こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
国民年金の免除で最も大きなデメリットは、保険料を全額納めた場合と比べて、将来受け取る老齢基礎年金が少なくなることです。
ただし、全額免除でも原則として納付した場合の2分の1が年金額に反映されるため、何も手続きをしない未納とは大きく異なります。
収入が減ったり、退職して国民年金の支払いが難しくなったりすると、「免除を申請すると将来損をするのではないか」と迷う方は少なくありません。
実際によくある相談ですが、年金額が減ることだけを見て免除申請を避け、そのまま未納にしてしまうほうが注意が必要です。
特に国民年金は、老後の老齢基礎年金だけの制度ではありません。
一定の要件を満たせば、病気やけがで障害が残ったときの障害年金や、加入者が亡くなったときの遺族年金にもつながります。
そのため、「将来の年金額が少し減るか」という視点だけで判断すると、制度の大切な部分を見落としてしまいます。
この記事では、全額免除を受けると将来の年金がどのくらい減るのか、一部免除や納付猶予ではどうなるのか、未納との違い、追納したほうがよいのかまで、判断に必要なポイントを整理して解説します。
- 国民年金免除によって将来の年金がどの程度減るのか
- 全額免除・一部免除・納付猶予の違い
- 免除と未納で障害年金や遺族年金にどんな違いがあるのか
- 追納によって免除期間の年金額を取り戻す考え方

国民年金免除のデメリットと年金額への影響
国民年金の免除を考えるときは、単純に「払わなくてよくなる制度」と考えるのではなく、将来の老齢基礎年金にどの程度反映されるかまで確認する必要があります。
一方で、免除には未納を避け、年金の受給資格を守るという重要な役割もあります。
ここを整理せずに「免除は損」「払わないのだから未納と同じ」と考えてしまうと、判断を誤りやすくなります。
免除は、保険料を全額納付できない人について一定の条件のもとで保険料負担を軽くしながら、年金制度とのつながりを残す仕組みです。
まずは、免除を受けた場合に何が不利になるのかを、全額免除、一部免除、納付猶予などに分けて整理していきます。
国民年金は免除しない方がいいのか?
国民年金の免除には将来の年金額が減るというデメリットがありますが、だからといって 「免除しない方がいい」と一律に考えるのは適切ではありません。
現在の保険料を無理なく支払えるのであれば、原則として全額納付するのが基本です。
全額納付した月は老齢基礎年金の計算にもそのまま反映されるため、将来受け取る年金額という点では最も有利だからです。
一方で、失業、退職、事業収入の減少、勤務時間の減少などによって現在の生活費を確保すること自体が難しいのであれば、無理をして保険料を払い続けることが最善とは限りません。
国民年金には、そうしたときのために保険料免除や納付猶予という制度が用意されています。
免除のデメリットと未納のリスクは分けて考える
特に避けたいのは、「免除すると将来損をするから、払えるようになるまで何もしない」という状態です。
免除申請をせず、保険料も納めなければ、その期間は原則として未納になります。
未納期間は老齢基礎年金の金額に反映されないだけでなく、老齢基礎年金の受給資格期間にも原則として算入されません。
これに対し、免除の承認を受けた期間は受給資格期間に算入されます。
さらに、平成21年4月以降の全額免除期間であれば、保険料を全額納付した場合の2分の1が老齢基礎年金の額に反映されます。
保険料を払えないときは、免除を避けることよりも、未納のまま放置しないことが重要です。
「満額納付できるなら納付する。
難しいなら免除・猶予を検討する。
何もしない未納は避ける」という順番で考えると整理しやすくなります。
たとえば、退職後に収入がなくなり、国民年金保険料を支払うために生活費まで取り崩しているケースがあります。
このような場合、将来の年金を増やすことだけを優先して現在の生活が立ち行かなくなっては本末転倒です。
まず免除が利用できるかを確認し、収入が回復した段階で追納を検討するという考え方もできます。
免除には老後以外の意味もある
また、免除期間は老齢基礎年金の受給資格だけでなく、障害年金や遺族年金の保険料納付要件を確認するときにも重要です。
一定の要件のもと、保険料免除期間は納付要件を満たす側の期間として扱われます。
