こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
雇用保険の対象となる従業員を初めて雇い入れた事業所では、雇用保険適用事業所設置届を管轄のハローワークへ提出する必要があります。
会社を設立して初めて従業員を採用したときは、雇用保険適用事業所設置届だけを提出すればよいわけではありません。
原則として、先に労働保険の保険関係成立届を提出して労働保険番号を取得し、その後に雇用保険適用事業所設置届と従業員の雇用保険被保険者資格取得届を進めます。
初めての採用では、労働基準監督署とハローワークの両方が関係するため、どの書類をどの順番で提出するのか迷いやすいところです。
特に、会社の設立日と雇用保険上の設置日を同じものと考えてしまったり、保険関係成立届を出さないままハローワークへ行ったりするケースは、初めて手続きをする事業主には起こりやすいポイントです。
この記事では、提出期限や提出先、必要書類、書き方、電子申請まで、事業主や人事労務担当者が実際に手続きを進められるよう順番に整理します。
- 雇用保険適用事業所設置届が必要になるタイミング
- 提出期限と管轄ハローワークへの提出方法
- 保険関係成立届から資格取得届までの手続きの順番
- 設置届の書き方と法人・個人事業主の必要書類

雇用保険適用事業所設置届とは
雇用保険適用事業所設置届は、事業所が新たに雇用保険の適用事業所となったことをハローワークへ届け出るための書類です。
名称だけを見ると「会社を設立したときに出す書類」のようにも見えますが、実務では会社設立そのものではなく、雇用保険の適用関係が生じたかどうかを確認することが重要です。
まずは、どのような事業所で届出が必要になるのか、対象となる従業員の条件、提出期限や提出方法から確認していきます。
提出が必要になる事業所と対象者
雇用保険適用事業所設置届が必要になる基本的な場面は、 雇用保険の被保険者となる従業員を初めて雇い入れたとき です。
法人を設立しただけで自動的に雇用保険適用事業所になるというよりも、実務では雇用保険の対象となる従業員を採用したことによって、雇用保険関係の手続きが必要になると考えると分かりやすいでしょう。
たとえば、株式会社を設立したものの、最初の数か月は代表取締役だけで事業を行っていた会社を考えてみます。
この時点では、代表取締役本人が原則として雇用保険の被保険者になるわけではありません。
その後、初めて正社員を1人採用し、その従業員が雇用保険の加入要件を満たした場合に、事業所としての雇用保険手続きが必要になります。
このときに行うのが、雇用保険適用事業所設置届と、その従業員本人についての雇用保険被保険者資格取得届です。
つまり、 事業所そのものを登録する手続きと、個々の従業員を加入させる手続きは別 だと考えると整理しやすいですよ。
個人事業主も同様です。
これまで事業主本人だけで営業していたところに初めて従業員を採用し、その従業員が雇用保険の対象となれば、雇用保険の適用手続きを確認する必要があります。
法人か個人かだけで設置届の要否を判断するわけではありません。
会社設立日と設置年月日は同じとは限らない
新設法人で特に迷いやすいのが、会社設立日と雇用保険上の設置日の関係です。
たとえば4月1日に法人を設立し、代表者だけで営業を開始して、6月1日に初めて雇用保険の被保険者となる従業員を採用したとします。
このようなケースでは、「会社を設立したのが4月1日だから、設置年月日も4月1日」と単純に考えないことが重要です。
会社の設立日と雇用保険適用事業所の設置日は必ずしも同じではありません。
会社を設立した日、事業を開始した日、雇用保険の適用関係が生じた日はそれぞれ別の日になることがあります。
届出を作成するときは、最初の雇用保険被保険者の雇入日などを確認し、雇用保険上の適用関係がいつ発生したのかを整理することが重要です。
また、労働者を1人でも雇用する事業は、農林水産業の一部を除き、原則として労働保険の適用対象になります。
ただし、ここでいう「労働者」と「雇用保険の被保険者」は完全に同じ概念ではありません。
たとえば週10時間だけ勤務するアルバイトについても、労災保険との関係では労働者として扱われます。
一方、雇用保険については所定労働時間など別の加入要件があります。
そのため、「人を1人雇ったから必ず雇用保険適用事業所設置届が必要」とだけ覚えるのではなく、 その人が雇用保険の被保険者になるのか まで確認する必要があります。
私が初めて従業員を採用する事業所の手続きを確認するときも、まず法人設立日を見るのではなく、誰を、いつから、どのような労働条件で採用したのかを確認します。
ここを先に整理すると、その後の手続きがかなり分かりやすくなります。
