こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
標準報酬月額とは、健康保険料や厚生年金保険料などを計算する基礎となる金額です。
実際の給与額をそのまま使うのではなく、一定の幅ごとに区分された標準報酬月額を使って社会保険料を計算します。
私傷病による休職で給与が支払われなくなった場合でも、休職したという理由だけで標準報酬月額が下がるわけではありません。
原則として休職前の標準報酬月額が継続し、それを基礎とした社会保険料も発生し続けます。
実務では、給与がゼロなのに社会保険料が変わらないことに疑問を持つ従業員の方も少なくありません。
また、会社側でも月額変更届を出すべきか、算定基礎届をどう記載するか、本人負担分をどう回収するかで迷いやすいところです。
この記事では、休職中の標準報酬月額について、随時改定、算定基礎届、社会保険料、傷病手当金、復職後の取扱いまで実務の流れに沿って整理します。
- 休職中も標準報酬月額が原則変わらない理由
- 月額変更届と算定基礎届の判断方法
- 休職中の社会保険料と本人負担分の徴収方法
- 傷病手当金や復職後の標準報酬月額との関係

休職中の標準報酬月額は原則変わらない
最初に押さえておきたいのは、 私傷病による休職で給与がゼロになっても、それだけでは標準報酬月額を変更する理由にはならない という点です。
標準報酬月額は毎月の給与額にそのまま連動して上下する制度ではありません。
定時決定や随時改定など、決められたルールによって変更されます。
まずは休職と随時改定の関係から確認していきましょう。
無給でも月額変更届は原則不要
「3か月休職して給与がゼロになったので、標準報酬月額もゼロに近い等級へ下げられるのではないか」という質問は、実際によくある相談です。
しかし、 私傷病休職によって給与が支給されなくなっただけであれば、原則として月額変更届を提出することはありません。
社会保険の標準報酬月額は、給与額が一時的に変わっただけで毎月変更する仕組みではありません。
主に、毎年4月から6月までの報酬を基礎として決める定時決定と、昇給や降給などによって固定的賃金が変わった場合に行う随時改定によって決定されます。
休職して給与がゼロになった場合、従業員が受け取る報酬は大きく下がっています。
しかし、これは通常、基本給そのものを月30万円から0円へ変更したという意味ではありません。
休職によって労務の提供がなく、その期間について給与を支給していないという状態です。
休職時の基本的な考え方
- 休職前の標準報酬月額は原則として継続する
- 無給になっただけでは月額変更届を提出しない
- 健康保険・厚生年金保険の資格が続く限り保険料も発生する
- 復職後に固定的賃金が変われば改めて随時改定を確認する
たとえば、休職前の標準報酬月額が30万円だった従業員が3か月間無給となっても、単純に標準報酬月額を0円へ変更することはできません。
休職前の標準報酬月額を基礎として健康保険料や厚生年金保険料が計算されるため、本人から見ると「給与はないのに社会保険料だけ請求される」という状態が起こります。
この仕組みを理解するには、 社会保険料の等級表と標準報酬月額の仕組み を押さえておくと分かりやすいです。
社会保険料はその月の手取り給与から直接計算するのではなく、決定済みの標準報酬月額を基礎として計算されます。
なお、休職中に会社から一定額の休職給が支給される場合や、休職中に昇給・降給が行われた場合などは、事実関係によって確認すべきポイントが増えます。
単純な「無給の私傷病休職」と、それ以外のケースは分けて考えることが大切です。
休職は固定的賃金の変動に当たらない

休職による無給で標準報酬月額が下がらない理由は、随時改定の要件を見ると理解しやすくなります。
一般的な随時改定では、主に 固定的賃金の変動、2等級以上の差、3か月の支払基礎日数 という条件を確認します。
固定的賃金とは、基本給、役職手当、住宅手当など、支給額や支給率があらかじめ決まっている賃金です。
