社会保険・年金

年金分割のための情報通知書とは?取得方法と見方・期限を整理

こんにちは。

もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

年金分割のための情報通知書は、離婚時の年金分割について話し合ったり、家庭裁判所の調停・審判を利用したりするときに、分割対象となる厚生年金記録や按分割合の範囲を確認するための書類です。

年金分割というと、相手が将来受け取る年金を半分もらう制度だと思われることがありますが、実際に分割するのは婚姻期間中の厚生年金の標準報酬記録です。

老齢基礎年金そのものや、相手の年金受給額をそのまま折半する制度ではありません。

この記事では、年金分割のための情報通知書の取得方法、記載内容の見方、合意分割と3号分割の違い、実際に年金分割を請求するときの期限まで、年金制度と年金事務所での手続きを中心に整理します。

  • 年金分割のための情報通知書の役割と記載内容
  • 合意分割と3号分割の違い
  • 情報通知書の取得方法と必要書類
  • 按分割合と年金分割の請求期限

年金分割のための情報通知書とは?取得方法・見方・期限

年金分割のための情報通知書とは

まず押さえておきたいのは、年金分割のための情報通知書そのものが年金を分割する申請書ではないという点です。

情報通知書は、どの期間が分割対象になるのか、双方の厚生年金記録がどの程度あるのか、合意分割で設定できる按分割合がどこからどこまでなのかを確認するための資料です。

特に合意分割では、当事者同士の話し合いや家庭裁判所での手続きを始める前に、この情報を確認しておくことが重要になります。

年金分割は離婚時の財産分与などと一緒に話題になることが多いものの、仕組みはまったく別です。

最初に「何を分ける制度なのか」を理解しておくと、その後の情報通知書の見方もかなり分かりやすくなります。

まず年金分割の仕組みそのものから整理していきましょう。

年金分割で分ける年金記録とは

離婚時の年金分割で対象となるのは、原則として婚姻期間中の 厚生年金の標準報酬記録 です。

具体的には、会社員や公務員などとして厚生年金に加入していた期間について記録されている標準報酬月額や標準賞与額を、制度上定められた方法によって当事者間で分割します。

厚生年金保険料や将来の老齢厚生年金は、この標準報酬を基礎として計算されるため、年金分割をすると将来の老齢厚生年金などの金額に影響することになります。

ここは非常に誤解されやすいところです。

たとえば夫が将来月15万円の年金を受け取り、妻が月7万円受け取る見込みだからといって、差額を調整して11万円ずつ受け取れるようにする制度ではありません。

また、夫がすでに年金を毎月受け取っている場合に、その振込額の半分が自動的に妻へ振り込まれる仕組みでもありません。

年金分割で分けるのは、年金の受取額そのものではなく、婚姻期間中の厚生年金の計算基礎となる記録です。

「相手の年金を半分もらう制度」ではなく、「婚姻期間中に形成された一定の厚生年金記録を分割し、それぞれの年金記録として組み替える制度」と理解すると分かりやすいです。

老齢基礎年金は年金分割の対象ではない

年金には大きく分けて国民年金から支給される老齢基礎年金と、厚生年金から支給される老齢厚生年金があります。

離婚時の年金分割の効果が及ぶのは、基本的に厚生年金の報酬比例部分です。

したがって、国民年金から支給される老齢基礎年金の記録そのものを夫婦で半分に分けるわけではありません。

自営業者として国民年金だけに加入していた期間について、相手方の国民年金記録を分けてもらうという制度でもありません。

また、婚姻前にそれぞれが会社員として働いて形成した厚生年金記録についても、原則として離婚時の年金分割の対象にはなりません。

あくまで婚姻期間など、制度上の分割対象期間についての厚生年金記録が中心です。

年金分割をしても受給資格まで移るわけではない

もう一つ重要なのが、厚生年金記録を分割したからといって、相手方の年金受給資格そのものを引き継げるわけではないことです。

年金分割後は、分割によって改定された標準報酬記録をもとに、それぞれの老齢厚生年金などが計算されます。

しかし、実際に老齢年金を受け取れるか、いつから受け取れるかについては、それぞれ本人について受給資格期間や支給開始年齢などの要件を確認します。

たとえば年金分割を受けた方がまだ年金の受給開始年齢に達していなければ、分割した直後から現金を受け取れるわけではありません。

将来、本人が老齢厚生年金を受け取る段階になったときに、分割後の記録が年金額の計算に反映されます。

反対に、すでに老齢厚生年金を受給している人について年金分割が行われた場合には、分割後の記録に基づいて年金額が改定されることがあります。

このように「年金を分ける」というよりも、 将来または現在の厚生年金額を計算するための基礎記録を組み替える手続き と考えるのが実務上は正確です。

日本年金機構も、年金分割の効果は厚生年金の報酬比例部分に及び、老齢基礎年金などには影響しないと案内しています。

制度全体を確認したい場合は、一次情報も併せて確認してください。

(出典:日本年金機構「離婚時の年金分割」)

自分の現在の年金加入記録も含めて確認したい場合は、 年金定期便の見方と年金見込額の確認ポイント も参考にしてください。

合意分割と3号分割の違い

合意分割と3号分割の違い

離婚時の年金分割には、大きく分けて 合意分割 3号分割 の2種類があります。

この違いを理解しないまま手続きを調べると、「相手の同意が必要なのか」「自分は3号分割だけでよいのか」「2008年より前の期間はどうなるのか」といった点が分かりにくくなります。