つまり、免除のデメリットは主に「老齢基礎年金の金額が満額より減ること」であり、未納のリスクはそれより広いと考える必要があります。
私が実務で相談を受けるときも、「免除すると年金が減ります」とだけ説明するのではなく、「今の保険料を払えるか」「未納になっていないか」「追納できる可能性があるか」をセットで確認します。
日本年金機構でも、免除期間は老齢基礎年金の受給資格期間に算入され、全額免除などについては一定割合が年金額に反映されることが示されています。
制度の基本的な取扱いを確認したい場合は、一次情報も確認しておくと安心です。
(出典: 日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」 )
免除制度そのものの対象者、所得基準、申請方法については、 年金免除の基本と申請方法 で詳しく解説しています。
最大のデメリットは老齢基礎年金の減額

国民年金の免除を受ける最大のデメリットは、 将来受け取る老齢基礎年金が満額より少なくなること です。
ここは「免除を受けたら年金がゼロになる」という意味ではありません。
免除の種類によって、保険料を全額納めた場合の何割が将来の老齢基礎年金に反映されるかが決まっています。
国民年金の申請免除には、全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除があり、それぞれ老齢基礎年金への反映割合が異なります。
さらに、納付猶予と学生納付特例は受給資格期間には算入されますが、追納しない限り老齢基礎年金の金額には反映されません。
免除区分ごとの違いを一覧で確認
| 区分 | 老齢基礎年金への反映割合 | 本人が納付する保険料 | 受給資格期間 |
|---|---|---|---|
| 全額免除 | 2分の1 | なし | 算入 |
| 4分の3免除 | 8分の5 | 4分の1相当 | 残額納付で算入 |
| 半額免除 | 8分の6 | 半額相当 | 残額納付で算入 |
| 4分の1免除 | 8分の7 | 4分の3相当 | 残額納付で算入 |
| 納付猶予 | 反映なし | なし | 算入 |
| 学生納付特例 | 反映なし | なし | 算入 |
| 未納 | 反映なし | なし | 原則算入されない |
全額免除でも2分の1が反映される背景には、基礎年金の給付費に国庫負担があることがあります。
そのため、本人が保険料を支払っていない全額免除期間でも、一定部分は将来の老齢基礎年金額に反映されます。
なお、平成21年3月分以前の免除期間については国庫負担割合が現在と異なるため、年金額への反映割合も異なります。
全額免除であれば、平成21年3月分以前は原則として3分の1の反映です。
一部免除は支払った割合以上に年金へ反映される
一部免除を見ると、単純に「自分が支払った保険料の割合だけ年金になる」という仕組みではないことが分かります。
たとえば4分の3免除の場合、自分で支払う保険料は通常の4分の1相当ですが、老齢基礎年金への反映は8分の5です。
半額免除なら保険料は半額相当、年金への反映は8分の6です。
4分の1免除なら保険料は4分の3相当を支払い、年金への反映は8分の7になります。
これは、一部免除期間についても国庫負担部分が年金額に反映されるためです。
同じ「保険料を全額払っていない期間」でも、全額免除、一部免除、納付猶予、学生納付特例、未納では将来の扱いが異なります。
特に納付猶予と学生納付特例は、受給資格期間には含まれる一方、追納しなければ老齢基礎年金額には反映されません。
令和8年度では、一部免除後に実際に納める月額保険料も区分ごとに異なります。
ただし、国民年金保険料は年度ごとに変わるため、「半額免除だからいつでも同じ金額」とは考えないようにしてください。
自分がどの区分で承認されているかは、免除承認通知や年金記録を確認するのが確実です。
過去に複数の免除区分が混在していることも珍しくありません。
免除のデメリットを正しく判断するには、「何年間免除だったか」だけではなく、「どの免除区分だったか」まで確認することが重要です。
免除による年金額への影響を考える際は、「保険料を払ったか、払っていないか」という二択で判断せず、全額免除なのか、一部免除なのか、納付猶予なのかを整理して考えてください。
全額免除で将来の年金はいくら減る?
