こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
労働時間の適正な把握のためのガイドラインは、会社が従業員の労働時間をどのように確認し、記録し、管理すべきかを具体的に示した厚生労働省の指針です。
特に重要なのは、始業・終業時刻は使用者による現認やタイムカード、ICカード、パソコンの使用時間などの客観的な記録を基礎として把握することが原則であり、自己申告制は一定の措置を講じたうえで運用する必要があるという点です。
労働基準監督署の調査や是正対応では、勤怠記録が存在するかだけではなく、記録された時間と実際の勤務状況が一致しているかまで確認が必要になることがあります。
この記事では、ガイドラインの基本から、管理監督者、自己申告制、PCログとの乖離、賃金台帳、記録保存まで、企業の実務担当者が自社の運用を点検できるように整理します。
- 労働時間把握ガイドラインの位置づけと対象者
- 労働時間に該当する時間の基本的な判断方法
- 客観的記録と自己申告制による勤怠管理の違い
- 賃金台帳や記録保存を含めた企業の実務対応

労働時間の適正な把握のためのガイドラインとは
まずは、労働時間の適正な把握のためのガイドラインが何を目的として作られ、どの労働者を対象としているのかを確認します。
勤怠管理の方法だけを見るのではなく、そもそも労働時間とは何か、誰について把握が必要なのかを理解しておくことが重要です。
正式名称・策定と法的位置づけ
正式名称は、 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン です。
厚生労働省が平成29年、2017年1月20日に策定したもので、それまで運用されていた平成13年の基準を廃止し、内容を拡充する形で整理されました。
背景には、自己申告制による労働時間管理が適切に行われず、実際には長時間働いているにもかかわらず勤怠上の残業時間が短く記録されているケースや、結果として割増賃金の未払い、長時間労働による健康問題につながるケースがあったことがあります。
ガイドラインの中心となる考え方
- 使用者には労働時間を適切に管理する責務がある
- 労働日ごとに始業・終業時刻を確認して記録する
- 原則として現認または客観的な記録を利用する
- 自己申告制を利用する場合は適正な運用を確保する
ガイドラインそのものは法律の条文ではなく、これだけを根拠として直接罰則が科されるという性質のものではありません。
しかし、労働基準法では労働時間、休日、割増賃金、賃金台帳などについて使用者にさまざまな義務を課しています。
つまり、このガイドラインは、 労働基準法上求められる適切な労働時間管理を、企業が実際にどう行えばよいのか具体化したもの と考えると分かりやすいです。
労働基準監督署の調査でも、タイムカードや勤怠データ、残業申請、賃金台帳、給与計算の内容などを照合し、実際の勤務状況と合っているか確認されることがあります。
労基署対応については、 労基署の監査項目と労務管理の整え方 でも詳しく解説しています。
ガイドラインの原文を確認したい場合は、厚生労働省の 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン も確認しておくとよいでしょう。
対象となる労働者と適用範囲

ガイドラインの対象となる事業場は、基本的に労働基準法の労働時間に関する規定が適用されるすべての事業場です。
会社の規模によって、小規模事業者だから適用されないというものではありません。
対象となる労働者については、原則として労働基準法上の労働時間規制が適用される労働者です。
そのため、正社員だけを勤怠管理していればよいわけではなく、契約社員、パート、アルバイトなどについても、それぞれの実際の労働時間を適切に確認する必要があります。
中小企業の実務で特に注意したいのは、 雇用形態と労働時間把握の必要性を混同しないこと です。
例えば、時給制のアルバイトは細かく打刻させている一方、月給制の正社員については定時勤務として扱い、残業した日だけ申告させるという運用をしている会社があります。
しかし、月給制だから労働時間を把握しなくてもよいということにはなりません。
労働日ごとの始業時刻と終業時刻を確認し、その結果として時間外労働や休日労働が発生しているかを判断できる状態にする必要があります。
給与形態だけで判断しないようにしましょう。
月給制、固定残業代制、年俸制であっても、労働時間規制が適用される労働者については、実際の労働時間を適切に把握することが基本です。
固定額を支払っていることと、労働時間を記録しなくてよいことは別の問題です。