なお、農林水産業の一部で常時使用する労働者が5人未満の個人経営の事業など、暫定任意適用となる例外があります。
一般的な株式会社や飲食店、小売店、サービス業などとは取扱いが異なる場合があるため、特殊な業種では事業の種類まで含めて確認してください。
雇用保険の加入要件と適用除外

雇用保険適用事業所設置届が必要かを判断するには、まず採用した従業員が雇用保険の被保険者になるかを確認します。
一般的な雇用保険の被保険者については、基本的に次の2つの条件を確認します。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上引き続き雇用されることが見込まれること
これらの要件を満たして雇用保険の適用事業所に雇用される労働者は、適用除外に該当する場合などを除き、原則として雇用保険の被保険者になります。
本人が「雇用保険に入りたくない」と希望しているから加入しない、会社が「短時間勤務だから加入させない」と判断するといった任意選択の制度ではありません。
パートやアルバイトも対象になる
ここで重要なのは、正社員、契約社員、パート、アルバイトといった社内での呼び方だけで判断しないことです。
たとえば「アルバイトだから雇用保険には入らない」と考える事業主もいますが、アルバイトであっても週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがあり、適用除外にも該当しないのであれば、原則として加入対象になります。
反対に、正社員という名称で採用していたとしても、特殊な事情によって適用除外に該当する可能性がある場合には、名称だけで結論を出すことはできません。
採用時によく確認するのは、実際に働いた時間だけではなく、まず雇用契約上の所定労働時間です。
たとえば、契約上は週5日・1日4時間で週20時間勤務となっている人が、ある週だけ欠勤して16時間しか勤務しなかったからといって、それだけで雇用保険の対象外になるわけではありません。
反対に、契約上は週18時間であるものの、繁忙期だけ残業が続いて実労働時間が20時間を超えている場合には、単純に実績時間だけを見て判断するのも適切ではありません。
特にシフト制勤務では「週20時間」の確認が難しくなりやすいため、労働条件通知書や雇用契約書に定めた勤務日数・勤務時間を確認し、契約の実態と運用が一致しているかを見る必要があります。
週20時間前後のパート・アルバイトについては、 雇用保険は週20時間未満でも入れる?加入条件と例外を社労士が解説 でも詳しく整理しています。
学生や役員は別途確認する
一方で、昼間学生など雇用保険法上の適用除外に該当する人もいます。
ただし、「学生なら全員加入しない」と覚えるのも正確ではありません。
卒業見込みの状況や休学中、定時制など、個別の事情によって取扱いが変わる場合があります。
役員についても注意が必要です。
法人の代表取締役は原則として雇用保険の被保険者にはなりません。
また、取締役についても、役員という肩書だけで機械的に判断するのではなく、役員としての地位と労働者としての実態を確認しなければならない場合があります。
初めて採用する人が短時間労働者、学生、役員兼務者、同居親族などの場合は、一般的な正社員より加入判定が複雑になることがあります。
設置届を提出する前に、その人が本当に雇用保険の被保険者になるのかを確認しておきましょう。
初めて従業員を採用するときは、給与計算を始めてから加入の有無を考えるのではなく、 採用時点で雇用保険の資格取得要件を判定する ことが実務上のポイントです。
入社後に「実は加入対象だった」と判明すると、資格取得の遡及手続きや雇用保険料の精算が必要になることがあります。
労働条件通知書を作成するときに雇用保険の加入判定も一緒に行っておくと、手続き漏れをかなり防ぎやすくなります。
提出先と提出期限
雇用保険適用事業所設置届の提出先は、 事業所の所在地を管轄する公共職業安定所、つまりハローワーク です。
ここで注意したいのが、法人の登記上の本店所在地と、実際に雇用保険の適用事業所となる所在地が必ずしも同じではないことです。
たとえば、本店登記は自宅に置いているものの、実際には別の場所に店舗を借り、そこで従業員を雇用して事業を行っているケースがあります。
このような場合には、単純に法人登記の本店所在地だけを見て提出先を決めるのではなく、どの場所を雇用保険上の事業所として扱うのかを整理する必要があります。
提出期限は設置日の翌日から10日以内
提出期限は、 設置の日の翌日から起算して10日以内 です。
一般的な新規適用では、雇用保険の適用事業に該当するに至った日を基準として考えます。
会社設立から数か月後に初めて雇用保険の対象となる従業員を採用したのであれば、会社設立日だけを見て期限を計算しないようにしてください。
設置日の翌日から数えるため、提出期限は比較的早く到来します。
