こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
労災の8号様式は、仕事が原因のけがや病気によって働けず、会社から賃金を受けられない期間について、休業補償給付などを請求するための書類です。
請求する労働者本人だけで完成させる書類ではなく、会社が記入する事業主証明欄や、医師が記入する診療担当者の証明欄があります。
そのため、どの欄を誰が記入するのかを最初に整理しておくと、手続きが進めやすくなります。
実務では、労働者本人がすべて記入しようとして途中で止まってしまったり、会社が用意する書類だと思って待ち続けたりするケースが少なくありません。
反対に、会社側も、どこまで証明すればよいのか、会社が労災と判断しなければ証明できないのかと迷いやすいところです。
この記事では、労災の8号様式が必要になる条件、書類の入手方法、具体的な書き方、提出先、会社が協力してくれない場合の対応まで、実務の流れに沿って解説します。
- 労災の8号様式を使用する場面
- 労働者・会社・医師が記入する欄
- 平均賃金や休業日数の考え方
- 会社が証明しない場合の対応方法

労災の8号様式とは何か
まずは、労災の8号様式が何のための書類なのかを整理します。
業務災害と通勤災害では使用する様式が異なるほか、仕事を休めば必ず給付を受けられるわけではありません。
休業補償給付の対象になるには、業務との関係、療養の必要性、労働できない状態、賃金の支払い状況などを総合的に確認する必要があります。
請求の対象となる条件や、書類を提出するまでの基本的な流れを順番に確認していきましょう。
休業補償給付を受けるための要件
労災の8号様式の正式名称は、休業補償給付支給請求書、複数事業労働者休業給付支給請求書、休業特別支給金支給申請書です。
正式名称はかなり長いですが、一般的には 仕事が原因のけがや病気によって休業し、賃金を受けられない期間の給付を請求する書類 と考えると分かりやすいでしょう。
この書類を提出するだけで自動的に給付されるわけではありません。
休業補償給付を受けるためには、原則として次の3つの要件をすべて満たす必要があります。
- 業務上のけがや病気を療養するための休業であること
- 療養のために労働できない状態であること
- 労働できなかった日について賃金を受けていないこと
業務上のけがや病気であること
最初に確認されるのは、けがや病気と仕事との間に関係があるかどうかです。
たとえば、工場の作業中に機械へ手を挟んだ、会社の階段で転倒した、重量物を持ち上げた際に腰を痛めたといったケースでは、業務災害に該当する可能性があります。
一方、勤務時間中に発生したけがであっても、私的な行為が原因である場合や、仕事との関係が認められない場合は、必ずしも業務災害になるとは限りません。
反対に、勤務時間外であっても、会社の指示による作業中であったなど、業務との関係が認められれば労災の対象になる可能性があります。
つまり、会社の敷地内で起きたかどうかだけで決まるわけではなく、 その行為が業務に伴うものだったか という点が重要です。
療養のため労働できないこと
次に必要なのが、けがや病気の療養のため、実際に仕事ができない状態であることです。
単に痛みがある、通院した、会社を休んだというだけでは、必ずしも休業補償給付の対象になるとは限りません。
医師が、傷病の状態や仕事内容を踏まえ、療養のため労働できないと認めた期間であることが重要です。
たとえば、足を骨折した方であっても、現場を歩き回る仕事と、在宅で行える事務作業とでは、労働できるかどうかの判断が異なる可能性があります。
実務では、診察時に仕事内容を医師へ十分に伝えていなかったため、医師の証明期間と実際の欠勤期間が一致しないことがあります。
重量物を扱う、長時間立ち続ける、車を運転する、高所作業を行うなど、就労可否の判断に関係する仕事内容は具体的に説明しておきましょう。
休業日に賃金を受けていないこと
3つ目の要件は、労働できなかった日について賃金を受けていないことです。
会社から通常の賃金が全額支払われている日は、原則として休業補償給付の対象になりません。
ただし、休業期間中に一部だけ出勤した場合や、一部の手当だけが支払われた場合は、直ちに全期間が対象外になるわけではありません。
実際に支払われた賃金の額や支払いの対象となった日を確認し、一部休業として計算されることがあります。
年次有給休暇を取得した日についても、通常は賃金が支払われるため、賃金を受けなかった日には該当しません。
本人が療養のため休んでいた期間と、労災保険上の給付対象日数が一致しないことがあるのは、このためです。
医師が休業を認めた期間と、休業補償給付の対象日数は必ずしも同じではありません。
医師の労働不能期間に加え、勤怠記録と賃金の支払い状況を日ごとに確認する必要があります。
最初の3日間は待期期間になる
休業補償給付は、賃金を受けない休業日の 4日目から 支給対象になります。
最初の3日間は待期期間と呼ばれ、労災保険から休業補償給付は支給されません。
業務災害の場合、この待期期間については、使用者が労働基準法に基づく休業補償を行うのが原則です。
一般的には、平均賃金の60%以上を会社が補償します。
待期期間は、会社の所定労働日だけで数えるわけではありません。
療養のため労働できない状態が継続していれば、土曜日、日曜日、祝日、会社の所定休日なども含まれることがあります。
たとえば、金曜日に仕事中の事故でけがをして、金曜日から日曜日まで労働できない状態だった場合、金曜日、土曜日、日曜日の3日間で待期が完成し、月曜日が4日目になる可能性があります。
ただし、実際の療養状況や医師の証明内容によって判断されます。
なお、通勤災害の場合には、会社に労働基準法上の休業補償義務はありません。
業務災害と通勤災害では、同じように休業していても待期期間の扱いが異なるため注意が必要です。
4日目以降に支給される金額
4日目以降の一般的な支給額は、給付基礎日額の60%に相当する休業補償給付と、給付基礎日額の20%に相当する休業特別支給金を合わせた、合計80%相当額です。
| 給付の種類 | 一般的な支給割合 | 概要 |
|---|---|---|
| 休業補償給付 | 給付基礎日額の60% | 労災保険法に基づく保険給付 |
| 休業特別支給金 | 給付基礎日額の20% | 社会復帰促進等事業として支給 |
| 合計 | 給付基礎日額の80%相当 | 全部休業した場合の一般的な目安 |
ただし、80%という割合は、全部休業し、対象日の賃金を受けていない場合の一般的な目安です。
一部出勤した日、賃金が一部支給された日、固定手当が減額されずに支払われた日などは、支給額が調整されることがあります。
また、給付基礎日額は、単純な月給の日割額とは限りません。
事故前の賃金、賃金締切日、算定期間、日給制や時給制の場合の最低保障などを考慮して決められます。
