こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
労災保険を使って通院している途中でも、利用する薬局を変更できます。
業務災害では原則として様式第6号、通勤災害では様式第16号の4を、新しく利用する労災保険指定薬局へ提出します。
転居や勤務先の変更、病院の転院などにより、これまでの薬局を利用しにくくなることは珍しくありません。
ただし、変更先が労災保険指定薬局であるかによって、窓口での支払い方法や必要書類が変わります。
この記事では、労災で薬局を変更するときの手続き、変更届の書き方、指定外薬局で立替払いをした場合の対応まで、実務上迷いやすいポイントを順番に解説します。
- 労災で薬局を変更するときに使う書類
- 変更届の提出先と手続きの流れ
- 様式第6号の記入項目と変更理由の書き方
- 指定外薬局で立替払いした場合の請求方法

労災で薬局を変更する手続きの基本
労災で利用する薬局を変更する場合は、最初に業務災害と通勤災害のどちらに該当するかを確認し、次に変更先が労災保険指定薬局であるかを確認します。
そのうえで必要な変更届を用意し、新しく利用する薬局へ提出するという流れが基本です。
薬局の変更は、会社や労働基準監督署から事前に特別な許可を得なければ一切できないものではありません。
ただし、現在どのような方法で労災保険の給付を受けているのかによって、使用する様式や提出先が変わることがあります。
今の薬局が指定薬局なのか、これまで薬剤費を立替払いしていたのかという点も整理しておきましょう。
業務災害は様式第6号、通勤災害は様式第16号の4 を使用するのが原則です。
書類を提出する相手は、通常、変更前の薬局ではなく、これから利用する変更後の労災保険指定薬局です。
薬局変更に使う様式6号とは
業務中の事故や仕事が原因となった病気について、すでに労災保険指定薬局から薬剤の支給を受けており、療養の途中で別の指定薬局へ変更するときは、原則として 様式第6号 を使用します。
様式第6号の正式名称は、療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届です。
名称だけを見ると病院を変更するときだけの書類に見えるかもしれませんが、様式上の指定病院等には、病院、診療所、薬局、訪問看護事業者が含まれます。
そのため、労災で処方薬を受け取る薬局だけを変更する場合にも使用します。
ここで押さえておきたいのは、様式第6号が 労災の初回手続きに使う書類ではない という点です。
労災保険指定医療機関や指定薬局で、すでに療養の給付を受けている人が、治療や調剤を継続したまま別の指定機関へ移るときに提出します。
初めて労災保険指定薬局を利用する場合は、原則として様式第5号を使用するため、初回なのか途中変更なのかを区別しなければなりません。
薬局だけを変える場合も変更届が必要
病院は同じままで、処方箋を持参する薬局だけを変える場合でも、変更後の薬局に対する手続きが必要です。
病院と薬局は別々の労災保険指定機関として薬剤費や診療費を請求するため、病院へ労災関係書類を提出しているからといって、新しい薬局でも自動的に労災扱いになるとは限りません。
実務では、「病院には労災と伝えているので、どの薬局でもそのまま無料になると思っていた」という相談があります。
しかし、新しい薬局側では、労災事故の情報や変更前の薬局、事業場の情報を確認できません。
処方箋に労災であることが記載されていたとしても、それだけで変更届の代わりになるとは限らないため、事前に薬局へ連絡して必要書類を確認しておくことが大切です。
様式第6号は厚生労働省のウェブサイトから入手できます。
様式や記載上の注意事項が改訂される可能性もあるため、過去に保存したファイルをそのまま使うより、提出時点の公式様式を確認する方が安全です。
様式第6号を使わないことがあるケース
これまで利用していた薬局が労災保険指定薬局ではなく、毎回薬剤費を立替払いしていた人が、初めて指定薬局で現物給付を受ける場合には、様式第6号ではなく、初回請求用の様式第5号を案内されることがあります。
様式第6号は、指定機関から別の指定機関への変更を前提とする書類だからです。
また、同じ法人が運営している薬局であっても、店舗が異なれば、それぞれ別の指定薬局として取り扱われることがあります。
「同じチェーンだから変更届はいらないだろう」と自己判断せず、利用する店舗へ確認してください。
店舗名や所在地が変わる場合は、薬局側の登録状況によって扱いが異なる可能性があります。
現在の薬局が指定薬局かどうか分からない場合は、先にその点を確認しましょう。
指定薬局から指定薬局への変更なのか、立替払いから指定薬局の利用へ切り替えるのかによって、用意すべき書類が変わる可能性があります。
様式の選択を間違えると、新しい薬局から書類の差し替えを求められ、調剤時にいったん費用を預けることになる場合もあります。
現在の利用状況、新しい薬局の指定状況、業務災害か通勤災害かを整理したうえで、新しい薬局または所轄の労働基準監督署へ確認するのが確実ですよ。
通勤災害は様式16号の4を使う

通勤途中の事故によるけがなど、通勤災害として労災保険を利用している場合は、様式第6号ではなく 様式第16号の4 を使用します。
正式名称は、療養給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届です。
薬局を変更する手続きの基本的な流れは業務災害の場合とほぼ同じですが、業務災害では療養補償給付、通勤災害では療養給付という名称が使われます。
制度上の給付名が異なるため、初回請求、変更、立替費用の請求のいずれについても様式番号が分かれています。
| 労災の種類 | 主なケース | 初回に使う主な様式 | 薬局変更に使う様式 | 立替費用の請求に使う様式 |