さらに会社設立直後であれば、税務関係、社会保険関係、給与計算、労働条件通知書の整備などが同時に進むため、雇用保険だけを後回しにしてしまうケースもあります。
10日以内という期限は比較的短いため注意が必要です。
会社設立後に初めて従業員を採用する場合、雇用契約、給与計算、社会保険など他の手続きも同時期に発生します。
採用後に必要書類を一から集め始めるのではなく、入社日が決まった段階で登記事項証明書、雇用契約書、事業所所在地の確認資料などを整理しておくと進めやすくなります。
設置届だけで期限管理をしない
なお、雇用保険適用事業所設置届の前提となる労働保険の保険関係成立届にも提出期限があります。
さらに、最初に採用した従業員については雇用保険被保険者資格取得届も必要です。
それぞれ提出期限が異なるため、「雇用保険の手続きは全部10日以内」と一括して覚えない方がよいでしょう。
| 手続き | 主な提出先 | 主な提出期限 |
|---|---|---|
| 労働保険 保険関係成立届 | 一元適用事業は原則として労働基準監督署 | 保険関係成立の日から10日以内 |
| 労働保険 概算保険料申告書 | 労働基準監督署・労働局・金融機関等 | 保険関係成立の日から50日以内 |
| 雇用保険適用事業所設置届 | 管轄ハローワーク | 設置日の翌日から起算して10日以内 |
| 雇用保険被保険者資格取得届 | 管轄ハローワーク | 被保険者となった日の属する月の翌月10日まで |
たとえば月初に従業員を採用すると、資格取得届の期限には比較的余裕があるように見えます。
しかし、設置届や保険関係成立届の期限は先に到来します。
私が実務で新規適用を確認するときは、提出書類ごとに期限を見るというより、最初の従業員の入社日を起点に「労基署へ何を出すか」「ハローワークへ何を出すか」を一つのスケジュールにします。
この方法の方が手続き漏れを防ぎやすいかなと思います。
もし提出期限を過ぎていることに気づいた場合でも、放置するのは避けてください。
必要書類を整理し、速やかに管轄ハローワークや関係機関へ相談して手続きを進めることが大切です。
届出書はどこでもらえるか

雇用保険適用事業所設置届は、管轄のハローワークで入手できます。
また、雇用保険関係の届書は、ハローワークインターネットサービスなどを通じて様式や記載内容を確認できます。
そのため、届出書を入手するためだけに必ずハローワークへ出向かなければならないわけではありません。
事前に必要な様式や記載項目を確認し、資料をそろえてから提出する方が効率的です。
古い様式をそのまま使わない
インターネットで検索すると、「雇用保険適用事業所設置届 Excel」「雇用保険適用事業所設置届 ダウンロード」「雇用保険適用事業所設置届 記載例」といった情報が多数見つかります。
自社で入力しやすいExcelファイルを探したくなるところですが、注意したいのは様式の更新です。
雇用保険関係の届書は、制度改正、記載項目の変更、マイナンバー制度への対応などによって様式が変更されることがあります。
届出書は最新の公式様式を使用するのが基本です。
以前の手続きで社内に保存していたExcelファイルや、民間サイトから過去にダウンロードした様式を再利用するときは、現在使用できる様式と一致しているか確認してください。
また、「書き方の見本」として記載例を見ること自体は有効ですが、他社の記載例をそのまま自社へ当てはめないことも重要です。
特に設置年月日、事業開始年月日、労働保険番号、事業の種類、労働者数などは自社の実態に合わせて記載しなければなりません。
案内図や事業所実態を確認する資料も準備する
新規の設置手続きでは、単に届出書の項目が埋まっているかだけでなく、実際にその所在地で事業が行われているのか、労働者が雇用されているのかを確認する資料が必要になることがあります。
そのため、事業所の位置を示す略図や案内図、賃貸借契約書、公共料金関係の書類、営業許可証などを求められるケースがあります。
たとえば登記事項証明書には本店所在地が記載されていますが、登記上の本店と実際の営業所が異なっている場合、登記事項証明書だけでは「従業員がどこで勤務しているのか」まで分かりません。
こうした場合には、事業所所在地を確認できる補足資料が重要になります。
自宅兼事務所、シェアオフィス、登記上の本店と営業所が異なる会社などでは、通常の事業所より所在地や事業実態の確認資料が増えることがあります。
事業所の形態が一般的でない場合は、提出前に管轄ハローワークへ確認しておくとスムーズです。
また、同じ厚生労働省関係の手続きであっても、労働局やハローワークによって案内される確認資料に差が生じることがあります。
検索で見つけた他県のチェックリストだけを見て「これだけ持っていけば必ず足りる」と考えない方が安全です。