実務上は、まず婚姻期間中に自分と相手方がどのような働き方をしていたのかを時系列で整理すると判断しやすくなります。

専業主婦・専業主夫だった期間だけなのか、自分も会社員だった期間があるのか、2008年4月より前から婚姻していたのか。

このあたりが重要なポイントです。

項目 合意分割 3号分割
主な対象 婚姻期間中の厚生年金記録 2008年4月1日以後の第3号被保険者期間
相手の合意 原則として必要 不要
分割割合 定められた範囲内で合意または裁判手続きで決定 2分の1
合意できない場合 家庭裁判所の調停・審判等を利用 合意自体が不要
主なポイント 共働き期間や2008年4月より前の期間も対象になり得る 対象となる第3号期間が限定される

合意分割は夫婦の厚生年金記録を比較して分割する

合意分割では、婚姻期間中における当事者双方の厚生年金記録が対象になります。

たとえば夫も妻も会社員として厚生年金に加入していた場合で、一方の標準報酬記録がもう一方より大きいケースでも対象になり得ます。

分割後の持分をどの割合にするかについては、制度上認められる按分割合の範囲内で当事者が合意します。

夫婦だけの話し合いで決められればよいのですが、合意できない場合には家庭裁判所の調停や審判などを利用して按分割合を定めてもらうことができます。

この話し合いをする際に「そもそも双方の厚生年金記録がどの程度あるのか」が分からなければ、具体的な検討ができません。

そのために使われるのが年金分割のための情報通知書です。

3号分割は2008年4月以後の第3号期間が対象

一方の3号分割は、2008年4月1日以後に国民年金の第3号被保険者だった期間について、その期間に対応する相手方の厚生年金記録を2分の1ずつに分割する制度です。

3号分割では相手方の同意は必要ありません。

合意分割のように「40%にするか50%にするか」といった話し合いをする仕組みでもなく、対象期間について2分の1に分割されます。

ただし、「婚姻期間中に専業主婦だったことがあるから全部3号分割になる」と考えるのは注意が必要です。

3号分割の対象になるのは、2008年4月1日以後の第3号被保険者期間に限られます。

たとえば2000年に結婚し、2000年から2015年まで第3号被保険者だった場合、2008年4月以後の対象期間については3号分割を検討できますが、それより前の期間まで3号分割で当然に2分の1になるわけではありません。

2008年4月より前の期間について年金分割を希望する場合には、合意分割の対象になるかを確認する必要があります。

共働きと専業期間が混在している場合

実際には、「結婚後ずっと専業主婦だった」「ずっと夫婦とも会社員だった」という単純なケースばかりではありません。

結婚当初は共働き、その後は育児のため退職して第3号被保険者になり、数年後に再び厚生年金へ加入したという方も多いでしょう。

この場合、一つの婚姻期間の中に合意分割と3号分割に関係する期間が混在します。

また、合意分割の対象期間の中に3号分割の対象期間が含まれている場合には、合意分割を請求することで3号分割の請求も行われたものとして扱われる仕組みがあります。

「専業主婦だった=すべて3号分割」とは限りません。

2008年4月という制度上の区切りに加え、婚姻期間中に自分自身が厚生年金へ加入していた期間があるかも確認しましょう。

働き方が何度か変わっている場合は、婚姻日から離婚日までを時系列にして整理すると分かりやすいですよ。

なお、障害厚生年金を受けている場合など、3号分割について通常とは異なる取扱いが生じるケースもあります。

個別事情がある場合には、一般論だけで判断せず年金事務所へ確認することをおすすめします。

情報通知書に記載される内容

年金分割のための情報通知書には、年金分割について協議・手続きを進めるうえで必要となる基本情報が記載されています。

情報通知書の役割を簡単にいうと、合意分割について「何を、どの範囲で分けられるのか」を数字で確認するための資料です。

離婚協議中の方であれば夫婦間の話し合いに使えますし、按分割合について家庭裁判所の調停や審判を利用する場合にも重要な資料になります。

主に確認するのは、婚姻期間などに対応する 対象期間、対象期間標準報酬総額、按分割合の範囲 です。

当事者それぞれについて数字が示されるため、どちらが厚生年金記録を多く持っているのか、分割を受ける側と分割する側がどちらになるのかを把握する手掛かりになります。

確認項目 確認する意味
対象期間 どの婚姻期間等について年金分割の対象になるのかを確認する
対象期間標準報酬総額 対象期間中に双方が持つ厚生年金記録を比較する
按分割合の範囲 合意分割で定められる割合の下限と上限を確認する
当事者情報 誰について作成された情報なのかを確認する

最初に対象期間を確認する

情報通知書を受け取ったら、数字だけを見るのではなく、まず対象期間を確認することをおすすめします。

年金分割では婚姻期間などが基本になるため、自分が想定していた期間と情報通知書に記載されている対象期間が一致しているかを見ることが大切です。

特に、法律婚の前後に事実婚期間がある場合などは単純ではありません。

事実婚期間も含めた情報提供を求める場合には、その事実を確認するための資料が必要になることがあります。

自分の認識している婚姻関係の期間と年金制度上確認される期間が必ずしも同じとは限らないため、気になる点があれば年金事務所へ確認しましょう。

家庭裁判所の手続きでも重要な資料になる

合意分割で当事者間の話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に年金分割の割合を定める調停や審判を申し立てることがあります。

