社会保険・年金

傷病手当金が打ち切りになる理由は?不支給・減額の基準を整理

こんにちは。

もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

傷病手当金は、一度支給が始まれば必ず通算1年6か月分を受け取れるわけではありません。

療養中でも労務不能と認められなくなった場合や、給与の支払い、他の給付との調整などによって、途中から不支給や減額になることがあります。

ただし、少し働いた、医師から軽作業なら可能と言われた、といった事情だけで必ず傷病手当金が打ち切られるわけでもありません。

現在の仕事内容、実際の就労状況、医師の意見、給与の支払いなどを踏まえて、加入している健康保険が個別に判断します。

特に、うつ病や適応障害などで長期間休職している方にとって、不支給決定通知書が届くと今後の生活にも直接影響します。

この記事では、傷病手当金が途中で支給されなくなる主な理由と、不支給や減額の通知を受けたときに確認すべきポイントを実務の流れに沿って整理します。

  • 傷病手当金が途中で打ち切られる主な理由
  • リハビリ出勤やアルバイトをした場合の考え方
  • 不支給決定や減額になったときの確認方法
  • 再申請や審査請求、打ち切り後の対応

傷病手当金が打ち切りになる理由は?不支給・減額時の対処法

傷病手当金の打ち切りとなる主な理由

傷病手当金は、業務外の病気やけがの療養のため仕事ができず、一定の待期を経たうえで、休業期間について十分な給与を受けられない場合に支給される制度です。

途中で支給されなくなる場合は、基本的にこの支給要件のどこかを満たさなくなったか、他の給付との調整が生じたと考えると整理しやすくなります。

傷病手当金が支給されるための基本的なポイント

  • 業務外の病気やけがの療養中であること
  • 療養のため本来の仕事ができない状態であること
  • 連続する3日間の待期を含め4日以上休んでいること
  • 休業期間について十分な給与を受けていないこと