また、勤怠システムを導入していること自体が適正な労働時間管理を意味するわけでもありません。
システム上の打刻と実際の勤務状況が一致しているか、打刻漏れや修正が適切に処理されているかまで含めて管理することが重要です。
管理監督者とみなし労働時間制
ガイドラインでは、労働基準法第41条に定める管理監督者等や、みなし労働時間制が適用される労働者について、通常の労働者と同じ形での労働時間把握の対象から除外される部分があります。
ここで注意したいのが、 管理職だから労働時間を把握しなくてよいという意味ではない ことです。
まず、会社で課長、部長、店長、マネージャーなどの肩書を付けているだけでは、労働基準法上の管理監督者に該当するとは限りません。
管理監督者に該当するかどうかは、職務権限、責任、勤務時間の裁量、待遇などの実態を総合的に見て判断されます。
実務では、会社側が管理職として残業代の対象外にしているものの、本人にはほとんど勤務時間の裁量がなく、一般社員と同じように出退勤管理を受けているケースもあります。
この場合には、そもそも管理監督者として扱うことが妥当なのかという別の問題が生じます。
管理監督者の判断について詳しく確認したい場合は、 管理職の残業代と法改正を実務目線で解説した記事 も参考にしてください。
また、事業場外労働のみなし労働時間制や専門業務型・企画業務型の裁量労働制についても、実際の労働時間と賃金計算上のみなし時間との関係を整理する必要があります。
ガイドラインの対象外と労働時間把握義務は分けて考えます。
2019年4月以降は、健康確保の観点から、管理監督者や裁量労働制対象者を含め、労働安全衛生法に基づく労働時間の状況の把握が必要です。
残業代計算のための労働時間把握と、健康管理のための労働時間の状況把握は、目的が異なります。
そのため、「管理監督者だからタイムカードは一切不要」「裁量労働だから何時間働いているか会社は知らなくてよい」という運用には注意が必要です。
少なくとも健康管理の観点から、長時間労働を把握できる仕組みは確保しておきましょう。
労働時間に該当する時間の考え方

労働時間を適正に把握するためには、そもそも何を労働時間として数えるのかを理解しておかなければなりません。
基本となる考え方は、 労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間かどうか です。
就業規則や雇用契約書に何と書いてあるかだけではなく、実際の働き方から客観的に判断します。
例えば、次のような時間は労働時間に該当する可能性があります。
- 会社から義務付けられた制服や防護具の着脱時間
- 業務開始前に指示された清掃や準備を行う時間
- すぐに業務へ対応できる状態で待機する手待時間
- 参加が義務付けられている研修や教育訓練の時間
- 会社の指示による業務上必要な学習を行う時間
- 終業後に指示された片付けや締め作業をする時間
一方で、会社に滞在している時間がすべて労働時間になるわけでもありません。
例えば、本人が私的な理由で早く出勤して休憩室で過ごしている時間や、終業後に私用で会社に残っている時間まで当然に労働時間となるわけではありません。
タイムカードが8時40分、所定始業が9時という場合でも、8時40分から9時まで実際に仕事をしていたのか、それとも単に早く到着していただけなのかで判断は変わります。
打刻時刻と労働時間は同じとは限りません。
ただし、毎朝8時45分から朝礼や清掃、パソコンの立ち上げを行わせているのに、9時からしか労働時間として扱わないといった運用であれば問題になり得ます。
形式ではなく実態を見ることが重要です。
給与計算上の端数処理については、 給与計算は何分単位で行うべきかを解説した記事 でも整理しています。
企業側では、仕事として求めている行為と、従業員が任意で行っている行為の境界を明確にすることが大切です。
曖昧な状態のまま長期間運用すると、後になって過去の労働時間を確認することが非常に難しくなります。
始業・終業時刻の確認と記録
ガイドラインでは、使用者が労働時間を適正に管理するため、 労働日ごとの始業時刻と終業時刻を確認し、記録すること を求めています。
単純に月末時点で総労働時間だけを入力するのではなく、いつ勤務を開始し、いつ終了したのかを日ごとに確認できることが基本です。
原則的な確認方法は、大きく二つあります。
| 確認方法 | 具体例 | 実務上のポイント |
|---|---|---|
| 使用者による現認 | 上司や管理者が出退勤を直接確認 | 確認した時刻を記録として残す |
| 客観的な記録 | タイムカード、ICカード、勤怠システム、PCログなど | 記録と実際の勤務状況の差も確認する |