基本給を月25万円から27万円へ引き上げた場合や、月給制から日給制へ変更した場合、固定手当を新設した場合などが典型例です。
これに対して、休職によって給与を支給しないことは、通常は基本給の単価や賃金体系そのものを変更したものではありません。
働いていないため給与の支払いがないことと、固定的賃金そのものを引き下げることは別です。
| 確認項目 | 一般的な随時改定 | 無給の私傷病休職 |
|---|---|---|
| 固定的賃金の変動 | 必要 | 通常は該当しない |
| 3か月の報酬 | 平均額を確認 | 無給期間は通常の判定ができない |
| 等級差 | 原則2等級以上 | 休職だけでは改定しない |
| 支払基礎日数 | 原則各月17日以上 | 完全無給なら0日となることが多い |
一般的な被保険者では、固定的賃金が変動した月以後の3か月について、原則として各月の支払基礎日数が17日以上あり、その3か月平均から算出した標準報酬月額と従前の標準報酬月額に原則2等級以上の差が生じる場合に随時改定を検討します。
一定の短時間労働者については11日以上が基準になります。
無給休職では、そもそも固定的賃金の変更ではないうえ、完全に休職している月は支払基礎日数が0日となることが通常です。
そのため、「給与が大幅に減ったから2等級以上下がった」という結果だけを見て月額変更届を提出することはできません。
一時帰休とは区別が必要です。
会社都合の一時帰休により休業手当を支給している場合には、一定の条件で標準報酬月額の随時改定が問題になることがあります。
私傷病による休職とは取扱いが異なるため、同じ「会社を休んで給与が減った状態」として処理しないよう注意してください。
また、休職期間中に昇給などの固定的賃金の変更が行われたケースでは、復職して変更後の通常給与が実際に支給されるようになってから随時改定の判定を行う場面があります。
休職そのものによる減額と、賃金制度上の変更を切り分けるのが実務上のポイントです。
算定基礎届は支払基礎日数で判断する
次に問題になるのが、4月から6月までの算定対象期間に休職していた場合です。
算定基礎届による定時決定では、4月、5月、6月に支払われた報酬と、それぞれの月の支払基礎日数を確認して標準報酬月額を決定します。
通常の被保険者では、原則として支払基礎日数が17日以上ある月を算定対象とします。
そのため、たとえば4月は通常勤務、5月と6月は完全無給の休職だった場合には、基本的には17日以上ある4月の報酬をもとに算定することになります。
| 月 | 状況 | 支払基礎日数の例 | 算定上の考え方 |
|---|---|---|---|
| 4月 | 通常勤務 | 17日以上 | 算定対象 |
| 5月 | 完全無給の休職 | 0日 | 原則除外 |
| 6月 | 完全無給の休職 | 0日 | 原則除外 |
4月から6月までの3か月すべてについて算定に用いることのできる支払基礎日数がない場合には、従前の標準報酬月額が引き続き用いられるのが基本です。
つまり、4月から6月まで休職して給与がゼロだったからといって、9月から標準報酬月額がゼロになるわけではありません。
紙の算定基礎届で完全無給の休職月を記載する場合には、実態に沿って支払基礎日数を0日、報酬額を0円として扱い、備考欄で休職であることが分かるようにしておくのが実務上分かりやすい処理です。
電子申請や使用する給与・社会保険システムによって入力仕様が異なる場合があるため、その年度の様式や入力要領も確認してください。
パートタイマーなどの短時間就労者には、3か月すべて17日未満でも15日以上17日未満の月を用いる取扱いがあります。
また、特定適用事業所等に勤務する一定の短時間労働者は11日以上が基準です。
「17日未満ならすべて従前等級」と一律に判断しないことが重要です。
さらに、一時帰休で休業手当が支払われている場合には、その休業手当を含めて算定する取扱いなど、私傷病による完全無給の休職とは異なるルールがあります。
