こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
休職中の有給消化は、原則としてできません。
年次有給休暇は、もともと働く義務がある日に労働を免除する制度であり、休職中はすでに労務提供義務が免除されているためです。
ただし、休職前や復帰後であれば有給休暇を使える場面があります。
また、傷病手当金との関係や、休職からそのまま退職する場合の扱いも整理しておかないと、収入面で思わぬ誤解が生じることがあります。
実際によくある相談ですので、この記事では、休職中・休職前・復帰後・退職時の有給消化について、従業員の方に向けて実務目線でわかりやすく解説します。
- 休職中に有給消化できない理由
- 休職前や復帰後に有給を使える場面
- 休職から退職する場合の有給の扱い
- 傷病手当金と有給休暇の関係

休職中の有給消化はできる?

休職制度の基本的な仕組みや手続きの全体像については、休職とは何か制度の基本と注意点で詳しく解説しています。
まずは、休職中に有給休暇を使えるのかという基本から確認します。
ここを誤解したまま会社に申請すると、会社側から認められず、収入の見込みもずれてしまうことがあります。
休職と有給休暇はどちらも仕事を休む制度ですが、法律上・実務上の考え方はかなり違います。
特に病気やけがによる休職では、休職開始日、診断書の期間、給与の有無、傷病手当金の申請時期が絡みます。
単に「休む日だから有給を使える」という発想だけで考えると、会社の処理と本人の期待がずれてしまうことがあります。
休職中に有給消化できない理由

休職中に有給消化できるかという相談は、労務の現場でも非常に多いです。
結論からいうと、休職中は原則として有給休暇を取得できません。
これは会社が意地悪をしているという話ではなく、年次有給休暇という制度の性質からそのように整理されます。
年次有給休暇は、労働基準法第39条に基づく制度です。
簡単にいうと、 本来は働く義務がある日に、労働者の請求によって労働義務を免除し、賃金を支払う制度 です。
つまり、有給休暇を使うためには、前提として「その日は本来なら働く日である」という状態が必要になります。
一方で、休職は、労働契約自体は続いているものの、病気やけがなどの理由により、会社が一定期間の労務提供義務を免除している状態です。
休職中は、出勤する義務そのものが止まっている状態ですから、その日にさらに有給休暇を重ねて使うという考え方にはなりにくいわけです。
たとえば、会社から「あなたは今日から病気休職です」と正式に休職発令されている場合、その後の休職期間中は勤務予定日であっても、実務上は休職期間として取り扱われます。
そこに有給休暇を充てると、休職として労務提供義務を免除しているのか、有給休暇として労働義務を免除しているのか、勤怠処理の根拠が曖昧になります。
ここで大切なのは、 休職中は有給休暇を取得する対象となる労働日がない という点です。
有給休暇は「休めば何でも使える休暇」ではなく、「本来働くべき日に使う有給の休暇」です。
この違いは、休職中の収入や退職時の有給消化を考えるうえで非常に重要です。
休職中に有給消化できない理由
- 有給休暇は、労働義務がある日に使う制度
- 休職中は、労務提供義務が免除されている期間
- 休職中は、有給休暇を充てる労働日がない
- 休職に入る前と入った後では、勤怠処理の考え方が変わる
欠勤・休職・有給休暇は分けて考える
従業員の方からすると、「休んでいるのだから有給を使えるのでは」と感じるかもしれません。
しかし、実務上は、欠勤・休職・有給休暇を分けて考えます。
欠勤は、本来働くべき日に労務提供がなかった状態です。
有給休暇は、本来働くべき日に労働者の請求により賃金付きで休む制度です。
休職は、会社の制度に基づき、一定期間、労務提供義務そのものが免除される状態です。
この3つを曖昧にしたまま処理すると、給与計算、社会保険、傷病手当金、退職日、有給残日数のすべてに影響します。
特に病気休職の場合は、休職開始日がいつなのかによって、その前後の給与や傷病手当金の扱いが変わります。
会社の就業規則と勤怠処理の確認が必要です。
よくある誤解
「有給が残っているのに休職中に使えないのはおかしい」と感じる方は少なくありません。
ただし、有給休暇の残日数があることと、休職中にその有給を取得できることは別問題です。
残日数があっても、休職中は有給休暇を使う対象日がない、という整理になります。
労働基準法39条と有給休暇
年次有給休暇の基本は、労働基準法第39条に定められています。
一般的には、雇入れの日から6か月間継続勤務し、その期間の全労働日の8割以上出勤した労働者に、最低10労働日の有給休暇が付与されます。
