こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
発達障害や知的障害も、障害年金の対象になります。
ただし、ASDやADHDなどの診断を受けているだけで自動的に受給できるわけではなく、日常生活や労働にどの程度の制限が生じているかが重要です。
また、発達障害の障害年金では、初診日の考え方が非常に重要です。
子どもの頃から特性があったとしても、大人になって初めて医療機関を受診した場合、その受診日が初診日となるケースがあります。
一方、生来の知的障害では初診日の扱いが異なります。
働いている場合についても、就労しているという事実だけで対象外になるわけではありません。
障害者雇用なのか、どのような配慮を受けているのか、仕事内容や勤務状況はどうなのかなど、実際の就労状況を含めて判断されます。
この記事では、発達障害や知的障害で障害年金を検討するときに特に重要となる、等級、初診日、20歳前障害、就労、診断書などのポイントを実務目線で整理します。
- 発達障害や知的障害が障害年金の対象となる考え方
- 発達障害と知的障害で異なる初診日の扱い
- 20歳前障害の所得制限と働いている場合の判断
- 診断書や病歴・就労状況等申立書の重要ポイント

発達障害で障害年金を受ける条件と等級
発達障害で障害年金を考えるときは、まず「診断名」から考えるのではなく、初診日と加入していた年金制度、そして現在の日常生活の状態を分けて整理することが大切です。
特に成人後にASDやADHDと診断された場合、生まれつきの特性であることと、障害年金制度上の初診日は別に考える必要があります。
発達障害・知的障害も対象になる
障害年金というと、身体に重い障害がある場合をイメージする方も少なくありませんが、 発達障害や知的障害も障害年金の認定対象 です。
障害年金の障害認定基準では、精神の障害の中に知的障害や発達障害が位置付けられており、一定の障害状態に該当すれば障害基礎年金や障害厚生年金を受けられる可能性があります。
発達障害には、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害・限局性学習症などがあります。
実際の障害年金の審査では、「ASDだから2級」「ADHDだから対象外」というように病名だけで判断するわけではありません。
重要なのは、その特性によってあなたの日常生活や社会生活にどの程度の制限が生じているかです。
たとえば、対人関係をうまく構築できない、相手の意図や場面に応じた対応が難しい、予定変更があると強く混乱する、金銭管理や公共料金の支払いを一人では管理できない、役所から届いた書類の意味を理解して手続きすることが難しいといった状態が考えられます。
仕事についても、複数の指示が出ると優先順位を付けられない、突然の変更に対応できない、周囲とのコミュニケーションがうまくいかず離職を繰り返すなど、障害特性が就労に影響することがあります。
診断名より生活上の制限を見る
発達障害の場合、医療機関では比較的落ち着いて会話できていても、家庭や職場では多くの援助を受けていることがあります。
この違いは重要です。
診察室で数十分受け答えができることと、一人で毎日の生活を継続して管理できることは同じではありません。
たとえば、家族が毎朝起こしている、服薬を家族が確認している、買い物をすると使い過ぎるため金銭を家族が管理している、重要な手続きには家族が同行しているというケースもあります。
このような援助が日常的に必要であれば、その実態を含めて障害状態を考えていく必要があります。
発達障害の障害年金は、診断名だけで決まる制度ではありません。
「一人でできるか」だけでなく、家族や支援者からどの程度の援助を受けることで生活が成り立っているかを具体的に確認することが重要です。
また、障害年金の種類は初診日にどの年金制度に加入していたかによって変わります。
国民年金加入中や20歳前の年金未加入期間に初診日があり、一定の要件を満たした場合は障害基礎年金の1級または2級が対象です。
一方、厚生年金加入中に初診日がある場合には障害厚生年金となり、1級・2級に加えて3級もあります。
このため、同じ程度の発達障害であっても、初診日が学生時代だったのか、会社員として厚生年金に加入していた時期だったのかによって、対象となる制度が変わることがあります。
特に成人後に初めて診断された方では、この初診日の確認が重要になります。
障害年金そのものの初診日、保険料納付要件、障害認定日などについては、 障害年金の受給条件と初診日・納付要件の解説 もあわせて確認すると、制度全体を整理しやすくなります。
発達障害の等級は日常生活で決まる

「ASDなら障害年金は何級ですか」「ADHDなら2級になりますか」という質問は、実際によくあります。
しかし、 発達障害の診断名だけから障害年金の等級を決めることはできません。
同じASDという診断であっても、ほぼ自立した生活を送れる方もいれば、日常的に家族や支援者による援助を必要とする方もいるためです。