なお、通算1年6か月に達したことによる支給終了は、一般にイメージされる「途中で突然打ち切られた」という問題とは少し性質が異なります。

この記事では途中の不支給や減額を中心に説明し、支給期間満了については後ほど触れます。

労務不能と認められなくなるケース

傷病手当金の打ち切り理由として、まず確認したいのが 療養のため労務に服することができない状態、つまり「労務不能」と認められるかどうか です。

ここでいう労務不能は、「病名が付いているか」「まだ通院しているか」だけで判断されるものではありません。

医師の意見を重要な資料としながら、あなたが実際にどのような仕事をしているのか、その仕事に耐えられる状態なのかなどを踏まえて保険者が判断します。

たとえば、同じ腰痛でも、デスクワークを中心とする人と重量物を日常的に扱う人では、仕事に与える影響が違います。

精神疾患でも同様で、診断名だけを見て一律に労務不能かどうかが決まるわけではありません。

実際の業務内容や勤務環境も重要です。

また、医師が傷病手当金支給申請書の療養担当者記入欄で認める労務不能期間が前回より短くなった場合、その後の期間について支給されないことがあります。

医師から「そろそろ仕事に戻れる状態」と判断された場合には、傷病手当金の前提そのものが変わってくるためです。

公休日だから支給されないわけではありません。

療養のため労務不能の状態が続いていれば、土曜日・日曜日・祝日など本来出勤する予定のない公休日も、傷病手当金の支給期間に含まれることがあります。

待期3日についても、有給休暇や公休日を含めて成立させることができます。

一方で、療養のための休業ではなく単に会社を休んでいるだけでは支給対象になりません。

医師から治療や療養に関する指示が出ているにもかかわらず、正当な理由なく従っていないような場合も、療養の実態について確認される可能性があります。

傷病手当金は「病気があること」ではなく、「その病気やけがの療養のため、現在の仕事ができないこと」が重要です。

不支給理由として労務不能性が問題になっている場合は、病名だけではなく、仕事内容と症状によって何ができないのかを整理する必要があります。

リハビリ出勤や時短勤務を始めた場合

リハビリ出勤や時短勤務を始めた場合

長期休職から復職するときによく問題になるのが、リハビリ出勤や短時間勤務と傷病手当金の関係です。

実務でも、「まずは午前中だけ会社に行ってみたいが、傷病手当金はどうなるか」という相談があります。

傷病手当金は労務不能であることを前提としています。

そのため、医師の許可を受けていたとしても、実際に会社へ出勤して従来の仕事に従事できる状態になれば、その日は原則として傷病手当金の支給対象にはなりません。

特に注意したいのは、 短時間だから必ず労務不能のままとはいえない ことです。

たとえば通常8時間勤務のところを4時間勤務にしたとしても、その4時間で本来の業務を行い、会社から賃金を受けているのであれば、就労実態を踏まえた判断が必要になります。

一方、「リハビリ出勤」という名称を付けていれば必ず不支給になるわけでもありません。

会社へ来て一定時間を過ごすだけで、業務には従事せず賃金も発生しない試し出勤のような制度もあります。

その場合には、実際に何をしているのか、会社との労働契約上どのように扱われているのかを確認する必要があります。

状態 確認したいポイント
通常勤務へ復帰 労務不能ではなくなったと判断される可能性が高い
時短勤務 勤務時間、業務内容、賃金、医師の就労制限を確認
リハビリ出勤 実際に労務を提供しているか、賃金が発生しているかを確認
会社への短時間の訪問 単なる面談なのか、実際の勤務なのかを区別

また、会社側が「本人の復職支援のためだから問題ないだろう」と考えて独自に勤務を始めさせるのも避けたいところです。

傷病手当金だけでなく、安全配慮や復職判断の問題にもつながります。

復職やリハビリ出勤を始める前に、主治医、会社、加入している健康保険の認識をそろえておくことが重要です。

特に「週2日だけ」「1日2時間だけ」など境界的な働き方をする場合は、開始後に打ち切りを知るのではなく、事前に確認することをおすすめします。

アルバイトや副業をした場合の判断

休職中にアルバイトや副業をすると傷病手当金が必ず打ち切られる、という説明を見かけることがありますが、そこまで単純ではありません。

傷病手当金で問題になるのは、アルバイトという名称ではなく、 その仕事ができることから本来の仕事にも就ける状態と判断されるか という点です。

たとえば、身体的な負担が大きい本業には戻れないものの、療養中に自宅でごく軽い作業を短時間だけ行ったというケースでは、その事実だけで当然に本業についても労務可能とは限りません。

従来から行政上の取扱いでも、本来の業務に代わる性格を持たない軽微な副業や内職については、仕事内容や報酬などを含めて個別に判断する考え方が示されています。

ただし、「少しだけだから申告しなくてよい」という意味ではありません。

勤務した日、労働時間、仕事内容、報酬、契約内容などは、後から説明できるようにしておくべきです。

特に退職後のアルバイトは注意が必要です。

在職中の傷病手当金と、退職後に受ける資格喪失後の継続給付では考え方が異なります。

退職後の継続給付は「継続して」労務不能であることが重要で、一度労務可能になった場合、その後に同じ傷病で再び働けなくなっても継続給付を受けられないことがあります。

たとえば退職後に体調が少し良くなり、いったん働き始めたものの数週間後に再び症状が悪化したケースでは、単純に「通算1年6か月の残りがあるから再開できる」とは考えられません。