労災給付が支給されるまでの生活費について不安がある方は、 労災がおりるまでの生活費を確保する方法 でも詳しく解説しています。
8号様式と16号の6の違い

休業に関する労災請求では、事故や病気が発生した原因によって使用する様式が異なります。
仕事が原因の業務災害では様式第8号、通勤が原因の通勤災害では様式第16号の6を使用します。
どちらも、療養のため働けず、賃金を受けられない期間について給付を請求する書類ですが、制度上の位置付けや待期期間の扱いに違いがあります。
| 比較項目 | 業務災害 | 通勤災害 |
|---|---|---|
| 使用する様式 | 様式第8号 | 様式第16号の6 |
| 給付の名称 | 休業補償給付 | 休業給付 |
| 主な原因 | 仕事や業務に伴う行為 | 合理的な経路・方法による通勤 |
| 待期期間の会社補償 | 原則として会社に休業補償義務あり | 会社に労働基準法上の補償義務なし |
| 提出先 | 事業場を管轄する労働基準監督署 | 事業場を管轄する労働基準監督署 |
業務災害では8号様式を使用する
業務災害とは、労働者が業務を原因として負傷し、または病気になった場合をいいます。
たとえば、工場で機械を操作している際に負傷した、介護業務中に利用者を支えて腰を痛めた、会社の指示で荷物を運搬している途中に転倒したといったケースです。
仕事中に発生した災害であっても、私的行為や故意による行為など、業務との関係が認められない場合は業務災害に該当しないことがあります。
そのため、単に勤務時間内だったというだけではなく、事故当時に何をしていたのかを具体的に確認します。
業務災害によって休業した場合は、休業補償給付を請求するために8号様式を使用します。
給付名に補償という文字が入るのは、業務災害について使用者に労働基準法上の災害補償責任があるためです。
通勤災害では16号の6を使用する
通勤災害とは、労働者が住居と就業場所との間を、合理的な経路や方法によって移動している途中に発生した災害などをいいます。
たとえば、自宅から勤務先へ向かう途中に交通事故に遭った場合や、駅の階段で転倒した場合などが考えられます。
ただし、通勤経路を大きく外れて私的な用事を済ませていた場合などは、通勤災害と認められないことがあります。
通勤災害による休業では、8号様式ではなく16号の6を使用します。
給付の名称も休業補償給付ではなく、休業給付です。
仕事中の事故か通勤途中の事故かによって、用意する様式が変わります。
間違った様式を提出すると、書類の差し替えや再作成が必要になるため、事故が発生した場面を最初に整理してください。
出張や会社間の移動は業務災害になることがある
移動中の事故であれば、すべて通勤災害になるわけではありません。
たとえば、会社の指示で取引先へ向かっている途中、営業先から会社へ戻る途中、出張中の業務に通常伴う移動中などの事故は、業務災害に該当する可能性があります。
一方、自宅から通常の勤務先へ向かう移動は、一般的には通勤として扱われます。
同じ交通事故であっても、移動の目的や会社の指示の有無によって使用する様式が変わるわけです。
実務では、外回りの営業職、複数の施設を巡回する職員、直行直帰をしている労働者などで判断に迷うことがあります。
事故が起きた時点の出発地、目的地、移動目的、会社の指示内容を時系列で整理すると判断しやすくなります。
待期期間の扱いも異なる
業務災害と通勤災害では、休業初日から3日間の待期期間に大きな違いがあります。
業務災害の場合、労災保険からの給付が始まるまでの3日間について、会社が平均賃金の60%以上の休業補償を行うのが原則です。
これに対し、通勤災害では、会社に同様の休業補償を行う労働基準法上の義務はありません。
会社の就業規則や福利厚生制度によって独自の補償が設けられている場合はありますが、それは法律上の休業補償義務とは別の話です。
様式の番号だけでなく、事故が業務災害なのか通勤災害なのかを正確に整理することが大切です。
判断が難しい場合は、どちらかを自己判断で断定する前に、所轄の労働基準監督署へ事故の状況を説明して確認しましょう。
8号様式の入手とダウンロード方法
労災の8号様式は、会社だけが持っている特別な書類ではありません。
労働者本人が労働基準監督署で受け取ることも、厚生労働省の公式サイトからダウンロードすることもできます。
会社から書類をもらえない、会社の担当者が様式を知らない、会社へ相談する前に内容を確認したいという場合でも、自分で入手できます。
会社から受け取る
会社が労災手続きに慣れている場合は、人事、総務、労務担当者などが8号様式を用意してくれることが多いでしょう。
会社側で労働保険番号や賃金情報を記入し、労働者へ渡したうえで、医療機関の証明を受ける流れになることもあります。
ただし、会社が書類を作成してくれる場合でも、請求内容を確認せずに署名するのは避けましょう。
事故発生日、休業期間、住所、振込先、災害発生状況などに誤りがないか、請求人本人も確認する必要があります。
また、労災保険給付の請求権は労働者本人にあります。
会社が手続きを代行してくれることはありますが、会社が請求するかどうかを最終的に決める制度ではありません。
労働基準監督署の窓口で受け取る
8号様式は、労働基準監督署の窓口でも入手できます。
どの様式を使えばよいか分からない場合は、事故が発生した状況を伝えたうえで、必要な書類を案内してもらうこともできます。
窓口へ相談する際は、勤務先の名称と所在地、事故の発生日、事故の発生場所、当時行っていた作業、休業を始めた日などをメモしておくと説明しやすいです。
書類をその場で完成させる必要はありません。
まず様式と記載例を受け取り、会社や医療機関へ記入を依頼する流れでも問題ありません。
厚生労働省の公式サイトから入手する
厚生労働省の公式サイトでは、業務災害用の様式第8号、通勤災害用の様式第16号の6、記載例、手続きに関するリーフレットなどが公開されています。
厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)」 では、提出時点で使用できる様式を確認できます。
様式は制度改正や記載項目の変更によって更新されることがあります。
以前ダウンロードして保存していた様式や、会社に残っていた古い用紙を使用するより、提出前に公式サイトで最新版を確認する方が確実です。
PDFへ入力するときの注意点
厚生労働省が公開している8号様式には、パソコンから文字を入力できるOCR対応のPDFがあります。
ただし、ブラウザの画面上で直接入力すると、入力内容が保存されなかったり、印刷時に文字が表示されなかったりすることがあります。
PDFへ入力する場合は、いったんファイルをパソコンへ保存し、PC版のAdobe Acrobat Readerなどで開いて入力する方法が案内されています。
入力後は、保存したファイルを閉じて再度開き、内容が残っているか確認すると安心です。