では、全額免除を受けると実際に将来の年金がどの程度減るのでしょうか。
「年金が減る」と言われても、金額が分からなければ免除を申請すべきか判断しにくいですよね。
そこで、令和8年度の老齢基礎年金額を使って、全額免除による減額のイメージを具体的に計算してみます。
全額免除1年なら年約1万600円の差が目安
令和8年度の老齢基礎年金の満額は、昭和31年4月2日以後生まれの方で年額847,300円です。
老齢基礎年金の満額は、原則として20歳から60歳までの40年間、合計480月について保険料をすべて納めた場合を基準にします。
単純化すると、1月分の年金価値は847,300円を480月で割った約1,765円です。
全額免除期間はその2分の1が年金額に反映されるため、1月全額免除になることで満額納付との差は約883円、1年間12月なら約10,600円になります。
全額免除1年による減額の目安
847,300円 ÷ 480月 × 12月 × 2分の1 = 約10,600円
つまり、全額免除が1年あると、現在の年金額を基準にした単純計算では、将来受け取る老齢基礎年金が毎年約1万600円少なくなるイメージです。
| 全額免除の期間 | 満額納付と比べた年金減額の目安 | 20年間受給した場合の単純な差 |
|---|---|---|
| 1年 | 年約10,600円 | 約21万円 |
| 3年 | 年約31,800円 | 約64万円 |
| 5年 | 年約53,000円 | 約106万円 |
| 10年 | 年約106,000円 | 約212万円 |
たとえば10年間すべて全額免除だった場合、現在の年金額を基準に単純計算すると、満額納付した場合より老齢基礎年金が年間約10万6,000円少なくなります。
仮に65歳から20年間受け取ったとすると、単純な累計差額は約212万円です。
25年間なら約265万円になりますから、免除期間が長くなるほど生涯の受取額への影響も大きくなります。
ただし「200万円損する」と断定はできない
ここで注意したいのは、この計算をそのまま「全額免除10年なら必ず200万円損する」と読むことです。
実際の年金額は毎年度改定されますし、将来の受給期間も人によって違います。
物価や賃金の変動、制度改正などによって将来の年金額そのものが変わる可能性もあります。
したがって、上記の数字はあくまで「現在の年金額を固定して比較した場合の目安」と考えてください。
この金額はあくまで一般的な目安です。
実際の年金額は、加入記録、免除期間、免除区分、制度改正、毎年度の年金額改定などによって変わります。
将来も令和8年度と同じ年金額が続くことを前提とした試算ではありません。
未納や納付猶予との比較も重要
全額免除のデメリットを見るときは、「全額納付と比べて1年約1万600円減る」という部分だけを見ないことも大切です。
同じ1年間について何も納付せず未納になった場合、その期間は老齢基礎年金額に反映されません。
納付猶予や学生納付特例についても、追納しなければ年金額への反映はありません。
令和8年度の満額を基準に単純計算すると、反映がゼロの1年間は満額納付に比べ年間約2万1,200円の差になります。
全額免除の場合はその半分程度の差です。
満額納付と比較すれば、全額免除は確かに不利です。
しかし、未納と比較すると、全額免除には年金額への2分の1反映と受給資格期間への算入があります。
このため、免除のデメリットを見るときは、満額納付との比較だけでなく、 「保険料を払えない状況で、未納だった場合と比較するとどうなるか」まで確認する ことが大切です。
一部免除は反映割合と納付額が変わる

国民年金の免除には、保険料がすべて免除される全額免除だけでなく、4分の3免除、半額免除、4分の1免除という一部免除があります。
一部免除では、免除の割合が小さくなるほど自分で支払う保険料は増えますが、その分、将来の老齢基礎年金への反映割合も大きくなります。
そのため、「全額免除より一部免除のほうが損なのか」「半額しか払わないから年金も半分になるのか」といった疑問を持つ方もいますが、実際の計算はもう少し有利になる仕組みです。
支払う割合と年金への反映割合は同じではない
具体的には、4分の3免除は満額納付の8分の5、半額免除は8分の6、4分の1免除は8分の7が老齢基礎年金額に反映されます。
分母を8にそろえると、全額免除は8分の4です。
一部免除になるにつれて、8分の5、8分の6、8分の7と満額に近づいていきます。
| 免除区分 | 自分で支払う割合の目安 | 年金への反映 | 満額との差 |
|---|---|---|---|
| 全額免除 | 0 | 8分の4 | 8分の4 |
| 4分の3免除 | 4分の1相当 | 8分の5 | 8分の3 |
| 半額免除 | 2分の1相当 | 8分の6 | 8分の2 |
| 4分の1免除 | 4分の3相当 | 8分の7 | 8分の1 |
| 全額納付 | 全額 | 8分の8 | なし |
全額免除と比べると、一部でも保険料を納付することで将来の年金額を満額に近づけることができます。
家計に一定の余裕がある場合には、一部免除が承認されることで、現在の負担を抑えつつ将来の年金額への影響も抑えられるわけです。
一部免除は承認後の納付が必要