算定基礎届は単に給与額を見るのではなく、「なぜ給与が少ないのか」「支払基礎日数はいくつか」「通常の休職なのか一時帰休なのか」を整理してから処理する必要があります。
社会保険の算定は毎年の定型業務ですが、休職者がいる年は通常勤務者と同じように機械的に処理すると誤りが起こりやすくなります。
休職開始日、給与締日、給与支払日、支払基礎日数を並べて確認しておくことをおすすめします。
休職中も社会保険料の免除はない

私傷病による休職で特に注意したいのが、 給与がゼロになっても健康保険料と厚生年金保険料は原則として免除されない ことです。
休職中も会社との雇用関係が続き、健康保険・厚生年金保険の被保険者資格が継続していれば、標準報酬月額を基礎とした保険料が発生します。
会社員の社会保険料は、健康保険料や厚生年金保険料について事業主と被保険者がそれぞれ負担する仕組みです。
無給休職だからといって本人負担分だけが消えるわけでも、会社負担分だけが消えるわけでもありません。
たとえば、休職前の標準報酬月額に基づく本人負担分が毎月数万円ある従業員であれば、3か月の無給休職でもその負担が積み上がる可能性があります。
実際の保険料額は標準報酬月額、加入している健康保険、保険料率、年齢などによって異なりますので、本文中の数値や日数は一般的な制度説明の目安として考えてください。
傷病手当金を受け取っているから社会保険料も免除される、という仕組みではありません。
傷病手当金と社会保険料は別の制度です。
傷病手当金の受給中でも、被保険者資格が続いている私傷病休職では社会保険料の負担が続くのが基本です。
従業員本人にとっては、給与が入らない状態で社会保険料を支払うことになるため、想像以上に負担感があります。
会社側では、休職に入る段階で「無給になります」と説明するだけでなく、社会保険料の本人負担が毎月どの程度発生する見込みなのか、どのような方法で支払ってもらうのかまで説明しておくことが重要です。
また、休職制度そのものは会社の就業規則によって内容が異なります。
休職期間、給与の有無、復職判断なども含めて整理したい場合は、 休職制度の基本と会社実務の注意点 も確認してみてください。
社会保険料の免除がないことを後から初めて伝えると、「給与がないのにそんなに払うとは聞いていなかった」というトラブルにつながりやすくなります。
会社としては、休職通知書や休職辞令を交付する段階で金銭面の説明まで行うことが実務上重要です。
本人負担分の徴収方法を決めておく
無給休職では給与から社会保険料を控除できないため、会社は本人負担分をどのように回収するか決めておく必要があります。
会社は社会保険料を納付しなければならないため、「本人からまだ受け取っていないので納付しない」という扱いにはできません。
実務では、本人から毎月会社口座へ振り込んでもらう方法が比較的分かりやすいです。
休職開始時に本人負担額の見込額、振込先、毎月の期限、金額が変わった場合の連絡方法を通知しておけば、会社側も従業員側も管理しやすくなります。
一方、会社がいったん本人負担分を立て替え、復職後に精算する方法を採るケースもあります。
ただし、数か月分の社会保険料が積み上がると、復職直後の給与から大きな金額を控除することになりかねません。
| 徴収方法 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 休職中に毎月振込 | 未回収額が積み上がりにくい | 本人の振込管理が必要 |
| 会社が一時立替 | 休職直後の本人負担を遅らせられる | 復職時の精算額が大きくなりやすい |
| 復職後に分割精算 | 本人の一時的負担を抑えやすい | 賃金控除の方法を慎重に整理する必要がある |
ここで注意したいのが、復職後の給与から会社が立て替えた金額を当然に全額差し引けるとは限らないことです。
賃金には労働基準法上の全額払いの原則があります。
社会保険料としてその月に法令上控除できる金額と、過去に会社が立て替えた本人負担分の精算は、同じように考えない方が安全です。
立替金を給与と相殺する場合には、賃金控除に関する労使協定の内容や本人の自由な意思に基づく同意など、具体的な状況を確認する必要があります。