手書きで作成することもできますが、OCRで読み取る様式では、枠から文字が大きくはみ出さないようにし、数字やカタカナを読みやすく記入してください。
修正液や消せるボールペンの使用については、提出先での取扱いを確認した方がよいでしょう。
ダウンロードする書類を確認する
8号様式をダウンロードするときは、表面だけではなく、裏面や必要な別紙が含まれているか確認してください。
| 書類 | 主な内容 | 使用する場面 |
|---|---|---|
| 様式第8号表面 | 請求人情報、休業期間、事業主証明、医師証明 | 基本となる請求書 |
| 様式第8号裏面 | 職種、労働時間、災害発生状況など | 事故の状況を具体的に記載 |
| 別紙1 | 平均賃金算定内訳 | 初回請求時など |
| 別紙2 | 一部休業や賃金支給日の内訳 | 部分算定日がある場合など |
| 別紙3 | 他の勤務先の情報 | 複数事業労働者の場合 |
どの別紙が必要になるかは、休業の状況や賃金の支払い方によって異なります。
特に、一部出勤した日、有給休暇を取得した日、月額手当が減額されずに支給された日が含まれる場合は、別紙2が必要になることがあります。
様式や取扱いは変更される可能性があるため、 正確な情報は公式サイトをご確認ください。
労災の8号様式の提出先

労災の8号様式は、原則として、労働者が所属する事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長へ提出します。
療養している病院の所在地を管轄する労働基準監督署ではありません。
また、会社の本社所在地を管轄する労働基準監督署とも限りません。
実際に所属し、事故が発生した事業場を基準に確認するのが一般的です。
病院ではなく労働基準監督署へ提出する
労災の治療に関する5号様式などは、労災指定医療機関の窓口へ提出することがあります。
そのため、8号様式も病院へ提出するものだと考える方がいます。
しかし、8号様式は休業補償給付の請求書であり、最終的な提出先は所轄の労働基準監督署です。
病院には診療担当者の証明欄を記入してもらいますが、病院が請求書全体を労働基準監督署へ提出してくれるとは限りません。
医療機関から証明済みの書類を受け取った後は、会社の証明や別紙の添付状況を確認し、請求人本人または会社の担当者が労働基準監督署へ提出します。
本社と事業場が異なる場合
たとえば、本社が東京都にあり、労働者が岩手県内の営業所で勤務している場合を考えます。
岩手県内の営業所に所属し、その営業所の業務中に事故が起きたのであれば、原則として営業所所在地を管轄する労働基準監督署へ提出します。
会社の給与計算や社会保険手続きを本社で一括して行っていても、労災保険上の事業場や労働保険番号が分かれていることがあります。
提出先を判断するときは、会社名だけでなく、労働保険番号、所属事業場、事故発生場所を確認しましょう。
建設工事、出張、派遣労働、複数店舗を移動して勤務している場合などは、どの事業場を管轄する労働基準監督署へ提出するか迷うことがあります。
このような場合は、事故が起きた場所だけで自己判断せず、会社または労働基準監督署へ確認してください。
窓口提出と郵送提出
8号様式は、労働基準監督署の窓口へ持参するほか、郵送で提出する方法もあります。
初めての請求で、記載内容に不安がある場合は、窓口で書類を確認してもらいながら提出する方が分かりやすいでしょう。
一方、会社や医療機関による証明がそろい、必要書類も明確である場合は、郵送で提出することも考えられます。
郵送時は、普通郵便ではなく、追跡できる方法を利用すると提出日や配達状況を確認しやすくなります。
提出前にコピーしておきたい書類
- 様式第8号の表面と裏面
- 平均賃金算定内訳などの別紙
- 会社や病院から受け取った関連書類
- 事故状況を補足するために提出した資料
- 提出日が分かる郵送記録や受付印のある控え
労災の請求後、労働基準監督署から問い合わせがあったとき、手元に控えがないと何を記載したか確認できません。
特に、長期休業で2回目以降の請求を行う場合は、前回の請求期間を確認するためにも控えが重要です。
提出後すぐに支給されるとは限らない
8号様式を提出した後は、労働基準監督署で業務災害に該当するか、労働不能期間が妥当か、賃金が支払われていないかなどが確認されます。
事故の状況が明確で、会社と労働者の説明が一致し、必要書類もそろっている場合は比較的スムーズに進むことがあります。
一方、業務との因果関係に確認が必要な病気、会社と労働者の説明が異なる事故、目撃者がいない事故などでは、調査に時間がかかることがあります。
提出すれば直ちに口座へ振り込まれる制度ではないため、生活費への影響が大きい場合は、会社の休業制度、有給休暇、傷病手当金との関係なども含めて早めに整理することが大切です。
ただし、同じ期間について健康保険の傷病手当金と労災の休業補償給付を重複して受けることは原則としてできません。
管轄する労働基準監督署が分からない場合は、厚生労働省や各都道府県労働局の所在地案内で確認できます。
労働基準監督署とハローワークの役割の違いについては、 労働基準監督署とハローワークの違い も参考にしてください。
初回請求と2回目以降の違い
休業が長期にわたる場合、療養が終了するまで待って一括請求する必要はありません。
実務では、1か月単位や給与の締め日単位など、一定期間ごとに分けて請求することが一般的です。
初回請求では、事故の状況や平均賃金など、審査の基礎となる情報を詳しく記載します。
2回目以降の請求では、前回までに請求していない休業期間を中心に記載し、一部の項目を省略できることがあります。
初回請求で確認される情報
初回の請求では、労働者の氏名、生年月日、住所、事故発生日、災害発生状況、休業期間、賃金を受けなかった日数、平均賃金、振込先などを一通り記入します。
会社側では、労働保険番号、事業場情報、勤怠記録、賃金台帳、事故報告書などを確認する必要があります。
医療機関には、傷病名、療養期間、労働できなかった期間などの証明を依頼します。
初回請求は、2回目以降の請求や給付額計算の基礎になるため、特に丁寧な確認が必要です。
事故発生日や平均賃金が誤っていると、その後の請求にも影響する可能性があります。
2回目以降は未請求期間を記載する
2回目以降の請求では、前回までに請求していない期間を記載します。
たとえば、初回に4月1日から4月30日までを請求した場合、次回は原則として5月1日以降の休業期間を記載します。
前回の請求期間と重複していると、確認や訂正が必要になることがあります。
また、1日分が抜けていると、その日について別途請求が必要になる可能性があります。
前回の請求書の控えを見ながら、今回の開始日を確認してください。
前回の終了日の翌日が、今回の請求開始日になっているか を確認すると、重複や抜けを防ぎやすくなります。
再記載を省略できる項目がある
2回目以降の請求では、初回請求で確認済みの生年月日など、一部の項目について再記載を省略できる場合があります。