その際、分割対象となる年金記録や按分割合の範囲を示す資料として年金分割のための情報通知書が必要になります。

つまり、情報通知書は単に「自分の年金がいくらあるかを見る書類」ではありません。

年金分割の協議や裁判手続きの前提となる客観的な情報を示す書類です。

情報通知書を取得しても、それだけで年金分割が完了するわけではありません。

情報通知書はあくまで年金分割を検討するための情報です。

合意分割であれば按分割合を決め、その後に実際の分割請求を行う必要があります。

年金見込額の試算を確認できる場合もある

一定の方については、情報提供を請求する際に希望することで、年金分割を行った場合の年金見込額の試算を受けられることがあります。

たとえば50歳以上の方など一定の条件を満たす場合には、按分割合を複数設定した場合の年金見込額を確認できることがあります。

単に「標準報酬総額が何円動くか」だけでは、将来の生活への影響をイメージしにくいため、年金額ベースの試算が利用できる場合は参考になります。

ただし、試算された年金額は将来必ず受け取れる金額を保証するものではありません。

今後の厚生年金加入状況、年金制度の改正、受給開始時期などによって実際の年金額は変わります。

特に50代で離婚を検討している場合は、年金分割だけで老後資金を考えるのではなく、自分自身の年金加入記録、預貯金、退職金なども含めて生活設計を考えることが重要かなと思います。

将来の年金額について別の方法でも確認したい場合は、 公的な年金シミュレーションの使い方 も参考になります。

対象期間標準報酬総額の見方

対象期間標準報酬総額の見方

年金分割のための情報通知書を受け取ったとき、特に分かりにくいのが 対象期間標準報酬総額 という数字です。

「総報酬額」と書いてあると、婚姻期間中に会社から受け取った給与や賞与を全部足した金額のように感じるかもしれません。

しかし、情報通知書に記載される対象期間標準報酬総額は、単純な給与収入の合計ではありません。

年金分割の対象期間について記録されている標準報酬月額や標準賞与額を、制度上必要な再評価を行ったうえで算定する数字です。

したがって、源泉徴収票の給与収入や銀行口座へ振り込まれた給与を合計しても、同じ数字になるわけではありません。

基本的な見方としては、対象期間標準報酬総額が多い人が年金記録を分割する側、少ない人が分割を受ける側になります。

金額の差がそのまま受取額の差ではない

たとえば情報通知書に一方が4,000万円、もう一方が1,500万円と記載されていたとしても、「差額の2,500万円を相手から現金でもらえる」という意味ではありません。