その後は、勤続年数に応じて付与日数が増えていきます。
有給休暇は、正社員だけの制度ではありません。
パートタイマーやアルバイトであっても、一定の要件を満たせば年次有給休暇は発生します。
ただし、週の所定労働日数や年間の所定労働日数によって付与日数が変わるため、短時間勤務の方は自分の勤務形態に応じた日数を確認する必要があります。
フルタイム労働者の場合の一般的な付与日数は、次のとおりです。
実務では、この表に加えて、会社独自の特別休暇や、入社時に前倒しで付与する制度がある場合もあります。
就業規則や雇用契約書で確認しておきましょう。
| 継続勤務年数 | 有給休暇の付与日数 | 実務上の確認ポイント |
|---|---|---|
| 6か月 | 10日 | 入社後初めて有給が発生する時期 |
| 1年6か月 | 11日 | 前年分の残日数と合わせて確認 |
| 2年6か月 | 12日 | 時効が近い有給がないか確認 |
| 3年6か月 | 14日 | 長期休職時は残日数管理が重要 |
| 4年6か月 | 16日 | 復職後に残す日数も検討 |
| 5年6か月 | 18日 | 退職時の有給消化相談が増えやすい |
| 6年6か月以上 | 20日 | 最大付与日数となるため残日数確認が重要 |
また、2019年4月からは、年10日以上の有給休暇が付与される労働者について、会社に年5日の取得義務が課されています。
会社側は、対象者に対して年5日は確実に有給休暇を取得させる必要があります。
これは、従業員が有給をまったく取れない状態を防ぐための制度です。
ただし、この年5日の取得義務があるからといって、休職中の労働者に休職期間中の有給取得を無理に当てはめるという話ではありません。
休職中は労働義務がないため、有給休暇を取得する前提となる労働日がないからです。
ここは、会社側の人事労務担当者も誤解しやすいところです。
実務上の確認ポイント
有給休暇の残日数や付与日は、給与明細や勤怠システムに表示されていることが多いです。
ただし、表示が最新でないこともあります。
特に休職前後は、欠勤、有給、休職の処理が複雑になりやすいため、休職に入る前に人事・総務へ確認しておくと安心です。
会社の時季変更権にも注意
有給休暇は労働者の権利ですが、どんな場合でも希望した日に必ず取れるという意味ではありません。
会社には、請求された時季に有給休暇を与えると事業の正常な運営を妨げる場合に、別の時季へ変更できる時季変更権があります。
ただし、病気休職の直前のように、本人の体調が大きく関係する場面では、通常の繁忙期の有給申請とは実務上の配慮も変わってきます。
有給休暇そのものの制度や付与の考え方については、厚生労働省の公式情報も確認しておくとよいでしょう。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
育児休業中も有給休暇は取れない
休職中に有給休暇を取得できない考え方は、育児休業中にも共通します。
育児休業中も、会社との雇用関係は続いていますが、その期間は労務提供義務が免除されています。
つまり、育児休業中は「本来働くべき日だけれど、育児休業により労務提供義務が免除されている状態」と整理されます。
そのため、育児休業期間中に有給休暇を取得することは、原則としてできません。
病気休職であっても、育児休業であっても、ポイントは同じです。
有給休暇は、働く義務がある日に使う制度 だと考えると理解しやすいです。
たとえば、育児休業中に「有給が消えてしまいそうだから、育休中に使いたい」と考える方もいます。
気持ちはよくわかります。
せっかく残っている有給休暇ですから、時効で消える前に使いたいと思うのは自然です。
しかし、育児休業中は勤務予定日として労働義務がある日ではないため、通常の有給休暇として処理することは難しいです。
会社側から見ても、休業中の従業員に対して有給休暇を取得した扱いにしてしまうと、勤怠処理や賃金処理が不自然になることがあります。
たとえば、育児休業給付金や社会保険料免除の手続きとの関係で、「その日は育児休業なのか、有給休暇なのか」という説明が必要になる場合があります。
後から労務管理上の説明がつかなくなるケースもあるため、安易な処理は避けるべきです。
注意点
育児休業中や休職中に有給休暇を使えないとしても、休業・休職前後の通常の労働日であれば、有給休暇を取得できる可能性があります。
いつから休業・休職に入るのか、いつ復帰するのかを明確にしておくことが重要です。
休業開始前なら有給を使える可能性がある
育児休業や介護休業、病気休職などの休業・休職制度に入る前であれば、通常の労働日として有給休暇を取得できる可能性があります。