これは在職中の通算制度と混同しやすい重要なポイントです。

また、うつ病や適応障害で休職中に、「会社には行けないが自宅なら働ける」というケースもあります。

その事情には十分な合理性がある場合もありますが、保険者から見れば、どの程度の仕事をどのくらい行えているのかは労務不能性を確認する重要な情報になります。

副業やアルバイトを始める場合は、主治医にも仕事内容を具体的に伝え、加入している健康保険にも事前に確認しておくと安全です。

実態を隠して申請することは避けてください。

病気や就労の事実について虚偽の申請を行い、傷病手当金を不正に受けることは認められません。

不正受給が判明すれば返還や給付制限の対象となり、内容によっては刑事上の問題に発展する可能性もあります。

事実どおりに申請することが大前提です。

給与の支払いで不支給や減額になる場合

傷病手当金は、休業中の所得保障を目的とする制度です。

そのため、休んでいる期間について会社から給与などの報酬を受けられる場合には、傷病手当金との調整が行われます。

健康保険法上、休業期間について受けられる報酬が傷病手当金の日額以上であれば、その期間の傷病手当金は原則として支給されません。

一方、会社から支払われる額が傷病手当金より少ない場合には、その差額が支給されることがあります。

これが、傷病手当金の一部支給や減額となる代表的な理由です。

給与と傷病手当金の基本的な関係

  • 傷病手当金以上の報酬がある場合は原則不支給
  • 報酬が傷病手当金より少ない場合は差額支給となる場合がある
  • 有給休暇を取得した日は通常の賃金が出るため原則として調整対象
  • 休職中の各種手当も内容によって確認が必要

会社の実務で特に注意したいのが、傷病手当金支給申請書の事業主証明です。

給与を支払っている期間や金額を会社が証明するため、ここに誤りがあると、実際には無給だったのに支給対象から外れたり、反対に後から過払いとして返還を求められたりする可能性があります。

休職中でも、通勤手当、住宅手当、扶養手当などが継続して支払われる会社があります。

何が傷病手当金との調整対象になるかは支給の性質によって扱いが異なるため、「基本給がゼロだから完全な無給」とだけ考えない方が安全です。

また、会社から見舞金が支給された場合なども、それが一時的な恩恵的給付なのか、就業規則などに基づく賃金・報酬として支給されているものなのかを確認します。

傷病手当金の申請方法や会社・医師が記入する欄について確認したい場合は、 傷病手当金申請書の書き方と提出時の注意点 も参考にしてください。

障害年金など他の給付との調整

障害年金など他の給付との調整

傷病手当金の支給要件を満たしていても、障害年金など別の社会保険給付を受けることになった場合には、併給調整によって傷病手当金が支給されなくなったり、減額されたりすることがあります。

代表的なのが、 同じ傷病を理由とする障害厚生年金や障害手当金との調整 です。

障害厚生年金などを受けられる場合には年金との調整が行われ、一定の場合には傷病手当金が支給されません。

年金の日額換算額が傷病手当金より低いときには、差額が支給される場合があります。

実務で注意したいのは、障害年金が数年前まで遡って認定されるケースです。

傷病手当金をすでに受け取っていた期間について、後から障害年金の受給権が遡って発生すると、その重複期間について改めて調整されます。

その結果、すでに支払われた傷病手当金の一部または全部について返還を求められることがあります。

障害年金の遡及認定では、まとまった返還が生じることがあります。

障害年金が一括で支給されたからといって、その全額をすぐに生活費などへ使ってしまうと、後から傷病手当金の返還が必要になったときに資金繰りが難しくなることがあります。