現在はクラウド型の勤怠システムを利用している会社も多く、スマートフォン、ICカード、パソコンなどから簡単に打刻できます。
便利になった一方で、 システムに時刻が入っているだけで適正な労働時間管理が完成するわけではありません。
例えば、会社では18時に退勤打刻をするルールになっているものの、その後20時までパソコンで業務を行っているのであれば、打刻データだけを見る運用では実態を把握できません。
反対に、18時に業務を終えたあと20時まで私用で会社に残っていた場合には、PCや入退館記録だけを見て2時間の残業と判断することも適切とは限りません。
だからこそ、勤怠データを基礎としつつ、例外が発生した場合に本人と上司が理由を確認し、必要に応じて修正できる仕組みを作ることが大切です。
実務では打刻ルールと修正ルールをセットで整えます。
- 本人が原則として自分で打刻する
- 打刻漏れがあった場合の申請方法を決める
- 修正した人と修正理由を記録する
- 早出や終業後作業が発生した場合の承認方法を決める
- 定期的にPCログなどとの大きな乖離を確認する
労働時間の適正な把握のためのガイドラインの実務
ここからは、企業の人事・労務担当者が実際に勤怠管理を運用する際に重要となるポイントを確認します。
特に問題になりやすいのは、タイムカードやPCログとの乖離、自己申告制の運用、賃金台帳への記録です。
制度を作るだけではなく、実態と記録を一致させる視点が必要になります。
客観的な記録と実態の乖離の補正
客観的な記録を使っている会社であっても、記録された時刻と実際の労働時間が一致しているとは限りません。
例えば、次のような状態です。
- 退勤打刻後もパソコンで仕事をしている
- 始業打刻前に毎日朝礼や準備作業をしている
- 入退館記録では20時退館なのに勤怠は18時退勤
- 在宅勤務の申告時間後にも業務メールを送っている
- 残業申請は1時間なのにPCログでは3時間程度の差がある
こうした場合、会社として重要なのは、単純にタイムカードの数字だけを正しいものとして扱わないことです。
ガイドラインでは、タイムカードやICカードなどの客観的な記録を基礎に確認することを原則としていますが、必要に応じて残業命令書、報告書、入退場記録、パソコンの利用記録などとも突き合わせ、実態を確認する考え方が示されています。
社労士の実務でも、 勤怠とPCログの大きなズレは先に確認したいポイント です。
特に労働基準監督署への対応では、会社の勤怠記録だけで説明が完結するとは限りません。
PCログの時間をそのまま労働時間にするという意味ではありません。
パソコンが起動していた時間に本人が私用で離席していた可能性もあります。
重要なのは、大きな乖離を把握したときに放置せず、何が起きていたのか実態を確認することです。
例えば、毎日18時に勤怠上は退勤しているにもかかわらず、PCが21時まで使用されているのであれば、本人と上司へ状況を確認します。
実際に仕事をしていたのであれば勤怠を補正し、なぜ退勤後の業務が発生したのか、今後の打刻方法まで見直します。
反対に、私用でPCを使用していた、リモート接続だけ残っていたなど合理的な事情があるのであれば、その事情を説明できるようにします。
大切なのは、 記録と実態の差を見つけられる仕組みと、差が見つかった後に確認・補正する仕組み の両方を持つことです。
自己申告制を使う場合の3つの措置

営業職、直行直帰、在宅勤務などでは、従業員本人が始業・終業時刻を申告する自己申告制を利用している会社もあります。
自己申告制そのものが直ちに禁止されているわけではありません。
しかし、ガイドラインでは、現認や客観的な記録による原則的な方法によらず、 やむを得ず自己申告制を利用する場合には適正な運用を確保するための措置 を講じることが求められています。
自己申告のルールを十分に説明する
まず、自己申告制の対象となる労働者に対して、労働時間の考え方や正しく申告する必要性を説明します。
本人だけでなく、実際に労働時間を管理する上司や管理職にも説明しておくことが重要です。
本人が正確に申告しても、上司が「残業が多すぎるから直して」と短い時間へ修正させてしまえば制度は機能しません。
客観的記録との乖離を確認する
二つ目は、自己申告された労働時間と実態が一致しているか必要に応じて確認することです。
入退館記録、パソコンの使用時間、業務システムへのアクセス記録などから把握できる時間と、本人が申告した時間に著しい差がある場合には、その理由を確認します。
実際の労働時間が申告時間より長かったことが確認できれば、必要な補正を行うことになります。
適正な申告を阻害しない
