こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
労災保険の休業補償は、休業4日目から支給対象になりますが、実際にお金が振り込まれるまでには、請求からおおむね1か月程度かかることがあります。
そのため、労災がおりるまでの生活費は、受任者払い制度や有給休暇、公的な貸付制度などを組み合わせて確保する必要があります。
特に、労災かどうかの判断に時間がかかる事案では、審査が数か月以上に及ぶこともあります。
給付が決まってから考えるのではなく、給与が止まる可能性が分かった段階で、会社や健康保険の保険者、社会福祉協議会などへ早めに相談することが大切です。
労災の申請をしたからといって、翌月の給料日に代わる形で労災給付が入金されるわけではありません。
請求書を作成する時間、会社や医療機関に証明してもらう時間、労働基準監督署が調査する時間が必要です。
家賃や住宅ローン、食費、公共料金、社会保険料などはその間も発生しますので、給付の申請と生活費対策を同時に進める必要があります。
この記事では、休業補償給付が振り込まれるまでの流れと、収入が途切れる期間の生活費を確保する方法を、従業員の方を中心に、会社側の実務にも触れながら解説します。
- 休業補償給付が振り込まれる時期
- 休業中に受け取れる金額の目安
- 給付を待つ間の生活費を確保する方法
- 会社や公的機関へ相談するときの注意点

労災がおりるまでの生活費と支給時期
労災保険では、休業した日からすぐにお金が振り込まれるわけではありません。
支給対象となる日と、実際の振込日には時間差があります。
まずは、休業補償給付の要件、待期期間、金額の計算方法を整理しておきましょう。
生活費を考えるうえでは、「いつから支給対象になるのか」「いつ請求できるのか」「いつ振り込まれるのか」を分けて考えることが重要です。
この3つを混同すると、想定していた時期に入金されず、家計が急に苦しくなることがあります。
労災の休業補償はいつ振り込まれる
労災保険の休業補償給付または休業給付は、請求書を労働基準監督署へ提出し、内容の調査と審査を経て支給が決定されます。
業務中のけがであれば一般に休業補償給付、通勤中の災害であれば休業給付と呼ばれますが、いずれも書類を提出しただけで直ちに振り込まれるわけではありません。
厚生労働省の案内では、請求書を受理してから給付決定までの期間は、 おおむね1か月が一般的な目安 とされています。
ただし、これは書類に不備がなく、事故の状況や業務との関係が比較的明確なケースを想定した目安です。
事故の発生状況、負傷した場所、当日の勤務状況、医師の診断内容などについて追加確認が必要になれば、さらに時間がかかることがあります。
休業4日目から支給対象になることと、休業4日目に振り込まれることは別です。
休業4日目以降の分が支給対象になっても、実際の振込は請求書の提出と審査が終わった後になります。
申請から振込までの一般的な流れ
| 段階 | 主な対応 | 遅れやすいポイント |
|---|---|---|
| 休業開始 | 医療機関を受診し会社へ報告 | 業務災害であることが医療機関に伝わっていない |
| 請求書作成 | 本人、会社、医療機関が必要事項を記載 | 会社や医師の証明に時間がかかる |
| 監督署へ提出 | 管轄の労働基準監督署へ請求 | 記載漏れや添付書類不足がある |
| 調査・審査 | 事故状況や業務起因性を確認 | 関係者への聴取や資料確認が必要になる |
| 支給決定 | 通知後に指定口座へ振込 | 金融機関の営業日などで入金日が前後する |
会社から労働基準監督署へ自動的に申請されるとは限りません。
原則として、被災した労働者本人が請求人となり、会社や医療機関に必要事項を記載してもらったうえで請求します。
実務上は会社の担当者が書類作成や提出を手伝うことも多いのですが、「会社に報告したこと」と「労災保険の請求が完了したこと」は別です。
私が実務で確認するときも、まず請求書が現在どこにあるのかを整理します。
本人が持っているのか、会社の人事担当者が持っているのか、医療機関へ証明を依頼している途中なのか、すでに労働基準監督署へ提出済みなのかによって、取るべき対応が変わるためです。
会社の証明が遅れている、医師の証明に時間がかかっている、請求書に記載漏れがあるといった場合には、提出自体が遅れてしまいます。
実際によくあるのは、本人が会社へ書類を渡したことで申請が完了したと思い、労働基準監督署にはまだ提出されていなかったというケースです。
会社へ確認するときは、単に「労災はどうなっていますか」と聞くよりも、次のように具体的に確認すると状況を把握しやすくなります。
- 休業補償給付支給請求書は作成済みか
- 医療機関の証明は完了しているか
- 労働基準監督署へ提出した日はいつか
- 提出先の労働基準監督署はどこか
- 追加資料の提出を求められていないか
休業が長期化する場合は、数か月分をまとめて1回だけ請求するのではなく、1か月単位などで継続的に請求する方法が一般的です。
最初の請求については事故状況の調査などで時間を要しても、2回目以降は比較的スムーズに進む場合があります。
ただし、毎回医師や会社の証明が必要になることがあるため、給与の締切日や医療機関の事務処理期間も踏まえて早めに準備しましょう。
申請後は、労働基準監督署から届く支給決定通知や支払振込通知を確認します。
提出から相当期間が経過しても連絡がない場合は、請求書を提出した労働基準監督署へ受付状況を確認してよいでしょう。
ただし、審査内容や支給見込みについて、電話で確定的な回答を受けられるとは限りません。
休業補償給付の支給内容や計算方法については、厚生労働省の案内でも確認できます。
制度改正や個別の取扱いもあるため、最新の情報は公表資料を確認してください。
(出典:厚生労働省「休業(補償)等給付の計算方法を教えてください」)
休業補償給付の支給要件

休業補償給付または休業給付を受けるためには、原則として次の3つの要件をすべて満たす必要があります。
- 業務上または通勤による負傷や疾病の療養中であること
- その療養のため労働することができないこと
- 休業した日について賃金を受けていないこと
この3要件は、生活費の見通しを立てるうえで非常に重要です。