|---|---|---|---|---|
| 業務災害 | 仕事中の事故や業務が原因の病気 | 様式第5号 | 様式第6号 | 様式第7号関係 |
| 通勤災害 | 合理的な通勤経路上での事故など | 様式第16号の3 | 様式第16号の4 | 様式第16号の5関係 |
仕事中の移動でも通勤災害とは限らない
災害が道路上で発生したからといって、必ず通勤災害になるわけではありません。
たとえば、会社の指示で取引先へ向かう途中の事故や、業務として荷物を運搬している途中の事故は、業務災害として扱われる可能性があります。
一方、自宅から勤務先へ向かう通常の通勤途中の事故であれば、通勤災害として手続きを進めるのが一般的です。
つまり、事故が起きた場所だけで判断するのではなく、事故発生時に何の目的で移動していたかが重要です。
会社から渡された書類をそのまま記入する前に、すでに病院へ提出した様式や、労働基準監督署へ提出した書類の災害区分を確認しましょう。
通勤経路から外れていた場合の注意
通勤災害では、就業に関する移動であることに加え、一般的には住居と就業場所の間を合理的な経路および方法で移動していることが前提になります。
私的な目的で通勤経路から大きく外れた場合や、移動を長時間中断した場合には、その後の事故が通勤災害に該当するか個別判断になることがあります。
もっとも、日用品の購入など、日常生活上必要な行為については、逸脱や中断の内容によって通勤災害の保護が再開する場合があります。
薬局変更の記事で災害認定の詳細まですべて判断することはできませんが、通勤災害かどうかがまだ確定していないときは、会社だけで結論を出さず、労働基準監督署へ相談することが大切です。
薬局へ提出する様式を間違えても、それだけで労災の権利を直ちに失うわけではありません。
ただし、書類の差し替えや再証明が必要となり、薬剤費の処理が遅れることがあります。
病院へ提出した初回書類が様式第5号か様式第16号の3かを確認すると、災害区分を把握しやすいでしょう。
実際の相談でも、病院から様式第6号を案内されたものの、事故の状況を確認すると通勤災害だったということがあります。
医療機関や薬局は事故の詳細をすべて把握しているとは限りません。
あなた自身や会社の担当者が災害区分を確認し、様式第16号の4を準備する必要があります。
なお、通勤災害では、一定の場合に初診時の負担に関する制度が問題になることがありますが、薬局を変更するたびに同じ負担が発生するという意味ではありません。
個別の費用や給付の扱いについて疑問がある場合は、所轄の労働基準監督署へ確認してください。
変更後の労災指定薬局へ提出する
薬局変更の書類は、原則として 変更後に利用する労災保険指定薬局へ提出 します。
様式第6号や様式第16号の4の宛先は労働基準監督署長ですが、被災した労働者が変更後の指定薬局を経由して提出する仕組みです。
そのため、本人が最初から労働基準監督署へ郵送すれば必ず完了する、という単純な手続きではありません。
新しい薬局は、受け取った変更届をもとに労災の薬剤費請求を行います。
まず変更後の薬局に労災であることを伝え、書類の提出方法や原本が必要となる時期を確認してください。
薬局変更の一般的な流れ
- 変更先の薬局が労災保険指定薬局か確認する
- 業務災害か通勤災害かを確認する
- 様式第6号または様式第16号の4を準備する
- 本人欄や変更前後の薬局情報を記入する
- 必要に応じて会社に事業主証明を依頼する
- 処方箋を持参する前に新しい薬局へ連絡する
- 完成した書類を変更後の薬局へ提出する
- 不足書類がある場合は指定された期限までに提出する
処方箋を出す前に薬局へ連絡する
処方箋には有効期間があるため、変更届を用意しているうちに期限が過ぎてしまうことは避けなければなりません。
薬局変更を予定している場合は、処方箋を受け取ってから初めて調べ始めるより、受診前に変更予定の薬局へ連絡しておく方がスムーズです。
電話では、労災保険による処方箋であること、業務災害か通勤災害か、現在は別の指定薬局を利用していることを伝えます。
そのうえで、様式第6号または様式第16号の4を当日に持参すればよいか、会社の証明が間に合わない場合に後日提出できるかを確認しましょう。
薬局によって受付時の運用が異なることがあります。
書類が完成するまで薬剤費を預かり金として扱う薬局もあれば、いったん全額を支払って後日精算するよう案内する薬局もあります。
労災保険の給付内容が異なるというより、書類がそろうまでの窓口対応に違いがあるということです。
変更前の薬局への連絡
通常、変更届そのものを変更前の薬局へ提出する必要はありません。
ただし、前の薬局で未処理の請求がある、書類の原本を預けている、薬の取り寄せを依頼しているといった事情がある場合は、変更することを伝えておく方がよいでしょう。
特に、同じ処方箋について複数の薬局から薬を受け取ることはできません。
変更前の薬局ですでに調剤を依頼している場合は、処方箋や薬の受け取り状況を確認してから新しい薬局へ相談してください。
会社が手続きを進める場合
書類は被災した労働者本人が提出できますが、実務では会社の労務担当者が様式を準備し、労働保険番号や災害発生状況を記入することがよくあります。
本人にすべてを任せるより、会社が把握している情報を提供した方が、初回請求書との不一致を防ぎやすいためです。
ただし、薬局変更そのものを会社が恣意的に禁止したり、会社が指定した薬局以外は認めないと一律に扱ったりすることは適切とはいえません。
療養を受けるのは被災した労働者です。
通院や服薬を継続しやすい薬局を選ぶ必要性を踏まえ、会社は書類作成を支援する立場で対応することが望まれます。
労働保険番号、事業場の正式名称、所在地、事故発生日などは、初回に病院へ提出した書類と同じ内容を記載するのが基本です。