ただし、一部免除について実務上もっとも注意したいのは、 免除されなかった部分の保険料を実際に納付する必要がある ことです。
たとえば半額免除が承認された場合、「保険料の半分を払わなくてよくなり、自動的に8分の6が年金に反映される」というわけではありません。
免除されなかった残り半分を納付して初めて、半額免除期間として年金記録に反映されます。
たとえば半額免除が承認されても、残り半分の保険料を支払わなければ、その月は一部免除として扱われず未納となります。
「免除の通知が届いたから支払いは不要」と思い込まないよう注意してください。
これは実際によく確認するポイントです。
全額免除と一部免除では、承認後の対応が違います。
全額免除なら、承認された期間について通常の国民年金保険料を支払う必要はありません。
一方、一部免除では減額された保険料について納付が必要です。
免除承認通知を見たときには、「免除が認められた」という部分だけではなく、全額免除なのか、一部免除なのかまで必ず確認してください。
一部免除では「承認」と「残額の納付」の両方がそろって初めて一部免除として扱われます。
免除の承認通知が届いたら、「免除された割合」「今後納める保険料」「納付期限」の3点を確認しておくとよいでしょう。
口座振替などを利用していた人も、免除承認後の納付方法がどうなるか確認しておくと納め忘れを防ぎやすくなります。
特に収入が不安定な時期は、納付書が届いても後回しになりやすいものです。
一部免除を受けた意味を失わないためにも、残額の納付までセットで管理してください。
納付猶予・学生納付特例は年金額に反映なし
納付猶予と学生納付特例は、国民年金保険料をすぐに支払わなくてもよいという点では全額免除と似ています。
しかし、老齢基礎年金の金額への反映という点では大きな違いがあります。
納付猶予や学生納付特例の承認期間は、追納しない限り老齢基礎年金額には反映されません。
一方で、老齢基礎年金を受け取るために必要な受給資格期間には算入されます。
受給資格期間には入るが年金額には入らない
ここは制度を初めて知る方が特に混乱しやすいところです。
老齢基礎年金には、大きく分けて「そもそも年金を受け取る資格があるか」という受給資格期間の話と、「実際にいくら受け取れるか」という年金額の計算の話があります。
納付猶予や学生納付特例の承認期間は、前者の受給資格期間には含まれます。
しかし、後者の年金額には、追納しない限り反映されません。
たとえば学生時代に2年間、学生納付特例を利用し、その後一度も追納しなかった場合、その2年間は老齢基礎年金の受給資格期間には含まれます。
しかし、年金額の計算上は納付済期間として加算されないため、40年間すべて保険料を納めた人と比較すると将来の老齢基礎年金は少なくなります。
全額免除は原則2分の1が年金額に反映されますが、 納付猶予・学生納付特例は追納しない限り年金額への反映がありません。
全額免除より追納による増額効果が大きい
この違いは、後から追納するかを考えるときにも重要です。
全額免除期間を1年追納した場合、もともと2分の1は年金額に反映されています。
そのため、追納によって新たに増えるのは残り2分の1相当です。
一方、納付猶予や学生納付特例は追納しない限り年金額への反映がゼロなので、1年分を追納すると1年分全体が老齢基礎年金の計算に加わります。
令和8年度の満額を使った単純計算であれば、全額免除1年を追納して増える年金額は年約1万600円、納付猶予・学生納付特例1年を追納して増える年金額は年約2万1,200円が一つの目安になります。
複数の免除・猶予期間があり、すべてを一度に追納する資金がない場合には、追納期限だけでなく「追納によって年金額がどれだけ増えるか」も確認すると判断しやすくなります。
学生時代の期間は忘れやすい
学生納付特例は20歳以降の学生時代に利用することが多いため、社会人になって数年たつと利用したこと自体を忘れている方もいます。
会社員として厚生年金に加入している現在の保険料は給与から控除されていても、学生納付特例だった期間が自動的に埋まるわけではありません。
追納する場合は別途手続きが必要です。
「会社員になったから学生時代の年金も自動的に納付済みになった」と考えないようにしてください。
また、追納には10年という期限があります。
学生納付特例を利用した時期が古い場合、社会人になってから迷っているうちに追納可能期間が短くなっていることがあります。
まずはねんきんネットなどで自分の加入記録を確認し、学生納付特例や納付猶予が何月分残っているかを確認するとよいでしょう。
学生納付特例の仕組みや追納については、 国民年金の学生納付特例と追納のポイント でも詳しく解説しています。
国民年金免除のデメリットを抑える方法
国民年金の免除による年金額の減少は、追納などによって後から補うことができます。
それ以上に重要なのは、免除制度を正しく利用し、未納期間を作らないことです。
免除制度そのものは、保険料を全額支払うことが難しい時期に年金制度とのつながりを維持するための仕組みです。
そのため、「免除を使ったこと」よりも、「一部免除なのに残額を払っていない」「申請せず未納のままになっている」「追納期限を知らない」といった状態のほうが問題になりやすいといえます。