また、平均賃金の算定基礎に変更がなければ、別紙1の再提出が不要になることもあります。
ただし、何でも省略できるわけではありません。
今回請求する休業期間、その期間中に賃金を受けなかった日数、事業主証明、医師の労働不能期間などは、各請求期間に応じて確認する必要があります。
離職後の2回目以降の請求では、一定の条件のもとで事業主証明が不要となる場合がありますが、今回の請求期間に離職前の期間が含まれる場合などは証明が必要になることがあります。
離職日と請求期間の関係を確認し、判断に迷う場合は労働基準監督署へ相談してください。
会社や賃金の状況が変わった場合
初回請求後に退職した、復職して一部勤務を始めた、会社から一部賃金が支払われるようになった、別の勤務先で働き始めたといった事情がある場合は、前回と同じ内容で請求できるとは限りません。
特に、短時間勤務で復職した場合や、会社が休業手当、見舞金、固定手当などを支払った場合は、その支払いがどの期間や労働に対応するものかを確認する必要があります。
会社側は、前回と同じ休業者だからと機械的に証明せず、請求期間ごとに出勤簿と賃金台帳を確認しましょう。
労働者死傷病報告は別の手続き
初回の請求書には、労働者死傷病報告を提出した年月日を記入する欄があります。
労働者死傷病報告は、一定の労働災害が発生した場合に、会社が労働安全衛生法に基づいて提出する報告書です。
休業補償給付の8号様式は、労働者が保険給付を受けるための請求書です。
一方、労働者死傷病報告は、会社が労働災害の発生を行政へ報告するための書類です。
目的も提出義務者も異なります。
| 比較項目 | 様式第8号 | 労働者死傷病報告 |
|---|---|---|
| 目的 | 休業補償給付などの請求 | 労働災害発生の報告 |
| 主な提出者 | 被災した労働者 | 事業者 |
| 根拠 | 労災保険法 | 労働安全衛生法関係 |
| 提出の要否 | 給付を請求する場合 | 報告対象の災害が発生した場合 |
会社側は、8号様式へ証明したことで会社としての手続きがすべて完了したと考えないようにしましょう。
労働者死傷病報告の提出対象、提出期限、電子申請の取扱いなどを別途確認する必要があります。
労災の8号様式の書き方
ここからは、実際の8号様式について、誰がどの欄を記入するのかを詳しく解説します。
大きく分けると、労働者本人が記入する部分、会社が証明する部分、医師が証明する部分があります。
裏面や別紙には、事故状況、平均賃金、休業中に支払われた賃金などを記入します。
労働者だけですべてを完成させようとせず、本人、会社、医療機関が担当する部分を分けて進めることが大切です。
請求人が記入する表面の項目
8号様式の請求人は、原則として労災に遭った労働者本人です。
会社が手続きを支援したり、書類を労働基準監督署へ提出したりすることはありますが、保険給付を請求する主体は労働者です。
表面には、本人情報、事故発生日、休業期間、賃金を受けなかった日数、振込先などを記入します。
OCRで読み取られる欄もあるため、指定された文字や数字を枠内へ正確に記載しましょう。
本人情報と労働保険番号
表面で労働者本人が記入する主な項目は、次のとおりです。
- 労働保険番号
- 性別、生年月日、氏名、住所
- けがをした日または発病した日
- 平均賃金
- 療養のため労働できなかった期間
- 賃金を受けなかった日数
- 給付金の振込先口座
労働保険番号は、府県、所掌、管轄、基幹番号、枝番号から構成される番号です。
雇用保険の被保険者番号や会社の法人番号とは別の番号なので、混同しないようにしてください。
労働者本人が労働保険番号を把握していないことは珍しくありません。
会社の人事労務担当者へ確認し、勤務している事業場に対応する番号を記入してもらうのが一般的です。
本社と支店で労働保険番号が異なる場合や、建設業などで複数の労働保険関係がある場合は、どの番号を記入するか確認が必要です。
氏名と住所は現在の情報を正確に記入する
氏名は、様式で指定されている欄にカタカナなどで記入します。
結婚や離婚などにより氏名が変わっている場合は、現在の氏名と口座名義が一致しているか確認してください。
住所についても、実際に連絡を受け取れる住所を記入します。
労働基準監督署から確認書類や決定通知が送付される可能性があるため、引っ越し後に旧住所を記入したままにしないよう注意が必要です。
請求後に住所や氏名が変わった場合は、所轄の労働基準監督署へ連絡し、必要な手続きを確認しましょう。
負傷日と発病日の考え方
転倒や機械への巻き込まれなど、事故が一度に発生した場合は、事故が起きた日を負傷年月日として記入します。
一方、腰痛、精神疾患、長時間の負荷による疾病などでは、発病日をいつとするか判断が難しい場合があります。
最初に症状が出た日、初診日、医師が診断した日が必ず同じとは限りません。
発病日の判断が難しい疾病については、本人の判断だけで日付を決めず、診療記録や会社の勤怠記録を踏まえて労働基準監督署へ確認した方がよいでしょう。
休業期間と無給日数を分けて考える
療養のため労働できなかった期間と、実際に賃金を受けなかった日数は、必ずしも一致しません。
たとえば、医師が6月1日から6月30日まで労働できないと認めていたとしても、その期間中に年次有給休暇を5日取得し、通常の賃金を受けていれば、その5日は賃金を受けなかった日には含まれません。
また、午前だけ勤務して午後に通院した日、月額の通勤手当や住宅手当が減額されずに支給された日などは、一部休業や部分算定日の扱いになることがあります。
休業期間は医師が労働できないと認めた期間、無給日数は実際に賃金を受けなかった日数 として、それぞれ分けて確認します。
| 日付の状況 | 医師の労働不能期間 | 賃金の支払い | 一般的な確認事項 |
|---|---|---|---|
| 終日休業 | 含まれる | なし | 全部休業日として確認 |
| 有給休暇 | 含まれる | 通常賃金あり | 賃金を受けない日には通常含めない |
| 午前勤務・午後休業 | 含まれる | 一部賃金あり | 一部休業として別紙2を確認 |
| 所定休日 | 含まれる | 賃金状況による | 療養状況と賃金支払いを確認 |
振込先口座の記入
振込先には、原則として請求人本人名義の口座を記入します。
金融機関名、支店名、預金種別、口座番号、口座名義を正確に記載してください。
通帳やキャッシュカードに記載されている名義と、請求人欄の氏名が一致しているかも確認しましょう。
旧姓口座、屋号付き口座、家族名義口座などを指定すると、追加確認や変更が必要になる可能性があります。
ネット銀行を指定する場合も、支店名や支店番号、口座名義の表記を確認してください。
金融機関の統廃合や支店名変更があった古い通帳を使用している場合は、現在の情報を金融機関へ確認した方が確実です。
記入後は、事故日、休業期間、無給日数、口座番号を重点的に見直してください。