特に会社設立直後は、賃金台帳にまだ給与支払実績がない、公共料金の領収書がまだ届いていないなど、一般的な確認資料が十分にそろっていないこともあります。
そのような場合に何を代替資料として用意するかも含め、管轄ハローワークへ事前確認するのが確実です。
電子申請とオンライン提出の方法
雇用保険適用事業所設置届は、窓口への持参や郵送のほか、 e-Govを利用した電子申請 にも対応しています。
会社設立後の労働保険・社会保険手続きを継続して電子化したい会社であれば、最初の設置手続きから電子申請の環境を整えておく方法もあります。
電子申請の大きなメリットは、ハローワークの窓口へ出向かなくても申請できることです。
特に今後従業員数が増え、資格取得届や資格喪失届を継続的に提出する会社では、電子申請に慣れておくメリットは大きいでしょう。
電子申請でも必要書類の確認は必要
ただし、「オンラインだから届出書を入力するだけで終わる」というわけではありません。
新規の事業所設置では、事業所の所在地、事業実態、雇用実態などを確認するための資料が必要になる場合があります。
電子申請では、そのような資料をPDFなどの電子ファイルとして準備し、申請に添付することになります。
e-Govの手続案内でも、雇用保険の事業所設置の届出が電子申請対象として公開されており、添付書類を電子ファイルで準備できない場合の取扱いなども案内されています。
窓口・郵送・電子申請をどう選ぶか
| 提出方法 | 主なメリット | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 窓口 | その場で不足資料などを確認しやすい | 開庁時間内に訪問する必要がある |
| 郵送 | 窓口へ出向かず提出できる | 不足書類があると往復に時間がかかる |
| 電子申請 | オンラインで申請でき、継続的な手続きにも向く | 初回は利用環境や添付ファイルの準備が必要 |
初めて雇用保険手続きをする小規模事業所では、窓口で必要書類を確認しながら進める方法にもメリットがあります。
特に、本店所在地と事業所所在地が違う、従業員の加入要件が微妙、二元適用事業に該当する可能性があるといったケースでは、その場で確認できることが安心材料になります。
一方、今後も定期的に入退社が発生する会社であれば、最初から電子申請に統一する方法も合理的です。
資格取得届、資格喪失届など、雇用保険関係の多くの手続きは今後も発生します。
最初の設置届だけで判断するのではなく、今後の労務手続き全体を見て決めるとよいでしょう。
電子申請の利用方法や対象手続き、認証・署名、添付ファイルの取扱いは変更される可能性があります。
実際に申請するときは、その時点のe-Gov上の案内を確認してください。
また、電子申請を行った場合は、申請した事実だけでなく、審査状況や返戻公文書まで確認して手続きを完結させることが重要です。
「送信したから終了」とせず、申請結果と事業所番号等を確認し、社内で保存しておきましょう。
雇用保険適用事業所設置届の手続き
設置届の手続きでは、書類の書き方だけでなく提出する順番が重要です。
一般的な事業では、労働保険の保険関係を成立させて労働保険番号を取得し、その番号を使用して設置届を作成します。
さらに、最初に採用した従業員について資格取得届を提出する必要があるため、事業所の手続きと従業員本人の手続きを一体として管理した方が分かりやすくなります。
ここからは、実際の手続きの流れに沿って確認します。
先に保険関係成立届を提出する
雇用保険適用事業所設置届を提出する前に確認したいのが、 労働保険の保険関係成立届 です。
労働保険とは、労災保険と雇用保険を総称したものです。
労働者を雇用して労働保険の適用事業となった場合には、原則として労働保険の保険関係が成立し、保険関係成立届などの手続きを行います。
ここが初めて従業員を採用した事業主には分かりにくいところです。
雇用保険の手続きだから最初からハローワークに雇用保険適用事業所設置届を持っていけばよいように見えますが、一般的な一元適用事業では、その前提として労働保険番号を取得する流れがあります。
一元適用事業では労働基準監督署から進める
一般的な会社や店舗などの一元適用事業では、まず労働保険の保険関係成立届を事業所の所在地を管轄する労働基準監督署へ提出します。
その後、労働保険料について概算保険料申告書を提出し、成立日からその年度末までに支払う賃金総額の見込額などを基に概算保険料を申告・納付します。
保険関係成立届と概算保険料申告書は名称が似ているわけではありませんが、「最初に労基署へ出すもの」とまとめて考えてしまい、提出期限まで同じだと思われることがあります。
実際には、保険関係成立届と概算保険料申告書では期限が異なるため注意してください。