労災として治療を受けていても、休業したすべての日が自動的に給付対象になるわけではありません。
療養のため働けず、かつ賃金を受けていない日について、原則として休業4日目以降が支給対象になります。
療養中であること
最初の要件は、業務上または通勤による負傷や疾病について療養していることです。
ここでいう療養には、入院や手術だけでなく、自宅療養、定期的な通院、リハビリなども含まれる可能性があります。
ただし、治療が終了して症状固定と判断された後は、休業補償給付ではなく障害補償給付など別の給付が問題になることがあります。
本人としてはまだ痛みが残っていても、医学的に治療効果が期待できない状態と判断されれば、給付の種類が変わる可能性があります。
療養のため労働できないこと
単に会社を休んでいるだけでは足りず、 労災による傷病の療養のために働けない状態であること が必要です。
労働できないかどうかは、本人の判断だけでなく、医師の証明や仕事内容などを踏まえて確認されます。
例えば、足を負傷した場合でも、立ち仕事や運搬作業が中心の人と、座って行う事務作業が中心の人では、就労できるかどうかの判断が異なることがあります。
また、元の仕事はできなくても、短時間勤務や軽い作業であれば働ける場合には、全部休業ではなく一部休業として扱われる可能性があります。
会社から「デスクワークならできるのではないか」と言われた場合でも、医師の指示を無視して無理に働く必要はありません。
一方で、医師が就労可能としているにもかかわらず、本人の都合だけで休んでいる場合は、給付対象にならない可能性があります。
仕事内容を具体的に医師へ伝え、就労可否を確認することが大切です。
賃金を受けていないこと
休業した日に会社から通常の賃金が支払われている場合、その日は原則として休業補償給付の対象になりません。
会社から一部の賃金が支払われた場合には、支払額に応じて給付が調整されることがあります。
ここで注意したいのは、給与明細に何らかの金額が記載されていれば直ちに給付対象外になるわけではないという点です。
通勤手当、家族手当、住宅手当など、休業中も支払われる手当がある場合には、その性質や金額を踏まえて個別に判断されます。
有給休暇を取得した日は、原則として賃金が支払われる日です。
そのため、同じ日について有給休暇の賃金と休業補償給付の両方をそのまま受け取ることはできません。
有給休暇を使うかどうかは、当面の生活費だけでなく、残日数や今後の療養期間も踏まえて判断する必要があります。
会社が独自に見舞金や休業中の補助金を支払う場合もあります。
このような支払いが賃金に当たるか、労災給付との調整対象になるかは、名称だけでなく支給目的や規程、実際の運用によって判断されます。
「見舞金という名前だから調整されない」とは限りません。
一部だけ勤務した日も注意が必要です。
午前中だけ働き、午後から通院や療養のため休んだ場合などは、支払われた賃金を考慮したうえで、一部休業として給付額が計算される可能性があります。
勤怠記録と給与計算を一致させることが会社側の重要な実務になります。
申請前に確認しておきたい資料
- 出勤簿やタイムカード
- 給与明細
- 年次有給休暇の取得記録
- 医師が証明した休業期間
- 会社から支払われた見舞金や補助金の内容
医師が証明した休業期間と、会社の勤怠上の欠勤期間が一致していないケースも実際にはあります。
例えば、医師は1か月の休業を指示しているのに、会社の勤怠では途中から有給休暇になっている場合などです。
請求書を作成する際は、医師の証明、勤怠、賃金支払いの3つを照合しましょう。
労災と健康保険の給付関係については、 労災と傷病手当金の支給額や返還の考え方 でも詳しく解説しています。
待期期間3日間の補償
労災保険の休業補償給付または休業給付は、原則として休業4日目から支給されます。
最初の3日間は待期期間となり、労災保険から休業に関する給付は行われません。
検索している方が特に迷いやすいのが、「最初の3日間は完全に無収入になるのか」という点です。
業務災害と通勤災害では、会社に課される補償義務が異なるため、分けて考える必要があります。
業務災害の待期期間
仕事中の事故などによる業務災害の場合、待期期間の最初の3日間については、労働基準法に基づき、会社が平均賃金の60%以上の休業補償を行う必要があります。
つまり、業務災害では、最初の3日間を労災保険ではなく会社が補償する仕組みです。
会社の給与計算担当者がこの取扱いを十分に把握しておらず、通常の欠勤控除だけを行ってしまうケースもあります。
特に労災事故がほとんど発生しない中小企業では、実務上迷いやすいポイントです。
待期期間の補償額は、通常の給与の60%という意味ではなく、原則として労働基準法上の平均賃金の60%以上です。
月給額を単純に30日で割った金額と一致しないこともあります。
通勤災害の待期期間
通勤途中の事故による通勤災害については、業務災害とは異なり、会社に労働基準法上の休業補償義務はありません。
そのため、待期期間の3日間について賃金や会社独自の補償がなければ、無収入になる可能性があります。
ただし、会社の就業規則、慶弔見舞金規程、福利厚生制度などに独自の支援が定められている場合は別です。
通勤災害だから何も支払われないと決めつけず、人事担当者へ社内制度を確認してみるとよいでしょう。
待期期間の数え方
待期期間は「暦の上で事故日から3日が経過すればよい」という単純なものではなく、療養のため労働できず、賃金を受けていない休業日を数えることが基本です。
業務災害の待期期間は、3日間が連続していなくても通算されます。
例えば、事故当日は途中まで勤務し、翌日休み、いったん出勤した後に再び療養のため休んだ場合などは、具体的な勤務状況や賃金の支払いを確認して数える必要があります。
また、会社の所定休日であっても、療養のため働けない状態が続いており、賃金を受けていないなどの要件を満たす場合には、待期期間や支給対象日数に含まれる可能性があります。
「出勤予定日だけが労災給付の対象になる」とは限りません。
| 災害の種類 | 休業初日から3日目 | 休業4日目以降 |
|---|---|---|
| 業務災害 | 会社が平均賃金の60%以上を補償 | 労災保険から休業補償給付等 |
| 通勤災害 | 会社の法定補償義務はなし | 労災保険から休業給付等 |