特に数か月分を一括で控除すると生活に大きな影響を与えるため、本人と協議して分割返済にするなどの対応も検討した方がよいでしょう。
休職辞令や休職通知書に入れておきたい事項
- 休職期間と給与の有無
- 社会保険料の本人負担が継続すること
- 毎月の徴収方法と支払期限
- 振込手数料の取扱い
- 復職・退職時に未精算額がある場合の対応方法
私は、休職に入る時点でこうした事項を書面にして本人へ説明しておくことをおすすめしています。
金額の問題は、制度そのものよりも「聞いていたかどうか」で揉めることが少なくありません。
口頭説明だけにせず、会社と本人の双方が後から確認できる状態にしておくことが重要です。
休職中の標準報酬月額と復職後の実務
休職中の標準報酬月額については、休職期間だけでなく、産休・育休との違い、傷病手当金、復職後の給与変更まで一連の流れで理解しておくと実務処理がしやすくなります。
特に「休業なら全部同じ」と考えると誤りやすいため、それぞれの制度を分けて整理していきます。
産休・育休の保険料免除とは扱いが違う
私傷病休職について最も誤解されやすいのが、産前産後休業や育児休業との違いです。
産前産後休業や一定の育児休業等では、所定の手続きを行うことによって健康保険料・厚生年金保険料について本人負担分と事業主負担分の双方が免除される制度があります。
これに対して、 一般的な私傷病による休職には、産休・育休と同じ社会保険料免除制度はありません。
介護休業についても、育児休業と同じような健康保険・厚生年金保険料の免除制度が設けられているわけではありません。
| 休業等の種類 | 標準報酬月額の基本 | 社会保険料 |
|---|---|---|
| 産前産後休業 | 休業だけで直ちに変更されない | 所定の申出等により免除 |
| 育児休業等 | 休業だけで直ちに変更されない | 要件を満たせば免除 |
| 私傷病休職 | 原則として従前等級を継続 | 原則免除なし |
| 介護休業 | 原則として従前等級を継続 | 育児休業と同様の免除制度なし |
たとえば、以前育児休業を取得したことのある従業員が病気で休職した場合、「前回は給与がなくても社会保険料を払わなかった」と考えることがあります。
しかし、それは育児休業という法律上の制度に基づく保険料免除が適用されていたためです。
今回が私傷病休職なら同じ取扱いにはなりません。
会社から本人へ説明するときは、休業の名称ではなく制度の根拠を分けて説明することが大切です。
「会社を長期間休んでいる」という外見が同じでも、私傷病休職、産前産後休業、育児休業、介護休業では社会保険上の取扱いが異なります。
また、産前産後休業や育児休業では、休業終了後に報酬が下がった場合に通常の随時改定とは異なる標準報酬月額変更の仕組みがあります。
私傷病休職から通常勤務へ戻るケースでは、その特例を当然に利用できるわけではありません。
実務では、人事担当者が休職者一覧だけを見て社会保険処理をすると制度を取り違えることがあります。
休職・休業の区分、開始日、終了日、給与の有無、社会保険免除手続きの対象かどうかを一覧化して管理すると処理漏れを防ぎやすくなります。
傷病手当金は標準報酬月額を基に計算

私傷病で長期間働けない場合には、健康保険の傷病手当金を申請するケースが多くなります。
傷病手当金と標準報酬月額には直接的な関係があり、支給額を計算する際には標準報酬月額が基礎になります。
一般的には、傷病手当金の1日あたりの額は、 支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額を30で割り、その3分の2に相当する額 を基礎として計算します。
被保険者期間が12か月に満たない場合には別の計算ルールがあります。
傷病手当金の日額の基本的な考え方
支給開始日以前の一定期間における標準報酬月額の平均額 ÷ 30 × 3分の2
ここで、「休職して給与がゼロなのだから、傷病手当金もすぐゼロに近くなるのではないか」と心配されることがあります。