精神の障害に関する障害年金では、診断書に記載される「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」が重要な判断材料になります。
日常生活能力の判定では、適切な食事、身辺の清潔保持、金銭管理と買い物、通院と服薬、他人との意思伝達や対人関係、身辺の安全保持や危機対応、社会性といった日常生活の項目について評価されます。
ここで重要なのは、「やろうと思えば一度はできる」という意味ではなく、 日常生活の中で継続的かつ適切に行えるか という視点です。
たとえば一人でコンビニへ行って食事を購入できるとしても、栄養を考えて毎日適切に食事を準備できるかは別の問題です。
一度銀行でお金を下ろせるとしても、収入と支出を管理し、必要な支払いを忘れず、衝動的な浪費を防げるかというところまで見ていく必要があります。
日常生活能力の評価は総合的に行われる
診断書には「日常生活能力の程度」という全体的な評価もあります。
また、「日常生活能力の判定」の各項目を数値化した平均と、「日常生活能力の程度」の組み合わせにより、精神の障害に係る等級判定ガイドライン上の等級の目安が示されます。
ただし、 この組み合わせだけで障害年金の等級が自動的に決定するわけではありません。
病状、治療経過、生活環境、家族からの援助、就労の有無、職場で受けている配慮なども含め、診断書全体を総合して判断されます。
| 確認される項目 | 主な内容 | 実務上の確認例 |
|---|---|---|
| 日常生活能力の判定 | 食事、清潔保持、金銭管理、通院、対人関係、安全保持、社会性など | 実際に誰の援助を受けているか |
| 日常生活能力の程度 | 日常生活全体で必要となる援助の程度 | 単身生活を想定した場合にどこまで自立できるか |
| 病状・状態像 | 発達障害の特性や併存する精神症状など | 特性によって具体的に何が困難になっているか |
| 生活環境 | 家族や支援者から受けている援助の状況 | 食事、金銭、通院、行政手続きなどの支援 |
| 就労状況 | 仕事内容、勤務時間、職場の配慮、欠勤、指導状況など | 援助や配慮がなければ同じ仕事を続けられるか |
特に家族と同居している方では、援助が生活の一部になり過ぎていて、本人も家族も「普通にできている」と考えてしまうことがあります。
たとえば母親が毎日服薬を準備している状態でも、「薬は自分で飲んでいます」とだけ答えてしまうことがあります。
しかし、薬を準備し、飲み忘れを確認してもらわなければ継続できないのであれば、その援助も含めて実態を整理する必要があります。
厚生労働省のガイドラインでも、診断書の評価だけではなく、療養状況、生活環境、就労状況などを含めて総合評価する考え方が示されています。
発達障害の場合には就労しているケースも多いため、私は特に「できている結果」ではなく、「その結果を維持するためにどの程度の援助が必要なのか」を確認することが大切だと考えています。
障害年金1級・2級・3級の基本的な基準については、 障害年金の等級基準と判断ポイント でも詳しく整理しています。
高いIQでも障害年金の対象になる
発達障害についてよくある誤解の一つが、「IQが高ければ障害年金は受けられない」というものです。
しかし、 IQの数値だけを理由に障害年金の対象外になるわけではありません。
発達障害では、知的能力そのものと、社会生活や対人関係を円滑に送る能力が必ずしも一致しないためです。
たとえば、学校の成績は良く、難しい文章を読んだり計算したりすることは問題なくても、相手の表情や言葉の裏にある意図を読み取れないことがあります。
また、一つの仕事には高い集中力を発揮できても、複数の仕事が同時に発生すると優先順位を付けられず混乱することもあります。
急な予定変更によって強い不安やパニックが生じたり、こだわりが強いために仕事の進め方を変更できなかったりするケースもあります。
こうした方の場合、知識や学力だけを見ると「生活に問題がなさそう」と思われやすいのですが、実際には就職しても対人関係でつまずき、短期間で退職することを繰り返している場合があります。
障害年金で重要なのは、知能検査の結果だけではなく、 その特性によって現実の日常生活や労働にどの程度の制限が出ているのか という点です。
「できる能力」と「安定して生活できる能力」は別に考える
発達障害では、能力に大きな凸凹があることがあります。
非常に得意な分野では高い能力を示す一方で、日常生活上の基本的な管理を苦手としていることも珍しくありません。
たとえばパソコン操作には詳しいのに、電気料金や税金の支払期限を管理できない。
専門的な仕事はできるのに、身だしなみを整えたり毎日決まった時刻に出勤したりするためには家族の声掛けが必要。
資格試験には合格できても、職場の人間関係を調整することが難しく長期間の就労が続かない。
このようなケースでは、「頭が良い」という一面だけでは生活全体の状態を評価できません。
障害年金では「結果として生活できているか」だけではなく、 その生活が家族や支援者の援助によって成り立っているのか という視点も重要です。