通勤災害では、会社に待期期間3日分の休業補償義務がない 点に注意してください。
会社の就業規則や独自制度により支払いが行われる可能性はありますが、法律上当然に支払われるものではありません。
待期期間に年次有給休暇を使うことも考えられます。
有給休暇を取得すれば賃金を受け取れますが、本人の有給休暇残日数を消化します。
業務災害の場合は会社に休業補償義務があるため、最初から有給休暇として処理する前に、会社へ休業補償の取扱いを確認することが大切です。
会社側は、事故日、休業開始日、所定休日、有給休暇取得日、賃金支払日を整理したうえで待期期間を判断する必要があります。
単に給与計算ソフト上で欠勤日数を数えるだけでは、誤った処理につながることがあります。
待期期間について会社へ確認する内容
- 業務災害と通勤災害のどちらで処理されているか
- 待期期間として数えた日はいつか
- 業務災害の場合に会社補償が支払われるか
- 有給休暇として処理された日があるか
- 給与明細上の欠勤控除と補償額がどう計算されたか
業務災害であるにもかかわらず、待期期間について何の補償も行われていない場合は、まず会社の担当者へ確認しましょう。
会社側も、欠勤控除の処理だけで終わらせず、業務災害に該当する場合の法定補償を確認する必要があります。
休業補償給付の計算方法

休業4日目以降は、原則として、休業1日につき給付基礎日額の60%に相当する休業補償給付または休業給付が支給されます。
さらに、給付基礎日額の20%に相当する休業特別支給金が加わります。
休業1日あたりの給付額の目安
休業補償給付等:給付基礎日額の60%
休業特別支給金:給付基礎日額の20%
合計:給付基礎日額の80%相当
「給料の80%がそのまま支給される」と説明されることがありますが、厳密には、毎月の手取り額や基本給の80%ではありません。
給付基礎日額を基準に計算した80%相当 です。
この違いを理解していないと、実際の入金額が想定より少ないと感じることがあります。
給付基礎日額の基本
給付基礎日額は、原則として労働基準法上の平均賃金に相当する額です。
一般的には、事故が発生した日以前3か月間に支払われた賃金総額を、その期間の暦日数で割って計算します。
賃金締切日が定められている会社では、事故発生日の直前の賃金締切日からさかのぼった3か月間を使うことがあります。
基本給だけでなく、残業代、通勤手当、役職手当など、労働の対価として支払われた賃金が計算に含まれることがあります。
一方で、臨時に支払われた賃金や、賞与など3か月を超える期間ごとに支払われる賃金は、原則として平均賃金の算定基礎に含まれません。
そのため、賞与を含めた年収の80%が補償されるわけではありません。
具体的な計算例
例えば、給付基礎日額が1万円で、支給対象となる休業日数が30日ある場合、単純計算では次のようになります。
| 給付の種類 | 計算例 | 金額 |
|---|---|---|
| 休業補償給付等 | 1万円×60%×30日 | 18万円 |
| 休業特別支給金 | 1万円×20%×30日 | 6万円 |
| 合計 | 1万円×80%×30日 | 24万円 |
この例では30日分で24万円ですが、最初の3日間は待期期間です。
事故後最初の休業期間について計算するときは、待期期間を除いた支給対象日数で計算する必要があります。
業務災害であれば、待期期間の3日分について会社から平均賃金の60%以上の休業補償が行われます。
例えば、合計33日間休業し、そのすべての日について療養のため働けず、賃金を受けていなかった場合には、最初の3日間を除く30日間が労災保険の支給対象になるという考え方です。
所定休日も対象になる場合がある
休業補償給付等は、会社の出勤日だけを対象に計算するとは限りません。
土曜日、日曜日、祝日などの所定休日であっても、療養のため働けない状態が続き、賃金を受けていないなどの要件を満たせば、支給対象日数に含まれる可能性があります。
月給制の人の場合、「休日分はすでに月給に含まれているのではないか」と疑問に感じるかもしれません。
実際の支給対象日数は、欠勤控除の方法や賃金支払いの状況を踏まえて判断されますので、給与明細と会社の証明内容を確認する必要があります。
一部だけ勤務した場合
短時間勤務や軽作業で一部だけ働いた日は、その日の給付基礎日額から実際に支払われた賃金を差し引いた額を基に給付が計算される場合があります。
復職訓練として短時間勤務を始めるときは、労災給付が直ちに全額停止するとは限りません。
ただし、会社の勤怠記録、賃金計算、医師の就業上の指示が一致していることが重要です。
本人、会社、医療機関の認識がばらばらなまま部分復職を始めると、請求書の作成時に確認事項が増えることがあります。
計算例はあくまで一般的な目安です。
賃金の集計期間、休業日数、会社から支払われた賃金、最低保障額、年齢階層別の限度額、複数の勤務先から受ける賃金などにより、実際の支給額が異なる場合があります。
給付額と実際の生活費は分けて考える
一般的に労災保険の休業補償給付等は非課税ですが、社会保険料や住民税の支払いが自動的になくなるわけではありません。
健康保険料と厚生年金保険料は、休業して給与がなくても被保険者資格が続く限り、原則として発生します。
会社が本人負担分の社会保険料を一時的に立て替え、後日まとめて徴収することもあります。
労災給付として24万円が振り込まれても、その中から社会保険料や住民税の精算が必要になる場合があります。
住民税を給与から控除できなくなった場合は、普通徴収へ切り替わり、自宅へ納付書が届くこともあります。
労災給付の見込額だけで家計を組むのではなく、休業中に会社へ支払う費用や、自分で納付する税金も確認してください。
生活費を試算するときの計算イメージ
労災給付の見込額-社会保険料-住民税-医療機関への立替費用-毎月の固定費=実際に生活費へ回せる金額
給与の手取り額と労災給付の入金額には差が出るのが通常です。
給付基礎日額の正確な計算や賃金との調整については、会社の給与担当者や管轄の労働基準監督署へ確認してください。
労災認定が長引くケース
事故の状況と業務との関係が明確で、必要書類も整っている場合は、比較的早く支給が決定されることがあります。
