こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
産休中は、所定の手続きを行うことで、健康保険料と厚生年金保険料の本人負担分・会社負担分が免除されます。
免除期間中も社会保険の被保険者資格は継続し、社会保険料を実際に負担していない期間についても、将来の年金額を計算する際は保険料を納付した期間として扱われます。
ただし、従業員が産休に入っただけで、社会保険料の免除処理が自動的に完了するわけではありません。
会社が産前産後休業取得者申出書を提出する必要があり、産休の開始日や終了日、出産予定日と実際の出産日の違いによって、免除される月が変わることもあります。
給与明細を見た従業員から、産休に入ったのに社会保険料が引かれていると問い合わせを受けることは、実際によくあります。
しかし、すぐに会社の処理が間違っているとは限りません。
社会保険料を翌月の給与から控除している会社では、産休開始後に支給される給与から、産休開始前の月の保険料が控除される場合があるためです。
この記事では、産休の社会保険料免除がいつからいつまで適用されるのか、会社が行う申請手続き、賞与の保険料、有給休暇との関係、育休中の免除制度との違いまで、社会保険労務士の実務目線で詳しく解説します。
- 産休中に免除される社会保険料の範囲
- 社会保険料の免除が始まる月と終わる月
- 会社が提出する申出書と変更届の手続き
- 賞与や有給休暇、育休との関係

産休中の社会保険料免除の基本
産休中の社会保険料免除制度は、出産前後に仕事を休む従業員と、その従業員を雇用する会社の社会保険料負担を軽減する制度です。
産休中は給与が支給されない会社も多いため、健康保険料と厚生年金保険料まで従来どおり負担することになると、従業員の生活に大きな影響が生じます。
一方、会社にとっても、就労していない従業員について会社負担分を支払い続けることは相応の負担です。
そこで、一定の産前産後休業期間について、従業員負担分と会社負担分の双方を免除する仕組みが設けられています。
まずは、何の保険料が免除されるのか、誰が対象になるのか、いつからいつまで免除されるのかという基本的な仕組みを確認しましょう。
免除される保険料の種類
産前産後休業期間中に免除されるのは、 健康保険料と厚生年金保険料 です。
健康保険料には、一定の年齢に該当する被保険者について健康保険料と一体的に徴収される介護保険料も含まれます。
免除の対象となるのは、従業員の給与から控除する被保険者本人の負担分だけではありません。
会社が負担する事業主負担分についても免除されます。
つまり、免除対象月については、従業員と会社の双方が健康保険料と厚生年金保険料を負担しないことになります。
産休中に免除される主な保険料
- 健康保険料の被保険者負担分
- 健康保険料の事業主負担分
- 介護保険料の被保険者負担分
- 介護保険料の事業主負担分
- 厚生年金保険料の被保険者負担分
- 厚生年金保険料の事業主負担分
免除されても健康保険の資格は継続する
社会保険料が免除されると、健康保険が使えなくなるのではないかと心配する方もいますが、免除期間中も被保険者資格は継続します。
医療機関を受診したときは、通常どおり健康保険を利用できます。
健康保険証が発行されている制度ではその資格が継続し、マイナ保険証を利用している場合も、会社の健康保険に加入した状態が続きます。
社会保険料の免除は資格喪失とは異なるため、産休に入ることを理由に健康保険の資格を失うわけではありません。
雇用保険料や住民税は別に考える
一方、雇用保険料は、健康保険料や厚生年金保険料と同じ産前産後休業の免除制度によって免除されるものではありません。
産休中に会社から賃金が支払われなければ、計算の基礎となる賃金がないため、通常は雇用保険料も発生しません。
しかし、会社から賃金や手当が支給され、その支給額が雇用保険料の対象となる場合は、支給額に応じた雇用保険料が生じることがあります。
住民税も社会保険料免除の対象ではありません。
住民税は前年の所得を基に計算されるため、現在は産休中で給与が支給されていなくても、納付が必要になることがあります。
給与から控除できない場合は、会社が最後の給与からまとめて控除したり、本人が納付書で支払う普通徴収へ切り替えたりすることがあります。
自営業者やフリーランスは別制度
この免除制度の対象となるのは、原則として会社の健康保険と厚生年金保険に加入している被保険者です。
国民健康保険と国民年金に加入する自営業者、フリーランス、厚生年金保険の被保険者ではない方には、会社員と同じ免除制度が適用されるわけではありません。