年金の決定内容と傷病手当金の受給期間を照合しておきましょう。

ほかにも、退職後に傷病手当金の継続給付を受けている人が老齢厚生年金などを受給する場合や、出産手当金を受ける期間には調整があります。

出産手当金については原則として出産手当金が優先されますが、傷病手当金の日額の方が高い場合には差額が支給されることがあります。

さらに、仕事中や通勤途中の事故などが原因であれば、本来は健康保険の傷病手当金ではなく労災保険の対象となります。

最初は私傷病として傷病手当金を受給していて、後から労災と認定された場合には、給付の切り替えや返還が必要になることがあります。

障害年金について詳しく確認したい場合は、 障害年金の受給条件と障害認定日の考え方 も確認してみてください。

退職後の継続給付が打ち切られる場合

在職中に傷病手当金を受けていた人は、会社を退職した後も一定の条件を満たせば、残っている支給期間について傷病手当金を継続して受けられることがあります。

これを資格喪失後の継続給付といいます。

基本的には、資格喪失日の前日までに継続して1年以上の被保険者期間があり、資格喪失時点で傷病手当金を受けている、または受けられる状態であることが必要です。

ここで実務上かなり重要なのが 退職日の勤務 です。

退職日に通常どおり出勤すると、資格喪失時に傷病手当金を受けられる状態ではなかったとして、退職後の継続給付を受けられなくなる可能性があります。

「最後の日くらい挨拶を兼ねて働きたい」と考える方もいますが、退職後も傷病手当金を予定している場合は事前確認が必要です。

また、退職後の継続給付には在職中とは異なる注意点があります。

在職中であれば、現在の制度では途中に就労期間があって傷病手当金が支給されない期間があっても、残りの支給期間を通算できることがあります。

しかし、資格喪失後の継続給付については、 一時的であっても労務可能となった場合、その後に同じ傷病で再び労務不能となっても継続給付が再開しない取扱いがあります。

そのため、退職後に単発アルバイトを始める、短期間だけ再就職する、といった場合は特に慎重な確認が必要です。

退職後に加入する任意継続健康保険にも注意してください。

任意継続に加入したこと自体によって、新たに傷病手当金を受けられるわけではありません。

退職前からの資格喪失後の継続給付について要件を満たしている場合は別ですが、任意継続中に新たに発生した傷病について通常の傷病手当金が支給される制度ではありません。

退職を検討している段階で傷病手当金を受けている場合には、退職日までの勤務状況や健康保険の加入期間を確認し、できれば退職前に保険者へ相談しておくことをおすすめします。

傷病手当金の打ち切り通知への対処法

傷病手当金の不支給決定通知書や一部支給の通知が届いた場合、最初から審査請求を考えるのではなく、まず「なぜその決定になったのか」を特定することが重要です。

単純な記載ミスであれば訂正で解決できる場合がありますし、労務不能性そのものが否定されているのであれば、医師の意見や実際の就労状況を整理する必要があります。

通知を受け取った後は、理由の確認、申請内容の確認、保険者への問い合わせ、必要に応じた再申請や審査請求という順番で進めると整理しやすくなります。

不支給決定通知書の理由を確認する

傷病手当金が支給されなかったときは、まず届いた不支給決定通知書の内容を確認してください。

単に「傷病手当金が打ち切られた」と捉えるのではなく、 どの支給要件について、どの期間が不支給になったのか を確認することが重要です。

主に考えられるのは、労務不能と認められなかった、休業中に給与が支払われていた、障害年金などとの調整があった、資格喪失後の継続給付の要件を満たしていなかった、といったケースです。

主な理由 最初に確認する資料
労務不能と認められない 医師の意見、仕事内容、勤務実績
給与の支払い 給与明細、賃金台帳、事業主証明
年金との調整 年金決定通知書、受給期間
退職後の要件 退職日、出勤状況、被保険者期間
申請内容の不整合 本人・会社・医師の各記入欄

通知だけを読んでも具体的な理由が分かりにくい場合は、協会けんぽの支部や加入している健康保険組合へ問い合わせます。

「なぜ支給されないのですか」だけではなく、「どの期間について、どの支給要件を満たしていないという判断でしょうか」と確認すると整理しやすくなります。

また、不支給になった期間と、それより後の期間を分けて考えることも重要です。

傷病手当金は申請期間ごとに審査されるため、ある月が不支給になったからといって、事情が異なるその後の期間まで当然にすべて不支給になるとは限りません。

不支給決定通知書は捨てずに保管してください。

後で審査請求をする場合にも重要な資料となります。

医師や会社の記載内容を確認する

医師や会社の記載内容を確認する

傷病手当金の申請では、本人だけでなく、会社と医師がそれぞれ申請書を記入します。

そのため、本人の認識では「ずっと休職していて無給」でも、会社や医師の記載内容によって審査結果が変わることがあります。

まず確認したいのが、医師が記載した 労務不能と認めた期間 です。

たとえばあなたは4月1日から4月30日まで休職していたとしても、医師が労務不能と認めた期間を4月1日から4月15日までとしていれば、その後の期間は別途確認が必要になります。