たとえば、産前休業に入る前、育児休業に入る前、病気休職に入る前の勤務予定日について、有給休暇を取得すること自体はあり得ます。
ただし、休業開始日や休職開始日がすでに決まっている場合、その日以降については有給休暇ではなく、休業または休職として処理するのが基本です。
特に会社の勤怠システムでは、休業開始日以降に有給を入力できない設定になっていることもあります。
実務でよくある相談
「育休中に有給を消化できますか」「休職中に有給を使って給与をもらえますか」という相談は、従業員側からも会社側からもあります。
どちらも考え方は共通しており、休業・休職中は労務提供義務が免除されているため、有給休暇を重ねて取得することは原則できません。
休職前に有給をまとめて使えるか

休職開始前であれば、通常の労働日として有給休暇を使える可能性があります。
つまり、休職中の有給消化は原則できませんが、休職に入る前であれば、残っている有給休暇をまとめて取得すること自体は考えられます。
ここは読者の方にとって、かなり重要な分岐点です。
たとえば、医師から診断書が出たあと、すぐに休職に入るのではなく、数日間または一定期間を有給休暇として処理し、その後に休職へ移行するケースです。
実務上も、本人の体調、会社の就業規則、業務の引き継ぎ状況を踏まえて、このような整理をすることがあります。
ただし、休職前に有給をまとめて使えるかどうかは、単に残日数があるかだけでは決まりません。
休職開始日がいつになるのか、診断書にどのような期間が書かれているのか、本人が実際に出勤できる状態なのか、会社の就業規則で休職の発令日がどのように扱われるのかを確認する必要があります。
また、有給休暇は労働者の権利である一方、会社には時季変更権があります。
請求された時季に有給休暇を与えると事業の正常な運営を妨げる場合、会社は別の時季に変更できることがあります。
もっとも、病気やけがで休職に入る直前のケースでは、通常の繁忙期の有給申請とは事情が異なります。
体調不良で就労が難しい場合、会社としても、欠勤、休職、有給休暇のいずれで処理するのかを実態に合わせて整理する必要があります。
休職前に確認したいこと
- 有給休暇の残日数
- 休職開始日
- 診断書の提出日
- 診断書に記載された療養期間
- 欠勤扱いになる期間の有無
- 傷病手当金の待期期間との関係
- 会社の就業規則における休職発令の条件
会社への伝え方も大切
会社に伝える際は、「有給を全部使いたい」とだけ伝えるよりも、体調の状況、医師の診断、休職開始希望日をあわせて相談する方が実務上スムーズです。
たとえば、「医師から〇月〇日から療養が必要と言われています。
休職開始までの期間について、有給休暇の取得が可能か確認したいです」という伝え方のほうが、会社側も処理を検討しやすくなります。
中小企業では、休職制度の運用が就業規則上はあっても、実際の処理に慣れていないこともあります。
私の実務感覚でも、休職制度そのものよりも、休職に入る前後の勤怠処理で迷う会社は多いです。
だからこそ、休職開始日を曖昧にせず、どの日までが有給休暇で、どの日からが休職なのかを明確にしておくことが重要です。
有給を使い切った後に欠勤や休職へ移る場合の考え方は、 有給を使い切った後の欠勤の扱い でも詳しく解説しています。
無理な有給消化には注意
体調が明らかに悪く、医師から就労不可と判断されているにもかかわらず、形式的に有給休暇を長期間入れる運用は慎重に考える必要があります。
休職開始日、診断書、実際の体調、会社の制度がかみ合っているかを確認しましょう。
休職前の有給と給与の扱い
休職前に有給休暇を取得した日は、通常どおり賃金が支払われます。
有給休暇は、文字どおり賃金の支払いがある休暇ですので、休職に入る前の収入確保という意味では大きなメリットがあります。
病気やけがで急に働けなくなると、給与が止まる不安が出てきますので、この点は非常に現実的な問題です。
病気やけがで休職する場合、休職期間中は会社から給与が出ない、または一部しか出ない会社も少なくありません。
休職中の給与については、法律で一律に支払いが義務付けられているわけではなく、会社の就業規則や賃金規程によって決まります。
そのため、休職前に有給休暇を使えるかどうかは、生活費の見通しに直結します。
ただし、ここで注意したいのが、傷病手当金との関係です。
傷病手当金は、業務外の病気やけがで働けず、給与が支払われない場合に健康保険から支給される制度です。
給与が支払われる有給休暇の日については、原則として傷病手当金の支給対象にはなりません。