また、4,000万円の半分である2,000万円を相手から受け取れるという意味でもありません。

対象期間標準報酬総額は、厚生年金の記録を比較し、按分割合の範囲や分割後の標準報酬記録を計算するために使う数字です。

銀行預金の残高や退職金のように、その金額自体を受け渡すものではありません。

対象期間標準報酬総額を財産分与の金額のように考えないよう注意してください。

年金分割と預貯金、不動産、株式などを対象とする財産分与は別の制度です。

按分割合と組み合わせて読む

対象期間標準報酬総額は、それ単独で見るよりも、情報通知書に示された按分割合の範囲と一緒に確認することが重要です。

仮に一方の持分が大きく、もう一方の持分が小さい場合でも、合意分割によって最終的に双方の持分をどこまで近づけられるかには制度上の範囲があります。

その上限が50%です。

つまり、情報通知書を見るときには「相手の数字はいくらか」だけでなく、「現在の双方の持分がどうなっていて、分割後にどこまで変更できるのか」を確認します。

給与額だけから結果を推測しない

「夫の年収が600万円、自分の年収が300万円だったので、分割すれば単純に半分になる」といった計算を自分で行うのもおすすめできません。

実際の年金記録は、それぞれの標準報酬月額、標準賞与額、加入期間などに基づいて記録されています。

また、婚姻前後の期間を除外する必要もあります。

特に婚姻期間が長く、その間に転職、育児休業、退職、扶養への切替え、再就職などがあった場合には、単純な平均年収だけでは実際の記録を把握できません。

だからこそ、日本年金機構が保有している記録をもとに作成される情報通知書を確認する意味があります。

年金分割と財産分与を混同しない

離婚協議中は、年金分割、預貯金、不動産、住宅ローン、退職金、慰謝料など、さまざまな金額の話が同時に出てくることがあります。

そのため、「年金分割でこの金額をもらえるので、財産分与ではその分を差し引く」といった話を感覚だけで進めてしまうと、制度を取り違える可能性があります。

私は年金制度や社会保険手続きの観点から説明できますが、財産分与や慰謝料、離婚条件そのものをどのように定めるべきかは法律判断を伴う分野です。

離婚条件全体について争いがある場合や、財産上の影響が大きい場合は、弁護士へ相談するのが適切です。

情報通知書を受け取ったら、「大きな数字が書いてあるからその金額を受け取れる」と考えず、まず 年金額を計算するための記録上の数字 だと理解しましょう。

ここを押さえるだけでも、情報通知書の読み違いをかなり防ぎやすくなります。

按分割合の範囲と決め方

合意分割では、どの程度の厚生年金記録を分割するかを決めるために 按分割合 を定めます。

按分割合という言葉は日常生活ではほとんど使わないので、情報通知書を初めて見た方が戸惑いやすい部分です。

簡単にいうと、分割対象となる双方の厚生年金記録を合計したうえで、分割によって記録が増える側が、分割後にその全体の何%を持つことになるのかを示す割合です。

按分割合の上限は50%です。

したがって、年金分割によって記録が少ない側の持分を、記録が多かった側より多くすることはできません。

最大で双方が50%ずつになるところまでです。

一方で、どのケースでも0%から50%まで自由に決められるわけではありません。

情報通知書には、その夫婦の年金記録に応じて按分割合を定めることができる範囲が示されます。

按分割合には下限もある

たとえば分割前の持分が、記録の多い側70%、少ない側30%だったとします。

この場合、分割を受ける側はすでに全体の30%相当の記録を持っています。

年金分割をすることで、その持分を30%未満に減らすような分割は制度の趣旨に合いません。

そのため、概念的には分割を受ける側がもともと持っていた割合が下限となり、50%が上限となります。

実際に設定できる具体的な範囲については、年金分割のための情報通知書に記載された按分割合の範囲を確認してください。

上限50%とは、相手方の厚生年金記録の50%をそのままもらうという意味ではありません。

双方の対象期間標準報酬総額を合計したうえで、分割を受ける側の分割後の持分を最大50%までにできるという意味です。

夫婦で合意できればその割合で請求する

合意分割では、情報通知書に示された範囲内で当事者が按分割合を話し合います。

たとえば按分割合を50%にすることで双方が合意したのであれば、その合意を年金分割の請求手続きで確認できる形にする必要があります。

単に夫婦間で「半分にしよう」と口頭で話しただけでは、年金事務所がそのまま年金記録を変更するわけではありません。

年金分割を実際に請求する際には、当事者双方が年金事務所へ出向いて意思確認を受ける方法のほか、公正証書、公証人の認証を受けた私署証書など、所定の方法で合意内容を確認できる資料を用いる方法があります。

情報通知書の取得と実際の年金分割請求は別手続きですので、合意が成立した後に何を提出すればよいかまで確認しておくことが重要です。

合意できなければ家庭裁判所で決めてもらえる

当事者間で按分割合について合意できない場合でも、それだけで合意分割を断念しなければならないわけではありません。

家庭裁判所の調停や審判などによって、按分割合を定めてもらうことができます。

その際にも、分割対象期間や按分割合の範囲を示す年金分割のための情報通知書が重要になります。

実務上、年金分割だけでなく財産分与など複数の離婚条件について協議しているケースでは、一つの条件だけ切り離して考えることが難しい場合があります。

そのような場合は、年金制度上できることと、離婚条件としてどのような解決を目指すのかを分けて整理することが大切です。

3号分割は按分割合を話し合わない

なお、3号分割については、合意分割のように当事者が按分割合を交渉する仕組みではありません。

対象となる2008年4月1日以後の第3号被保険者期間については、一定の要件を満たして請求すれば2分の1ずつに分割されます。

相手方の合意も必要ありません。

按分割合の話が出てくるのは、主に合意分割を考える場面です。

「50%にしたい」という結論だけ先に考えるより、まず情報通知書で対象期間標準報酬総額と按分割合の範囲を確認し、そのうえで手続きを進めるのが順番です。

年金分割のための情報通知書の手続き

年金分割の仕組みを確認したら、次は実際に年金分割のための情報通知書を取得する手続きを見ていきます。

情報通知書は自動的に送られてくるものではありません。

原則として年金分割のための情報提供請求書を作成し、必要書類を添えて請求します。

離婚前でも請求できるため、離婚協議や調停を始める前に情報を整理しておくことも可能です。

特に合意分割を検討しているのであれば、相手との具体的な話し合いを始める前に情報通知書を取得しておくと、年金記録の状況を客観的な数字で把握できます。

情報通知書の取得方法と請求先

年金分割のための情報通知書を取得するには、 年金分割のための情報提供請求書 を提出します。

名称が似ているため混乱しやすいのですが、「年金分割のための情報提供請求書」が自分で提出する書類で、その請求に対して交付されるのが「年金分割のための情報通知書」です。

提出するもの:年金分割のための情報提供請求書

交付されるもの:年金分割のための情報通知書

請求書は日本年金機構が用意している様式を使用します。

年金事務所などで入手するほか、日本年金機構の公式サイトから様式をダウンロードして準備することもできます。

様式は変更される可能性がありますので、以前入手した古い用紙を使うのではなく、実際に請求するときに最新版を確認することをおすすめします。

基本的な流れは次のとおりです。

  1. 年金分割のための情報提供請求書を準備する
  2. 請求者と相手方の情報、婚姻期間などを記入する
  3. 戸籍謄本など必要書類をそろえる
  4. 年金事務所などへ提出する
  5. 年金分割のための情報通知書を受け取る
  6. 内容を確認して合意分割等の手続きを検討する