一般的な一元適用事業の基本的な順番
- 労働保険の保険関係成立を確認する
- 保険関係成立届を所轄の労働基準監督署へ提出する
- 労働保険番号を確認する
- 雇用保険適用事業所設置届を作成する
- 最初の従業員の資格取得届とあわせてハローワークへ提出する
- 概算保険料申告・納付の期限も別途管理する
二元適用事業は提出先が異なる
一方、建設業や農林水産業などの一部には 二元適用事業 があります。
二元適用事業では、労災保険と雇用保険について別々に保険関係を取り扱います。
そのため、労災保険分については労働基準監督署、雇用保険分についてはハローワークというように、手続きの流れが一般的な一元適用事業とは異なります。
| 区分 | 労災保険 | 雇用保険 |
|---|---|---|
| 一元適用事業 | 原則として一つの労働保険関係として手続き | |
| 二元適用事業 | 労災保険分を別に手続き | 雇用保険分を別に手続き |
会社を設立して初めて社員を雇ったときに混乱しやすいのが、「労働基準監督署に行くのか、ハローワークに行くのか」という点です。
一般的な一元適用事業であれば、 保険関係成立届を先に進め、その後にハローワークで雇用保険の設置届と資格取得届を行う と整理すると分かりやすくなります。
なお、実務上は関係書類を同時期に準備し、保険関係成立届と雇用保険関係の届出を連続して処理することもあります。
重要なのは、書類を別々の孤立した手続きとして考えるのではなく、「初めて人を雇ったことによって発生した一連の新規適用手続き」として管理することです。
建設業などでは、事業の形態や元請・下請の関係、有期事業の取扱いなどによって一般の会社とは異なる確認が必要になることがあります。
「建設会社だからこの表のとおり」とだけ判断せず、実際の事業内容を踏まえて確認してください。
労働保険番号を確認して記載する

労働保険の保険関係成立届を提出すると、事業所の労働保険番号が付与されます。
雇用保険適用事業所設置届にはこの労働保険番号を記載するため、一般的な一元適用事業では、基本的に保険関係成立届を先に処理する流れになります。
労働保険番号は、新規適用時だけ使う番号ではありません。
今後、毎年行う労働保険の年度更新や、名称・所在地変更などの手続きでも使用する重要な番号です。
そのため、保険関係成立届の事業主控や電子申請による返戻書類などは、後から確認できる状態で保管しておきましょう。
3種類の番号を混同しない
初めて雇用保険の手続きをすると、「労働保険番号」「雇用保険適用事業所番号」「雇用保険被保険者番号」という複数の番号が登場します。
どれも労働保険・雇用保険関係の番号なので、慣れていない担当者には非常に紛らわしいところです。
ただし、それぞれ役割が違います。
| 番号 | 何を管理する番号か | 主な使用場面 |
|---|---|---|
| 労働保険番号 | 労働保険の保険関係 | 年度更新、労働保険関係の届出など |
| 雇用保険適用事業所番号 | 雇用保険の適用事業所 | 資格取得・喪失など事業所の雇用保険手続き |
| 雇用保険被保険者番号 | 個々の被保険者 | 従業員本人の資格取得・喪失等 |
労働保険番号は会社そのものの法人番号とも違います。
法人番号、労働保険番号、雇用保険事業所番号を同じ管理表に記載している会社では、項目名を明確に分けて保存することをおすすめします。
設置後に交付される番号も保存する
雇用保険適用事業所設置届が受理されると、事業所には雇用保険上の事業所番号が付与されます。
この番号は、その後に従業員の資格取得届や資格喪失届などを提出するときに使用します。
つまり、新規適用の前後では、最初に労働保険番号を確認し、その後に雇用保険適用事業所番号を確認する流れになります。
設置後は毎年の労働保険料申告も必要になります。
年度更新については、 雇用保険の年度更新とは?申告期限と計算方法を実務で確認 で詳しく解説しています。
実務では、担当者が退職したあとに「労働保険番号が分からない」「どれが雇用保険事業所番号か分からない」というケースもあります。
新規適用時の書類を一つのフォルダにまとめ、紙であれば事業主控、電子申請であれば返戻公文書などを保存しておくと、その後の手続きがかなり楽になります。
給与計算ソフトや人事労務システムへ登録するときにも、どの番号を入力する欄なのか確認してください。
番号を取り違えると、電子申請時のエラーや確認作業の原因になることがあります。
設置届の書き方と主な記載事項
雇用保険適用事業所設置届では、事業所と事業主に関する基本情報、労働保険番号、従業員数、賃金の支払状況などを記載します。
届出書そのものは非常に長い書類ではありませんが、会社設立日、事業開始日、設置年月日など似たような年月日が複数あるため、実際に記入してみると迷う項目があります。