ここからは、一部免除の納付忘れ、未納との違い、障害年金・遺族年金への影響、追納の期限など、免除を利用するときに実務上確認しておきたいポイントを整理します。
一部免除は残りを払わないと未納になる
一部免除を利用するときの最大の注意点は、免除されなかった保険料を納めなければならないことです。
4分の3免除なら残り4分の1、半額免除なら残り半分、4分の1免除なら残り4分の3相当の保険料を納付します。
この支払いを済ませて初めて、その期間が一部免除期間として扱われます。
一部免除は二段階で考える
一部免除は、「免除が承認された」という段階と、「免除されなかった保険料を納付した」という段階を分けて考えると分かりやすくなります。
たとえば半額免除の承認を受けた人が、残り半分の保険料を納めなかった場合、「半額分だけ年金額に反映される」という扱いにはなりません。
残りの保険料が未納のままであれば、その月は一部免除期間として完成せず、未納期間として扱われます。
一部免除の承認=その後の支払いがすべて不要、ではありません。
承認通知と納付書を確認し、免除されなかった部分を期限内に納付することが必要です。
全額免除だけをイメージして制度を利用すると、この点を見落としやすくなります。
私が相談を受ける場合も、単に「免除が通りましたね」で終わらせず、承認区分を確認したうえで、「今後支払う保険料が残っているか」「納付書は届いているか」まで確認するようにしています。
残額を払わないと受給資格にも影響する
一部免除期間の残額を納めなかった場合の影響は、将来の老齢基礎年金額が少なくなることだけではありません。
その期間が未納として扱われれば、老齢基礎年金の受給資格期間にも原則として算入されません。
また、障害年金や遺族年金の保険料納付要件を判定する場合にも未納期間として影響する可能性があります。
そのため、「どうせ一部しか免除されなかったから払わなくても同じ」と考えるのは避けたほうがよいでしょう。
一部免除が認められた場合は、残額を払うことによって初めて、年金額への一定割合の反映や受給資格期間への算入というメリットを得られます。
納付書が届いたら金額と期限を確認する
免除申請から結果が出るまでには時間がかかることがあります。
申請中に納付書が届いたり、承認後に減額された保険料の納付書が届いたりすることもあるため、「どの月の保険料なのか」が分からなくなるケースもあります。
このような場合は、自己判断で納付書を捨てたり放置したりせず、対象月と免除区分を確認してください。
特に複数年度にわたって免除を利用している場合には、年度によって全額免除、一部免除、納付猶予など結果が異なることもあります。
「去年が全額免除だったから今年も払わなくていい」とは限りません。
また、失業などを理由とした特例を利用する場合、年度が変わることで再度の手続きが必要になるケースもあります。
承認通知は保管し、ねんきんネットなどの記録とも照合しておくと安心です。
一部免除の納付漏れは、制度を知らなかったことで発生しやすいポイントです。
免除通知が届いたら「全額」「4分の3」「半額」「4分の1」のどれなのかをまず確認してください。
免除の申請が通ったことだけで安心せず、承認された区分とその後の納付状況まで確認することが大切です。
免除と未納では受給資格期間が違う

国民年金の免除を考えるうえで、最も重要なのが未納との違いです。
保険料を払っていないという外見だけを見ると似ていますが、年金制度上の扱いは大きく異なります。
「免除しても年金が減るなら、未納でも同じではないか」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、老齢基礎年金の受給資格、年金額、障害年金・遺族年金の納付要件、後から納められる期間のいずれを見ても、免除と未納は同じではありません。
| 項目 | 免除・納付猶予 | 未納 |
|---|---|---|
| 老齢基礎年金の受給資格期間 | 算入される | 原則算入されない |
| 老齢基礎年金額への反映 | 免除は一部反映、猶予は反映なし | 反映なし |
| 障害・遺族年金の納付要件 | 免除期間等として扱われる | 未納期間となる |
| 後から支払える期間 | 追納は原則10年以内 | 通常の保険料は原則2年で時効 |
免除は老齢基礎年金の10年に含まれる
老齢基礎年金を受け取るためには、原則として保険料納付済期間や保険料免除期間などを合わせて10年以上の受給資格期間が必要です。
免除や納付猶予、学生納付特例が正式に承認された期間は、この10年の受給資格期間に含まれます。
一方、何の手続きもせず未納になっている期間は、原則として受給資格期間には含まれません。
そのため、未納期間が長い場合には、単に年金額が減るだけでなく、加入状況によっては老齢基礎年金を受け取るための10年自体を満たせなくなる可能性があります。
「払えないから免除にする」のと「払えないから放置する」のは、同じではありません。
現在の家計が厳しいのであれば、まず免除や納付猶予を利用できないか確認することが大切です。
未納は後からいつでも払えるわけではない
「今は払えないけれど、何年か後に収入が増えたらまとめて払えばいい」と考える方もいます。