夫婦の一方だけでも請求できる

情報提供の請求は、夫婦が一緒に行わなければならないわけではありません。

当事者の一方だけでも請求できます。

そのため、「まだ相手と年金分割について正式に話し合っていない」「離婚協議を始める前に、まず自分で年金記録の状況を把握したい」という段階でも請求を検討できます。

また、実際に離婚が成立する前でも情報提供を請求できます。

合意分割の具体的な割合を話し合う前に、情報通知書で客観的な数字を確認できるのは大きなメリットです。

離婚前と離婚後では相手への交付が異なる

ここで気になる方が多いのが、「離婚前に一人で請求すると、相手にも通知書が送られて年金分割を調べていることを知られるのではないか」という点です。

当事者の一方が情報提供を請求した場合、離婚等をしていない段階であれば、原則として請求者本人にのみ情報通知書が交付されます。

一方、すでに離婚等をした後に一方だけが情報提供を請求した場合には、請求者だけでなく元配偶者にも情報通知書が交付される取扱いがあります。

離婚前と離婚後では情報通知書の交付先が異なります。

相手方への情報提供を気にしている場合は、自分が請求する時点でどのような取扱いになるのか、事前に年金事務所へ確認しておきましょう。

提出先は原則として年金事務所

情報提供請求書は、原則として請求者の住所地を管轄する年金事務所へ提出します。

年金事務所等の窓口で手続きをするほか、郵送による提出を利用できる場合もあります。

また、年金記録に共済組合等の期間が含まれている場合には、各共済組合等が関係することがあります。

公務員期間が長い方などは、どこへ提出すべきか迷った段階で年金事務所へ確認するとよいでしょう。

情報提供請求書や記入方法、年金分割に必要となるその他の様式は日本年金機構で公開されています。

実際に申請書を準備するときは最新様式を利用してください。

(出典:日本年金機構「離婚時に年金分割をするとき」)

情報提供請求書の書き方

情報提供請求書の書き方

年金分割のための情報提供請求書では、請求者本人だけではなく、配偶者または元配偶者についても必要な情報を記入します。

行政手続きの書類なので難しく感じるかもしれませんが、基本的には本人確認、相手方の特定、婚姻期間の確認、どのような情報提供を希望するかを記載していく書類です。

一般的には、次のような項目を確認してから書き始めるとスムーズです。

  • 請求者の氏名・生年月日・住所
  • 請求者の基礎年金番号または個人番号
  • 配偶者または元配偶者の氏名・生年月日等
  • 婚姻した日や離婚した日
  • 事実婚期間がある場合はその期間
  • 情報通知書の請求方法に関する事項
  • 年金見込額試算を希望するかどうか

婚姻日と離婚日は戸籍と合わせる

特に間違えたくないのが、婚姻期間と本人を特定するための情報です。

「一緒に暮らし始めた日」を婚姻日として書くのではなく、法律婚については戸籍に記載された婚姻日を確認します。

すでに離婚している場合には、離婚日についても戸籍で確認しましょう。

一方、法律婚の前後に事実婚期間があり、その期間についても年金分割に関する情報提供を求めたい場合には、追加の確認資料が必要になることがあります。

長期間の婚姻では、結婚した正確な日付を記憶していないことも珍しくありません。

記憶だけで書くより、先に戸籍を取得してから請求書を作成した方が間違いを防ぎやすいです。

基礎年金番号が分からない場合

基礎年金番号が分からない場合には、基礎年金番号通知書、以前発行された年金手帳などで確認できる場合があります。

請求書では基礎年金番号ではなく個人番号を使用する方法もありますが、その場合はマイナンバーに関する本人確認書類が必要になります。

確認方法が分からない方は、 基礎年金番号の調べ方と確認方法 で詳しく整理しています。

分からない欄を推測して書かない

実務上、行政手続きの書類で避けたいのは、分からない情報を推測だけで埋めてしまうことです。

特に相手方の年金情報をすべて把握していない場合には、「相手の基礎年金番号が分からないから請求そのものができないのでは」と心配する方もいると思います。

しかし、分からない事項があるからといって、自己判断で架空の番号を書いたり、古い記憶だけで記入したりする必要はありません。

相手方を特定するためにどこまでの情報が必要なのかは、年金事務所へ確認してください。

請求書の分からない欄を推測で埋めるのは避けましょう。

戸籍や手元の年金関係書類で確認できない事項については、提出前に年金事務所へ記載方法を確認した方が確実です。

年金見込額の試算を希望する場合

一定の条件に該当する場合には、年金分割をしたときの年金見込額について情報提供を受けられることがあります。

対象になる方で試算を希望する場合には、請求書の該当欄を確認して記入します。

按分割合によってどの程度年金額が変わる可能性があるのかを知ることは、老後の生活設計を考えるうえでも参考になります。

ただし、年金見込額の情報提供が受けられる条件や請求書の様式は変更される可能性があります。

この記事だけを見て古い条件で判断せず、実際に提出する時点の記入要領を確認してください。

請求時に必要となる書類

年金分割のための情報提供請求では、請求書だけではなく、婚姻期間や本人の年金番号などを確認するための書類も必要になります。

「情報提供だけなのだから請求書1枚でよい」と思いやすいのですが、年金分割は婚姻期間中の厚生年金記録を扱う制度です。

そのため、誰と誰が、いつからいつまで婚姻関係にあったのかを公的な書類で確認する必要があります。

代表的なものは次のとおりです。

書類 主な目的 確認ポイント
年金分割のための情報提供請求書 情報通知書を請求するため 最新の様式を使用する
戸籍謄本・戸籍抄本等 婚姻期間や離婚日などを確認するため 婚姻日・離婚日を確認できるもの
基礎年金番号が分かる書類 請求者の年金記録を確認するため 基礎年金番号を記入する場合
本人確認関係の書類 個人番号を利用する場合などの本人確認 提出方法に応じた書類を確認する
事実婚を確認する書類 事実婚期間がある場合 住民票等が必要となる場合がある