一方で、傷病手当金の待期期間である連続3日間には、有給休暇や土日祝日などの公休日を含めて考えることがあります。
つまり、休職に入る直前に有給休暇を使い、その間に待期期間を完成させるという運用は、実務上見られます。
ここが少しややこしいところです。
給与と傷病手当金の考え方
- 有給休暇の日は、会社から給与が支払われる
- 給与が出る日は、原則として傷病手当金の対象外
- 待期期間の3日間には、有給休暇を含められることがある
- 4日目以降に有給を使うと、その日は傷病手当金が出ない可能性が高い
待期期間に有給を使う考え方
傷病手当金は、連続する3日間の待期期間を経た後、4日目以降の労務不能の日が支給対象になります。
この待期期間には、有給休暇、土日祝日などの公休日を含められることがあります。
つまり、待期期間中に給与が支払われていたとしても、待期そのものの成立には影響しないという考え方です。
たとえば、月曜日から水曜日まで有給休暇を取得し、その3日間が療養のために仕事に就けない状態であれば、待期期間として考えられる可能性があります。
その後、木曜日以降に給与の支払いがなく、労務不能が続いていれば、木曜日以降が傷病手当金の支給対象になる可能性があります。
ただし、実際の申請では、医師の意見、会社の事業主証明、給与の支払い状況が確認されます。
単に「有給を取ったから待期が完成する」というだけではなく、その期間に療養のため労務不能だったことが前提です。
| 期間 | 勤怠処理の例 | 給与 | 傷病手当金との関係 |
|---|---|---|---|
| 休職前の3日間 | 有給休暇 | 支給あり | 待期期間に含められる可能性あり |
| 待期完成後の休職期間 | 休職 | 会社規程による | 給与がなければ支給対象になり得る |
| 4日目以降の有給取得日 | 有給休暇 | 支給あり | 原則として支給対象外になりやすい |
このあたりは、従業員の方が特に混乱しやすい部分です。
休職前に有給を使うこと自体は収入面で有利に見えますが、傷病手当金の支給開始日や支給対象日との関係を確認せずに進めると、想定していた受給額とずれることがあります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
休職後の有給休暇の時効
有給休暇には時効があります。
年次有給休暇の権利は、原則として発生から2年で時効により消滅します。
休職中であっても、時効の進行そのものが当然に止まるわけではありません。
そのため、長期休職になる場合は、有給休暇の残日数だけでなく、いつ付与された有給なのかまで確認する必要があります。
休職中に有給休暇の時効が到来すると、使えないまま消滅してしまうことがあります。
従業員の方からすると納得しにくい部分かもしれませんが、休職中は有給休暇を取得する対象日がないため、時効が近いからといって休職期間中に有給消化することは原則できません。
ここで大切なのは、休職に入る前に有給残日数と時効日を確認しておくことです。
特に長期の休職が見込まれる場合は、どの有給がいつ消滅するのかを把握しておくと、休職前に使うべきか、復職後に残しておくべきかを検討しやすくなります。
たとえば、前年に付与された有給休暇が残っていて、その時効が数か月後に迫っている場合、休職に入る前に使えるかどうかを早めに会社へ相談する価値があります。
一方で、休職開始後に時効が来てしまう場合、休職中に有給へ切り替えることは難しいため、結果として消滅する可能性があります。
時効で注意したいこと
有給休暇の時効が近い場合でも、休職中に無理に有給消化へ切り替えられるとは限りません。
就業規則、休職開始日、医師の診断、実際の就労可能性を踏まえて判断する必要があります。
時効が近い有給をどう考えるか
時効が近い有給がある場合でも、必ず休職前に全部使うべきとは限りません。
休職期間が短く、復職後に通院や体調管理が必要になる見込みがあるなら、あえて一部を残しておく考え方もあります。
逆に、休職が長期化する可能性が高く、復職時期が見通せない場合は、休職前に使える範囲を会社と相談することも現実的です。
ただし、医師からすでに就労不可と診断されている場合や、会社が休職発令を行っている場合、そこから先を有給休暇として処理できるとは限りません。
会社側も、休職者の有給残日数や時効について、問い合わせがあった場合に説明できるようにしておくことが望ましいです。
特に休職期間満了が近づくと、有給消化、退職日、傷病手当金が一気に絡むため、早めの整理がトラブル防止につながります。
実務では、「退職直前になって有給がたくさん残っていることに気づいた」という相談もあります。
そうなる前に、休職に入る段階で残日数と時効を確認しておきましょう。