主に確認しておきたい項目は次のとおりです。
- 事業所の名称
- 事業所の所在地と電話番号
- 法人番号
- 事業主の住所・名称・氏名
- 設置年月日
- 事業の開始年月日
- 労働保険番号
- 事業の種類と具体的な事業内容
- 常時使用する労働者数
- 雇用保険の被保険者数
- 賃金の締切日と支払日
- 事業所の所在地を示す略図
設置年月日と事業開始年月日を分けて考える
書き方で特に迷いやすいのが、 設置年月日と事業開始年月日 です。
会社の設立日、税務上の開業日、店舗の営業開始日、最初の従業員を採用した日は同じとは限りません。
たとえば法人は1月に設立したものの、店舗の工事を行って3月から営業を開始し、4月に初めて従業員を採用することもあります。
このとき、「一番早い日を書けばいいだろう」と考えるのではなく、それぞれの項目が何の日付を求めているのかを整理することが大切です。
届出書を作成する前に、少なくとも 法人設立日・事業開始日・最初の従業員の入社日・労働保険の保険関係成立日 を時系列で並べておくと、設置年月日の記入間違いを防ぎやすくなります。
事業内容は実態が分かるように書く
事業の種類についても、登記事項証明書の目的欄に書かれている文章をそのまま全部転記すればよいとは限りません。
登記目的では将来予定している事業まで幅広く記載している会社も多いため、実際にその事業所で行っている事業内容が分かるように整理することが重要です。
たとえば、登記簿に「経営コンサルティング業務、ウェブサイト制作業務、広告代理業務、商品の企画販売」など複数の目的が記載されていても、現在の主たる事業がウェブサイト制作であれば、実際の事業内容を確認できるよう具体的に整理します。
複数の事業を同時に行っている場合には、どの事業が主たる事業なのか判断が必要になる場合があります。
労働保険料率などにも関係するため、曖昧な場合は推測で記載せず確認してください。
労働者数と被保険者数は一致しないことがある
労働者数については、「会社にいる人数」と「雇用保険に加入する人数」が必ず同じになるわけではありません。
たとえば、週40時間勤務の正社員1人と週10時間勤務のアルバイト1人を同時に採用した場合、労働者としては2人でも、一般的な雇用保険の時間要件を満たすのは正社員だけというケースがあります。
また、代表取締役や一定の役員が社内にいても、それだけで雇用保険被保険者数へ含めるわけではありません。
届出書だけを見ながら推測で記入するより、登記事項証明書、労働条件通知書・雇用契約書、労働者名簿、賃金台帳、会社の給与締切日・支払日が分かる資料などを手元に並べて作成する方が間違いを減らせます。
私が新規適用の内容を確認するときも、届出書へいきなり入力するのではなく、事業所情報と対象者情報を先に一覧にします。
書類作成より前の整理が、結果として一番重要なところですよ。
法人と個人事業主の添付書類
雇用保険適用事業所設置届では、届出書の内容だけでなく、 事業所が実際に存在し、事業を行い、労働者を雇用していることを確認できる資料 を求められます。
具体的な添付書類は管轄ハローワークや事業内容、事業所の状況によって異なる場合があります。
そのため、「この7点を出せば全国どこでも必ず足りる」という考え方より、何を確認するための資料なのかを理解しておく方が実務では役立ちます。
| 確認事項 | 法人の主な資料例 | 個人事業主の主な資料例 |
|---|---|---|
| 事業主の確認 | 登記事項証明書など | 住民票、開業関係書類など |
| 所在地の確認 | 賃貸借契約書、公共料金関係書類など | 賃貸借契約書、公共料金関係書類など |
| 事業実態の確認 | 許認可証、契約書など | 開業届、許認可証、取引関係資料など |
| 雇用実態の確認 | 労働者名簿、出勤簿、賃金台帳、雇用契約書など | 労働者名簿、出勤簿、賃金台帳、雇用契約書など |
| 労働保険番号の確認 | 保険関係成立届の事業主控など | 保険関係成立届の事業主控など |
法人で確認されやすい書類
法人の場合は、登記事項証明書によって法人名、本店所在地、法人の設立状況などを確認できます。
ただし、登記上の本店所在地と実際に従業員が勤務する事業所所在地が異なるケースでは、登記事項証明書だけで実際の事業所所在地を確認できません。
そのため、事業所の賃貸借契約書や公共料金関係書類、営業許可証など、実際の所在地と事業実態が分かる資料が必要になることがあります。
会社設立直後では、公共料金の領収書や賃金台帳など、まだ十分に作成されていない資料もあります。
その場合に何を代替資料として提出するかは、事業所の状況によって異なります。
個人事業主では本人と事業実態を確認する