戸籍は発行日にも注意する

婚姻期間を確認するための戸籍関係書類として、戸籍謄本(全部事項証明書)や戸籍抄本(個人事項証明書)などを提出します。

情報提供請求については、請求日から6カ月以内に交付されたものなど、発行時期についての条件があります。

そのため、数年前に別の手続きで取得して保管していた戸籍があるからといって、そのまま利用できるとは限りません。

離婚後に請求する場合には、婚姻日と離婚日の両方を確認できる戸籍が必要になります。

転籍や再婚などの事情があると、一通の現在戸籍だけで婚姻期間全体を確認できないケースも考えられます。

どの戸籍を取ればよいか判断が難しい場合は、年金事務所に必要となる身分関係の範囲を確認したうえで、市区町村へ戸籍を請求すると無駄がありません。

基礎年金番号とマイナンバーで必要書類が変わる

情報提供請求書に基礎年金番号を記入する場合には、基礎年金番号通知書や年金手帳など、基礎年金番号を確認できる書類を用意します。

一方、個人番号を記入する場合には、マイナンバーカードなど所定の本人確認書類が必要になります。

郵送の場合にはコピーを添付する書類もあるため、窓口提出と同じ感覚で準備しないよう注意しましょう。

戸籍、本人確認書類、基礎年金番号関係の書類は、請求方法や個別事情によって必要なものが変わることがあります。

特に郵送する場合は、最新の記入要領にある添付書類一覧を一度チェックしてから封入する ことをおすすめします。

事実婚期間がある場合は追加書類を確認する

法律上の婚姻届を提出する前から事実婚関係にあり、その期間についても情報提供を求める場合には、通常の戸籍だけでは事実婚期間を確認できません。

そのため、住民票など事実婚関係を確認できる書類の提出を求められることがあります。

事実婚については個々の状況によって確認方法が異なるため、自己判断で資料を選ぶより、あらかじめ年金事務所へ相談した方が確実です。

調停の予定があるなら早めにそろえる

家庭裁判所へ年金分割に関する申立てをする予定がある場合には、情報通知書を提出資料として使用することがあります。

調停の期日が決まってから戸籍を取り寄せ、情報提供請求書を提出し、情報通知書の交付を待つとなると、思った以上に日数を使うことがあります。

特に本籍地が遠方にある場合や、複数の戸籍が必要になる場合には、その取得だけでも時間が必要です。

年金分割を争点として扱う可能性があるのであれば、期限から逆算して早めに準備しておく方がよいでしょう。

必要書類は制度改正や様式変更によって変わる可能性があります。

この記事に記載した書類だけを機械的に準備するのではなく、提出直前に日本年金機構の最新の記入要領を確認してください。

情報通知書が届くまでの期間

年金分割のための情報通知書は、請求書を提出したその場で必ず交付される書類ではありません。

提出された請求書や戸籍などを確認したうえで、年金記録から対象期間や双方の対象期間標準報酬総額、按分割合の範囲などを確認して作成されるため、一定の処理期間が必要です。

一般的な目安としては、 請求からおおむね3〜4週間程度 を見込んでおくとよいでしょう。

ただし、これはあくまで一般的な目安であり、必ず3週間や4週間以内に交付されるという保証ではありません。

年金記録の状況によって時間は変わる

情報通知書が作成されるまでの時間は、当事者の年金記録の状況によって変わることがあります。

たとえば長期間の婚姻で転職回数が多い場合、共済組合等の期間が含まれている場合、事実婚期間について確認が必要な場合、古い年金記録の確認を要する場合などは、単純なケースより時間がかかる可能性があります。

また、請求書の記載漏れや添付書類の不足があれば、その確認や追加提出が必要になり、その分だけ交付までの期間も延びることになります。

情報通知書が必要な日から逆算する場合は、 3〜4週間ちょうどではなく、書類の準備期間や不備の修正期間も含めて余裕を持つ ことが大切です。

家庭裁判所に提出する場合は早めに請求する

特に注意したいのが、離婚調停や年金分割に関する調停・審判を予定しているケースです。

家庭裁判所から「次回期日までに年金分割のための情報通知書を提出してください」と言われてから請求すると、期日までの期間によっては慌ただしくなります。

年金分割が争点になることがあらかじめ分かっているのであれば、離婚成立前でも請求できるという制度を利用し、早い段階で情報通知書を取得しておく方法があります。

離婚前に取得しておけば、相手方との協議をするときにも、感覚的な「自分の方が年金が少ないはず」という話ではなく、実際の対象期間標準報酬総額や按分割合の範囲を見ながら話を進められます。