一方で、業務と傷病との因果関係について詳しい調査が必要な事案では、支給決定まで長期間かかることがあります。
審査が長引くかどうかは、けがの重さだけで決まるものではありません。
重傷であっても事故状況が明確なら比較的判断しやすい場合があります。
一方、外見上は軽い症状でも、仕事が原因かどうかを判断する資料が乏しければ時間がかかることがあります。
事故状況の確認に時間がかかるケース
- 会社と本人の説明が一致していない
- 事故を目撃した人がおらず発生状況の確認が難しい
- 事故発生から会社への報告まで時間が空いている
- 防犯カメラや作業記録などの客観的資料がない
- 事故前から同じ部位に持病や症状があった
- 会社が事業主証明を行わない
例えば、腰痛は業務中に突然発症することもありますが、私生活上の原因や既往症との区別が必要になる場合があります。
重量物を持った時刻、姿勢、作業内容、周囲の状況などが具体的に確認されることがあります。
事故直後に会社へ報告せず、数日後に症状が悪化してから受診したケースでは、負傷と業務との関係を説明するための資料が必要になることがあります。
労災が発生した場合は、可能な範囲で速やかに会社へ報告し、発生日時や状況を記録しておくことが重要です。
精神疾患や脳・心臓疾患
精神疾患、過労死、過労自殺、脳・心臓疾患などの事案では、発症直前だけでなく、一定期間の労働時間、業務上の出来事、仕事内容、職場の人間関係、治療歴などを広く調査する必要があります。
会社のタイムカードだけでなく、パソコンのログ、メールの送信時刻、入退館記録、業務日報、出張記録などから実際の労働時間を確認することもあります。
会社が把握している労働時間と、本人が主張する労働時間が異なる場合は、資料の精査に時間を要します。
精神疾患では、職場での出来事だけでなく、私生活上の負担や既往歴なども含めて総合的に判断される場合があります。
そのため、審査が半年から1年程度、またはそれ以上に及ぶ可能性も否定できません。
会社が労災を認めないケース
会社が「本人の不注意だから労災ではない」「会社の敷地外だから関係ない」と説明することがあります。
しかし、本人に不注意があったというだけで、直ちに労災保険の対象外になるわけではありません。
また、会社が労災ではないと主張している場合でも、労災に該当するかどうかを最終的に判断するのは会社ではなく労働基準監督署です。
会社の事業主証明を受けられない場合でも、請求書を提出できる可能性があります。
会社の証明がない場合は、証明を受けられない事情を説明し、労働基準監督署へ相談します。
会社との対立を避けるために申請自体を諦める必要はありませんが、事故状況を示す資料や医療記録を整理しておくことが大切です。
審査が長引いても、認定前に労災保険から生活費だけを先払いしてもらう制度は、原則としてありません。
長期化が見込まれる場合は、会社の受任者払い、公的貸付、家計の見直しなどを早い段階から並行して検討することが重要です。
長期化に備えて残しておきたい資料
- 事故発生日時と状況を記録したメモ
- 事故現場や負傷箇所の写真
- 目撃者や同僚とのやり取り
- 会社へ報告したメールやメッセージ
- タイムカードや業務日報
- 医療機関の診断書や領収書
- 給与明細と休業中の勤怠記録
療養中は体調の回復が最優先ですが、時間が経過すると事故当時の記憶や資料が失われることがあります。
家族や会社の担当者に協力してもらい、無理のない範囲で資料をまとめておくとよいでしょう。
生活費対策は認定結果を待ってからでは遅い場合があります。
審査が長引く可能性を指摘されたときは、手元資金、毎月の固定費、会社からの立替えの可否、公的貸付の利用可能性を同時に確認してください。
労災認定の見通しを個人で正確に判断することは難しいものです。
特に精神疾患や脳・心臓疾患、会社が労災を否定している事案では、労働基準監督署や専門家へ早めに相談することをおすすめします。
労災がおりるまで生活費を確保する方法
休業補償給付の振込を待っている間も、家賃や住宅ローン、食費、公共料金、社会保険料などの支払いは続きます。
ここからは、当面の生活費を確保するために検討できる方法を、実務上の注意点とともに解説します。
どの方法が利用できるかは、会社の対応、健康保険の加入先、世帯収入、保有資産などによって異なります。
一つの制度だけに頼るのではなく、利用できる手段を優先順位をつけて確認することが現実的です。
受任者払い制度を会社に相談する
受任者払い制度は、会社が休業補償給付と休業特別支給金に相当する額を従業員へ先に支払い、後日、労災保険から支給される給付を会社が受け取る仕組みです。
通常の労災給付では、被災した従業員本人の口座へ給付金が振り込まれます。
受任者払いでは、従業員が会社へ受領を委任し、会社が先に立て替えた金額について、後日会社の口座で給付を受ける形になります。
会社が給付金を無利息で立て替える形になるため、従業員は労働基準監督署の支給決定を待たずに、生活費を確保しやすくなります。
長期間給与が止まる従業員にとっては、非常に有効な方法です。
受任者払いのメリット
- 労災給付の振込を待たずに生活資金を受け取りやすい
- 消費者金融などから借りる場合と異なり、通常は利息が発生しない
- 会社が請求手続きを支援するため、書類の進捗を確認しやすい
- 社会保険料や住民税の精算方法を会社と調整しやすい
特に、毎月一定額を会社が立て替える運用ができれば、従業員は家計の見通しを立てやすくなります。
給付金がいつ入るか分からない状態よりも、会社から支払われる予定日が分かるだけで生活上の不安は大きく軽減されます。
一般的に必要になる書類
一般的には、休業補償給付支給請求書のほか、受任者払いに関する届出書や、従業員から会社への委任状などを提出します。
業務災害と通勤災害では使用する請求書の様式が異なります。
- 業務災害の休業補償給付支給請求書
- 通勤災害の休業給付支給請求書
- 受任者払いに関する届出書
- 従業員から会社への委任状
- 会社が従業員へ立替払いしたことを確認できる資料
必要書類や記載方法は、管轄の労働基準監督署の取扱いにより確認が必要になる場合があります。
会社が初めて利用する場合は、書類を作成する前に労働基準監督署へ相談しておくとスムーズです。
会社へ相談するときの確認事項
- 過去に受任者払いを利用した実績があるか