また、家族と同居している方の場合、本来本人が行うはずの生活管理を家族が無意識に代行していることがあります。
食事は家族が準備する、衣類は家族が洗濯する、公共料金は親が管理する、病院の予約も家族が取る、役所の書類は親が記入するといった状態です。
本人にとっては子どもの頃から続いているため、自分が援助を受けているという感覚がない場合もあります。
診断書を依頼するときには、このような日常生活の実態を医師に具体的に伝えることが大切です。
「困っています」という抽象的な説明だけではなく、「一人だと何ができず、誰がどのように支援しているのか」を整理すると、実態が伝わりやすくなります。
もちろん、IQが高いというだけで障害年金を受けられるという意味でもありません。
最終的には障害認定基準に基づき、日常生活能力や就労状況などを総合して判断されます。
反対に、「大学を卒業した」「資格を持っている」「学力が高い」という事情だけで最初から請求を諦める必要もありません。
生活全体を見ること。
この視点が大切ですよ。
発達障害の初診日は初めて受診した日

発達障害の障害年金で、等級と同じくらい重要なのが初診日です。
発達障害は一般に発達期から特性がみられるものですが、障害年金制度では「生まれつきの特性だから初診日は出生日」とは取り扱いません。
知的障害を伴わない発達障害では、その発達障害の症状について初めて医師の診療を受けた日が原則として初診日 になります。
日本年金機構も、知的障害のない発達障害については、その症状で初めて受診した日を初診日として取り扱うことを示しています。
たとえば、子どもの頃から忘れ物が多い、集団行動が苦手、友人関係をうまく構築できないといった特性があったとしても、医療機関を受診せず30歳まで生活してきたとします。
そして30歳のときに仕事上のトラブルなどをきっかけとして精神科を受診し、ASDやADHDと診断された場合には、その発達障害の症状について初めて医師の診療を受けた日が初診日となるのが基本です。
初診日は受けられる年金の種類を左右する
初診日が重要なのは、その日に加入していた年金制度によって、障害基礎年金になるのか障害厚生年金になるのかが変わるためです。
たとえば30歳の会社員が厚生年金に加入している期間中に初めて発達障害について受診した場合、他の要件も満たせば障害厚生年金として請求することになります。
障害厚生年金には1級・2級だけでなく3級があります。
一方、国民年金加入中に初診日があった場合、障害基礎年金では1級・2級が対象で、3級という制度はありません。
成人後に発達障害と診断された場合は、まず「初めて医療機関を受診した日はいつか」「その日に厚生年金へ加入していたか」を確認することが重要です。
また、20歳以降に初診日がある場合には、原則として保険料納付要件も確認されます。
そのため、「今は保険料をきちんと納めている」というだけではなく、初診日の前日時点で所定の納付要件を満たしていたかを確認しなければなりません。
現在の病院が必ず初診の医療機関とは限らない
実務では、現在通院している精神科を「最初の病院」と思っていたものの、詳しく話を聞くと何年も前に別の心療内科を受診していたというケースがあります。
また、当時は発達障害と診断されておらず、うつ状態、不安、適応障害、不眠など別の病名で診療を受けている場合もあります。
障害年金の初診日は、現在の診断名が初めて付いた日と必ず一致するわけではありません。
以前の症状と現在請求しようとしている傷病との関係によっては、さらに前の受診歴を確認する必要があります。
そのため、成人後の発達障害で請求を検討するときは、 「これまで精神科、心療内科、小児科などを受診したことが本当に一度もなかったか」 を時系列で確認することが大切です。
以前の医療機関が廃院している、カルテの保存期間が過ぎているなどの事情があると、初診日の証明が難しくなることもあります。
障害年金を検討し始めた段階で、診察券、お薬手帳、紹介状、健康保険の記録など、過去の受診歴を確認できる資料が残っていないか探しておくとよいでしょう。
発達障害では「診断を受けた日」と「障害年金上の初診日」が一致しない場合があります。
初診日を自己判断で決めて申請準備を進めず、過去の受診歴を確認したうえで整理することが大切です。
知的障害の初診日は出生日として扱う
発達障害と混同しやすいのが、知的障害における初診日の扱いです。
生まれながらの知的障害については、障害年金の審査では出生日を初診日として取り扱います。
この点は、知的障害を伴わない発達障害との大きな違いです。
そのため、生来の知的障害がある方については、20歳を過ぎてから初めて精神科や専門医を受診した場合であっても、「20歳を過ぎて初診日がある」とは通常扱いません。
出生日を初診日として、20歳前の傷病による障害基礎年金を検討することになります。
また、生来の知的障害の場合には、通常の障害年金請求で必要となる初診日の証明、つまり受診状況等証明書等による証明が不要となる取扱いがあります。