急ぐ場合は事前に年金事務所へ確認する

調停の期日が近いなど、情報通知書が必要な期限が決まっている場合には、提出先となる年金事務所へ事前に相談しておくことをおすすめします。

「急いでいるから窓口へ行けばその日に出してもらえるだろう」と考えるのは避けた方がよいです。

窓口で請求書を受理できても、その場で年金記録の確認と情報通知書の作成まで完了するとは限りません。

また、窓口で相談する場合は、年金相談の予約を利用できることがあります。

必要な持ち物や担当窓口を確認したうえで訪問した方が、何度も年金事務所へ足を運ぶリスクを減らせます。

「3週間で必ず届く」「窓口へ行けば必ず即日発行される」とは考えないようにしてください。

交付までの期間は年金記録、提出書類、窓口の処理状況などによって変わる可能性があります。

届かない場合は放置しない

十分な期間が経過しても情報通知書が届かない場合には、「もう少し待てば届くだろう」と長期間放置せず、提出した年金事務所へ状況を確認しましょう。

特に郵送で提出した場合には、書類が受理されているか、追加確認が必要になっていないかを自分では把握しにくいことがあります。

年金分割には最終的な請求期限もあります。

情報通知書の取得段階で時間を使い過ぎると、その後の協議や家庭裁判所の手続き、実際の分割請求に使える期間が短くなります。

処理期間や窓口での運用は変わる可能性がありますので、実際に請求する際はその時点の日本年金機構や年金事務所の案内を確認してください。

年金分割の請求期限は2年から5年に延長

年金分割の請求期限は2年から5年に延長

年金分割について以前の資料やインターネット上の記事を見ると、 「離婚後2年以内に請求する」 という説明が数多く残っています。

これは以前の制度としては正しい説明ですが、2026年4月に年金分割の請求期限が改正されています。

そのため、この記事の見出しにある「離婚後2年以内」というルールがすべての離婚にそのまま当てはまるわけではありません。

現在は いつ離婚等をしたか によって原則的な請求期限が異なります。

離婚等をした時期 原則的な年金分割の請求期限
2026年3月31日以前 離婚等をした日の翌日から原則2年以内
2026年4月1日以後 離婚等をした日の翌日から原則5年以内

2026年4月1日以後に離婚等をした方については、年金分割の請求期限が原則5年に延長されています。

一方、2026年4月1日より前に離婚等をした方については、原則として従来の2年以内という期限が適用されます。

離婚日を基準に2年か5年かを判断する

たとえば2026年3月31日に離婚した方と2026年4月1日に離婚した方では、わずか1日の違いですが、年金分割の原則的な請求期限に適用されるルールが異なります。

「現在は5年になったと聞いたから、自分も5年間請求できる」と考えるのは危険です。

改正後の5年という期限は、2026年4月1日以後に離婚等をした場合に適用されます。

離婚から時間が経っている方は、まず戸籍などで離婚成立日を確認し、自分が2年ルールと5年ルールのどちらに該当するのかを確認してください。

情報通知書を取っただけでは年金分割は終わらない

この期限について、もう一つ非常に重要なのが、 情報通知書を取得しただけでは年金分割を請求したことにはならない という点です。

情報通知書は、年金分割について必要な情報を確認するための書類です。

たとえば離婚後すぐに情報通知書を取得し、夫婦間で按分割合を50%とすることで合意したとしても、それだけで日本年金機構の厚生年金記録が自動的に変更されるわけではありません。

合意内容を所定の方法で確認できるようにしたうえで、最終的に年金分割の請求手続きを行う必要があります。

「情報通知書を期限内に取得したから大丈夫」とは考えないでください。

重要なのは、最終的な年金分割の請求まで期限内に完了させることです。

調停や審判が長引く場合には特例がある

合意分割について話し合いがまとまらず、家庭裁判所の調停や審判などを利用していると、本来の請求期限までに按分割合が確定しないことがあります。

このような場合に備え、一定の裁判手続きについては請求期限の特例が設けられています。

たとえば、本来の請求期限が到来するまでに調停や審判などの申立てを行い、その後に調停が成立したり審判が確定したりした一定のケースでは、その成立・確定等の日の翌日から起算して6カ月を経過するまで年金分割を請求できる場合があります。

ただし、これは「裁判所に何らかの申立てをしていれば請求期限が自動的に無期限で延長される」という制度ではありません。

申立ての時期や手続きの種類、調停成立日・審判確定日などによって特例の適用を確認する必要があります。

年金分割の期限を過ぎると、原則として請求できなくなります。

離婚日が古い方、請求期限までの期間が短い方、調停や審判が続いている方は、早めに年金事務所へ確認してください。

裁判手続きとの関係について法的な判断が必要な場合には、弁護士への相談も検討しましょう。

割合を決めた後に相手が亡くなった場合にも特例がある

年金分割について合意したり、裁判手続きによって按分割合が決まったりした後、実際の分割請求をする前に当事者の一方が亡くなるケースもあります。

一定の場合には、死亡した日から1カ月以内に限り分割請求が認められる特例があります。

期間が非常に短いため、このような事情が生じた場合には速やかに年金事務所へ確認することが重要です。

年金分割の請求期限は2026年4月に改正された重要な部分です。

古い記事やパンフレットでは「2年」と記載されたままになっている可能性がありますので、検索結果の文章だけで判断しないようにしてください。

現在の基本整理

  • 2026年3月31日以前に離婚等をした場合は原則2年以内
  • 2026年4月1日以後に離婚等をした場合は原則5年以内
  • 一定の調停・審判等には期限の特例がある
  • 情報通知書を取得しただけでは分割請求は完了しない