以前の書類の控えがある場合は、転記前に内容を照合しましょう。
会社の証明がすぐに得られない場合でも、労災保険の請求自体が当然にできなくなるわけではありません。
会社が証明に応じない、会社と連絡が取れないなどの事情があるときは、空欄のまま放置するのではなく、所轄の労働基準監督署へ事情を説明して提出方法を確認してください。
薬局を変更できる主な理由

労災で利用する薬局は、療養を続けるうえで合理的な事情があれば変更できます。
最初に選んだ薬局を治療終了まで必ず利用し続けなければならない、という制度ではありません。
薬局変更の理由として多いのは、転居、勤務場所の変更、病院の転院、営業時間、交通手段などです。
労災によるけがで歩行や運転が難しくなり、これまで利用していた薬局へ通う負担が大きくなることもあります。
薬局を変更する主な理由として、次のようなものがあります。
- 転居により現在の薬局へ通いにくくなった
- 自宅や職場から近い薬局を利用したい
- 勤務場所や勤務時間が変わった
- 通院先の病院を変更した
- 転院先の病院に近い薬局を利用したい
- 営業時間の関係で継続利用が難しくなった
- けがの状態から遠方の薬局へ移動する負担が大きい
- 公共交通機関で利用しやすい薬局へ変更したい
- 在庫や取り寄せの都合で継続的な調剤が難しい
自宅や職場に近い薬局へ変更する場合
自宅や職場から近いという理由は、単なる個人的な好みとして扱われるとは限りません。
労災による療養では、複数回の通院や継続的な服薬が必要になることがあります。
移動時間や身体的負担を減らし、必要な薬を継続して受け取れるようにすることは、十分に現実的な事情です。
変更理由欄には、「自宅に近いから」とだけ書くより、「継続的な通院の利便性を考慮し、自宅に近い薬局へ変更するため」など、療養を続けるうえでの事情が分かる表現にすると伝わりやすくなります。
転院に伴って薬局を変更する場合
病院を転院した場合、新しい病院の近くにある薬局を利用したいと考えるのは自然です。
ただし、病院の変更手続きを行っただけで薬局の変更手続きも自動的に終わるわけではありません。
病院と薬局は別の指定機関なので、病院の変更届は新しい病院へ、薬局の変更届は新しい薬局へ、それぞれ提出する必要があります。
実務では、病院分の様式第6号だけを会社に作ってもらい、薬局分を用意していなかったというケースがよくあります。
病院用に提出した変更届の原本が、そのまま薬局用の変更届を兼ねるわけではありません。
新しい病院と新しい薬局の両方を利用する場合は、それぞれに提出する書類を準備する必要があります。
薬の在庫や営業時間が理由の場合
薬局によって営業時間や休日、取り扱う薬の在庫状況は異なります。
毎回取り寄せに時間がかかり、処方期間内に受け取りにくい場合や、勤務時間との関係で営業時間内に行けない場合は、継続利用が難しい事情として説明できます。
ただし、特定の薬が一時的に在庫切れだっただけで、必ず薬局を変更しなければならないとは限りません。
取り寄せ可能か、別店舗から手配できるかを現在の薬局へ確認したうえで、今後も継続的な支障がある場合に変更を検討するとよいでしょう。
会社が指定した薬局から変えたい場合
会社が手続きしやすい薬局を案内することはありますが、会社が案内した薬局を必ず利用し続けなければならないわけではありません。
あなたが療養を継続しやすいこと、新しい薬局が労災保険指定薬局であることが重要です。
もっとも、変更にあたって会社の事業場情報や証明が必要になることがあります。
会社と対立するような伝え方をする必要はなく、「転居により現在の薬局へ通う負担が大きいため、指定薬局を変更したい」と具体的に説明し、書類作成への協力を依頼するのが現実的です。
変更理由は、特別に深刻な事情でなければ認められないものではありません。
いつ、どのような変化があり、現在の薬局を継続利用することが難しくなったのか を事実に沿って説明することがポイントです。
変更理由を大げさに書いたり、事実と異なる事情を作ったりする必要はありません。
簡潔であっても、療養との関係が読み取れる内容であれば十分です。
判断に迷う場合は、提出先となる変更後の薬局へ、どの程度の記載が必要かを確認してください。
労災指定薬局か事前に確認する
変更先を決めるときに最も重要なのが、その薬局が 労災保険指定薬局であるか という確認です。
一般の健康保険を取り扱っている保険薬局であっても、必ず労災保険指定薬局であるとは限りません。
労災保険指定薬局であれば、必要な書類を提出することで、原則として窓口で薬剤費を負担せずに薬を受け取る療養の給付を利用できます。
薬局は、被災した労働者から自己負担分を受け取る代わりに、労災保険へ薬剤費を請求します。
このような給付方法を一般に現物給付といいます。
一方、労災保険の指定を受けていない薬局では、現物給付の方法を利用できません。
その場合は、原則として薬剤費の全額をいったん自分で支払い、その後に療養の費用として労働基準監督署へ請求します。
健康保険を使った場合の自己負担割合だけを支払うのではなく、いったん薬剤費の10割相当額を支払う可能性があります。
処方内容によっては負担額が大きくなるため、薬を受け取る前の確認が重要です。
薬局へ確認するときの伝え方
薬局へ電話をするときは、「労災保険指定薬局ですか」と尋ねるだけでなく、具体的な状況も伝えると確認がスムーズです。
たとえば、次のように問い合わせるとよいでしょう。
- 業務災害の処方箋を持参する予定ですが、労災保険指定薬局として受け付けていますか
- 現在利用している労災指定薬局から変更したいのですが、様式第6号を提出できますか
- 通勤災害で様式第16号の4を提出する予定ですが、必要な持ち物はありますか
- 会社の証明が後日になる場合、先に処方箋を受け付けてもらえますか