- 立替払いの対象となる期間と金額
- 必要な委任状や社内申請書
- 労災が不支給になった場合の精算方法
- 社会保険料や住民税との相殺方法
- 毎月の支払日をいつにするか
会社の協力が必要
ただし、受任者払い制度を利用するには、 会社の協力が前提 です。
会社に制度の利用実績がない、資金繰りの都合で立て替えが難しい、社内規程が整っていないなどの理由で、対応してもらえないこともあります。
受任者払いは、会社に対して一律に立替えを義務づける制度ではありません。
従業員が希望しても、会社が必ず対応しなければならないとは限らない点に注意が必要です。
相談するときは、「生活が苦しいから給料を出してほしい」とだけ伝えるよりも、「労災の受任者払い制度を利用できないか」「休業補償給付相当額を会社に立て替えてもらい、後日会社が受領する方法を検討できないか」と具体的に説明すると話が通じやすくなります。
不支給の場合の返還問題
会社側として特に確認が必要なのは、労災が不支給になった場合の精算方法です。
会社が給付相当額を従業員へ立て替えたものの、最終的に労災保険から支給されなければ、会社は立替額を回収できません。
この場合に従業員へ返還を求めるのか、会社独自の見舞金として扱うのか、給与や退職金から控除できるのかを事前に整理しておく必要があります。
給与から一方的に控除できるとは限らないため、返還条件を曖昧にしないことが大切です。
立替額、支払日、不支給時の返還方法は書面で確認しましょう。
従業員と会社の認識が異なると、労災給付が支給された後や退職時にトラブルになる可能性があります。
会社側としても、立替額、対象期間、労災が不支給になった場合の返還方法などを曖昧にしたまま支払うと、後からトラブルになりかねません。
立替払いを行う場合は、委任関係と精算条件を書面で明確にすることが大切です。
会社から受任者払いを断られた場合は、その交渉だけに時間をかけず、有給休暇、健康保険への相談、生活福祉資金などの代替手段も並行して確認してください。
傷病手当金の一時利用を確認する

健康保険の傷病手当金は、原則として、業務外の病気やけがにより仕事を休んだ場合の制度です。
そのため、業務災害や通勤災害として労災保険の対象になる傷病は、原則として傷病手当金の対象ではありません。
労災保険と健康保険は、本人が自由に有利な方を選べる制度ではありません。
仕事や通勤が原因の傷病については労災保険、私生活上の病気やけがについては健康保険を使うのが基本です。
労災申請中の取扱い
労災に該当するかどうかの審査が長引いている場合には、加入している健康保険の保険者へ相談することで、傷病手当金の申請について案内を受けられることがあります。
ただし、労災認定待ちであることを隠して、通常の私傷病として傷病手当金を申請してはいけません。
申請書や保険者への相談時には、業務または通勤が原因である可能性があり、労災申請をしていることを正確に伝える必要があります。
保険者によっては、労災の決定通知、事故状況を確認する書類、後日精算することへの同意書などを求める場合があります。
具体的な対応は一律ではないため、加入先への個別確認が欠かせません。
労災申請中であれば必ず傷病手当金を先に受け取れる、という制度ではありません。
保険者によって必要書類や取扱いが異なる場合があるため、協会けんぽの都道府県支部や加入している健康保険組合へ、労災申請中であることを伝えたうえで確認してください。
労災が認定された場合
同じ傷病、同じ休業期間について労災の休業補償給付等が支給された場合、傷病手当金とそのまま二重に受け取ることはできません。
先に傷病手当金を受け取っていれば、返還や給付間の調整が必要になる可能性があります。
返還が必要になったときに、受け取った傷病手当金を生活費としてすべて使ってしまっていると、まとまった返還資金を用意できないことがあります。
労災認定待ちの間に傷病手当金が支給された場合は、後日の精算可能性を考えて、支給額や対象期間の記録を残しておきましょう。
労災が不支給になった場合
労災が不支給となった場合でも、業務外の傷病として傷病手当金の支給要件を満たしていれば、傷病手当金の対象になる可能性があります。
ただし、労災が不支給になったから自動的に傷病手当金が支給されるわけではありません。
傷病手当金には、業務外の傷病で療養していること、仕事に就けないこと、連続する3日間の待期を含め4日以上休んでいること、給与の支払いがないことなどの要件があります。
健康保険の加入状況や退職の時期によっても取扱いが変わります。
傷病手当金の金額
傷病手当金の日額は、原則として、支給開始日以前12か月間の標準報酬月額の平均額を30で割り、その3分の2を掛けて計算します。
傷病手当金の日額の基本式
支給開始日前12か月間の標準報酬月額の平均額÷30×3分の2
労災の休業補償給付等は給付基礎日額を基準に計算しますが、傷病手当金は標準報酬月額を基準にします。
計算の基礎が異なるため、「労災は80%、傷病手当金は約67%だから、必ず労災の方がこの差額だけ高い」と単純には比較できません。
また、傷病手当金は健康保険上の給付であり、労災保険の休業特別支給金に相当する仕組みはありません。
支給期間の考え方や退職後の継続給付なども労災保険とは異なります。
健康保険へ相談するときに伝える内容
- 事故または発症した日
- 業務中または通勤中の傷病である可能性
- 労災請求を提出した日
- 現在の審査状況
- 給与が支払われていない期間
- 生活費に困っていること
健康保険への切り替えや給付調整については、 労災から健康保険へ切り替える際の手続きと注意点 も参考にしてください。
傷病手当金は本来業務外の傷病を対象とする制度ですので、労災認定待ちの生活費対策として利用できるかどうかは、必ず加入先へ確認してください。
会社の担当者だけで判断せず、保険者から直接案内を受けることが大切です。
有給休暇を使って収入を確保する
年次有給休暇が残っている場合は、労災の申請や認定を待つ期間に有給休暇を取得し、賃金を受け取る方法があります。
申請が認められれば、通常の賃金が支払われるため、当面の生活費を確保する方法としては分かりやすい選択肢です。
労災給付の支給決定を待つ必要がなく、通常の給与支払日に賃金を受け取れることが、有給休暇を利用する大きな利点です。