数字の誤りは審査や振込の遅れにつながりやすい部分です。
会社が記入する事業主証明欄

会社は、事業主証明欄に事業の名称、事業場の所在地、事業主の氏名などを記入し、事故日、休業期間、賃金の支払い状況などについて証明します。
事業主証明は、会社が労災認定を決定する欄ではありません。
会社が把握している事実や、勤怠・賃金に関する記録を確認し、その内容を証明するためのものです。
事業主証明で確認する資料
会社側では、少なくとも次の資料を確認してから証明することをおすすめします。
- 事故報告書や社内の災害記録
- 出勤簿やタイムカード
- シフト表や勤務予定表
- 賃金台帳
- 給与明細
- 年次有給休暇の取得記録
- 医師の診断書や休業指示の内容
事故の発生日については事故報告書、休業日数については出勤簿、賃金の支払いについては賃金台帳というように、確認する資料を分けると整理しやすくなります。
担当者の記憶だけで証明すると、後から勤怠記録や給与計算と食い違う可能性があります。
特に長期休業では、複数の給与計算期間をまたぐため、月ごとに確認する必要があります。
押印ではなく記名で足りる運用
現在は、労災保険の請求書について、事業主印の押印ではなく、事業主の記名で足りる運用が基本です。
ただし、押印が不要になったからといって、証明内容の確認まで不要になったわけではありません。
会社名や代表者名を形式的に記入するだけではなく、証明対象となる事故日、休業期間、賃金の有無を確認する必要があります。
社内で誰が確認し、誰の名義で記名するかについては、会社の権限規程や労務管理体制に沿って整理しておくとよいでしょう。
会社が確認したい実務上のポイント
会社側で特に確認したいのは、次の事項です。
- 事故または発病年月日が社内記録と一致しているか
- 休業期間と勤怠記録が一致しているか
- 休業期間中に賃金を支払った日がないか
- 一部出勤した日や一部賃金を支払った日がないか
- 固定手当が休業中も支払われていないか
- 労働者死傷病報告の提出が必要ではないか
人事労務の実務では、給与計算の締め日と労災の請求期間が一致しないことがよくあります。
たとえば、給与が毎月20日締めである一方、労災の請求期間が月初から月末までとなっている場合、2つの給与計算期間にまたがって賃金を確認しなければなりません。
また、月額の通勤手当、住宅手当、役職手当などが、休業中も減額されずに支給されていることがあります。
基本給が無給であっても、何らかの賃金が支払われている場合は、その内容を別紙へ反映する必要が生じる可能性があります。
会社側では、請求期間の日付を縦に並べ、出勤、全部休業、有給休暇、一部勤務、所定休日、支払賃金を日ごとに整理すると確認しやすくなります。
複雑なケースほど、先に一覧表を作ると記載ミスを防げます。
会社が労災ではないと考えている場合
会社が、事故は業務と関係がない、本人から事故報告を受けていない、申告された状況が事実と異なると考えていることもあります。
この場合、会社が事実と異なる内容を無理に証明する必要はありません。
一方で、会社が労災ではないと判断したことだけを理由に、労働者の請求自体を止めることも適切ではありません。
事業主証明は、会社が労災認定を決定するものではありません。
業務災害に該当するかどうかを最終的に判断するのは、所轄の労働基準監督署長です。
会社と労働者の認識が異なる場合は、会社が確認できる事実だけを整理し、必要に応じて事故報告書、勤務記録、防犯カメラ、関係者の説明などを労働基準監督署へ提出します。
証明を拒否して書類を返すだけでは、問題が解決しません。
会社側の見解があるのであれば、その根拠を客観的な資料とともに説明することが、適切な実務対応かなと思います。
証明の遅れを防ぐ社内対応
事業主証明が遅れる原因として、担当者が様式を知らない、事故報告が管理者から人事へ届いていない、賃金計算が未確定、代表者の確認待ちといった事情があります。
会社側では、労災事故が発生したときの社内フローを決めておくことが重要です。
事故発生直後の報告、医療機関への案内、事故状況の記録、労働者死傷病報告の判断、8号様式の証明、給与計算への連携までを整理しておくと、担当者が変わっても対応しやすくなります。
労働者の生活費に関わる手続きであるため、確認に時間がかかる場合は、放置せず、現在どの資料を確認しているのか、いつ頃回答できるのかを本人へ説明することも大切です。
医師が記入する診療担当者欄
診療担当者の証明欄は、治療を担当した医師または医療機関に記入を依頼します。
この欄では、単に通院した事実だけでなく、傷病名、療養期間、診療実日数、療養の現況、療養のため労働できなかった期間などが証明されます。
休業補償給付の対象期間を確認するうえで、非常に重要な部分です。
医師が証明する主な内容
診療担当者欄で主に証明される内容は、次のとおりです。
- 傷病の部位と傷病名
- 療養した期間
- 実際に診療した日数
- 治癒、継続中、転医、中止などの療養状況
- 療養のため労働できなかったと認められる期間
療養期間と診療実日数は異なります。
たとえば、6月1日から6月30日まで療養していたとしても、実際に診察を受けた日が5日であれば、診療実日数は5日です。
また、療養期間のすべてについて労働できないと認められるとは限りません。
通院を続けながら就労できる状態であれば、療養は継続中でも、労働不能期間は終了することがあります。
本人の欠勤期間がそのまま証明されるとは限らない
特に重要なのが、医師が証明する労働不能期間です。
労働者本人が会社を休んだ期間を、そのまま医師が証明する制度ではありません。
たとえば、本人は1か月間会社を休んでいても、医師が医学的には2週間で就労可能だったと判断した場合、医師が証明する期間は2週間になる可能性があります。
反対に、本人が無理をして出勤していたとしても、医師が療養のため休業が必要と判断することもあります。
ただし、実際に出勤し賃金を受けた日は、休業補償給付の対象日とはならないことがあります。
会社を休んだ期間、医師が労働できないと認めた期間、賃金を受けなかった期間の3つを分けて確認することが重要です。
仕事内容を医師へ具体的に伝える
医師が就労可能かどうかを判断するためには、仕事内容の情報が必要です。
同じ傷病であっても、仕事内容によって労働への影響は大きく異なります。
たとえば、右手首を骨折した場合、重量物を持つ仕事、工具を使う仕事、車を運転する仕事、パソコン入力を中心とする仕事では、必要とされる身体機能が異なります。
診察時には、職種名だけでなく、1日に歩く時間、持ち運ぶ物の重さ、使用する機械、運転の有無、立ち仕事か座り仕事かなどを具体的に伝えると、医師が就労可否を判断しやすくなります。
会社に軽作業や在宅勤務の制度がある場合は、その内容も医師へ伝えたうえで、通常業務は難しいが軽作業なら可能なのか、短時間勤務なら可能なのかを確認すると、復職時の判断にも役立ちます。
証明を依頼する時期