休職前に確認したい有給情報
- 現在の有給残日数
- 前年付与分と今年付与分の内訳
- 時効で消滅する予定日
- 休職開始前に取得できる日数
- 復職後に使うため残しておく日数
休職前後の有給消化と退職対応

次に、休職前後の有給消化と、退職する場合の扱いを整理します。
休職から復帰するのか、そのまま退職するのかによって、有給休暇を使えるかどうかは変わります。
また、傷病手当金との関係も実務上とても重要です。
特に、休職から退職へ進む場合は、「退職前なら有給消化できるはず」と考える方が多いです。
しかし、通常の退職前有給消化と、休職期間中の退職は前提が違います。
ここを丁寧に分けて見ていきます。
休職から復帰後の有給取得

休職期間が終わり、実際に復帰した後であれば、通常どおり有給休暇を取得できる可能性があります。
復帰後は労務提供義務が戻るため、その後の労働日に対して有給休暇を請求することができるからです。
休職中は有給を使えませんが、復帰後は状況が変わります。
たとえば、病気休職から復帰し、通常勤務または短時間勤務を開始した後に、通院や体調管理のために有給休暇を使うことは実務上よくあります。
復職直後は通院が続くことも多いため、有給を一部残しておく選択には合理性があります。
実際、復職後の安定勤務を考えると、有給をすべて休職前に使い切ることが必ず正解とはいえません。
ただし、復帰後の有給取得については、実際に復職できる状態であることが前提です。
主治医の意見、会社の復職判定、本人の体調、業務内容を踏まえ、無理のない復帰計画を立てる必要があります。
復帰したことにするだけで、実際には働けない状態のまま有給消化に入るような運用は避けた方がよいです。
会社によっては、復職時に主治医の診断書、産業医面談、復職判定会議、リハビリ勤務などを設けていることがあります。
中小企業ではそこまで制度化されていないこともありますが、それでも「本当に復職できる状態なのか」は必ず確認すべきポイントです。
復帰後に有給を使いやすい場面
- 定期通院が必要な場合
- 復帰直後に体調が不安定な場合
- リハビリ出勤後に通常勤務へ戻る場合
- 家族の事情と通院が重なる場合
- 復職後の勤務負担を段階的に調整したい場合
復職直後の有給は計画的に使う
実務では、復帰後すぐに無理をして再度休職になってしまうケースもあります。
そのため、残っている有給をどう使うかは、単に消化するかどうかではなく、復帰後の働き方全体の中で考えることが大切です。
通院日だけ有給を使う、半日単位や時間単位の有給制度があればそれを活用する、勤務日数を段階的に戻すなど、会社と相談できる余地があります。
一方で、会社側としても、復職直後の従業員に対して必要な配慮を行うことは大切ですが、本人の体調や業務遂行能力を確認しないまま、形式的に復職扱いにするのはリスクがあります。
復帰後の有給取得は、あくまで実際に労務提供義務が戻った後の話です。
復帰後の相談例
「復帰後もしばらく通院が必要なので、月に1回有給を使いたい」「最初の1か月は体調が不安定なので、半日有給を使えるか確認したい」といった相談は、実務上も自然です。
会社に相談する際は、通院予定や勤務可能な範囲を具体的に伝えると話が進みやすくなります。
休職から退職する場合の有給
休職からそのまま退職する場合、有給休暇を消化できるかどうかは特に相談が多いテーマです。
結論として、休職を継続したまま復職せずに退職する場合は、原則として有給休暇を消化する余地はありません。
残っている有給休暇が多い方ほど、この点は気になるところだと思います。
理由は、ここまで説明したとおりです。
休職中は労務提供義務が免除されており、有給休暇を取得する対象となる労働日がないためです。
通常の退職前有給消化は、退職日まで労働義務がある日について有給休暇を取得するものです。
一方、休職中の退職では、退職日までの期間が休職として処理されているため、前提が違います。
たとえば、休職期間中に退職届を提出し、休職満了日や任意の退職日をもって退職する場合、退職日までの期間は休職のまま続くことが一般的です。
この場合、残っている有給休暇は使われずに退職となる可能性があります。
一方で、休職前に有給休暇を使ってから退職に向かうケースや、復職後に有給を使って退職するケースは、状況によって考え方が変わります。
大切なのは、 休職中なのか、復職後なのか、退職日まで労働義務があるのか を分けて考えることです。
安易に考えない方がよいケース
復職する意思や就労できる健康状態がないにもかかわらず、書面上だけ復職した扱いにして有給消化し、そのまま退職する運用は、実態に反する処理となる可能性があります。