これは、障害年金の実務上かなり大きな違いです。
発達障害と知的障害を同じ扱いにしない
「発達障害も知的障害も生まれつきなのだから、どちらも初診日は出生日ではないのですか」と疑問に思う方もいると思います。
しかし、障害年金制度では両者を同じようには扱いません。
| 障害 | 初診日の基本的な考え方 | 20歳前障害との関係 |
|---|---|---|
| 生来の知的障害 | 出生日として取り扱う | 原則として20歳前障害として検討 |
| 知的障害を伴わない発達障害 | 発達障害の症状で初めて医師の診療を受けた日 | 実際の初診日が20歳前かどうかで判断 |
たとえばASDがあっても知的障害を伴わず、初めて医療機関を受診したのが25歳であれば、単に「ASDは生まれつきだから」という理由だけで20歳前障害にはなりません。
一方、生来の知的障害であれば、20歳を過ぎてから初めて医療機関を受診したケースでも、出生日を初診日として審査する扱いがあります。
日本年金機構も、生来の知的障害では初診日の証明が不要で、出生日に置き換えて審査する一方、知的障害のない発達障害は実際にその症状で初めて受診した日を初診日とする取扱いを示しています。
すべての知的障害が出生日になるわけではない
注意したいのは、知的障害という診断名があれば、すべて機械的に出生日が初診日になるわけではないことです。
たとえば頭部外傷や高熱など、出生後の原因によって知的障害が生じた場合には、原因となった傷病について初めて診療を受けた日を確認する必要があります。
また、発達障害と知的障害を併存している方もいます。
この場合には、生育歴、過去の診断、学校での支援状況、療育手帳の取得時期などを確認しながら整理することになります。
病名だけを切り取って「発達障害だからこの日」「知的障害だからこの日」と単純に判断するのではなく、障害がどのような経過で認識され、医療や支援につながってきたのかを見ることが大切です。
「発達障害は生まれつきだから、必ず20歳前障害になる」という理解は正確ではありません。
知的障害を伴わない発達障害では、成人してから初めて受診した日が初診日となることがあります。
知的障害のあるお子さんが20歳を迎える前に障害年金を検討する場合は、現在の診断書だけでなく、幼少期からの療育歴、学校生活、卒業後の進路、日常生活で家族がどのような援助をしているのかも整理しておくことをおすすめします。
20歳になってから急に情報を集めるより、少し前から準備しておくほうが申立書も作成しやすくなります。
発達障害の障害年金申請で重要なポイント
発達障害の障害年金では、等級だけを見るのではなく、20歳前障害に該当するか、どのような環境で働いているか、日常生活上どのような援助を受けているかを整理する必要があります。
ここからは、実際に請求を検討するときに確認しておきたいポイントを説明します。
20歳前障害は所得制限に注意する
20歳前に初診日がある場合、一定の要件を満たせば20歳前の傷病による障害基礎年金を受けられる可能性があります。
生来の知的障害のほか、知的障害を伴わない発達障害でも、実際に発達障害の症状について医師の診療を受けた日が20歳前であれば、20歳前傷病による障害基礎年金として検討することになります。
20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、通常の障害年金請求で確認する保険料納付要件は問われません。
20歳になる前は、原則として国民年金の被保険者として保険料を納付する義務がないためです。
一方で、20歳前の傷病による障害基礎年金には、通常の保険料納付を前提とした障害基礎年金とは異なる支給制限があります。
その代表的なものが、 受給者本人の前年所得による支給制限 です。
所得制限は親ではなく本人の所得を見る
2026年度の日本年金機構の案内では、扶養親族等がいない場合、前年所得が3,761,000円を超えると年金額の2分の1が支給停止となり、4,794,000円を超えると全額が支給停止となります。
| 本人の前年所得 | 障害基礎年金の取扱い |
|---|---|
| 3,761,000円以下 | 所得による支給停止なし |
| 3,761,000円を超え4,794,000円以下 | 年金額の2分の1を支給停止 |
| 4,794,000円を超える | 全額支給停止 |
扶養親族等がいる場合には、その人数や区分に応じて所得制限額が加算されます。
また、前年所得による支給制限は、原則としてその年の10月分から翌年9月分まで適用されます。
ここで非常によく誤解されるのが、「親の所得が高いと障害年金を受けられない」という点です。
20歳前傷病による障害基礎年金の所得制限で確認するのは、原則として障害年金を受ける本人の前年所得です。
親と同居している、親の年収が高い、親が会社経営者である、といった事情だけを理由として支給停止になる制度ではありません。
知的障害のあるお子さんの20歳時の障害年金については、親御さんがこの点を心配されているケースが少なくありません。