三つ目は、従業員が実際に働いた時間をそのまま申告できる環境を作ることです。
例えば、「残業は月20時間までしか入力してはいけない」「36協定の上限を超えるから申請を受け付けない」「固定残業代を払っているから一定時間以上の申告は不要」といった運用をすると、実際の労働時間と記録がずれてしまいます。
自己申告制で確認したい3つの柱
- 労働者と管理者への十分な説明
- 客観的資料との乖離確認と必要な補正
- 正確な申告を妨げる運用をしないこと
在宅勤務や直行直帰でも、現在はクラウド勤怠、スマートフォン打刻、PCログなどを利用できる場合があります。
最初から自己申告しか方法がないと決めるのではなく、まず客観的に把握できる方法がないかを検討することが実務上のポイントです。
適正な自己申告を妨げない運用
自己申告制で特に注意したいのが、会社が意図的に過少申告を指示していなくても、社内の仕組みが結果として正確な申告を妨げているケースです。
例えば、会社が「残業時間を月20時間以内にする」という目標を立てること自体が直ちに問題になるわけではありません。
業務効率を改善して実際の残業時間を減らすのであれば、むしろ望ましい取り組みです。
しかし、実際には30時間働いているのに、 記録だけ20時間以内に収めることは全く別の話 です。
36協定についても同じです。
36協定で認められた時間を超えて働かせないよう業務を管理することが必要なのであって、実際の労働時間が超えてしまった後に勤怠記録を短くすることで解決するものではありません。
数字を合わせるのではなく、実際の労働時間を減らす必要があります。
36協定の上限、会社の残業削減目標、固定残業代の時間数などに勤怠データを合わせるため、実際より短く申告させる運用は避けなければなりません。
実務では、次のような仕組みがないか確認するとよいでしょう。
- 一定時間以上の残業申請がシステム上できない
- 上限を超えると上司から勤怠修正を求められる
- 残業時間が多い部署の管理職だけ強く評価を下げられる
- 残業申請すると理由を過度に追及され申請しにくい
- 固定残業時間までは勤怠入力が不要とされている
もちろん、残業には事前申請を求める、不要な残業を禁止する、上司の承認を必要とするといった労務管理自体は考えられます。
ただし、残業の命令・承認ルールと、 実際に発生した労働時間を正確に記録することは分けて考える 必要があります。
無断残業がルール違反であることと、実際に使用者の指揮命令下で労働した時間を勤怠記録から消してよいことは同じではありません。
問題がある場合には、勤怠データを修正して見えなくするのではなく、業務指示や残業承認の運用そのものを改善していきましょう。
賃金台帳と労働時間記録の保存期間
労働時間を把握した後は、その結果を給与計算や賃金台帳へ正しく反映する必要があります。
労働基準法第108条では、使用者に賃金台帳の作成が求められています。
賃金台帳には、対象となる労働者について、労働日数、労働時間数、時間外労働時間数、休日労働時間数、深夜労働時間数など、法令で定められた事項を適切に記載します。
実務で意外と見かけるのが、給与額は記載されているものの、労働時間数や時間外労働時間数の欄が空欄になっている賃金台帳です。
給与計算ソフトを使用している会社でも、勤怠データとの連携設定によっては、必要な項目が賃金台帳へ反映されていないことがあります。
ソフトを導入した時点で安心せず、実際に出力した賃金台帳を確認してみることをおすすめします。
賃金台帳について、法令上必要な事項を記入しない場合や虚偽の記入をした場合には、労働基準法上の罰則の対象となる可能性があります。
自社の帳票が必要事項を満たしているか確認しておきましょう。
また、労働基準法第109条では、労働関係に関する重要な書類について保存義務が定められています。
現在は法令上の保存期間が 5年 とされる一方、経過措置として 当分の間は3年 とされています。
出勤簿やタイムカードのほか、労働時間を確認するために使用した記録、残業命令書や報告書などについても、後から勤務実態を確認できるよう適切に管理しておくことが重要です。
保存期間だけで機械的に廃棄しないことも実務上重要です。
未払い賃金などをめぐる問題が進行している場合や、個別の紛争が生じている場合には、法定の最低保存期間だけを基準に資料を廃棄すると、後日の事実確認が困難になることがあります。
紙のタイムカードを保管している会社では、文字が消えて読めなくならないよう保存方法にも注意してください。
クラウド勤怠の場合も、契約終了後に過去データへアクセスできなくなる可能性がありますので、退職者を含め必要な期間のデータを出力・保存できる運用にしておくと安心です。