通院日と労務不能期間は必ずしも同じではないため、医師には実際の仕事内容や症状、勤務が困難な理由を正確に伝えておくことが重要です。

ただし、不支給を避けるために事実と異なる内容を書いてもらうよう医師へ依頼することはできません。

あくまで、実際の症状や仕事内容が正しく伝わっていなかった場合に、事実関係を説明して相談するものです。

会社側については、事業主証明欄の勤務状況と給与支払いを確認します。

実際によくあるのが、給与締めとの関係や休職中に支払った手当の処理によって、本人が想定していなかった報酬が申請書に記載されているケースです。

有給休暇を取得していた場合も、その日の賃金との調整があります。

不支給時に照合したい3つの情報

  • 本人が申請した休業期間
  • 会社が証明した出勤日と給与支払状況
  • 医師が認めた労務不能期間

この3つの期間がずれていると、想定していた日数が支給されない原因になります。

まず申請書の控えを並べて、日付を確認してみるとよいでしょう。

不支給後に再申請できるケース

傷病手当金の2回目の申請が不支給になった場合、「もう今後は傷病手当金を申請できないのか」と不安になる方がいますが、必ずしもそうではありません。

傷病手当金は、申請した期間ごとに支給要件を確認します。

そのため、ある期間について労務可能だった、給与が支払われていたなどの理由で不支給になったとしても、その後に再び支給要件を満たす期間が生じれば、改めて申請できる可能性があります。

たとえば在職中に一時的に復職し、その期間は傷病手当金が支給されなかったものの、再び症状が悪化して労務不能となった場合です。

現在の制度では、同一傷病について支給開始日から通算1年6か月の範囲で考えるため、未使用の支給期間が残っていれば対象となる可能性があります。

一方で、 同じ不支給期間について単に同じ内容の申請書をもう一度提出すれば支給される、という意味ではありません。

記載漏れや事実誤認が原因だった場合は、保険者へ事情を確認したうえで、会社や医師に訂正を依頼するなど適切な対応をします。

保険者の判断そのものに納得できない場合は、再提出を繰り返すのではなく、審査請求を検討する問題になります。

退職後の資格喪失後継続給付では取扱いが異なります。

退職後に一度労務可能となった場合、その後同じ病気で再び労務不能となっても継続給付を再開できないことがあります。

在職中の「通算1年6か月」と同じ感覚で判断しないよう注意してください。

また、同じ傷病について通算1年6か月分の支給期間をすでに使い切っている場合、単に症状が再発しただけで新たな1年6か月が始まるものではありません。

支給期間の数え方については、 傷病手当金の1年6か月と通算の数え方 で詳しく解説しています。

傷病手当金の請求権には時効もあります。

長期間申請せずに保留するのではなく、申請できる期間や必要書類について早めに加入先へ確認しましょう。

納得できない場合の審査請求

納得できない場合の審査請求

不支給の理由を確認し、申請書の記載にも誤りがなく、それでも保険者の決定に納得できない場合には、社会保険の審査請求制度を利用できます。

傷病手当金の不支給決定は健康保険の保険給付に関する処分です。

その処分に不服がある場合、社会保険審査官へ審査請求を行うことができます。

審査請求は、原則として処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内です。

期限があるため、「しばらく様子を見てから考えよう」と通知を放置するのはおすすめできません。

まず不支給理由を保険者へ確認し、それと並行して期限を確認しておきましょう。

審査請求までの実務的な流れ

  • 不支給決定通知書の理由を確認する
  • 保険者へ具体的な判断理由を確認する
  • 本人・会社・医師の申請内容を照合する
  • 労務不能の実態や勤務状況を整理する
  • 必要であれば社会保険審査官へ審査請求する