「労災の薬を扱えますか」という聞き方だけでは、薬の在庫についての質問だと受け取られる可能性があります。
労災保険の指定を受けているか、労災として薬剤費を請求できるかという点を明確に確認してください。
病院の近くの薬局でも指定とは限らない
労災保険指定病院のすぐ近くにある薬局だからといって、必ずその薬局も労災保険の指定を受けているとは限りません。
また、同じ名称のチェーン薬局でも、店舗ごとに指定状況が異なる可能性があります。
薬局の入口に労災保険指定薬局である旨が表示されていることもありますが、名称変更や移転などで表示と登録情報の確認が必要なケースも考えられます。
確実なのは、利用予定の店舗へ直接問い合わせることです。
指定の有無と薬の在庫は別の問題
労災保険指定薬局であっても、処方された薬を常時在庫しているとは限りません。
指定の有無は労災保険による薬剤費請求ができるかという問題であり、薬の在庫や取り寄せ可否とは別です。
特殊な薬や継続的に必要となる薬がある場合は、処方箋を持参する前に薬品名や取り寄せ可能日を確認すると安心です。
ただし、電話で医療情報を伝える際は、本人確認や処方内容の確認方法について薬局の案内に従ってください。
労災保険指定医療機関等の検索情報が提供されている場合もありますが、指定状況は更新される可能性があります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
最終的には、利用予定の薬局へ直接確認するのが確実です。
書類が間に合わない場合
処方箋の有効期間との関係で、会社の証明を得るまで待てないこともあります。
その場合は、書類がそろっていないからといって薬の受け取りを諦めるのではなく、まず新しい薬局へ事情を説明してください。
薬局によっては、後日原本を提出する前提で一時的な対応を案内することがあります。
一方で、書類がそろうまで全額を預かり、後日返金する運用を採ることもあります。
どの対応になるかは薬局へ確認しなければ分かりません。
事前確認をしないまま処方箋を持参すると、窓口で長時間確認を待つことになったり、必要な現金を用意できなかったりする可能性があります。
新しい薬局を決めた段階で電話をしておくことが、本人にとっても薬局にとっても負担の少ない進め方かなと思います。
労災の薬局変更で迷いやすい注意点
ここからは、変更届の具体的な記入項目、変更理由の書き方、様式第5号との違いを詳しく解説します。
指定外薬局を利用してしまった場合の立替払いと費用請求についても確認しておきましょう。
労災の書類は名称が似ており、病院用と薬局用、業務災害用と通勤災害用を混同しやすいのが実情です。
書類の不備があると薬局が労災保険へ請求できず、本人が一時的に費用を負担することもあります。
記入前に初回の労災書類や事故報告書の控えをそろえておくと、内容の食い違いを防ぎやすくなります。
様式6号の主な記入項目
様式第6号には、被災した労働者の情報、事故の状況、変更前後の薬局、変更理由などを記入します。
薬局だけを変更する場合でも、労災事故に関する基本情報を省略することはできません。
主な記入項目は次のとおりです。
- 届出年月日
- 届出人の住所と氏名
- 労働保険番号
- 被災労働者の氏名、生年月日、住所、職種
- 負傷または発病した年月日と時刻
- 災害の原因および発生状況
- 事業場の名称、所在地、事業主名
- 変更前の薬局名と所在地
- 変更後の薬局名と所在地
- 変更理由
- 傷病名
労働保険番号の確認方法
労働保険番号は、会社が労災保険や雇用保険の手続きを行う際に使用する番号です。
一般的には会社が保管する労働保険関係書類、年度更新の申告書、初回の労災請求書の控えなどで確認します。
給与明細や雇用保険被保険者証に記載されている雇用保険の被保険者番号とは異なります。
また、法人番号や会社の事業所整理記号でもありません。
本人が分からない場合は、推測で記入せず、会社の総務や労務担当者へ確認してください。
会社が複数の事業場を運営している場合、事故が発生した事業場と本社とで労働保険番号が異なることがあります。
会社名が同じだから本社の番号を書けばよいとは限らないため、初回請求と同じ番号を確認することが大切です。
被災労働者の情報
氏名、生年月日、住所、職種は、事故当時の状況や現在の情報を様式の指示に従って記入します。
氏名の字体や住所表記が初回書類と大きく異なると、同一人物の請求であることの確認に時間がかかる可能性があります。
転居を理由に薬局を変更する場合は、現在の住所を正確に記入し、必要に応じて変更理由にも転居したことを記載します。
職種については、単に会社員と書くより、製造作業員、配送運転手、介護職員、事務職など、事故当時の業務内容が分かる表現が適しています。
災害の原因および発生状況
災害の原因および発生状況には、いつ、どこで、どのような作業をしているときに、何が原因で、どのように負傷したのかを具体的に記載します。
薬局変更の書類だからといって、「労災事故により負傷」とだけ書けばよいとは限りません。
すでに病院へ提出した様式第5号や、会社が作成した事故報告書がある場合は、その内容と整合させましょう。
たとえば、初回書類では「倉庫内で荷物を持ち上げた際に腰を負傷」と記載しているのに、変更届では「階段で転倒」と記載されていれば、事実確認が必要になります。
初回書類の文章を一字一句同じにする必要はありませんが、事故の日時、場所、作業内容、負傷原因が食い違わないようにしてください。
書類ごとに説明が変わると、薬局変更とは別に事故状況の確認が必要になることがあります。
変更前後の薬局情報
変更前と変更後の薬局について、正式名称と所在地を記入します。
店舗名がある場合は、法人名だけではなく店舗名まで記載した方が特定しやすくなります。