個人事業主の場合は法人の登記事項証明書がないため、事業主本人の確認と事業実態の確認を別の資料で行うことになります。
たとえば、住民票、税務署へ提出した個人事業の開業関係書類、許認可証、事業所の賃貸借契約書などが確認資料になることがあります。
ここで注意したいのは、事業主の自宅住所と事業所所在地が違うケースです。
住民票で確認できるのは事業主本人の住所であり、店舗や事務所が別の場所にあるのであれば、その事業所の所在地を確認できる資料も必要になることがあります。
従業員を本当に雇用していることが分かる資料
雇用保険適用事業所設置届は、「事業を始めました」という届出だけではありません。
雇用保険の対象となる労働者を実際に雇用していることが前提になります。
そのため、労働者名簿、出勤簿やタイムカード、賃金台帳、労働条件通知書、雇用契約書など、雇用関係と労働条件を確認できる資料を準備します。
設立直後でまだ最初の給与支払日前であれば、賃金台帳に支給実績がない場合もあります。
そのようなときは、雇用契約書、労働条件通知書、出勤状況が分かる資料など、現時点で用意できる資料を整理したうえでハローワークへ確認するとよいでしょう。
添付書類は全国で完全に一律とは限りません。
事業所の所在地が登記と異なる場合、設立直後で事業実態を確認できる資料が少ない場合、自宅兼事務所やシェアオフィスを使用している場合、許認可事業の場合などは、追加資料を求められる可能性があります。
提出前に管轄ハローワークへ確認するのが確実です。
添付書類の目的は、単にチェックリストを満たすことではありません。
「この会社・事業主が実在する」「この所在地で事業をしている」「この人をこの条件で雇用している」という三つを説明できるよう準備すると、不足資料もイメージしやすくなります。
資格取得届と同時に提出する書類

初めて雇用保険の対象となる従業員を採用した場合は、事業所について雇用保険適用事業所設置届を提出するだけでは手続きは完了しません。
その従業員本人について、 雇用保険被保険者資格取得届 を提出します。
設置届は「会社・事業所を雇用保険の適用事業所として登録する手続き」、資格取得届は「その事業所で働く個々の従業員を雇用保険の被保険者として届け出る手続き」と整理すると分かりやすいでしょう。
資格取得届の期限は翌月10日まで
資格取得届の提出期限は、資格取得の事実があった日の属する月の翌月10日までです。
たとえば4月1日に雇い入れ、同日から雇用保険の被保険者となった場合は、原則として5月10日までに資格取得届を提出します。
一方、雇用保険適用事業所設置届は設置日の翌日から起算して10日以内です。
そのため、最初の従業員を採用したときは、設置届の期限の方が先に到来するケースが多くなります。
実務では別々の日に提出するより、 1人目については設置届と資格取得届をセットで準備して同時に提出する と管理しやすいでしょう。
被保険者番号は過去の番号を確認する
資格取得届を提出するときには、対象者の氏名、生年月日、雇入年月日、所定労働時間などとともに、過去に雇用保険へ加入していた人であれば雇用保険被保険者番号を確認します。
雇用保険被保険者番号は、基本的に転職のたびに新しい番号を取得するものではありません。
前職で加入していた人であれば、以前の被保険者番号を引き継いで使用します。
そのため、採用時には雇用保険被保険者証などを確認しておくとスムーズです。
被保険者番号が本人にも分からない場合には、過去の勤務先など必要な情報を確認し、ハローワークで照会できる場合があります。
番号が分からないからといって、安易に別人として新しい被保険者番号を取得するような処理は避けなければなりません。
最初の従業員を採用したときの全体像
最初の従業員を雇ったときの基本的な流れ
- 雇用契約を確認し、雇用保険の加入要件を判定する
- 労働保険の保険関係成立届を提出する
- 労働保険番号を確認する
- 雇用保険適用事業所設置届を作成する
- 雇用保険被保険者資格取得届を作成する
- 事業所と雇用実態を確認する添付書類をそろえる
- 必要書類を管轄ハローワークへ提出する
- 返戻された事業所控や事業所番号を保存する
設置後は、新たな従業員を採用するたびに資格取得届を提出します。
また、従業員が退職したときは資格喪失届、必要に応じて離職証明書を提出することになります。
さらに、事業所名や所在地などに変更があった場合は、設置届をもう一度出すのではありません。
すでに設置されている事業所の登録情報を変更するため、変更内容に応じた届出を行います。
詳しくは、 雇用保険事業主事業所各種変更届の書き方|提出先と期限を実務で確認 で整理しています。
初回の手続きが終わったら、雇用保険適用事業所番号、労働保険番号、資格取得確認通知書などを社内で保管するルールを決めておくことをおすすめします。