会社側・従業員側の双方にとって、後から問題になるリスクがあります。
形式的な復職からの有給消化は慎重に
「一度復職したことにして、その後に有給を全部使って退職したい」という相談もあります。
これ自体が常に不可能というわけではありません。
実際に復職できる状態で、会社も復職を認め、その後の労働日に対して有給休暇を請求するのであれば、通常の有給取得として整理できる余地はあります。
しかし、医師の診断上も本人の状態としても就労できないのに、書面上だけ復職扱いにするのは危険です。
会社側からすると、復職判定を適切に行っていないことになりますし、従業員側からしても、傷病手当金や退職後の給付に影響する可能性があります。
実態が伴わない処理は、後から説明がつかなくなります。
休職から退職する場合の手続きやお金の注意点は、 休職から退職する場合の手続きと注意点 でも解説しています。
退職前に確認したい分岐
- 休職のまま退職するのか
- 一度復職してから退職するのか
- 復職できる健康状態にあるのか
- 退職日まで労働義務がある日があるのか
- 有給残日数を会社がどう管理しているのか
休職期間満了で退職する場合
休職期間満了によって退職または自然退職となる場合も、有給休暇の扱いには注意が必要です。
就業規則で、休職期間が満了しても復職できない場合は退職とする、と定められている会社は少なくありません。
このような規定がある場合、休職満了日をもって労働契約が終了することがあります。
この場合、休職期間満了日まで休職状態が続き、そのまま退職となるのであれば、休職期間中に有給休暇を消化することは原則としてできません。
残っている有給休暇があっても、退職により消滅する扱いになることが多いです。
「退職時の有給消化はできるはずでは」と感じる方もいると思います。
たしかに、通常の退職場面では、退職日まで労働義務がある日について有給休暇を取得できることがあります。
しかし、休職期間満了による退職では、退職日までの期間がそもそも休職扱いになっているため、通常の退職前有給消化とは前提が異なります。
なお、会社によっては、残っている有給休暇の買い上げに任意で応じる場合があります。
ただし、有給休暇の買い上げは、原則として法律上当然に請求できるものではありません。
会社の制度や個別対応によります。
退職時に未消化の有給があるからといって、会社に必ず買い上げてもらえるわけではない点に注意してください。
休職期間満了前に確認すること
- 休職満了日
- 復職判定の手続き
- 退職扱いになる条件
- 有給休暇の残日数と時効
- 退職後の傷病手当金の継続給付の可否
- 社会保険の資格喪失日
- 退職後の健康保険の選択肢
休職満了前の動き方
休職期間満了が近い場合は、会社の人事・総務に確認するだけでなく、健康保険の手続きも確認しておきましょう。
特に退職後の傷病手当金は、在職中の受給状況や資格喪失時点の条件によって扱いが変わるため、自己判断は避けるべきです。
実務では、休職満了の直前になって「有給はどうなりますか」「退職後も傷病手当金はもらえますか」「会社に籍だけ残して有給消化できますか」といった相談が一気に出てくることがあります。
しかし、満了直前だと選択肢が限られることもあります。
できれば、休職満了の1か月以上前には、復職の見込み、退職の可能性、有給残日数、健康保険の手続きを確認しておくとよいです。
会社側も、休職満了による退職は、通常の自己都合退職より説明が難しくなりやすいです。
就業規則に沿って、休職満了日、復職判定、退職扱いとなる理由を丁寧に説明する必要があります。
従業員側としても、口頭だけでなく、書面やメールで確認しておくと後から整理しやすくなります。
退職日と有給消化の関係
休職期間満了による退職では、退職日までの期間が休職扱いのまま進むことが多いため、通常の退職前有給消化と同じようには考えられません。
退職日を変更すれば必ず有給を使える、という単純な話でもありません。
傷病手当金と有給は併用できるか

傷病手当金と有給休暇の関係は、休職前後で特に重要です。
結論からいうと、同じ日について有給休暇の給与と傷病手当金を二重に満額受け取ることは、通常できません。
傷病手当金は、給与が受けられない期間の生活保障という性格を持つためです。
傷病手当金は、業務外の病気やけがで働けず、給与を受けられない場合に支給される健康保険の給付です。
協会けんぽの説明でも、業務外の病気やけがで療養中であること、労務不能であること、4日以上仕事を休んでいること、給与の支払いがないことなどが要件とされています。
給与が一部支払われる場合は、傷病手当金との差額が支給される可能性がありますが、有給休暇のように通常の賃金が支払われる日は、傷病手当金の対象外になるのが基本です。