保存期間や賃金台帳の記載事項は法改正の影響を受ける可能性があります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください 。
労働時間管理責任者と労使協議

労働時間管理は、勤怠システムを導入しただけでは完成しません。
実際に誰がデータを確認し、打刻漏れを処理し、長時間労働や記録との乖離を発見したときに対応するのかを決めておく必要があります。
ガイドラインでも、労働時間管理を行う部署の責任者が、自己申告制を含めた労働時間管理上の問題点を把握し、その解消を図ることが重要とされています。
会社の規模によって担当者は異なりますが、例えば次のような体制が考えられます。
- 人事労務担当者が全社の勤怠状況を確認する
- 各部署の管理職が日々の勤務実態を確認する
- 給与担当者が勤怠と賃金台帳の整合性を確認する
- 経営者や担当役員が長時間労働の改善状況を確認する
特に中小企業では、給与計算担当者だけに勤怠管理を任せているケースがあります。
しかし、給与担当者は月末になって初めて勤怠データを見ることも多く、現場で何が起きていたのかまでは分からないことがあります。
そのため、 現場の管理職と人事労務担当者の役割分担 を決めることが重要です。
| 担当者 | 主な確認事項 |
|---|---|
| 現場管理者 | 日々の出退勤、残業理由、打刻漏れ、実際の業務状況 |
| 人事労務担当 | 長時間労働、自己申告との乖離、36協定との関係 |
| 給与担当 | 勤怠データと給与・賃金台帳への反映 |
| 経営者・役員 | 恒常的な長時間労働の原因と組織的な改善 |
さらに、衛生委員会や労使委員会など、労使で勤務状況を確認する場がある会社では、長時間労働の発生部署、勤怠管理上の問題、休暇取得状況などを共有し、改善策を検討する方法も有効です。
重要なのは、労働時間管理を給与計算のためだけの作業にしないことです。
労働時間が長くなっている背景には、人員不足、仕事の偏り、管理職への業務集中、非効率な承認手続きなど、組織上の問題が隠れている場合があります。
勤怠データを正確に取ることはゴールではありません。
正しいデータを使って問題を把握し、必要な改善につなげていくところまでが労働時間管理です。
労働時間の適正な把握のためのガイドラインのまとめ
労働時間の適正な把握のためのガイドラインを実務に落とし込むうえで、まず押さえておきたいのは、 客観的な記録による把握が原則であり、自己申告制は適正な運用を確保したうえで利用する という基本的な順序です。
タイムカード、ICカード、勤怠システム、PCログなどを利用していても、その記録と実際の勤務状況に大きな差があれば確認が必要です。
また、自己申告制を利用する場合には、従業員と管理者への説明、客観的資料との乖離確認、正確な申告を妨げない仕組みを整えておきましょう。
企業で確認したい労働時間管理のチェックポイント
- 労働日ごとの始業・終業時刻を記録しているか
- 現認や客観的な記録を基本としているか
- 打刻とPCログなどに大きな乖離がないか
- 自己申告制のルールを従業員と管理職へ説明しているか
- 過少申告を誘発する残業上限ルールになっていないか
- 賃金台帳へ必要な労働時間を反映しているか
- 勤怠記録を必要な期間保存しているか
- 管理監督者についても健康確保のため勤務状況を把握しているか
実際によく問題になるのは、「タイムカードはあるから問題ない」と考えていたもののPCログと大きな差があったケースや、「本人の自己申告だから問題ない」として申告内容の確認を一切していなかったケースです。
労働時間管理では、制度や帳票を用意するだけでは不十分です。
記録された時間と実際の働き方が一致するよう運用を続けること が最も重要です。
また、管理監督者、みなし労働時間制、裁量労働制などについては、通常の労働者とは適用関係が異なる部分があります。
さらに、労働基準法上の労働時間管理と、労働安全衛生法上の健康確保を目的とした労働時間の状況把握も分けて整理する必要があります。
労働時間に当たるかどうかは、就業規則の文言だけではなく、業務指示、職場での運用、本人の勤務実態などによって判断が変わります。
個別の事案では事実関係によって結論が異なるため、 最終的な判断は専門家にご相談ください 。
まずは自社のタイムカードや勤怠システムを数日分だけでも確認し、PCログ、入退館記録、残業申請、賃金台帳までつながっているかを点検してみてください。
労働時間の適正な把握のためのガイドラインを、自社の勤怠管理を見直すためのチェックリストとして活用するのが実務的です。