しかし、通常の国民年金保険料には納付できる期間があります。
一般的な未納保険料は、納付期限から一定期間を経過すると時効によって通常の方法では納められなくなります。
一方、免除や納付猶予等の承認期間については、一定の要件のもと原則10年以内であれば追納できます。
つまり、将来払えるようになる可能性がある場合でも、未納のまま残すより、まず免除等を正式に申請しておくことに意味があります。
遡って申請できるから放置してよいわけではない
国民年金の免除等は、一定の範囲で過去にさかのぼって申請できる場合があります。
しかし、それを理由に「後でまとめて免除申請すればいい」と考えるのはおすすめできません。
申請できる過去期間には限度があります。
また、障害年金などの保険料納付要件では、病気やけがの初診日より後に慌てて過去の未納期間を免除申請しても、納付要件の判定に使えない場合があります。
万一の事故や病気が起きてから年金記録を整えようとしても、間に合わないことがあります。
保険料を払えないことが分かった時点で、早めに免除・猶予の申請を検討してください。
「あとでまとめて考えればいい」と放置せず、保険料の支払いが難しくなった時点で手続きを確認することが、将来の年金だけでなく現在の保障を守ることにもつながります。
免除は障害年金・遺族年金の要件に算入
国民年金の免除と未納の違いは、老後の年金だけではありません。
現役中に病気やけがで障害が残った場合の障害年金や、加入者が死亡した場合の遺族年金にも関係します。
私は、国民年金の未納を考えるとき、この点は老齢基礎年金の減額と同じくらい重要だと考えています。
老後まで何十年もある20代、30代の人にとっては、むしろ障害年金や遺族年金の保障のほうが直近のリスクだからです。
原則は3分の2以上が納付済みまたは免除
障害年金や遺族年金には、一定の保険料納付要件があります。
障害年金の場合は、原則として初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの公的年金加入期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせた期間が3分の2以上あることが求められます。
遺族年金についても、死亡日に関連して同様に保険料の納付状況を確認する仕組みがあります。
免除、納付猶予、学生納付特例の承認を受けている期間は、これらの納付要件を確認するうえで重要な期間になります。
これに対して未納期間は、納付要件を満たす側の期間には入りません。
未納のリスクは「老後にもらえる年金が少なくなる」ことだけではありません。
未納期間の状況によっては、病気やけが、死亡といった万一の際に障害年金や遺族年金の保険料納付要件を満たせなくなる可能性があります。
直近1年間に未納がない場合の特例もある
原則の3分の2要件を満たしていない場合でも、一定の条件のもと、初診日や死亡日のある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないことによって納付要件を満たす特例があります。
現在の日本年金機構の案内では、障害年金については初診日が令和18年3月末日までであり、初診日に65歳未満であることなどが条件とされています。
遺族年金についても、死亡日や年齢など所定の条件があります。
ただし、この特例だけを前提に「最近1年だけ払えば問題ない」と考えるのは避けたほうがよいでしょう。
制度改正や個別の加入状況もありますし、そもそも未納を作らないことが基本です。
初診日が来てから免除申請しても間に合わないことがある
障害年金では、病気やけがをした日そのものではなく、原則としてその傷病について初めて医師または歯科医師の診療を受けた「初診日」が非常に重要です。
保険料納付要件も、初診日の後にどうしたかではなく、原則として初診日の前日時点の記録を基準に確認します。
そのため、病気になってから「未納があるから今から免除申請をしよう」と考えても、障害年金の納付要件には反映されない場合があります。
免除申請は、老後の年金額を確保するだけの手続きではありません。
現役中の障害年金・遺族年金につながる年金記録を整えておくという意味でも、未納を放置しないことが重要です。
実際、国民年金保険料の相談では「今は若いから老後の年金はまだ考えていない」という方もいます。
ただ、事故や病気は年齢に関係なく起こり得ます。
そのため私は、保険料の支払いが難しい相談では、将来の老齢年金額だけではなく、 現役中の保障を守る意味でも未納にしないこと を重視しています。
追納は10年以内で3年度目から加算される
免除や納付猶予、学生納付特例によって少なくなった老齢基礎年金は、一定期間内であれば追納によって満額に近づけることができます。
つまり、免除を受けた時点で将来の年金額が永久に確定するわけではありません。
現在は収入が少なく免除を利用し、数年後に収入が安定した段階で追納するという選択も可能です。
追納できるのは原則10年以内
追納できるのは、原則として追納が承認された月の前10年以内の免除・納付猶予・学生納付特例の期間です。