親の所得と本人の所得は分けて考えてください。
所得制限の基準額や扶養親族に応じた加算額、その他の支給制限については年度によって変更される可能性がありますので、最新情報は必ず公的機関で確認しましょう。
日本年金機構「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」 に最新の取扱いが掲載されています。
障害認定日と請求時期にも注意する
20歳前に初診日があれば、必ず20歳の誕生日からすぐ障害年金を受けられるというわけでもありません。
障害認定日は、原則として初診日から1年6か月を経過した日です。
20歳前の年金未加入期間に初診日があり、1年6か月を経過する日が20歳到達日より前である場合は、20歳到達日が障害認定日になります。
ここでいう20歳到達日は、法律上は20歳の誕生日の前日です。
反対に、初診日が19歳6か月を過ぎているなど、初診日から1年6か月を経過する日が20歳到達日より後になる場合には、原則としてその1年6か月経過日が障害認定日となります。
所得制限額や障害年金の年金額は年度によって変更される場合があります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
また、20歳前障害に該当するかどうかは、初診日の状況によって変わります。
単に「子どもの頃から症状があった」というだけで判断しないようにしましょう。
20歳が近いお子さんについて請求を準備する場合は、診断書をいつ取得するのか、障害認定日はいつなのか、病歴・就労状況等申立書にどの期間を書くのかをあらかじめ整理しておくと手続きが進めやすくなります。
働きながらでも障害年金は受給できる

発達障害の方から特によく聞かれるのが、「働いていたら障害年金はもらえないのでしょうか」という質問です。
結論として、 働いているという理由だけで障害年金の対象外になるわけではありません。
これは発達障害の障害年金を理解するうえで、とても重要なポイントです。
インターネット上では「正社員なら無理」「フルタイムなら2級は無理」といった単純な説明を見かけることがありますが、実際の認定では、就労しているという一つの事実だけで判断するわけではありません。
精神の障害に関する等級判定では、仕事の種類や内容、勤務状況、職場で受けている援助や配慮、周囲との意思疎通の状況などを確認します。
また、仕事を継続することで、就労以外の日常生活能力が著しく低下している場合には、仕事中だけでなく帰宅後や休日の状態も考慮する考え方が示されています。
同じ「会社員」でも働き方は大きく違う
たとえば、AさんとBさんがどちらも週5日、同じ会社で働いているとします。
Aさんは一般の従業員と同じ仕事内容を一人で判断し、顧客対応、電話、予定変更にも対応している。
一方、Bさんは障害者雇用で、担当する仕事を一種類に限定され、毎朝上司から具体的な指示を受け、わからない場合には支援担当者が横について確認している。
この2人を「週5日働いている」という事実だけで同じ状態と評価することは適切ではありません。
具体的には、次のような事情を整理します。
- 一般雇用か障害者雇用か
- 仕事内容が限定されているか
- 単純・反復的な業務が中心か
- 勤務時間や勤務日数を短縮しているか
- 上司や同僚による継続的な援助があるか
- 指示を文章や図で示してもらっているか
- 急な業務変更への対応が可能か
- 対人業務や電話対応を免除されているか
- 欠勤、遅刻、早退がどの程度あるか
- 就労後の日常生活がどの程度維持できているか
障害年金では、 「働いているか」だけではなく、「どのような援助や配慮があるから働けているのか」 まで確認することが重要です。
給与額だけで判断されるわけでもない
給与を受け取っていることも就労状況を判断する一つの情報にはなりますが、給与額だけで障害等級が機械的に決まるものではありません。
一般企業で働いている場合でも、実際の仕事内容や援助、勤務の安定性などを含めて総合的に見ていきます。
発達障害の場合、特定の作業能力が高いため一定の収入を得られていても、職場内の調整を家族や支援機関が行っていたり、仕事以外の日常生活の大部分を家族が支えていたりするケースがあります。
そのため、収入だけを見て「これだけ稼いでいるから障害は軽い」と単純には考えません。
一方、一般雇用で長期間安定して働き、特別な援助をほとんど受けず、家庭でも自立した生活を継続できているのであれば、その就労実態は認定上の重要な判断材料になります。
つまり、「働いていても必ず受給できる」という意味でもありません。
実務では、働いているか、働いていないかという二択ではなく、その中身を細かく見ることが重要です。
申請する際には、雇用形態だけではなく、仕事内容、周囲の援助、勤務時間、欠勤状況、仕事から帰った後の生活まで整理しておくとよいでしょう。
障害者雇用では配慮や支援も確認される
障害者雇用で働いている場合も、「仕事をしているから障害年金2級にはならない」と単純に判断することはできません。