医療機関へ証明を依頼する際は、請求対象となる期間がある程度確定してから依頼します。
たとえば、6月分を請求するのであれば、6月末を経過した後に、6月中の労働不能期間を証明してもらう流れが一般的です。
将来の期間について、あらかじめ確定的に証明してもらうことは難しい場合があります。
長期休業では、月ごとに証明を依頼することもあります。
医療機関によっては、書類の作成に数日から数週間かかることがあります。
受付方法も、診察時に医師へ直接渡す、文書受付窓口へ提出する、専用申込書を記入するなどさまざまです。
請求期間が確定したら、早めに医療機関へ依頼し、受取予定日や文書料の有無を確認しておきましょう。
転院した場合の証明
休業期間中に転院した場合は、複数の医療機関による証明が必要になることがあります。
たとえば、6月1日から6月15日までA病院で治療し、6月16日からB病院へ転院した場合、それぞれの医療機関が診療した期間について証明することが考えられます。
前の病院が、転院後の期間まで労働不能だったと証明できるとは限りません。
どの医療機関にどの期間の証明を依頼するか、あらかじめ整理しておく必要があります。
医師が証明してくれない、証明期間が実際の休業期間と大きく異なるといった場合は、まず医療機関へ理由を確認し、そのうえで労働基準監督署へ相談してください。
本人が日付を追記したり、医師の記載を修正したりしてはいけません。
裏面と別紙の記入方法
8号様式は、表面の請求人欄、事業主証明欄、医師証明欄だけで完成するとは限りません。
裏面には職種や災害発生状況などを記載し、別紙には平均賃金、一部休業日の賃金、複数の勤務先に関する情報などを記入します。
特に初回請求では、裏面と別紙の内容が審査の基礎になります。
何となく記入するのではなく、事故報告書、勤怠記録、賃金台帳などと整合しているか確認してください。
裏面の災害発生状況
裏面には、労働者の職種、負傷または発病の時刻、所定労働時間、災害の原因、発生状況、発生当日の就労・療養状況などを記入します。
災害発生状況は、仕事中に転倒した、作業中にけがをしたという短い説明だけでは、何が起きたのか十分に伝わりません。
次の要素が分かるように、事故発生までの流れを具体的に記載しましょう。
- どのような場所で
- どのような作業をしていたときに
- どのような物や設備を扱っていて
- どのような状態や動作が原因となり
- 身体のどの部分をどのように負傷したのか
記載例
倉庫内で商品の入った段ボール箱を台車へ積み込んでいた際、床面にこぼれていた水で右足を滑らせて転倒し、右手を床について右手首を負傷した。
このように、場所、作業、原因、動作、負傷部位を一連の文章にすると、事故の状況が伝わりやすくなります。
会社の事故報告書、病院で説明した受傷原因、8号様式の記載内容が大きく異なると、労働基準監督署から確認を受けることがあります。
事故直後は記憶が鮮明なため、可能であれば早い段階で時系列をメモしておきましょう。
発生当日の就労と受診状況
事故が起きた当日に、そのまま仕事を続けたのか、早退したのか、病院を受診したのかも重要です。
たとえば、午前中に負傷して午後から休業した場合、その日の賃金が全額支払われたのか、働いた時間分だけ支払われたのかによって、休業補償給付の計算が異なる可能性があります。
事故当日の所定労働時間、実労働時間、早退時刻、受診時刻、賃金の支払い状況を確認してください。
別紙1の平均賃金算定内訳
別紙1には、負傷または発病日以前の賃金を基に、平均賃金を算定するための情報を記載します。
主に、雇入年月日、賃金の締切日、賃金支払日、賃金計算期間、各期間の暦日数、基本給、時間外手当、通勤手当、その他の手当などを記入します。
通常は、会社の給与担当者が賃金台帳や給与データを確認しながら作成します。
労働者本人が給与明細だけを見て正確に作成するのは難しいことが多い書類です。
算定期間に、業務上の傷病による休業期間、産前産後休業期間、育児休業期間、使用者の責めに帰すべき休業期間などが含まれる場合は、平均賃金の算定から除外されることがあります。
別紙2の休業日数内訳
別紙2は、休業期間中に一部勤務した日や、賃金の一部が支払われた日などがある場合に、その内訳を記載するために使用します。
たとえば、午前中だけ勤務して午後に通院した日、年次有給休暇を一部取得した日、月額の通勤手当が減額されずに支給された日などが含まれる場合です。
| 状況 | 別紙2で確認する内容 |
|---|---|
| 一部の時間だけ勤務 | 勤務時間と支払われた賃金 |
| 半日有給・半日無給 | 有給部分の賃金と無給部分 |
| 月額手当が継続支給 | 対象となる手当と支給額 |
| 一部休業中の賃金支払い | 日付ごとの支払額 |
基本給が無給であっても、通勤手当や住宅手当などが支払われていれば、賃金が全く支払われていないとは限りません。
給与担当者は、基本給だけでなく各手当の支払いも確認してください。
別紙3の複数事業労働者用書類
2つ以上の会社で働いている複数事業労働者は、別紙3が必要になる場合があります。
事故が発生した会社以外の勤務先についても、会社名、所在地、労働保険番号、平均賃金、厚生年金の受給関係などを記載し、その勤務先から事業主証明を受けます。
たとえば、平日はA社で正社員として働き、週末にB社でアルバイトをしている方がA社の業務中に負傷し、両方の仕事を休むことになったケースです。
複数事業労働者では、複数の勤務先の賃金を基礎として給付額を算定する制度があります。
ただし、事故が起きていない勤務先についても、賃金や雇用関係の確認が必要になるため、通常の請求より書類が増えることがあります。
副業先がある場合の休業補償については、 労災と副業の休業補償に関する注意点 も参考になります。
記載内容の整合性を確認する
裏面や別紙を作成した後は、表面、事故報告書、医師証明、勤怠記録、賃金台帳と内容が一致しているか確認します。
- 事故発生日が表面と裏面で異なっていないか
- 休業期間が医師証明の範囲内か
- 無給日数が勤怠記録と一致しているか
- 一部勤務日が別紙2へ反映されているか
- 賃金額が賃金台帳と一致しているか
記載内容に矛盾があると直ちに不支給になるわけではありませんが、追加確認や訂正が必要となり、支給決定まで時間がかかる可能性があります。
平均賃金の計算方法と注意点
休業補償給付の金額を計算する基礎になるのが、給付基礎日額です。
一般的には、労働基準法上の平均賃金に相当する額が給付基礎日額として使用されます。
平均賃金は、単に月給を30日で割ればよいものではありません。
事故前の賃金総額、暦日数、賃金締切日、算定から除外する期間、日給制や時給制の最低保障などを確認する必要があります。
平均賃金の基本的な計算式
平均賃金は、原則として、事故が発生した日以前3か月間に支払われた賃金総額を、その期間の総暦日数で割って算出します。
平均賃金の基本的な計算式
事故発生日以前3か月間の賃金総額 ÷ その3か月間の総暦日数
