、1日10時間・1週52時間などの別の制限があります。
また、対象期間が3か月を超える場合には36協定の限度時間が原則月42時間・年320時間となる点にも注意が必要です。
変形労働時間制は、残業時間を自由に減らすための制度ではありません。
繁閑に合わせて事前に労働時間を配分する制度です。
シフト制だから自動的に変形労働時間制になるわけでもないため、会社側では就業規則、労使協定、年間・月間勤務表と実際の運用が一致しているかを確認しておきましょう。
1か月の労働時間の上限を確認する
最後に、あなた自身または自社の1か月の労働時間が適切に管理されているか、確認する順番を整理します。
最初に確認するのは、単純な月の合計時間ではありません。
どの労働時間制度が適用されているか です。
通常の労働時間制なのか、1か月単位・1年単位などの変形労働時間制なのかによって、時間外労働の判定方法が変わります。
- 就業規則や労働条件通知書で労働時間制度を確認する
- 会社の1日・1週の所定労働時間を確認する
- タイムカードや勤怠システムで実際の労働時間を確認する
- 法定時間外労働と休日労働を分けて集計する
- 36協定で会社が定めている延長時間を確認する
- 原則月45時間・年360時間の範囲を確認する
- 特別条項を使う場合は100時間未満・複数月平均80時間以内なども確認する
- 月60時間超の法定時間外労働があれば割増賃金率も確認する
通常の労働時間制であれば、「総労働時間-177.1時間」のような計算だけで正確な残業時間を求めることはできません。
日ごと、週ごと、法定休日の勤務を確認してください。
1か月単位の変形労働時間制であれば、月の暦日数から算出した総枠に加えて、あらかじめ定めた各日・各週の労働時間と実績を比較します。
1か月の労働時間を見るときは、3つの数字を分けると整理しやすくなります。
- 所定労働時間:会社が通常働く時間として定めたもの
- 法定労働時間:原則1日8時間・1週40時間という法律上の基準
- 時間外労働の上限:36協定による原則月45時間などの基準
月平均所定労働時間が160時間だから160時間が上限、31日の月だから177.1時間が一律の上限、36協定があるから月45時間まで必ず残業できる、といった理解はいずれも正確ではありません。
1か月の労働時間の上限は、一つの数字ではなく、労働時間制度と36協定を重ねて確認する と考えるのが分かりやすいです。
また、法定時間外労働が月60時間を超える部分については50%以上の割増賃金率が必要です。
中小企業についても2023年4月から適用されています。
深夜労働や休日労働が重なる場合には、別の割増率も関係します。
この記事で示した時間数や計算例は、一般的な制度を理解するための目安です。
実際の時間外労働の判定は、勤務日、始業・終業時刻、休憩、休日、就業規則、36協定、変形労働時間制の有無などによって変わります。
業種や業務によって上限規制の特例が適用される場合もあります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
厚生労働省の 時間外労働の上限規制に関する解説 など、最新の一次情報を確認することをおすすめします。
自分の勤務が上限を超えている可能性がある場合や、会社として労働時間制度・36協定・給与計算の整理が必要な場合は、個別事情によって判断が変わります。
最終的な判断は専門家にご相談ください。
従業員の方であれば、まず勤怠記録、給与明細、雇用契約書、就業規則を確認し、不明な点があれば会社の人事・労務担当者や労働組合などに確認するとよいでしょう。
解決が難しい場合には、労働基準監督署などの公的な相談窓口を利用する方法もあります。
会社側では、毎月の総労働時間だけを見るのではなく、法定時間外労働、休日労働、月45時間超の回数、複数月平均まで管理する仕組みを作っておくことが重要です。
労働時間は給与計算だけの問題ではなく、従業員の健康管理と会社の労務リスク管理の土台になります。