しかし、休職しただけで標準報酬月額が直ちにゼロへ変更される仕組みではありません。
休職前から決定されていた標準報酬月額などを用いて傷病手当金が計算されます。
ただし、単純に休職前の月給の3分の2がそのまま振り込まれるわけではありません。
標準報酬月額を使った所定の計算、支給対象日数、給与が一部支給されている場合の調整などがあります。
本文中の3分の2という数値も、最終的な手取り額が給与の3分の2になるという意味ではない点に注意してください。
また、 傷病手当金から健康保険料や厚生年金保険料が制度上自動的に差し引かれるわけではありません。
休職中の社会保険料については、会社への振込など、会社が定めた方法で別途精算するのが通常です。
そのため、傷病手当金が入金された金額をすべて生活費として使ってしまうと、後から社会保険料の支払いに困る場合があります。
傷病手当金には、業務外の病気やけがで療養していること、仕事に就けないこと、一定の待期が完成していること、給与の支払いがないことなど確認すべき要件があります。
具体的な申請手順については、 傷病手当金の申請方法と実務上の注意点 で詳しく解説しています。
なお、傷病手当金の計算方法や支給条件は加入状況などによって確認が必要です。
協会けんぽの場合は全国健康保険協会、健康保険組合の場合は加入している健康保険組合の案内を確認してください。
復職後の時短は随時改定の対象になり得る
休職中は標準報酬月額が原則として変わらなくても、復職後は状況が変わることがあります。
特に、病気から復職したもののフルタイム勤務が難しく、所定労働時間を短くしたり、基本給や固定手当を変更したりする場合です。
たとえば、復職に伴って正社員の月給を一時的に減額する制度を適用し、基本給そのものが変更されたのであれば、固定的賃金の変動に該当する可能性があります。
その場合は、変更後の給与が実際に支払われた月から3か月間の報酬と支払基礎日数を確認し、随時改定に該当するか判断します。
復職後に確認したいポイント
- 基本給そのものを変更したか
- 固定手当を減額・廃止したか
- 所定労働時間や賃金体系を変更したか
- 変更後3か月の支払基礎日数を満たすか
- 従前の標準報酬月額と原則2等級以上の差があるか
一方で、復職したものの欠勤が多く、その結果として給与が少なくなっただけであれば、固定的賃金の変動とは限りません。
給与の支給額が下がったという結果だけではなく、 給与単価や賃金体系そのものに変更があったか を最初に確認する必要があります。
これは休職前後の実務で非常に重要です。
会社として「復職後3か月間の給与が低いから月額変更」と機械的に処理するのではなく、復職時に交付した労働条件通知書、時短勤務の申出書、賃金規程、給与計算データなどから、固定的賃金が変更された日を特定して判断します。
さらに、育児休業から復帰して時短勤務となった場合には、通常の随時改定とは別に育児休業等終了時の標準報酬月額変更の制度があります。
通常の随時改定では原則2等級以上の差が必要ですが、育児休業等終了時の改定には異なる要件が設けられています。
また、3歳未満の子を養育している期間について標準報酬月額が低下した場合には、将来の厚生年金額の計算について従前の高い標準報酬月額を用いる養育期間標準報酬月額特例を利用できる場合があります。
保険料の計算に使う標準報酬月額そのものを高く戻す制度ではなく、将来の年金額を計算する際のみ従前額をみなして使う制度である点を区別しておきましょう。
休職中の住民税も徴収方法を確認する

休職に入ったときは、社会保険料だけでなく住民税も確認しておく必要があります。
住民税は基本的に前年の所得をもとに計算されるため、今年休職して給与がなくなったからといって、その時点で今年度の住民税が自動的にゼロになるわけではありません。
通常の会社員であれば、住民税は毎月の給与から特別徴収されています。
しかし、完全無給の休職では天引きする給与がありません。
そのため、会社がどのように徴収するのか、普通徴収へ切り替えるのかなどを確認する必要があります。