精神の障害に係る等級判定ガイドラインでは、障害者雇用制度による就労や就労系障害福祉サービスを利用した就労について、受けている援助の内容を含めて評価する考え方が示されています。
特に発達障害では、一般企業で働いている場合であっても、仕事が保護的な環境下での単純かつ反復的な業務である場合、執着が強く臨機応変な対応が困難なため常時の管理・指導が必要な場合、他の従業員との意思疎通が難しく継続的な指導を必要とする場合などについて、2級の可能性を検討する考え方が示されています。
つまり、会社名や雇用契約上の肩書だけを見るのではありません。
実際にどのような環境で仕事をしているのかが重要です。
この就労評価の考え方については、厚生労働省が公表している一次資料で確認できます。
厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドラインの実施等について」 では、発達障害の就労状況について具体的な考慮要素が示されています。
就労状況で整理したい具体例
- 口頭指示では混乱するため指示書を作成してもらっている
- 複数業務を担当せず決められた業務だけを行っている
- ジョブコーチや支援担当者が定期的にフォローしている
- 対人業務や電話対応を免除されている
- 勤務時間や出勤日数を減らしている
- 予定変更がある場合は事前に説明してもらっている
- 上司が作業内容を頻繁に確認している
これらは単なる「職場の優しさ」ではなく、障害があっても働き続けるために必要な環境調整である場合があります。
そして、障害年金の審査では、その援助や配慮の有無が就労実態を把握する重要な材料になります。
本人が配慮を配慮と認識していないこともある
発達障害の方への職場配慮が長く続いている場合、本人にとってそれが当たり前になっていることがあります。
「特に配慮は受けていません」と本人が話していても、詳しく聞いてみると、電話は取らなくてよい、接客はしなくてよい、作業内容は毎日同じ、上司が一つずつ作業を指示している、疲労が強い日は休憩時間を増やしている、といった対応が行われている場合があります。
このようなケースでは、「配慮あり」と一言書くだけでは、実態が十分伝わりません。
何が苦手だから、会社がどのような対応をしており、その対応がなければどのような問題が生じるのかまで整理すると、状況を説明しやすくなります。
職場の配慮を整理するときは、 「配慮の内容」「配慮が必要な理由」「配慮がなかった場合に起こること」 の3点をセットで考えるとわかりやすくなります。
また、勤務そのものは継続できていても、帰宅すると疲れ切って着替えられない、食事を家族が用意しなければ食べられない、休日はほぼ寝て過ごしているという場合もあります。
就労を維持するために生活のほかの部分が大きく犠牲になっているのであれば、その状態も含めて整理する必要があります。
会社側から見ても、障害年金を受給していることと就労できるかどうかは別の問題です。
雇用管理では、本人の障害年金の有無ではなく、実際の業務遂行能力や必要な合理的配慮を個別に確認することが重要になります。
診断書と申立書で生活状況を伝える
発達障害や知的障害で障害年金を請求するとき、中心となる書類の一つが 精神の障害用の診断書 です。
障害年金では、医師が記載した診断書をもとに病状や日常生活能力などが確認されます。
そのため、「診断名さえ書かれていればよい」という書類ではありません。
診断書には、現在の病状、治療歴、発育・養育歴、教育歴、職歴、日常生活能力、就労状況など、さまざまな情報が記載されます。
特に発達障害や知的障害では、日常生活能力に関する項目と就労状況が重要です。
ここで注意したいのは、診察室で医師とある程度問題なく会話できることと、一人で日常生活を自立して送れることは同じではないという点です。
診察は一般に限られた時間で行われます。
そのため、医師が家庭内での実際の生活状況をすべて把握しているとは限りません。
診察で伝えていないことは診断書にも反映されにくい
たとえば、母親が毎朝起こしている、食事はすべて家族が準備している、通院日を家族が管理している、服薬も家族が確認している、ネット通販で使い過ぎるため金銭を親が管理している、といった事情があるとします。
ところが診察では、本人が「仕事には行っています」「薬は飲んでいます」とだけ話していることがあります。
そうすると、実際には多くの援助によって生活が維持されているにもかかわらず、その情報を医師が十分認識していないことがあります。
診断書を依頼する前に、日常生活で困っていることや家族から受けている援助を具体的に整理しておくことが重要です。
もちろん、医師に対して「このように書いてください」と等級に合わせた記載を求めるという意味ではありません。
大切なのは、診断書の作成に必要となる日常生活の事実を正確に伝えることです。
病歴・就労状況等申立書では経過を時系列で整理する
もう一つ重要なのが、病歴・就労状況等申立書です。
診断書は医師が作成しますが、申立書では、これまでどのような経過をたどってきたのかを本人側から説明します。