チェーン薬局では、似た名称の店舗が近隣に複数あることもあります。
レシートや薬袋、薬局の公式案内などを確認し、所在地を含めて正確に記載してください。
変更後の薬局については、労災保険指定薬局であることを確認したうえで記入します。
傷病名の書き方
傷病名は、原則として医師から診断された名称を記載します。
「腰が痛い」「腕をけがした」といった自覚症状ではなく、腰部捻挫、右橈骨骨折、左肩腱板損傷など、診断書や診療明細書に記載された傷病名を確認しましょう。
診断名が分からないときは、自己判断で医学用語を作らず、病院へ確認してください。
複数の傷病がある場合は、労災として療養中の傷病を記載します。
事業主証明欄の確認
様式には、事業主が災害発生日や発生状況などを証明する欄があります。
会社の担当者は、労働者から聞いた内容だけで機械的に証明するのではなく、事故報告書、現場確認、勤怠記録などと整合しているかを確認することが重要です。
一方で、事業主が証明しないからといって、労働者が労災保険の手続きを一切できなくなるわけではありません。
会社が事実関係を争っている、会社と連絡が取れない、退職後で証明を得にくいといった事情がある場合は、その事情を所轄の労働基準監督署へ伝えて相談してください。
様式第6号は、記入欄だけでなく注意事項も確認しましょう。
印刷方法、提出方法、必要部数について薬局独自の案内がある場合もあります。
完成前に変更後の薬局へ確認すると、書き直しや再提出を防ぎやすくなります。
実務では、一つの欄だけを空けたまま本人から会社へ渡し、誰が記入するのか分からないまま止まっているケースがあります。
本人が書く欄、会社が確認する欄、薬局側で扱う欄を整理し、書類の受け渡し時に未記入部分を共有することが大切です。
薬局変更理由の具体的な書き方

変更理由欄には、なぜ現在の薬局から新しい薬局へ変更する必要があるのかを、事実に沿って簡潔に記載します。
変更理由は、労災事故そのものの発生原因を書く欄ではありません。
薬局を変更することになった事情を書く欄です。
長い経緯を書く必要はありませんが、「都合により変更」「便利だから変更」といった抽象的な表現だけでは、具体的な事情が伝わりません。
何が変わり、なぜ現在の薬局を継続利用しにくくなったのか が分かる文章にしましょう。
変更理由の記入例
- 転居により従来の薬局への通院が困難となったため
- 継続的な通院の利便性を考慮し、自宅に近い薬局へ変更するため
- 勤務場所の変更により、現在の薬局の営業時間内に利用することが難しくなったため
- 転院先の医療機関に近い薬局を利用するため
- 通院先の変更に伴い、処方箋を受け付ける薬局を変更するため
- 負傷により長距離の移動が困難であるため、自宅から近い薬局へ変更する
- 公共交通機関での利用がしやすい薬局へ変更するため
転居を理由にする場合
転居した場合は、「転居したため」だけでも意味は通じますが、従来の薬局を利用しにくくなった事情まで書くと、変更とのつながりが明確になります。
たとえば、「令和○年○月の転居により、従来の薬局への移動が困難となったため、現住所に近い薬局へ変更する」と記載すれば、いつ、どのような事情が生じたかが分かります。
住所の詳細を理由欄に繰り返し書く必要はありません。
自宅に近いことを理由にする場合
「自宅に近い薬局の方が便利だから」という事情も、継続療養との関係を補足すれば自然な変更理由になります。
特に労災によるけがで移動に負担がある場合は、その点を簡潔に加えるとよいでしょう。
たとえば、「負傷後の歩行負担を軽減し、継続的に薬を受け取るため、自宅に近い薬局へ変更する」と書けば、単なる好みではなく、療養上の利便性を考慮した変更であることが伝わります。
病院の転院に伴う場合
病院の転院に伴って薬局を変更する場合は、「転院先の医療機関から近く、処方箋の受付が容易なため」といった内容で構いません。
転院理由まで詳細に書く必要はありませんが、病院変更に伴う薬局変更であることを明確にします。
なお、転院した病院と同じ建物内や隣接地にある薬局を利用する場合でも、その薬局が労災保険指定薬局かどうかは別途確認してください。
避けた方がよい曖昧な表現
| 曖昧になりやすい表現 | 具体化した表現の例 |
|---|---|
| 都合により変更 | 転居により従来の薬局への移動が困難となったため |
| 近い薬局にしたい | 負傷後の移動負担を軽減するため、自宅に近い薬局へ変更する |
| 病院を変えたため | 転院先の医療機関に近い薬局で継続して薬を受け取るため |
| 時間が合わない | 勤務場所の変更により、従来の薬局の営業時間内に利用することが困難となったため |
「薬局の対応が悪かった」「待ち時間が長くて嫌だった」など、感情的な評価をそのまま書くことはおすすめしません。
実際に継続利用が困難な事情があるなら、「受付時間との関係で継続的な利用が難しいため」など、客観的な事実に置き換えます。
変更理由は長文にすればよいわけではありません。
変更前の薬局を利用しにくくなった事実と、変更後の薬局を利用する必要性 が簡潔に伝わることが重要です。
事実と異なる理由を作る必要はありません。
また、医学的に必要な転院であるかのような表現を、医師の指示がないのに記載することも避けましょう。
実際の事情を整理し、提出先の薬局が理解できる文章にすれば十分です。
記入内容に迷う場合は、まず変更後の薬局へ相談してください。
労働基準監督署から補足を求められる可能性がある場合には、薬局から具体的な記載方法を案内されることもあります。
様式5号と様式6号の違い
様式第5号と様式第6号は、どちらも業務災害における療養の給付に関係する書類ですが、使用する場面が異なります。
簡単に整理すると、様式第5号は指定医療機関等を初めて利用するとき、様式第6号は指定医療機関等を途中で変更するときの書類です。