家賃やクレジットカードの支払日が迫っている場合など、短期的な資金不足を避ける方法として役立つことがあります。
有給休暇を使った日は労災給付の対象外
有給休暇を取得した日は賃金が支払われるため、原則として、その日について休業補償給付等は支給されません。
同じ日に有給休暇の賃金と労災の休業補償給付等を重複して受け取ることはできないという考え方です。
例えば、有給休暇を10日間取得し、その後も療養のため休業が続いた場合、有給休暇を取得した10日間は賃金を受け取り、それ以降の賃金が支払われない休業日について労災給付を請求する形が考えられます。
最初の10日間に有給休暇を使ったからといって、その後の労災請求ができなくなるわけではありません。
ただし、待期期間の数え方や賃金の支払い状況について確認が必要になるため、有給休暇を使用した日を正確に記録しましょう。
業務災害の待期期間に使うか
業務災害の最初の3日間は、会社に平均賃金の60%以上の休業補償義務があります。
そのため、会社から「最初の3日は有給休暇にしてください」と案内された場合には、法定の休業補償がどう扱われるのかを確認する必要があります。
有給休暇を使えば通常は賃金の全額または会社の定める有給休暇中の賃金が支払われるため、会社の休業補償より受取額が多くなる可能性があります。
一方で、有給休暇残日数を3日分消費します。
どちらが有利かは、療養期間、有給休暇の残日数、会社の給与規程などによって異なります。
単に目先の金額だけでなく、復職後の通院や体調不良に備えて有給休暇を残す必要性も考えましょう。
有給休暇を使うか判断するときのポイント
- 現在の有給休暇の残日数
- 療養が長期化する可能性
- 会社の賃金締切日と支払日
- 待期期間3日分の会社補償の有無
- 受任者払いを利用できる可能性
- 復職後の通院予定
有給休暇をすべて使い切るリスク
有給休暇は日数に限りがあります。
給付決定まで長期間かかる可能性がある場合、初めにすべて使い切ると、復職後に通院や体調不良で休む際の有給休暇が残らなくなることもあります。
また、労災の療養が終わった後に別の病気やけがで休む可能性もあります。
家計に余裕がなく、今すぐ給与を受け取る必要がある場合は有給休暇の利用が有効ですが、将来の休みに備えて一部を残す選択肢もあります。
例えば、有給休暇が20日残っている場合に、最初の5日だけ使い、その間に受任者払い制度や生活福祉資金の相談を進める方法も考えられます。
すべてを一度に使うか、必要な日数だけ使うかを会社と相談してください。
会社が一方的に有給休暇扱いにしていないか
年次有給休暇は、原則として労働者の請求に基づいて取得するものです。
会社が本人の意思を確認せず、休業日を一方的に有給休暇へ振り替えることには問題が生じる可能性があります。
給与が支払われていたため本人が有給休暇扱いだと気付かず、後から有給休暇残日数が減っていることが分かるケースもあります。
休業中であっても、給与明細、勤怠記録、有給休暇残日数を確認しましょう。
有給休暇を使う前に、会社へ書面やメールで処理方法を確認してください。
欠勤、年次有給休暇、会社による待期期間の休業補償、独自の特別休暇は、それぞれ賃金と労災給付の取扱いが異なります。
有給休暇中に申請手続きを進める
有給休暇を取得している間も、労災の申請準備は進められます。
有給休暇が終わって無給になってから請求書を準備し始めると、その分だけ入金が遅れる可能性があります。
有給休暇中に、会社の証明、医師の証明、振込先口座、平均賃金の算定資料などを整えておきましょう。
無給期間に入った後、一定期間ごとに請求できるよう会社と提出スケジュールを決めておくと安心です。
有給休暇を使う場合の実務的な進め方
- 残日数と有給休暇中の賃金額を確認する
- 何日分を使うか会社へ申請する
- 同時に労災請求書の作成を始める
- 無給となる予定日を把握する
- 無給期間分をいつ請求するか決める
有給休暇は便利な方法ですが、あくまで一時的な生活費対策です。
療養が長引く見込みがある場合は、有給休暇だけで乗り切ろうとせず、受任者払い制度や公的貸付も併せて検討してください。
生活福祉資金貸付制度を利用する
収入が減少し、日常生活を維持することが難しい場合は、生活福祉資金貸付制度を利用できる可能性があります。
都道府県社会福祉協議会が実施し、相談や申込みは、原則として居住地の市区町村社会福祉協議会で受け付けます。
労災専用の制度ではありませんが、けがや病気による収入減少で生活に困窮し、一定の世帯要件を満たす場合には、生活再建までの資金として利用できる可能性があります。
総合支援資金の主な内容
総合支援資金には、生活再建までの生活費に充てる生活支援費のほか、住宅入居費や一時生活再建費があります。
| 資金の種類 | 一般的な貸付上限の目安 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 生活支援費 | 単身月15万円以内、複数人月20万円以内 | 生活再建までに必要な生活費 |
| 住宅入居費 | 40万円以内 | 敷金や礼金などの入居費用 |
| 一時生活再建費 | 60万円以内 | 公共料金の立替えなど一時的な費用 |
生活支援費の貸付期間は原則3か月とされ、一定の要件を満たす場合には最長12か月まで延長が認められることがあります。
保証人がいる場合は無利子、保証人がいない場合は年1.5%の利息が発生する取扱いが基本とされています。
ただし、貸付上限まで必ず借りられるわけではありません。
世帯の収入、必要となる生活費、他の給付や貸付の利用状況などを踏まえて、実際の貸付額が決まります。
対象となる世帯
生活福祉資金貸付制度は、一般的な銀行融資とは異なり、低所得世帯、障害者世帯、高齢者世帯などを対象とする公的貸付制度です。
労災で一時的に収入が減ったという事情だけで、必ず対象になるとは限りません。
世帯単位で審査されるため、本人の収入がなくても、同居家族に十分な収入がある場合には利用が難しいことがあります。
一方で、家族の収入だけでは家賃や生活費を維持できない場合は、具体的な家計状況を説明することで相談対象になる可能性があります。
預貯金や保有資産、住宅ローン、他の借入れ、毎月の支出などについて確認されることもあります。