賃金締切日がある場合は、原則として、事故発生日の直前の賃金締切日からさかのぼって3か月間を算定期間とします。
たとえば、毎月末日締めの会社で、10月15日に事故が発生した場合、一般的には7月1日から9月30日までの3か月間を算定期間として確認します。
基本的な計算例
算定期間3か月の賃金総額が90万円、総暦日数が92日だった場合、単純計算による平均賃金は次のとおりです。
900,000円 ÷ 92日 = 約9,782円60銭
実際の端数処理や給付基礎日額の取扱いは制度上のルールに従います。
この例は、平均賃金の考え方を理解するための一般的な目安です。
全部休業し、対象日に賃金を受けていない場合、一般的には、この給付基礎日額を基に60%の休業補償給付と20%の休業特別支給金が計算されます。
賃金総額に含まれるもの
平均賃金の賃金総額には、名称にかかわらず、労働の対償として支払われるものが原則として含まれます。
- 基本給
- 時間外労働手当
- 休日労働手当
- 深夜労働手当
- 通勤手当
- 役職手当
- 資格手当
- 住宅手当
- その他、労働の対償として支払われる手当
非課税の通勤手当であっても、税務上非課税であることと、平均賃金上の賃金に該当するかどうかは別の問題です。
税金がかからないから平均賃金に含めない、という判断はできません。
また、残業代は月によって変動しますが、算定期間中に支払われたものであれば、原則として賃金総額へ含めて計算します。
原則として含まれないもの
一方、次のようなものは、一般的には平均賃金の算定基礎から除外されます。
- 臨時に支払われた賃金
- 3か月を超える期間ごとに支払われる賃金
- 通貨以外で支払われる賃金のうち一定のもの
典型的には、年2回の賞与など、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金は、平均賃金の算定基礎から除外されます。
ただし、名称が賞与でも、実際には毎月の賃金と同様の性質を持つ場合などは、個別の確認が必要です。
算定期間から除外される期間
事故前3か月の中に、通常の賃金を受けられなかった特別な期間がある場合、その日数と賃金を算定から除外することがあります。
代表的なものとして、次の期間があります。
- 業務上の傷病によって療養のため休業した期間
- 産前産後休業期間
- 使用者の責めに帰すべき事由による休業期間
- 育児休業や介護休業をした期間
- 試用期間
たとえば、事故前3か月の中に育児休業期間が含まれている場合、単純にその3か月間の賃金を暦日数で割ると、平均賃金が不当に低くなる可能性があります。
そのため、法律上、一定の期間を算定から除外する仕組みがあります。
日給制や時給制には最低保障がある
日給制、時給制、出来高払制などでは、暦日数で割る原則計算だけでは、実際の労働日数が少ない月に平均賃金が低くなりすぎることがあります。
そのため、一定の賃金については、賃金総額を実労働日数で割った額の60%を最低保障額として比較する計算があります。
月給を30日で割った金額や、直近の給与明細1か月分だけで計算した金額が、そのまま平均賃金になるとは限りません。
月給制と時給制が混在している場合、固定給部分と変動給部分を分けて計算することもあります。
計算が複雑になるため、賃金形態を確認せずに概算しないことが大切です。
入社後3か月未満の場合
事故発生日までの勤務期間が3か月未満であっても、休業補償給付を請求できないわけではありません。
原則として、雇入れ後の期間とその期間の賃金を基に平均賃金を算定します。
ただし、入社日当日に事故が起きた場合や、算定できる賃金が極端に少ない場合などは、通常の方法で平均賃金を算定することが難しくなります。
このような場合には、別の算定方法や労働基準監督署長による決定が必要になることがあります。
計算できない場合は空欄で相談できる
労働者本人が会社の賃金台帳を持っておらず、正確な平均賃金を計算できないことは珍しくありません。
また、会社が協力せず、別紙1を作成してもらえない場合もあります。
そのような場合は、平均賃金欄や別紙1を空欄にしたまま、所轄の労働基準監督署へ事情を説明して相談する方法があります。
労働基準監督署が会社へ賃金資料の提出を求め、算定することがあります。
平均賃金を自分で計算できないことだけを理由に、請求を諦める必要はありません。
分かる範囲を記入し、給与明細など手元にある資料を持参して相談してください。
一部休業した日や、会社から一部賃金を受けた日がある場合は、単純に給付基礎日額の80%が支給されるとは限りません。
正確な支給額は個別事情によって変わるため、最終的な判断は専門家にご相談ください。
会社が協力しない場合の対応

労災の8号様式を会社へ渡したものの、事業主証明をしてもらえない、書類を返してもらえない、労災ではないと言われたという相談は、実際にあります。
しかし、労災保険給付の請求は労働者本人に認められた権利です。
会社が事業主証明をしないことだけを理由に、労働者が請求できなくなるわけではありません。
まずは会社へ書面で証明を依頼する
会社へ証明を依頼するときは、口頭だけでなく、メールや書面など記録が残る方法を利用することをおすすめします。
依頼文には、労災事故の発生日、休業期間、証明を依頼する書類、返却を希望する時期などを記載します。
感情的な表現は避け、手続きのために証明を依頼していることを簡潔に伝えましょう。
依頼時に記録しておきたい内容
- 証明を依頼した日
- 依頼した担当者の氏名や部署
- 渡した書類の種類
- 会社から受けた回答
- 証明を拒否された理由
- 書類が返却された日
会社が単に手続き方法を知らない場合や、給与計算の確定を待っている場合もあります。
最初から対立的に考えず、どの部分の確認に時間がかかっているのかを確認することも大切です。
空欄のまま労働基準監督署へ提出できる
会社から事業主証明を受けられない場合は、事業主証明欄を空欄のまま、所轄の労働基準監督署へ提出し、証明を受けられない事情を説明することができます。
労働基準監督署では、必要に応じて会社へ連絡し、事故の状況、雇用関係、賃金、勤怠などを確認します。
証明欄が空欄であれば必ず受理されないということではありません。
ただし、会社の証明がある場合と比べ、事実確認に時間がかかる可能性があります。
会社が協力しない場合の進め方
- 会社へ書面やメールで証明を依頼する
- 証明を断られた理由を確認する
- 依頼や拒否の記録を保存する
- 事業主証明欄を空欄のまま労働基準監督署へ相談する
- 事故状況を示す資料を可能な範囲で準備する
事故を示す資料を集める
会社が事故自体を認めていない場合や、事故の発生状況について会社と労働者の説明が異なる場合は、客観的な資料が重要になります。
資料として考えられるものには、次のようなものがあります。
- 事故直後に撮影した現場や負傷部位の写真
- 上司や会社へ事故を報告したメールやチャット
- 事故報告書の控え