実務では、社会保険料と同じように本人から会社へ振り込んでもらうケースや、市区町村との手続きを行って本人が直接納付する普通徴収へ切り替えるケースなどがあります。
ただし、具体的な取扱いは休職の時期や自治体への届出状況などによって異なることがあります。
社会保険料と住民税を同じ制度として処理しないよう注意してください。
どちらも給与から控除されることが多いため似ていますが、社会保険料と住民税では根拠となる制度も納付先も異なります。
従業員本人からすると、「給与がなくなる」「社会保険料を自分で払う」「住民税も支払う」「傷病手当金の入金を待つ」という複数のお金の動きが一度に発生します。
休職開始時にこれらを別々に説明すると分かりにくいため、会社から本人へ月ごとの負担見込額を一覧で案内すると理解してもらいやすくなります。
また、長期間の休職では途中で年度が変わり、住民税額が変更になる場合もあります。
本人から毎月会社へ一定額を振り込んでもらう運用にしている場合も、前年と同じ金額をそのまま請求し続けるのではなく、新年度の税額決定通知を確認してください。
税務上の取扱いや普通徴収への変更方法は自治体によって確認が必要になる場合があります。
会社の給与担当者だけで判断せず、必要に応じて市区町村の担当窓口や税務の専門家へ確認することが安全です。
休職中の標準報酬月額の要点を確認
休職中の標準報酬月額で最も重要なのは、 給与がゼロになったことと標準報酬月額がゼロになることは別 だと理解することです。
私傷病休職で無給になっただけであれば、原則として休職前の標準報酬月額が継続します。
その理由は、随時改定が単純な給与の増減ではなく、固定的賃金の変動など一定の要件を満たした場合に行われる制度だからです。
休職によって労務提供がなく給与が支給されない状態は、通常、基本給の単価や賃金体系そのものを変更したものではありません。
休職中の標準報酬月額で押さえるべきポイント
- 私傷病休職による無給だけでは標準報酬月額は原則変わらない
- 休職だけを理由とした月額変更届は原則不要
- 算定基礎届では支払基礎日数を確認して対象月を判断する
- 私傷病休職には産休・育休のような社会保険料免除は原則ない
- 無給中の本人負担分について徴収方法を事前に決めておく
- 傷病手当金は標準報酬月額を基礎として計算される
- 復職後に固定的賃金が変われば随時改定を改めて確認する
会社側では、標準報酬月額の処理だけで終わらせず、社会保険料の本人負担分をどう徴収するのかまでセットで考えることが重要です。
休職辞令や休職通知書に、休職期間、給与の有無、社会保険料、住民税、支払方法を記載し、本人へ説明した記録を残しておくと後日のトラブルを防ぎやすくなります。
また、4月から6月に休職者がいる場合には算定基礎届、復職時に給与条件を変更した場合には随時改定と、休職の開始後にも確認すべき社会保険手続きがあります。
一度休職処理をしたら終わりではなく、休職開始、算定、復職という時系列で管理すると漏れを防ぎやすくなります。
従業員本人にとっては、休職中に給与がないにもかかわらず社会保険料の負担が続くことは、特に分かりにくいところです。
会社が制度の理由と支払方法をあらかじめ説明しておくことが、結果として労使双方の安心につながります。
社会保険制度は、被保険者区分、短時間労働者への該当状況、休職中の給与や休職給の有無、復職後の賃金変更などによって結論が変わる場合があります。
この記事で示した数値や基準は一般的な制度説明の目安として整理しています。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
特に、休職給を支給している場合、一時帰休に該当する可能性がある場合、休職中に昇給・降給が行われた場合、復職後に時短勤務へ変更した場合などは、個別の状況を確認したうえで処理する必要があります。
判断を誤ると社会保険料や将来の年金額にも影響する可能性があるため、迷う場合には会社だけで処理を進めず、 最終的な判断は専門家にご相談ください。