2人目以降の入社手続きや退職手続きで必要になります。
最初の1人を採用したときは提出書類が多く見えますが、「事業所を登録する手続き」と「従業員本人を加入させる手続き」に分ければ理解しやすくなります。
そのうえで、労働保険の成立手続きが前段階にあると考えると、全体の順番が見えてきます。
雇用保険適用事業所設置届のまとめ
雇用保険適用事業所設置届は、初めて雇用保険の被保険者となる従業員を雇用した事業所が、雇用保険の適用事業所としてハローワークへ届け出る重要な手続きです。
書類そのものの記載項目だけを見ると、それほど複雑には見えないかもしれません。
しかし、実務で重要なのは、 設置届だけを単独の手続きとして考えないこと です。
一般的な一元適用事業であれば、まず労働保険の保険関係成立届を提出し、労働保険番号を確認します。
そのうえで、管轄ハローワークへ雇用保険適用事業所設置届と、最初の従業員についての雇用保険被保険者資格取得届を提出する流れになります。
- 雇用保険の対象者を初めて雇ったら設置手続きを確認する
- 設置届の提出先は事業所所在地を管轄するハローワーク
- 提出期限は設置日の翌日から起算して10日以内
- 先に保険関係成立届を提出して労働保険番号を確認する
- 1人目の資格取得届もあわせて準備する
- 法人と個人事業主では確認資料が異なる
- 添付書類は管轄ハローワークへ事前確認する
初めて人を雇うときは手続きを時系列で整理する
特に会社設立直後や、これまで1人で事業をしてきた個人事業主が初めて従業員を雇う場面では、雇用保険以外にも複数の手続きが同時に発生します。
労働保険では保険関係成立届や概算保険料申告書、雇用保険では適用事業所設置届や資格取得届、一定の場合には健康保険・厚生年金保険の新規適用・資格取得関係の手続きも必要になります。
提出先も、労働基準監督署、ハローワーク、日本年金機構などに分かれます。
そのため、「会社を作ったから役所へ一つ書類を出せば終わり」と考えてしまうと、手続き漏れが起きやすくなります。
| 確認すること | 実務上のポイント |
|---|---|
| 誰を雇ったか | 雇用保険の加入要件・適用除外を確認する |
| いつ雇ったか | 設置日・資格取得日・各提出期限を整理する |
| どこで事業をしているか | 管轄の労基署・ハローワーク等を確認する |
| どのような事業か | 一元適用・二元適用や事業種類を確認する |
| 何を提出するか | 成立届・設置届・資格取得届を時系列で整理する |
私が実務で新規適用の相談を受けたときも、最初から届出書を書き始めるのではなく、まず入社日、週の所定労働時間、雇用期間、事業所所在地、事業内容、一元適用か二元適用かといった前提を確認します。
この前提が整理できれば、「どの役所へ、何を、いつまでに出すのか」が自然に決まってきます。
逆に、前提を整理しないまま様式だけ埋めようとすると、設置年月日や労働者数、労働保険番号などで迷いやすくなります。
設置後も雇用保険の手続きは続く
雇用保険適用事業所設置届は、事業所にとって最初の雇用保険手続きですが、これで雇用保険関係の事務がすべて終わるわけではありません。
その後は、新たに雇用保険の対象者を採用すれば資格取得届、退職すれば資格喪失届や必要に応じて離職証明書を提出します。
会社名や所在地などが変われば変更手続きが必要となり、事業所そのものを廃止する場合には廃止の手続きを行います。
また、労働保険については毎年度、前年度の確定保険料と新年度の概算保険料を申告する年度更新があります。
つまり、今回の設置届は「雇用保険の事業所管理を始める最初の手続き」です。
設置後に交付・返戻された書類や番号を適切に保存しておくことが、その後の労務管理をスムーズにする土台になります。
新規適用が完了したら、労働保険番号、雇用保険適用事業所番号、保険関係成立届の控え、雇用保険適用事業所設置届の控え、従業員の資格取得関係書類を一つの管理場所にまとめておくと便利です。
なお、雇用保険制度の取扱い、使用する様式、電子申請の方法、必要な添付書類などは、制度改正や行政運用によって変更される可能性があります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
また、適用事業所に該当するか、採用した従業員が雇用保険の被保険者になるか、一元適用事業と二元適用事業のどちらに該当するかなどは、事業内容や実際の雇用関係によって個別判断が必要になることがあります。
特に、短時間労働者、役員兼務者、学生、同居親族、特殊な業種、複数事業所を運営する会社などでは、一般的なケースとは取扱いが異なることがあります。
届出の期限もありますので、判断が難しいまま手続きを止めてしまわず、管轄の行政機関や社会保険労務士へ早めに確認してください。
最終的な判断は専門家にご相談ください。