| 様式 | 使用する場面 | 主な提出先 | 通勤災害の対応様式 |
|---|---|---|---|
| 様式第5号 | 労災保険指定医療機関等で初めて療養の給付を受けるとき | 最初に利用する指定病院や指定薬局 | 様式第16号の3 |
| 様式第6号 | すでに指定医療機関等を利用している人が別の指定医療機関等へ変更するとき | 変更後の指定病院や指定薬局 | 様式第16号の4 |
初めて薬局を利用するとき
労災事故の後、病院を初めて受診し、処方箋を持って労災保険指定薬局を利用する場合は、原則として薬局にも初回用の書類が必要です。
業務災害なら様式第5号、通勤災害なら様式第16号の3を使用します。
ここで迷いやすいのが、病院に初回用の書類を提出している場合です。
病院に様式第5号を提出したからといって、その同じ書類だけで薬局の手続きまで自動的に終わるとは限りません。
病院と薬局はそれぞれ別の労災保険指定機関として費用を請求するためです。
病院用とは別に薬局用を準備する
病院へ提出した様式第5号の原本を、後から薬局へ移して使うことは通常できません。
病院は病院分の請求にその書類を使用し、薬局は薬局分の請求に必要な書類を保管します。
そのため、病院と薬局を同時に初めて利用する場合は、病院用と薬局用をそれぞれ準備する必要があります。
会社へ作成を依頼するときは、「病院へ出す分」と「薬局へ出す分」が必要であることを伝えましょう。
病院に提出した様式第5号のコピーを薬局へ持参すれば、必ず正式な書類として受け付けられるとは限りません。
初回薬剤費の請求には原本が必要とされるため、薬局用の書類を別途準備することが基本です。
途中で薬局を変えるとき
すでにA薬局で労災として薬を受け取っており、今後はB薬局を利用する場合に、様式第6号をB薬局へ提出します。
A薬局での利用が初回だったとしても、B薬局から見れば初めての利用だから様式第5号になる、という考え方ではありません。
労災の療養全体として、指定薬局から別の指定薬局への変更であるため、変更届を使用します。
ただし、A薬局が労災保険指定薬局ではなく、これまで立替払いをしていた場合は取扱いが異なることがあります。
現在の薬局が指定薬局なのか分からない場合は、B薬局へ状況を伝えて使用様式を確認してください。
病院は変えずに薬局だけ変える場合
病院を変更しなくても、薬局だけを変更することは可能です。
その場合、病院へ改めて様式第6号を提出する必要は通常ありません。
薬局変更用の様式第6号を、新しい薬局へ提出します。
反対に、病院と薬局の両方を変更する場合は、それぞれの変更先へ変更届を提出します。
同じ様式名であっても、変更後の病院用と変更後の薬局用として別々に必要となるため注意してください。
緊急時にコピーで対応する場合
処方箋の期限が迫っている一方で、会社が休業日で原本を準備できないなど、緊急に薬を受け取る必要があることもあります。
その場合、薬局が一時的にコピーや未完成の書類を確認し、後日原本を提出するよう案内することがあります。
ただし、これはすべての薬局に共通する当然の取扱いではありません。
薬局が労災保険へ請求するには正式な書類が必要です。
後日提出する期限や、原本が届くまでの薬剤費の扱いについて、必ず薬局の指示を確認してください。
会社側では、労災事故が発生したときに病院用だけでなく、処方箋が出る可能性を考えて薬局用の書類も準備しておくと手続きがスムーズです。
薬局が決まっていない段階では、提出前に正式名称と所在地を確認しましょう。
様式第5号と様式第6号の違いを理解すると、薬局から「初回の書類ですか、変更の書類ですか」と確認されたときに答えやすくなります。
現在までに指定薬局を利用していたかどうかを基準に整理するのが実務上分かりやすいですよ。
指定外薬局では立替払いになる
変更先が労災保険指定薬局ではない場合、療養の給付として窓口負担なしで薬を受け取ることは原則としてできません。
薬剤費をいったん全額支払い、その後に療養の費用として労災保険へ請求することになります。
この方法は、指定外薬局を利用したら労災保険が一切使えないという意味ではありません。
指定薬局を利用した場合とは給付を受ける方法が異なり、窓口での現物給付ではなく、本人が支払った費用について後から支給を受ける償還払いになります。
窓口では10割相当を支払う可能性がある
健康保険を使用する一般的な受診では、年齢や所得区分などに応じた自己負担分を窓口で支払います。
しかし、仕事や通勤が原因のけがには、原則として健康保険を使用しません。
そのため、指定外薬局で労災として薬を受け取る場合、健康保険適用後の自己負担分ではなく、薬剤費の全額に相当する金額を支払う可能性があります。
処方される薬の種類や日数によっては高額になることもあるため、現金や決済方法を事前に確認した方がよいでしょう。
領収書と薬剤の内容が分かる書類は必ず保管してください。
領収書を紛失すると、実際に支払った金額を確認できず、費用請求が難しくなる可能性があります。
調剤明細書、薬剤情報提供書、処方箋の控えなども、手続きが終わるまで処分しないでください。
指定外薬局を選ぶ前に確認したいこと
自宅から最も近い薬局が指定外であっても、少し離れた場所に労災保険指定薬局があることがあります。
今後も複数回にわたり薬を受け取る予定があるなら、毎回立替払いをして費用請求を繰り返すより、指定薬局へ変更した方が本人の負担を軽減しやすいでしょう。
もっとも、地域や薬の在庫、営業時間などの事情から、指定外薬局を利用せざるを得ない場合もあります。
その場合は、費用請求に必要な書類へ薬局の証明を受けられるか、領収書や明細書を発行してもらえるかを事前に確認してください。
誤って健康保険を使った場合
労災であることを伝えず、健康保険証やマイナ保険証を使って薬を受け取ってしまった場合は、健康保険と労災保険の調整が必要になることがあります。