発達障害や知的障害の場合、成人後の数年間だけを書くのではなく、幼少期、学校生活、進学、就職、転職、現在の生活までを時系列で整理することが重要です。
生まれつきの特性がどのように生活へ影響してきたのかを見るためです。
申立書で整理したい内容
- 幼少期の発達や集団生活の状況
- 学校での対人関係や学習上の困難
- 特別支援教育や支援機関を利用した経緯
- 不登校や休学などがあった場合の状況
- 卒業後の進学・就職の状況
- 転職や退職を繰り返した理由
- 職場で受けている配慮や指導
- 家庭で家族から受けている援助
- 金銭管理や行政手続きなどの困難
たとえば「人間関係が苦手だった」と書くよりも、「相手の冗談をそのまま受け取ってトラブルになった」「同僚から注意されると強く混乱し、その後出勤できなくなった」というように、具体的な出来事を書くほうが生活上の困難をイメージしやすくなります。
就労についても「仕事が続かなかった」だけではなく、複数の指示を整理できずミスが続いた、予定変更に対応できずパニックになった、コミュニケーション上の問題から職場を転々としたなど、退職に至った背景と障害特性との関係を整理するとよいでしょう。
申立書では、状態を実際より重く見せようとする必要はありません。
診断書、申立書、就労状況、日常生活の実態に大きな食い違いがあると、かえって状況が伝わりにくくなります。
実態を具体的かつ一貫して説明すること が大切です。
書類を整理するときは、単に「できる・できない」ではなく、「一人ならどうか」「家族の声掛けがあればどうか」「継続して行えるか」という視点で状況を確認することが重要です。
発達障害では、一度だけできたことを「できます」と答えてしまいやすいからです。
日常生活として安定して継続できるかまで考えて整理しましょう。
療育手帳と障害年金の等級は別基準

知的障害がある方の場合、「療育手帳がB判定だから障害年金も2級ですか」「療育手帳が軽い区分なので障害年金は無理ですか」といった疑問を持つ方がいます。
しかし、 療育手帳の判定と障害年金の等級は別の制度、別の基準です。
療育手帳は知的障害のある方への福祉的な支援につなげるための制度であり、各自治体の判定基準に基づいて交付されます。
一方、障害年金は公的年金制度による所得保障であり、国民年金法や厚生年金保険法に基づく障害認定基準によって判断されます。
そのため、療育手帳のA・Bなどの区分をそのまま障害年金の1級・2級に置き換えることはできません。
療育手帳があることや知能検査の結果は、障害状態を把握する資料の一つにはなりますが、それだけで障害年金の等級が確定するわけではありません。
精神障害者保健福祉手帳も同じ考え方
発達障害の方の場合、精神障害者保健福祉手帳を取得していることがあります。
この場合も、精神障害者保健福祉手帳の1級・2級・3級と、障害年金の1級・2級・3級がそのまま連動するわけではありません。
| 制度 | 主な目的 | 障害年金との関係 |
|---|---|---|
| 障害年金 | 障害による生活・労働上の制限に対する所得保障 | 障害年金独自の認定基準で判断 |
| 療育手帳 | 知的障害のある方への福祉支援 | 判定区分がそのまま年金等級にはならない |
| 精神障害者保健福祉手帳 | 精神障害のある方への福祉・社会参加支援 | 手帳等級と年金等級は別に判断 |
したがって、療育手帳を持っていないから障害年金を申請できないということはありません。
障害年金の受給要件を満たしていれば、療育手帳を取得していない方でも請求することはできます。
反対に、療育手帳を持っているから自動的に障害年金が支給されるわけでもありません。
障害年金では、診断書による日常生活能力、病状、生育歴、就労状況などをもとに独自に認定が行われます。
手帳の区分より実際の生活状態を整理する
実務上、手帳の区分を気にし過ぎてしまうと、本当に確認すべき部分が見えにくくなります。
「B判定だから軽い」「精神障害者保健福祉手帳3級だから障害年金2級は無理」と先に結論を決めるのではなく、現在の日常生活を具体的に見てください。
一人で金銭管理ができるのか、外出時に援助が必要なのか、行政手続きを一人で行えるのか、職場ではどのような指導を受けているのか。
障害年金ではこのような生活実態を確認することが重要です。
手帳の有無だけで障害年金を諦めたり、反対に手帳の等級だけから受給できると判断したりしないことが大切です。
なお、手帳は障害年金の請求時に参考資料になる場合がありますので、取得している場合には、取得時期、現在の等級、更新歴などを整理しておくとよいでしょう。
知的障害の場合は療育手帳の取得経緯や判定時期が生育歴を整理する手掛かりになることもあります。
大切なのは、手帳の名称や区分ではなく、あなたが実際にどのような生活を送っていて、どの部分に援助を必要としているのかです。
制度が違えば評価基準も違う。
この点を分けて考えると、障害年金の仕組みが理解しやすくなります。
発達障害の障害年金は初診日から確認する