単に「労災の振込が遅い」と説明するだけでなく、現在の家計状況と今後の収入見込みを整理して相談しましょう。
申込みから貸付まで即日ではない
生活福祉資金は公的な貸付制度ですが、相談した当日に現金を受け取れる制度ではありません。
相談、必要書類の提出、家計状況の確認、審査などに一定の時間が必要です。
手元資金が完全になくなってから相談すると、貸付までの生活費が不足する可能性があります。
給与が止まることが分かった段階や、労災認定が長期化しそうだと分かった段階で早めに相談してください。
相談時に準備するとよいもの
- 本人確認書類
- 世帯全員の収入が分かる資料
- 預金通帳
- 家賃や住宅ローンの金額が分かる資料
- 労災請求中であることが分かる書類
- 休業前後の給与明細
- 毎月の支出をまとめた家計表
貸付であることに注意
生活福祉資金は給付金ではなく貸付金です。
一定の据置期間後に返済が必要になります。
労災給付が支給された後、その一部を返済資金として確保する必要が生じる可能性があります。
借りられる上限額ではなく、生活再建までに本当に必要な金額を考えることが大切です。
家計の赤字額が月5万円であれば、月15万円を借りられる可能性があっても、必要以上に借りないという判断もあります。
貸付上限額、利率、返済期間、必要書類は制度改正や地域の運用により変わる可能性があります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
申込みを検討する場合は、居住地の社会福祉協議会へ早めに相談してください。
生活福祉資金貸付制度の貸付条件は、厚生労働省が公表している一覧でも確認できます。
なお、生活福祉資金だけでなく、自治体の自立相談支援窓口で家計改善支援を受けられる場合もあります。
借入れだけで解決しようとせず、公共料金の支払猶予、住居確保に関する支援、他の公的制度をまとめて相談するとよいでしょう。
労働金庫のつなぎ融資を検討する

地域の労働金庫では、勤労者の生活を支援するため、生活資金や収入減少時の資金に利用できる融資商品を取り扱っている場合があります。
労災保険専用のつなぎ融資が全国一律に用意されているわけではありませんが、生活応援ローン、福祉ローン、フリーローンなどの対象になる可能性があります。
利用できる商品や条件は、地域の労働金庫、勤務先、労働組合への加入状況などによって異なります。
利用できる可能性がある人
労働金庫の融資は、労働組合の組合員だけを対象とするものばかりではありません。
生協組合員や地域の勤労者が利用できる商品もあります。
ただし、利用者区分によって金利、限度額、保証条件などが異なることがあります。
勤務先が労働金庫と提携している場合には、一般のフリーローンより有利な条件で利用できることもあります。
会社の福利厚生担当者や労働組合へ、提携ローンや生活資金融資がないか確認してみましょう。
融資を受ける際の確認事項
- 借入限度額
- 適用される金利
- 固定金利か変動金利か
- 保証料や事務手数料
- 審査から融資までの期間
- 毎月の返済額と返済期間
- 繰上返済の手数料
- 休業中の収入で審査を受けられるか
生活資金融資の金利や限度額は、労働金庫や商品、利用者の属性により異なります。
低金利の商品がある一方で、審査があり、希望すれば必ず借りられるものではありません。
労災給付が支給される予定であっても、支給決定前は収入として確定していないと判断される場合があります。
審査では、休業前の収入、勤続年数、現在の借入れ、返済能力などが確認されることがあります。
借入額は必要最小限にする
労災給付が後からまとまって入ると考え、数か月分の生活費を多めに借りたくなるかもしれません。
しかし、認定が遅れたり、支給対象期間が想定より短くなったり、不支給になったりする可能性もあります。
まずは、家賃、食費、電気・ガス・水道、通信費、社会保険料など、最低限必要な支出を計算してください。
そのうえで、手元資金、家族の収入、有給休暇の賃金、会社の立替えで不足する金額だけを借りることが基本です。
| 確認項目 | 金額の例 | 見直しのポイント |
|---|---|---|
| 家賃・住宅ローン | 毎月8万円 | 返済猶予や支払日の変更を相談できないか |
| 食費 | 毎月4万円 | 休業期間中の最低限の予算を決める |
| 公共料金・通信費 | 毎月3万円 | 不要な契約やオプションを見直す |
| 社会保険料・住民税 | 毎月5万円 | 会社への支払方法や徴収時期を確認する |
| 毎月の不足額 | 合計から収入を控除 | 不足分だけを借入候補とする |
労災給付が後日支給される予定でも、借入れは返済義務を伴います。
支給時期や支給額を確定したものとして借入額を決めるのではなく、給付が遅れた場合や不支給になった場合でも返済できるかを検討してください。
既存の借入先へ先に相談する方法
すでに住宅ローン、自動車ローン、カードローンなどの返済がある場合は、新しい借入れを増やす前に、既存の金融機関へ相談する方法があります。
けがや病気による一時的な収入減少を説明することで、返済日の変更、返済期間の延長、一定期間の元金据置などを検討してもらえる可能性があります。
必ず認められるわけではありませんが、返済を滞納してから相談するより、滞納前に連絡する方が選択肢は広がりやすいでしょう。
クレジットカードのキャッシングや高金利のカードローンを繰り返し利用すると、労災給付が入っても返済でほとんど残らないことがあります。
借入先を増やす前に、公的貸付や金融機関への返済相談を優先してください。
返済の見込みが立たない場合
生活費の確保が難しく、借入れによる返済の見込みも立たない場合は、融資を受けることが最善とは限りません。
借金で数か月しのいでも、復職の見込みが立たなければ返済負担が増えるだけになる可能性があります。
その場合は、居住地の自立相談支援機関、福祉事務所、社会福祉協議会などへ相談しましょう。
収入、資産、扶養状況などの要件を満たせば、生活保護を利用できる可能性があります。
新たな借入れより公的相談を優先したい状態
- すでに複数の借入れがある
- 毎月の返済額が収入を上回る見込み
- 復職時期が全く分からない
- 家賃や公共料金を滞納している
- 食費や医療費を確保できない