まず利用した薬局へ連絡し、労災事故による処方であったことを伝えます。
薬局の請求処理前であれば、窓口で健康保険の扱いを取り消し、労災または全額自費として精算し直せる場合があります。
一方、薬局から健康保険の保険者への請求がすでに完了している場合は、窓口だけで修正できないことがあります。
その場合は、加入している健康保険組合、協会けんぽ、市区町村などの保険者へ連絡し、健康保険が負担した給付分の返納方法を確認します。
健康保険から労災へ切り替える一般的な流れ
- 利用した薬局へ労災事故であったことを連絡する
- 薬局の窓口で訂正できるか確認する
- 訂正できない場合は健康保険の保険者へ連絡する
- 保険者から案内された金額と方法で保険給付分を返納する
- 返納を確認できる書類や領収書を保管する
- 労災保険の療養の費用請求を行う
この手続きでは、いったん健康保険へ返納してから労災保険の支給を受けるまで、本人の負担が残る期間が生じる可能性があります。
薬局で早期に訂正できれば手続きが簡単になることもあるため、誤りに気づいた時点ですぐに連絡しましょう。
月をまたいでいるか、薬局が健康保険へ請求済みか、本人がどの健康保険に加入しているかによって対応が異なります。
薬局、健康保険の保険者、所轄の労働基準監督署の三者へ順番に確認してください。
領収書をなくした場合
領収書を紛失した場合は、利用した薬局へ再発行が可能か確認します。
ただし、領収書の再発行に対応していない薬局もあり、代わりに支払証明書などが発行されることもあります。
どの書類で費用請求できるかは労働基準監督署の確認が必要です。
領収書がないからといって自己判断で請求を諦めるのではなく、薬局から発行できる書類を確認したうえで、所轄の労働基準監督署へ相談してください。
立替払いは後から請求できる可能性があるものの、書類の準備や審査に時間がかかります。
薬局を変更する段階で指定状況を確認することが、最も確実なトラブル予防です。
様式7号で返金を請求する

指定外薬局で薬剤費を立替払いした場合は、業務災害であれば療養補償給付たる療養の費用請求書を使い、所轄の労働基準監督署長へ費用を請求します。
薬局から薬剤の支給を受けた費用については、一般に 様式第7号のうち薬局用の書類 を使用します。
通勤災害の場合は、様式第16号の5のうち薬局用の書類を使用します。
様式第7号や様式第16号の5には、受診先や費用の種類に応じた複数の書類があるため、単に様式第7号と書かれたものを選ぶのではなく、薬局用であることを確認してください。
厚生労働省の主要様式ダウンロードページでは、療養の給付に使う書類と、立替費用の支給に使う書類が分けて掲載されています。
最新の様式と記載上の注意事項を確認してください。
費用請求で準備する主なもの
- 療養の費用請求書のうち薬局用の様式
- 薬局による薬剤費の証明
- 薬剤費を支払った領収書
- 調剤明細書など薬剤の内容と金額が分かる資料
- 被災労働者本人の振込先口座情報
- 事業主証明に必要な会社情報
- 健康保険を使った場合は返納を確認できる書類
本人が記入する項目
本人は、氏名、住所、生年月日、事故発生日、事業場情報、振込先口座などを記入します。
振込先は本人名義の口座を求められるのが一般的です。
金融機関名、支店名、口座種別、口座番号、名義のカナ表記を正確に確認しましょう。
事故発生状況は、初回の労災請求書や様式第6号と内容を合わせます。
費用請求だからといって事故状況を簡略化しすぎると、追加確認を求められる可能性があります。
薬局に記入を依頼する項目
薬局用の費用請求書には、薬剤の支給日、内容、費用などについて薬局の証明を受ける欄があります。
本人が領収書を添付するだけで、薬局の証明をすべて省略できるとは限りません。
薬局に記入を依頼する際は、空欄の請求書だけを突然持参するのではなく、労災の立替費用を請求するための書類であることを伝えます。
薬局側で作成に時間を要する場合もあるため、受取日を確認しておきましょう。
会社の証明を受ける
業務災害の費用請求では、事故発生日や災害発生状況などについて、事業主の証明を求める欄があります。
会社は、事故報告書や勤怠記録と照合したうえで証明します。
会社が「労災になるとは思わない」という理由で証明に応じない場合でも、労災に該当するかを最終的に判断するのは労働基準監督署です。
証明を得られない事情があるときは、請求を断念せず、労働基準監督署へ相談してください。
提出先となる労働基準監督署
費用請求書は、一般的には被災した労働者が勤務していた事業場を管轄する労働基準監督署へ提出します。
本人の自宅から最も近い労働基準監督署とは限りません。
会社に複数の事業所がある場合や、出張中の災害、派遣労働者の災害などでは、どの事業場を管轄する監督署へ提出するか迷うことがあります。
初回の労災請求を行った監督署が分かる場合は、その監督署へ確認するのが分かりやすいでしょう。
返金までの期間
費用請求書を提出しても、窓口で支払った金額がその場で返金されるわけではありません。
労働基準監督署は、事故が労災保険の対象となるか、請求された薬剤が療養上必要であるか、書類や金額に不備がないかなどを確認します。
処理に必要な期間は、事故の認定状況、書類の不備、医療機関や会社への照会の有無などによって異なります。
「通常は必ず何日で振り込まれる」と一律に断定することはできません。
生活費や医療費への影響が大きい場合は、提出先へ進捗確認の方法を相談してください。
窓口で支払った金額の全額が、必ずそのまま支給されるとは限りません。
労災保険上、療養に必要と認められる費用が審査の対象となります。
差額の発生理由などについて疑問がある場合は、支給決定の内容を確認してください。
健康保険の返納がある場合