- 同僚や目撃者の氏名と連絡先
- タイムカードや勤務表
- 防犯カメラやドライブレコーダーの映像
- 医療機関の受診記録
- 事故当日に家族などへ送ったメッセージ
映像記録は一定期間で上書きされることがあります。
必要になる可能性がある場合は、早めに保存を依頼することが大切です。
また、医療機関を受診した際には、いつ、どこで、何をしていて負傷したのかを正確に説明してください。
診療録へ記載された受傷原因が、後の確認資料になることがあります。
会社が労災と認めない場合
会社から、うちは労災とは認めない、自分の不注意だから労災ではない、労災を使うと会社に迷惑がかかると言われることがあります。
しかし、業務災害に該当するかどうかを最終的に判断するのは会社ではありません。
会社の見解は審査上の一資料になりますが、最終的な認定は労働基準監督署長が行います。
会社が労災と認めるかどうかと、労働基準監督署が業務災害と認定するかどうかは別の問題です。
本人の不注意があったというだけで、直ちに労災保険の対象外になるわけでもありません。
労災保険は、一般的な損害賠償と異なり、会社や労働者の過失だけで給付の可否を決める制度ではありません。
業務との関係が認められるかが中心的な判断要素です。
会社側にも確認する権利がある
一方で、会社側が、労働者から申告された内容を無条件に証明しなければならないわけではありません。
事故報告を受けていない、申告された時間には勤務記録がない、会社が把握している事故状況と異なるといった場合は、事実確認を行う必要があります。
会社は、確認できる事実と確認できない事実を区別し、必要に応じて会社側の意見や資料を労働基準監督署へ提出します。
事実と異なる内容へ証明することも、理由なく一切の協力を拒むことも、いずれも適切とはいえません。
労働者と会社の双方が、感情的な対立ではなく、勤怠記録、事故報告、医療記録といった客観資料を基に整理することが重要です。
不利益な取扱いを受けた場合
労災を申請したことを理由に退職を迫られた、嫌がらせを受けた、証明を依頼した後に不自然な懲戒処分を受けたといった場合は、申請手続きとは別に労働問題が生じている可能性があります。
会社とのやり取り、面談内容、メール、処分通知書などを保存し、早い段階で労働基準監督署、都道府県労働局、弁護士などへ相談してください。
個別の解雇、退職勧奨、損害賠償などの紛争については、事実関係によって法的な評価が大きく変わります。
労災手続きだけで解決しようとせず、必要に応じて専門家へ相談することが大切です。
労災の8号様式は早めに請求する
休業補償給付を受ける権利には時効があります。
原則として、賃金を受けなかった日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年で時効が進行します。
そのため、休業が長期化している方が、治療を終えてからすべてまとめて請求しようとすると、古い休業日から順番に時効を迎える可能性があります。
時効は休業期間全体で一度に進むわけではない
休業補償給付の時効は、休業が終了した日から一括して2年と考えるのではありません。
賃金を受けなかった日ごとに、その翌日から進行します。
たとえば、長期間にわたり休業している場合、最初の休業日分から順番に時効期間が満了していきます。
直近の休業日分は請求できても、古い日分は時効により請求できないということが起こり得ます。
休業が長期化している場合は、治癒を待たず、1か月単位などで定期的に請求することが大切です。
休業補償給付の請求手続きや時効については、 厚生労働省「休業(補償)等給付・傷病(補償)等年金の請求手続」 でも確認できます。
月単位で請求すると管理しやすい
長期休業の場合、1か月ごとに請求すると、医師の証明、会社の給与計算、休業日数の確認を整理しやすくなります。
ただし、必ず暦月単位にしなければならないわけではありません。
会社の給与締切日に合わせて請求期間を区切る方法も考えられます。
重要なのは、前回請求した期間と今回請求する期間が重複せず、抜けもないように管理することです。
| 管理項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 前回請求期間 | 開始日と終了日 |
| 今回請求期間 | 前回終了日の翌日から始まっているか |
| 医師証明期間 | 今回の休業期間を含んでいるか |
| 無給日数 | 勤怠と給与記録が一致しているか |
| 提出日 | 控えや郵送記録を保存しているか |
請求までの流れを整理する
8号様式を作成するときは、まず会社へ労働保険番号、平均賃金、休業日数、賃金の支払い状況などの確認を依頼します。
次に、請求期間が確定した段階で、医療機関へ労働不能期間の証明を依頼します。
会社と医療機関の記入がそろったら、本人情報、振込先、請求期間、添付書類を確認し、事業場を管轄する労働基準監督署へ提出します。
労災の8号様式を提出するまでの流れ
- 業務災害に該当する可能性を確認する
- 最新版の様式第8号を入手する
- 労働者本人が請求人欄を記入する
- 会社へ事業主証明と別紙の作成を依頼する
- 医療機関へ診療担当者の証明を依頼する
- 記載内容と添付書類を確認する
- 事業場を管轄する労働基準監督署へ提出する
- 提出書類一式の控えを保管する
会社が協力しなくても手続きを止めない
会社が証明してくれない、平均賃金を計算してくれない、書類を返してくれないという場合でも、それだけで手続きを諦める必要はありません。
証明を依頼した記録を残し、分かる範囲を記入したうえで、所轄の労働基準監督署へ相談してください。
事業主証明欄や平均賃金欄が空欄であっても、事情を説明しながら請求を進められる場合があります。
時間が経過すると、事故現場の状況が変わったり、目撃者の記憶が薄れたり、防犯カメラの映像が消去されたりすることがあります。
労災認定に争いが生じそうな場合ほど、請求と証拠の保存を早めに進めることが重要です。
提出前の最終チェック
- 8号様式と16号の6を取り違えていないか
- 事故発生日に誤りがないか
- 休業期間が医師の証明期間内に収まっているか
- 無給日数が勤怠記録と一致しているか
- 有給休暇や一部出勤日が反映されているか
- 平均賃金の算定期間と賃金額に誤りがないか
- 本人名義の振込口座を記入しているか
- 必要な別紙が添付されているか
- 提出書類のコピーを取ったか
労災の状況や賃金の支払い方によっては、必要書類や給付額の計算が異なる場合があります。
特に、一部就労、複数の勤務先、退職後の請求、会社との事実関係の相違がある場合は、通常より確認事項が増えます。
制度や様式が改定される可能性もあるため、 正確な情報は公式サイトをご確認ください。
また、業務災害に該当するかどうか、休業日数や平均賃金をどのように整理するか、会社が証明しない場合にどのような資料を提出するかについて判断が難しい場合は、 最終的な判断は専門家にご相談ください。