生活保護は、他の方法を利用しても最低限度の生活を維持できない場合の最終的なセーフティネットです。
生活が維持できなくなる前に、自治体の相談窓口へつながることが大切です。
労災がおりるまでの生活費まとめ
労災の休業補償給付等は、休業4日目から支給対象になりますが、実際の振込までには、請求からおおむね1か月程度かかることがあります。
事故の状況や傷病の内容によっては、審査が数か月以上に及ぶ場合もあります。
「休業4日目からもらえる」という説明だけを聞くと、すぐに入金されるように感じるかもしれません。
しかし、実際には、会社や医療機関の証明、労働基準監督署への提出、調査、支給決定という段階があります。
生活費を考える際は、少なくとも一定期間は給付が入らない可能性を想定しましょう。
最初に確認すること
まず確認したいのは、労災請求書が現在どこまで進んでいるかです。
会社に報告しただけなのか、会社や医師の証明が終わっているのか、すでに労働基準監督署へ提出されているのかを確認してください。
次に、給与がいつから支払われなくなるかを確認します。
有給休暇を使うのか、欠勤控除されるのか、業務災害の待期期間について会社から休業補償が支払われるのかによって、最初の給与減少時期が変わります。
生活費に不安がある場合の相談順序
- 会社へ申請状況と受任者払いの可否を確認する
- 労働基準監督署へ請求の受付状況を確認する
- 健康保険の保険者へ傷病手当金の取扱いを相談する
- 社会福祉協議会へ公的貸付について相談する
- 必要に応じて金融機関や福祉事務所へ相談する
生活費を確保する方法の優先順位
労災がおりるまでの生活費を確保する方法として、まず会社に受任者払い制度を利用できないか相談しましょう。
会社が対応できれば、利息のある借入れを避けながら、労災給付相当額を先に受け取れる可能性があります。
受任者払いを利用できない場合は、有給休暇の利用を検討します。
ただし、有給休暇には限りがあり、取得した日は原則として労災の休業補償給付等を受けられません。
療養が長期化する可能性も踏まえて、使用日数を決めてください。
労災認定に時間がかかっている場合は、加入している健康保険の保険者へ、傷病手当金の取扱いを相談します。
必ず支給されるものではなく、後日労災が認定された場合は精算が必要になる可能性があります。
世帯の収入や資産の要件を満たす場合は、生活福祉資金貸付制度も選択肢です。
申込みから貸付まで時間を要することがあるため、手元資金が尽きる前に社会福祉協議会へ相談しましょう。
労働金庫などの融資は、他の方法で不足する金額を補う手段として検討します。
労災給付の支給を前提に借りすぎず、返済可能な範囲に抑えることが重要です。
| 方法 | 主なメリット | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 受任者払い | 会社から給付相当額を先に受け取りやすい | 会社の協力が必要 |
| 傷病手当金の相談 | 労災認定待ちの生活費につながる可能性 | 保険者ごとの確認と後日の精算が必要 |
| 有給休暇 | 通常の給与支払日に賃金を受け取りやすい | 有給休暇残日数を消化する |
| 生活福祉資金 | 公的な貸付制度を利用できる可能性 | 世帯要件と審査があり返済も必要 |
| 労働金庫等の融資 | 生活費の不足分を借りられる可能性 | 金利と返済義務がある |
| 生活保護 | 最低限度の生活を維持するための支援 | 収入や資産などの要件を確認される |
家計を数字で確認する
大切なのは、労災給付が振り込まれるまで何もせずに待つのではなく、給与が止まることが分かった時点で動き始めることです。
家賃、公共料金、社会保険料、住民税など、毎月必要になる金額を書き出し、手元資金で何か月生活できるかを確認してください。
例えば、毎月の最低生活費が20万円、家族の収入が8万円、手元資金が24万円であれば、毎月の不足額は12万円です。
この状態では、手元資金だけで生活できる期間は約2か月という見通しになります。
労災給付の振込が1か月程度であれば対応できても、審査が3か月以上かかれば資金が不足します。
このように数字にすると、いつまでに会社や社会福祉協議会へ相談すべきかが分かりやすくなります。
最低限書き出したい支出
- 家賃または住宅ローン
- 食費
- 電気、ガス、水道料金
- 携帯電話とインターネット料金
- 社会保険料
- 住民税
- 生命保険料や損害保険料
- 既存の借入れの返済額
- 通院交通費や日用品費
会社側も早めの支援を検討する
会社の労務担当者は、労災申請書を作成するだけでなく、従業員の給与がいつから止まるかを確認し、受任者払い制度や会社独自の見舞金制度を案内することが望まれます。
生活費が不足すると、従業員は治療に専念できず、無理に復職しようとする可能性があります。
結果として症状が悪化すれば、本人だけでなく会社にとっても復職支援が難しくなります。
もちろん、会社がすべての生活費を負担する必要があるわけではありません。
しかし、利用できる制度や請求の進捗を説明し、必要な証明を早く行うことは重要な実務対応です。
労災給付の支給時期や金額を会社が確約しないよう注意してください。
支給を決定するのは労働基準監督署です。
会社は一般的な目安を説明しつつ、個別の審査によって時間や金額が変わる可能性を伝える必要があります。
一人で抱え込まないことが大切
労災によるけがや病気で働けないと、治療の不安に加えて生活費の不安も重なります。
特に、会社が労災申請に協力しない場合や、精神疾患で長期間の審査が見込まれる場合は、本人だけで手続きを進めるのが難しいこともあります。
家族、会社の担当者、労働基準監督署、健康保険の保険者、社会福祉協議会など、それぞれに相談できる内容が異なります。
一つの窓口で解決できなかったからといって、利用できる手段がないとは限りません。
制度の適用条件や支給額は、事故の状況、賃金の支払状況、加入している健康保険、世帯収入などによって異なります。
数値はあくまで一般的な目安であり、制度改正によって変更される可能性もあります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
個別の労災認定、給付の調整、会社との精算方法などについて迷う場合は、 最終的な判断は専門家にご相談ください。