誤って健康保険を使用していた場合は、健康保険が負担した分を返納したことを確認できる書類が必要になることがあります。
健康保険の保険者から届いた納付書、返納時の領収書、診療報酬明細書に関する書類などは保管してください。
保険者によって書類名や手続きの順序が異なるため、必要書類を推測で用意するより、労働基準監督署と保険者の双方へ確認した方が確実です。
今後も継続して薬を受け取る予定があるなら、指定外薬局で立替払いと費用請求を繰り返すより、利用しやすい労災保険指定薬局を探して変更手続きを行う方が、本人の金銭的負担と事務負担を抑えやすくなります。
様式の名称、添付書類、提出方法は変更される可能性があり、個別事情によって追加資料を求められることもあります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
労災の薬局変更手続きを整理しよう
労災で利用している薬局は、転居、勤務場所の変更、病院の転院、営業時間、移動負担などの事情に応じて変更できます。
一度選んだ薬局を療養終了まで必ず利用し続けなければならないわけではありません。
すでに労災保険指定薬局を利用している人が別の指定薬局へ変更する場合、業務災害では様式第6号、通勤災害では様式第16号の4を使用し、原則として変更後の薬局へ提出します。
初めて労災保険指定薬局を利用する場合は、業務災害なら様式第5号、通勤災害なら様式第16号の3が基本です。
初回手続きと途中変更では使用する書類が異なるため、現在まで指定薬局を利用していたかを確認しましょう。
薬局変更前の確認事項
- 業務災害と通勤災害のどちらに該当するか
- 変更先が労災保険指定薬局か
- 初回利用か指定薬局からの途中変更か
- 変更理由が具体的に記載されているか
- 変更前後の薬局名と所在地が正確か
- 初回の労災書類と事故状況が一致しているか
- 会社や薬局の証明欄に記入漏れがないか
- 処方箋の有効期間内に薬を受け取れるか
手続きの順番を再確認
- 新しく利用したい薬局を決める
- その店舗が労災保険指定薬局か直接確認する
- 業務災害か通勤災害かを確認する
- 様式第6号または様式第16号の4を用意する
- 初回書類を確認しながら必要事項を記入する
- 会社へ事業主証明や労働保険番号の確認を依頼する
- 変更後の薬局へ書類と処方箋を提出する
- 不足書類があれば指定された期限までに補完する
特に重要なのは、薬を受け取る前に変更先の指定状況を確認することです。
指定外薬局を利用すると、薬剤費をいったん全額支払い、別途、療養の費用請求を行わなければならない可能性があります。
よくある間違い
一つ目は、病院へ労災書類を提出しているため、薬局では何も手続きしなくてよいと考えることです。
病院と薬局は別の指定機関なので、薬局にも必要な書類を提出します。
二つ目は、病院を変更した際に、病院分の様式第6号だけを用意し、薬局分を忘れることです。
新しい病院と新しい薬局を利用する場合は、それぞれの提出先に応じた書類を準備してください。
三つ目は、健康保険が使える薬局なら労災保険も当然に使えると考えることです。
健康保険の保険薬局であることと、労災保険指定薬局であることは同じではありません。
四つ目は、変更後の薬局が同じチェーンだから手続き不要と判断することです。
店舗ごとに指定や請求が行われることがあるため、店舗を移る場合は確認が必要です。
会社の担当者が確認したいこと
会社の労務担当者は、本人から薬局変更の相談を受けたときに、変更を認めるかどうかだけを考えるのではなく、必要な療養を継続できるよう手続きを支援することが重要です。
初回請求書の控えから労働保険番号、事故発生日、災害発生状況を確認し、変更届との不一致を防ぎます。
また、病院と薬局の両方を変更する場合は、必要部数を本人へ確認しましょう。
本人に書類を渡した後も、どの薬局へいつ提出するのか、会社証明以外の欄が記入済みかを確認すると、書類が途中で止まるのを防げます。
中小企業では労災手続きの経験が少なく、病院用の書類だけで終わったと思い込むことがあるため注意が必要です。
指定外薬局を利用した後の対応
すでに指定外薬局で支払ってしまった場合でも、直ちに諦める必要はありません。
業務災害では様式第7号関係、通勤災害では様式第16号の5関係の薬局用書類を用い、療養の費用を請求できる可能性があります。
領収書、調剤明細書、薬剤情報などを保管し、薬局に証明を依頼します。
健康保険を誤って使っていた場合は、先に薬局と健康保険の保険者へ連絡し、訂正または返納の手続きを確認してください。
労災の手続きは、事故状況、現在の受診方法、薬局の指定状況、健康保険使用の有無によって必要書類が変わります。
インターネット上の記入例をそのまま転記するのではなく、自分の状況に合っているか確認してください。
薬局を変更すること自体は難しい手続きではありません。
しかし、様式番号、提出先、指定薬局の確認という三つのポイントを間違えると、書類の再提出や立替払いが発生しやすくなります。
まず変更後の薬局へ電話をして、労災保険指定薬局であることと必要書類を確認しましょう。
そのうえで、業務災害なら様式第6号、通勤災害なら様式第16号の4を準備するのが基本です。
この記事で紹介した内容は一般的な取扱いです。
個別の事故について労災に該当するか、どの様式を使用するか、どの費用が支給対象になるかは、具体的な事情によって判断が異なる場合があります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
また、書類の作成や会社との調整、健康保険から労災保険への切替えなどで判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署や社会保険労務士へ確認し、最終的な判断は専門家にご相談ください。