10年を過ぎた期間は原則として追納できなくなるため、「収入が増えてから考えればいい」と長期間放置していると、古い期間から追納期限を迎えてしまいます。
特に学生納付特例を利用した人は注意が必要です。
20歳のころの学生納付特例なら、30歳前後には古い月から10年の期限が近づきます。
社会人生活が落ち着いてから考えようと思っているうちに、期限が迫っていることもあります。
追納できる期間には期限があります。
「免除だから後からいつでも払える」というわけではありません。
古い免除・猶予期間がある場合は、まず追納可能な期限を確認してください。
3年度目以降は加算額が上乗せされる
追納では、もう一つ期限に関連して注意したい点があります。
免除等を受けた期間の翌年度から数えて 3年度目以降に追納すると、当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せ されます。
そのため、同じ免除期間を追納する場合でも、追納する時期によって必要な金額が変わることがあります。
追納は「早ければ必ず得」という単純な話ではありません。
現在の生活資金を削ってまで急ぐ必要があるとは限りません。
ただし、追納する方針が決まっているのであれば、10年の期限と3年度目以降の加算額は確認しておくことをおすすめします。
追納した保険料は社会保険料控除の対象
追納した国民年金保険料は、通常の国民年金保険料と同様に社会保険料控除の対象になります。
そのため、所得がある年に追納すれば、その年の所得税や住民税の負担が軽くなる場合があります。
たとえば20万円を追納した場合、単純に「20万円を払って年金を増やす」と考えるのではなく、社会保険料控除によってどの程度税負担が軽くなるかも含めて実質負担を考えると、判断しやすくなります。
もっとも、税負担の軽減額はその人の所得や所得控除、税率などによって異なります。
追納額の何割が必ず戻るという制度ではありません。
原則として古い期間から追納する
追納は原則として古い期間から納めていきます。
また、一部免除期間について追納するためには、当時納める必要があった一部保険料が納付済みであることが前提になります。
免除期間、納付猶予期間、学生納付特例期間などが複数ある場合は、実際の追納順序や追納額を日本年金機構で確認してから資金計画を立てるとよいでしょう。
追納制度の10年期限や3年度目以降の加算額については、日本年金機構でも案内されています。
(出典: 日本年金機構「国民年金保険料の追納制度」 )
追納の期限、加算額、具体的な手続きについては、 国民年金の追納制度と10年期限 でも詳しく整理しています。
国民年金の追納はしたほうがいい?

「免除を受けたら、あとで必ず追納したほうがいいですか」という質問もよくあります。
これは一律に決められるものではなく、現在の家計、今後の所得、追納できる残り期間、老後資金などを踏まえて判断する必要があります。
公的年金は原則として生涯にわたって受け取る制度なので、長く受給するほど追納による年金増額の効果も積み上がります。
一方で、追納するためには現在まとまった現金が必要です。
この「将来の終身年金」と「現在の手元資金」のバランスが判断の中心になります。
全額免除1年を追納した場合
令和8年度の老齢基礎年金満額847,300円を使って単純計算すると、全額免除1年分を追納した場合、将来の老齢基礎年金は年額で約1万600円増える計算になります。
全額免除期間はもともと2分の1が年金額に反映されているため、追納によって増えるのは残り2分の1相当です。
一方、実際に追納する保険料は対象年度の保険料額や加算額によって決まります。
仮に20万円前後を追納し、年間の年金額が約1万600円増えるとすれば、税効果や将来の年金改定などを考えない単純比較では、元を取るまで20年前後の受給期間が一つの目安になります。
納付猶予・学生納付特例は増額効果が大きい
納付猶予や学生納付特例の場合は考え方が変わります。
これらの期間は追納しなければ老齢基礎年金額への反映がゼロなので、1年分を追納すると1年分全体が年金額の計算に加わります。
令和8年度の金額で単純計算すれば、1年間の追納によって年約2万1,200円程度増えるイメージです。
同程度の保険料を支払うのであれば、全額免除期間を追納する場合より増額効果が大きくなります。
| 対象期間 | 追納前の年金反映 | 1年追納した場合の増額目安 | 考え方 |
|---|---|---|---|
| 全額免除 | 2分の1 | 年約10,600円 | 残り2分の1を回復 |
| 納付猶予 | なし | 年約21,200円 | 1年分全体を回復 |
| 学生納付特例 | なし | 年約21,200円 | 1年分全体を回復 |
もちろん、この金額は令和8年度の満額を基準にした単純な目安です。
将来の年金額は改定されますし、追納対象年度によって支払う保険料も異なります。
追納を考える4つのポイント
追納を判断するときは、 支払う追納額、将来増える年金額、社会保険料控除、手元資金の4点 を一緒に考えると整理しやすくなります。
まず確認したいのは手元資金です。
たとえば追納すると預貯金がほとんどなくなり、急な病気、家電の故障、引っ越し、教育費などに対応できなくなるのであれば、無理に追納することが必ずしも適切とは限りません。