ここを誤解すると、「有給も傷病手当金も両方もらえる」と思って資金計画を立ててしまうことがあります。
ただし、待期期間の考え方は少し異なります。
傷病手当金は、連続する3日間の待期期間を経た後、4日目以降が支給対象になります。
この待期期間には、有給休暇、土日祝日などの公休日を含めて考えることがあります。
つまり、待期期間中に有給休暇を使ったからといって、それだけで待期が成立しないわけではありません。
傷病手当金と有給の整理
- 待期期間の3日間には有給休暇を含められることがある
- 4日目以降に有給を使うと、その日は傷病手当金の対象外になりやすい
- 給与が一部だけ出る場合は差額支給の可能性がある
- 具体的な扱いは加入している健康保険に確認する
傷病手当金の4つの基本要件
傷病手当金を考えるときは、まず基本要件を押さえる必要があります。
一般的には、業務外の病気やけがによる療養であること、療養のため労務に服することができない状態であること、連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと、休業した期間について給与の支払いがないことが重要です。
業務上の病気やけが、通勤途中の事故などは、健康保険の傷病手当金ではなく、労災保険の対象となる可能性があります。
また、労務不能かどうかは、本人の自己判断だけではなく、医師の意見や実際の業務内容を踏まえて判断されます。
デスクワークなら可能なのか、現場作業は難しいのか、といった事情も関係します。
傷病手当金の申請方法や支給額の考え方については、 傷病手当金の申請方法 でも詳しくまとめています。
また、傷病手当金の正確な支給要件や支給期間は、加入している健康保険によって確認先が異なります。
協会けんぽに加入している方は、協会けんぽの公式サイトも確認してください。
併用で注意したいこと
有給休暇を取得した日には給与が支払われるため、その日について傷病手当金が支給されない、または調整される可能性があります。
申請前に、会社の給与担当者と加入している健康保険へ確認しておきましょう。
有給と傷病手当金の優先順位
休職前に有給休暇を使うべきか、それとも傷病手当金を優先して考えるべきかは、一律には決められません。
目先の収入だけを見ると、有給休暇は給与が支払われるため、傷病手当金より有利に見えることが多いです。
給与の全額が出る有給休暇と、おおむね給与の3分の2程度を目安に考える傷病手当金では、短期的な手取りに差が出ることがあります。
傷病手当金は、一般的には支給開始日以前12か月間の標準報酬月額の平均をもとに、1日あたりの金額を計算し、そのおおむね3分の2が支給される仕組みです。
ただし、これはあくまで一般的な目安であり、実際の金額は加入している健康保険や標準報酬月額、給与の支払い状況によって変わります。
一方、有給休暇をすべて休職前に使い切ってしまうと、復職後の通院や体調不良、家庭の事情に対応する余地が少なくなります。
休職が短期で終わる見込みであれば有給を活用する選択もありますが、長期化する可能性がある場合は、復職後のために一部を残す考え方もあります。
また、傷病手当金には支給期間があります。
支給開始日から通算して最長1年6か月という考え方があるため、いつから支給開始となるのかは重要です。
有給休暇をいつ使うかによって、給与が出る日、傷病手当金の対象になる日、待期期間の完成日が変わる可能性があります。
| 選択肢 | メリット | 注意点 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 休職前に有給を使う | 給与が支払われるため収入を確保しやすい | 4日目以降は傷病手当金の対象外になる可能性がある | 短期休職の見込みがある場合 |
| 有給を残して休職する | 復職後の通院や体調不良に備えやすい | 休職中は給与が出ない場合がある | 長期化や復職後の通院が見込まれる場合 |
| 待期期間に有給を使う | 待期期間中の収入を確保しやすい | 待期の成立日や勤怠処理の確認が必要 | 休職開始直前に数日有給を使える場合 |
| 有給を使わず休職に入る | 傷病手当金の対象期間を整理しやすい | 休職直後の収入が下がる可能性がある | 傷病手当金を中心に生活設計する場合 |
判断の順番
実務上は、次のような順番で考えると整理しやすいです。
まず、有給休暇の残日数を確認します。
次に、休職開始日と診断書の期間を確認します。
そのうえで、傷病手当金の待期期間、給与の有無、復職見込みを踏まえて、有給を使う範囲を検討します。
ここで重要なのは、収入面だけで決めないことです。