発達障害で障害年金を検討するとき、最初に整理したいのは 「いつ、何の症状で、初めて医療機関を受診したのか」 という初診日の問題です。
発達障害は子どもの頃から特性がみられるため、「当然20歳前障害になる」と考えやすいのですが、知的障害を伴わない発達障害では、実際にその症状について初めて医師の診療を受けた日が初診日になります。
初診日が20歳前なのか、国民年金加入中なのか、厚生年金加入中なのかによって、その後の請求方法や対象となる障害年金が変わる可能性があります。
そのため、診断書を準備する前に、まず受診歴を整理するところから始めることが大切です。
最初に確認する順番を決めておく
発達障害の障害年金を整理するときは、最初に知的障害を伴っているかを確認すると分かりやすくなります。
生来の知的障害であれば出生日を初診日として扱うため、知的障害を伴わない発達障害とは初診日の考え方が大きく異なるからです。
知的障害を伴わない場合は、これまでの医療機関の受診歴を確認します。
現在の精神科だけではなく、以前に心療内科、小児科、児童精神科などを受診していなかったか、学校時代に医師による診察を受けていなかったかといった点も確認します。
発達障害の障害年金を考える順番は、初診日の確認、年金制度の確認、日常生活・就労状況の整理、診断書・申立書の準備という流れが基本です。
初診日が確認できたら、その日にどの年金制度へ加入していたかを確認します。
厚生年金加入中であれば障害厚生年金、国民年金加入中であれば障害基礎年金が基本となります。
20歳前の年金未加入期間であれば、20歳前傷病による障害基礎年金を検討します。
20歳以降に初診日がある場合は、保険料納付要件も確認しなければなりません。
ここまで確認して初めて、障害認定日や現在の障害状態を見ながら、どのような請求が可能なのかを検討していくことになります。
その次に生活と就労の実態を整理する
初診日を確認した後は、診断名だけではなく、現在の日常生活を一つずつ整理します。
食事、身だしなみ、金銭管理、通院、服薬、対人関係、危機対応、行政手続きなどについて、本人だけで継続して行えるのか、家族から声掛けを受けているのか、全面的に代行してもらっているのかを確認します。
働いている場合は、雇用形態だけでは足りません。
一般雇用なのか障害者雇用なのか、仕事を限定してもらっているか、上司からどの程度指示を受けているか、勤務時間への配慮があるか、欠勤や休職を繰り返していないかまで整理します。
特に成人してからASDやADHDと診断された方では、「働けているから障害年金は関係ない」と考えてしまうことがあります。
しかし、職場で強い配慮を受け、家庭では家族から日常生活全般の支援を受けているケースもあります。
一方で、特別な援助なく長期間安定して就労し、日常生活も自立している方もいます。
同じ診断名でも状態は大きく異なります。
申請書類は一つのストーリーとして整合させる
最終的には、初診日の証明、診断書、病歴・就労状況等申立書などを準備して請求します。
このとき重要なのが、それぞれの書類に書かれている内容が実際の経過と整合していることです。
たとえば病歴・就労状況等申立書では「一人では金銭管理が全くできない」と記載しているのに、診断書では「自発的にできる」と評価されている場合、その違いがなぜ生じているのかを確認する必要があります。
また、申立書では長期間働けなかったと記載している一方で、実際には継続して就労している期間があるのであれば、その状況も正確に記載する必要があります。
障害年金の申請は、状態を重く見せるための手続きではありません。
あなたの障害によって実際にどのような制限が生じ、その生活がどのような援助によって成り立っているのかを、客観的に伝える手続きだと考えるとよいでしょう。
発達障害の障害年金で迷ったときは、まず「診断名」ではなく、 初診日・加入制度・生活上の援助・就労上の配慮 の4点を書き出してみると状況を整理しやすくなります。
障害年金は、同じASDやADHDという診断であっても、初診日、年金加入歴、保険料納付状況、生活状態、就労状況によって結論が変わります。
知的障害を伴うかどうかによって初診日の取扱いが変わる点も、発達障害の障害年金では特に注意したいところです。
また、20歳前傷病の所得制限額や障害年金額など、年度によって変更される情報もあります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
障害年金の認定は、診断名だけではなく個別の事情をもとに判断されます。
初診日の判断、知的障害と発達障害の取扱い、就労しながらの請求などは個別性が高いため、資料だけで判断が難しいケースもあります。
最終的な判断は専門家にご相談ください。
※本記事は制度の一般的な解説を目的としています。当事務所では現在、企業・事業主の方を対象とした人事労務管理に関するご相談を中心に承っております。個人の方からの障害年金の請求、審査請求・再審査請求に関する個別相談および代理業務は、現在取り扱っておりません。具体的な案件については、障害年金を取り扱う社会保険労務士などへの相談をご検討ください。