正確な情報は公式サイトをご確認ください。

年金分割のための情報通知書まとめ

年金分割のための情報通知書は、離婚時の厚生年金記録について、どの期間が分割対象になるのか、双方にどの程度の対象期間標準報酬総額があるのか、合意分割で設定できる按分割合がどこまでなのかを確認するための重要な書類です。

離婚時の年金分割を考えると、どうしても「結局いくらもらえるのか」という点に目が向きやすいのですが、最初に理解しておきたいのは、年金分割が相手の年金受給額そのものを半分にする制度ではないということです。

婚姻期間中の厚生年金の標準報酬記録を制度上のルールに従って分割し、その分割後の記録に基づいて、それぞれの老齢厚生年金などが計算されます。

特に覚えておきたいポイントを整理すると、次のとおりです。

  • 年金分割は相手の年金受給額そのものを半分にする制度ではない
  • 分割対象は主に婚姻期間中の厚生年金の標準報酬記録
  • 老齢基礎年金そのものは年金分割の対象ではない
  • 合意分割は按分割合について合意または裁判手続きが必要
  • 3号分割は2008年4月以後の対象期間について相手の合意が不要
  • 情報通知書は離婚前でも一方から請求できる
  • 離婚前に一方だけで請求した場合は原則として請求者だけに交付される
  • 対象期間標準報酬総額は受け取れる現金の額ではない
  • 按分割合の上限は50%だが下限もある
  • 情報通知書の取得と実際の年金分割請求は別の手続き
  • 2026年4月1日以後の離婚等は分割請求期限が原則5年

まずは情報通知書で客観的な数字を確認する

合意分割を検討しているのであれば、まず情報通知書を取得し、対象期間と対象期間標準報酬総額を確認するところから始めるとよいでしょう。

そのうえで、自分が合意分割の対象になるのか、3号分割の対象期間があるのか、双方の記録がどの程度あるのか、按分割合をどの範囲で定められるのかを確認します。

相手方との話し合いを始める前にこれらの数字を把握しておけば、「おそらく相手の方が年金が多い」「専業主婦だったので全部半分になるはず」といった推測だけで話を進めずに済みます。

取得後は次に何をするかまで確認する

情報通知書を取得したあとも、そのまま保管して終わりではありません。

合意分割であれば按分割合を話し合い、合意できなければ家庭裁判所の手続きを検討します。

3号分割であれば、対象期間や要件を確認したうえで所定の分割請求を行います。

そして最終的には、日本年金機構に年金分割の請求を行って、厚生年金記録を改定してもらうところまで進める必要があります。

年金分割の流れを簡単に整理すると、次のようになります。

  1. 自分が合意分割・3号分割のどちらに関係するか確認する
  2. 必要に応じて年金分割のための情報通知書を取得する
  3. 対象期間標準報酬総額と按分割合の範囲を確認する
  4. 合意分割では割合について合意または裁判手続きを行う
  5. 期限内に実際の年金分割を請求する

離婚条件と年金手続きは分けて考える

また、年金分割の制度と、財産分与、慰謝料、親権、養育費などの離婚条件は別の問題です。

年金分割については厚生年金制度に基づく手続きとして整理できますが、離婚条件全体としてどのような内容が適切なのか、どのような合意をすべきなのかについては、民法上の問題を含みます。

特に財産分与の対象となる財産が多いケース、相手方と強く対立しているケース、調停や訴訟を検討しているケースでは、年金分割だけを切り取って判断しない方がよいでしょう。

私は社会保険労務士として年金制度や年金事務所での手続きを整理する立場ですが、離婚条件そのものについて法的な助言が必要な場合には、弁護士へ相談することをおすすめします。

期限だけは後回しにしない

最後に、年金分割で最も注意していただきたいのが請求期限です。

2026年4月1日以後に離婚等をした場合は原則5年以内となりましたが、それ以前に離婚等をした方については原則2年以内という従来の期限が残っています。

「まだ相手と話がまとまっていないから」「情報通知書を取ったので手続きは済んでいると思っていた」としている間に期限を過ぎてしまうと、原則として年金分割を請求できなくなる可能性があります。

年金分割は期限のある手続きです。

情報通知書を取得しただけで終わりにせず、最終的な年金分割の請求まで完了しているかを必ず確認してください。

制度改正、申請書の様式、添付書類、年金事務所での取扱いは今後変更される可能性があります。

特に請求期限については近年改正された部分ですので、実際に手続きを行う際は 正確な情報は公式サイトをご確認ください

また、婚姻期間、厚生年金の加入状況、第3号被保険者期間、事実婚期間、離婚時期、すでに年金を受給しているかなどによって必要な対応は異なります。

個別事情を踏まえた対応が必要な場合には、年金制度上の手続きは年金事務所や社会保険労務士へ、離婚条件や家庭裁判所での対応など法律判断を伴う部分は弁護士へ相談するなど、内容に応じて専門家を使い分けることが大切です。

最終的な判断は専門家にご相談ください。

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