もちろん、休職中の生活費は非常に大切です。
しかし、復職後に通院が必要になる方、体調が波打ちやすい方、家族の事情がある方は、有給を少し残しておくことが安心につながることもあります。
私が相談を受けるときも、「いま一番お金が必要なのか」「復職後の通院に備えたいのか」「退職の可能性があるのか」を分けて確認します。
どれが正解というより、あなたの状況によって優先順位が変わる。
ここが実務上のポイントです。
有給を使う前に整理したいこと
- 休職は短期で終わりそうか
- 長期休職になる可能性があるか
- 復職後に通院が続くか
- 退職を考えているか
- 傷病手当金の申請予定があるか
- 会社から休職中の給与が出るか
収入面だけでなく、体調回復や復職後の働き方まで含めて考えることが大切です。
金額や支給期間は加入している健康保険、給与の支払い状況、標準報酬月額などによって変わります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
最終的な判断は専門家にご相談ください。
休職時の有給消化で確認すべき点
休職時の有給消化で最も大切なのは、休職中に使えるかどうかだけを単独で考えないことです。
休職前、休職中、復帰後、退職時で扱いが変わるため、時系列で整理する必要があります。
ここを整理できると、自分が会社に何を確認すべきかも見えてきます。
まず、休職前であれば有給休暇を使える可能性があります。
休職中は原則として有給休暇を使えません。
復帰後は、実際に労務提供義務が戻れば有給休暇を取得できる可能性があります。
休職からそのまま退職する場合は、休職状態が続いている限り、有給消化の余地は原則としてありません。
この違いを押さえたうえで、会社の就業規則、休職開始日、診断書の内容、有給残日数、傷病手当金の支給要件を確認してください。
特に、休職期間満了による退職が見えている場合は、退職日、社会保険の資格喪失日、傷病手当金の継続給付の可否もあわせて整理する必要があります。
会社側の視点でも、休職者から有給消化の希望が出た場合は、単に認める・認めないで終わらせるのではなく、休職開始日や勤怠処理を明確に説明することが重要です。
説明が曖昧だと、従業員側は「有給を使わせてもらえなかった」と受け止めやすく、トラブルにつながることがあります。
休職時の有給消化チェックリスト
- 有給休暇の残日数と時効を確認する
- 休職開始日がいつになるか確認する
- 休職前に有給を使えるか会社に相談する
- 傷病手当金の待期期間を確認する
- 復職予定か退職予定かを整理する
- 会社の就業規則を確認する
- 休職中の給与の有無を確認する
- 退職する場合の退職日を確認する
会社に確認するときの聞き方
会社に確認するときは、感情的に「有給を使わせてください」と伝えるよりも、確認事項を整理して聞くのがよいです。
たとえば、「休職開始日はいつになりますか」「休職開始前に残っている有給休暇を取得できますか」「有給取得後に休職へ移行する場合、傷病手当金の事業主証明はどのように記載されますか」といった聞き方です。
また、退職の可能性がある場合は、「休職のまま退職する場合、有給休暇の扱いはどうなりますか」「休職期間満了による退職の場合、退職日はいつになりますか」と確認しておくとよいでしょう。
会社の担当者も、具体的な質問のほうが回答しやすくなります。
会社に確認する際の例文
現在、医師から療養が必要との診断を受けています。
休職開始日、有給休暇の残日数、休職前に有給休暇を取得できるか、休職中の給与の有無について確認したいです。
また、傷病手当金の申請を検討しているため、勤怠処理と事業主証明の扱いも教えてください。
最終的には個別事情で変わる
休職と有給休暇は、どちらも生活に直結する制度です。
だからこそ、休職中の有給消化はできるのか、休職前ならどうか、復帰後や退職時はどうかを分けて確認することが大切です。
制度の原則はありますが、就業規則、診断書、給与規程、健康保険の取扱い、本人の体調によって、実際の進め方は変わります。
特に、傷病手当金や退職後の給付が関係する場合は、自己判断で進めると不利益が出ることがあります。
会社の説明を受けるだけでなく、必要に応じて健康保険の窓口や専門家に確認してください。
制度の詳細や最新の取扱いは変更される可能性があります。
企業側の有給付与と8割要件の扱いについては休職中の有給付与と8割要件で解説しています。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
個別の事情によって結論が変わることもありますので、最終的な判断は専門家にご相談ください。