審査請求では、「生活が苦しいので支給してほしい」という事情だけではなく、保険者の判断のどこに問題があると考えるのかを整理することが大切です。

たとえば労務不能性が争点であれば、診断名だけでなく、当時の症状、医師の診療内容、就労制限、実際の仕事内容、本来の業務を行えなかった事情などを時系列で整理します。

給与との調整が争点なら、給与明細や賃金台帳と申請内容を確認します。

社会保険審査官の決定にも不服がある場合には、社会保険審査会への再審査請求という制度があります。

再審査請求についても期限があり、審査官の決定書の謄本が送付された日の翌日から原則2か月以内です。

審査請求は、不支給通知を受け取った人が必ず行うべき手続ではありません。

単純な記載ミスなら保険者への確認や訂正で解決する場合があります。

一方、保険者の法的・事実的な判断自体を争うのであれば、期限を意識して証拠や経過を整理する必要があります。

事案によって争点や必要資料が大きく異なります。

期限が迫っている場合や、労務不能性など判断の難しい問題がある場合には、社会保険制度に詳しい専門家への相談も検討してください。

傷病手当金の打ち切り後に備える

傷病手当金が打ち切られた、あるいは通算1年6か月の支給期間を使い切った場合には、その理由を確認すると同時に、今後の生活保障についても早めに考える必要があります。

まず確認したいのは、今回の終了が「途中の不支給」なのか「通算1年6か月の満了」なのかです。

途中の不支給であれば、その後に再び支給要件を満たして受給できる可能性があります。

一方、同一傷病について支給期間を使い切った場合は、原則としてその傷病の傷病手当金は終了します。

療養が長期化しており、日常生活や仕事に大きな制限が残っている場合には、障害年金の対象となる可能性があります。

傷病手当金の「支給開始日から通算1年6か月」と、障害年金の「原則として初診日から1年6か月後の障害認定日」は起点が異なるため、混同しないようにしてください。

また、退職している場合には雇用保険との関係も確認します。

基本手当、いわゆる失業手当は、原則として働く意思と能力があり、求職活動を行えることが前提です。

そのため、まだ病気やけがで働けない状態なら、すぐに失業手当を受けるのではなく、受給期間延長の対象になるかを確認することになります。

会社に在籍している人は、傷病手当金の終了日と会社の休職期間満了日を分けて確認してください。

傷病手当金が終わったから自動的に退職になるわけではありませんし、傷病手当金をまだ受けられるから会社も休職を続けなければならないわけでもありません。

会社の休職制度は就業規則に基づいて運用されます。

傷病手当金の支給終了後に検討する制度は、現在の雇用状況、退職日、健康状態、障害の程度、加入していた社会保険などによって変わります。

傷病手当金だけを単独で考えず、障害年金、雇用保険、会社の休職制度を含めて整理することが大切です。

なお、国民健康保険には、一般的な会社員向け健康保険と同じ形の傷病手当金が原則として用意されているわけではありません。

退職後の健康保険を変更すれば新たな傷病手当金が始まる、と考えないよう注意してください。

傷病手当金の打ち切りで最も重要なのは、 「打ち切られた」という結果だけを見るのではなく、どの支給要件を満たさないと判断されたのかを確認すること です。

労務不能性、勤務実態、給与、医師の意見、年金との調整、退職後の条件など、原因によって取るべき対応はまったく異なります。

制度の取扱いや申請様式は変更されることがあります。

正確な情報は公式サイトをご確認ください。

また、個別の就労状況や不支給決定については一律に判断できないため、最終的な判断は専門家にご相談ください。

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