年金を増やすことは大切ですが、現在の生活を維持するための資金を確保することも同じくらい重要です。
逆に、収入が安定し、生活防衛資金も十分に確保できているのであれば、追納によって終身で受け取る老齢基礎年金を増やす選択肢があります。
所得がある年に追納すれば社会保険料控除も受けられるため、額面の追納額より実質的な負担が軽くなるケースもあります。
古い期間は期限も考慮する
追納したい期間が複数ある場合には、単純に増額効果だけで優先順位を決めないことも大切です。
古い期間ほど10年の追納期限が近いため、期限を過ぎればその期間は追納できなくなります。
全額免除より納付猶予のほうが増額効果が大きいとしても、全額免除期間の期限が目前であれば、そちらを先に検討する必要が出てくることもあります。
年金額や保険料、追納額は年度によって改定されます。
この記事の金額はあくまで一般的な目安です。
実際の追納額や将来の年金見込額については、ねんきんネットや年金事務所などで自分の記録を確認してください。
「追納は得か損か」という問いだけで答えを出すより、あなたの現在の生活資金、追納期限、税負担、老後資金の状況を一緒に見ることが大切かなと思います。
国民年金免除のデメリットと未納の違いを整理
国民年金免除の最大のデメリットは、保険料を全額納めた場合と比べて、将来受け取る老齢基礎年金が少なくなることです。
ただし、ここまで見てきたとおり、「年金が減る」という一部分だけを見て免除を避けるのはおすすめできません。
国民年金の免除制度は、経済的な理由などで保険料を全額納付することが難しいときに、未納を避けながら年金制度とのつながりを維持するための仕組みだからです。
全額免除でも年金額の2分の1は反映される
全額免除であれば、平成21年4月以降の期間について原則として満額納付の2分の1が老齢基礎年金額に反映されます。
4分の3免除、半額免除、4分の1免除では、自分で納付する保険料が増える代わりに、将来の年金への反映割合も8分の5、8分の6、8分の7と高くなります。
一部免除の場合には、免除されなかった保険料を納付しなければ未納になるため、承認後の納付まで確認することが重要です。
納付猶予と学生納付特例は追納しないと金額に反映されない
一方、納付猶予と学生納付特例は、老齢基礎年金の受給資格期間には含まれますが、追納しなければ年金額には反映されません。
そのため、収入が安定した後に追納を検討する意味は大きいといえます。
特に学生納付特例や納付猶予は、全額免除期間と比べて追納による年金増額効果が大きくなります。
未納は免除より不利になる可能性が高い
何も申請せず未納になっている期間は、老齢基礎年金額に反映されないだけでなく、受給資格期間にも原則として算入されません。
さらに、未納期間が多い場合には、障害年金や遺族年金の保険料納付要件にも影響する可能性があります。
この点を考えると、「免除すると将来の年金が減るから、申請しない」という判断には注意が必要です。
国民年金の免除にはデメリットがありますが、「免除か満額納付か」だけでなく、「免除か未納か」という視点も重要です。
現在保険料を払うことが難しいのであれば、まず免除や納付猶予の申請を行い、家計が安定してから追納を検討するという順番が現実的です。
判断の順番を整理すると分かりやすい
国民年金保険料の支払いが難しい場合は、次のような順番で考えると整理しやすくなります。
- 現在の収入と生活費から国民年金保険料を無理なく払えるか確認する
- 支払いが難しい場合は免除・納付猶予の対象にならないか確認する
- 一部免除の場合は残りの保険料を確実に納付する
- 収入が回復したら追納可能期間と追納額を確認する
- 手元資金や社会保険料控除も考慮して追納するか判断する
特に「免除のデメリットが怖いから申請をしない」という選択は、結果として未納期間を増やしてしまう可能性があります。
保険料を全額払えるのであれば納付する。
今は払えないのであれば、まず制度を利用して未納を避ける。
そして余裕ができたときに追納を検討する。
この考え方が基本です。
国民年金は、一度免除を受けたらそこで終わりではありません。
生活状況が変わったときに追納を検討できる点も含めて制度を見ると、「免除=将来ずっと不利」というイメージとは少し違って見えてきます。
国民年金は老後の生活費だけの制度ではありません。
障害年金や遺族年金といった現役中の保障にもつながっています。
そのため、「将来の年金が減るから免除を申請しない」と単純に判断するのではなく、現在の支払い能力、未納になった場合のリスク、将来追納できる可能性を合わせて考えることが大切です。
制度内容、年金額、保険料額、追納額などは法改正や年度更新によって変わる可能性があります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
特に実際の免除期間、納付状況、追納可能月数、将来の年金見込額は人によって異なりますので、ねんきんネットや年金事務所で自分の年金記録を確認したうえで判断してください。
免除を申請するか、どの期間を追納するかは、加入記録や家計状況によって適切な判断が変わります。
個別の事情がある場合の 最終的な判断は専門家にご相談ください。