ただし、国民年金第1号被保険者には、国民年金保険料を対象とする産前産後期間の免除制度があります。
会社員の制度とは対象となる保険料や手続き先が異なり、国民健康保険料についても自治体ごとの制度確認が必要です。
加入制度を確認せずに、産休だからすべての保険料が自動的に免除されると考えないようにしましょう。
実務上よくある確認事項
従業員から「産休に入ったのに保険料が引かれている」と相談された場合は、まず給与明細上の健康保険料と厚生年金保険料が何月分なのかを確認します。
会社が当月分を当月給与から控除しているのか、前月分を翌月給与から控除しているのかによって、免除が給与明細へ反映される時期が異なります。
免除はいつから始まるか

産休中の社会保険料免除は、原則として 産前産後休業を開始した日の属する月 から始まります。
日割りで保険料を減額するのではなく、月単位で免除対象を判定することが基本です。
たとえば、4月20日から産前休業を開始した場合は、4月分の健康保険料と厚生年金保険料から免除の対象になります。
4月1日から4月19日まで通常どおり勤務していたとしても、要件を満たす産前産後休業が4月中に始まっていれば、原則として4月分全体が免除対象です。
免除開始月は、産休開始日の属する月です。
月の途中から産休に入った場合でも、日割り計算ではなく、その月の健康保険料と厚生年金保険料が免除対象になります。
社会保険料免除の対象となる産休期間
社会保険料免除の対象となる産前産後休業期間は、出産の日以前42日から出産の日後56日までの間で、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間です。
双子などの多胎妊娠の場合、産前の期間は42日ではなく98日となります。
ここでいう出産には、通常の出産だけでなく、妊娠85日以後の早産、死産、流産、人工妊娠中絶も含まれます。
個別の事情を社内で広く共有する必要はありませんが、会社の手続き担当者は制度上の出産に該当するかを慎重に確認する必要があります。
産前期間と産後期間の基本的な考え方や社会保険料の免除期間は、日本年金機構が公式に案内しています。
手続き時点の正確な要件については、 日本年金機構「産前産後休業を取得し、保険料の免除を受けようとするとき」 をご確認ください。
産前休業は本人の請求によって始まる
産前休業は、出産予定日の6週間前になれば会社が一律に休ませる制度ではなく、本人が請求した場合に取得する休業です。
多胎妊娠の場合は、出産予定日の14週間前から請求できます。
そのため、出産予定日の6週間前を迎えても本人が勤務を続け、実際に産前休業へ入ったのが予定日の3週間前だった場合は、実際の産前休業開始日を基に免除開始月を判断します。
出産予定日の6週間前の日付だけで、当然に免除が始まるわけではありません。
人事・労務担当者は、出産予定日だけでなく、本人がいつから産前休業を取得するのかを書面や社内申請システムで確認しておくことが重要です。
予定日から機械的に休業開始日を設定してしまうと、実際の勤怠記録と届出内容が一致しなくなる可能性があります。
出産予定日より出産が遅れた場合
出産予定日より実際の出産日が遅れた場合は、出産予定日以前42日から実際の出産日までの期間が産前期間となります。
予定日を過ぎてから実際に出産するまでの期間も、産前産後休業の対象です。
たとえば、出産予定日が7月10日で実際の出産日が7月15日だった場合、予定日を過ぎた5日間も産前休業期間に含まれます。
産後56日は実際の出産日の翌日から数えるため、産後休業の終了予定日も当初の計算より後ろへずれます。
もっとも、開始月と終了月が変わらなければ、実際の免除月数に影響しないこともあります。
反対に、日付の変更によって休業終了日が月末をまたぐと、免除される月が増減する可能性があります。
出産日が確定した時点で、必ず免除期間を再確認しましょう。
有給休暇で早く休み始めても、免除開始日が自動的に早まるわけではありません。
法定の産前休業開始可能日より前に年次有給休暇を取得した期間は、通常の有給休暇です。
産前産後休業として申し出た期間と区別して管理する必要があります。
産休期間の目安を確認したい場合は、当事務所の 産休・育休シミュレーター も利用できます。
ただし、実際の休業開始日や出産日、会社独自の休暇制度によって取扱いが変わるため、計算結果は一般的な目安としてご利用ください。
免除はいつまで続くか
社会保険料が免除されるのは、原則として 産前産後休業終了日の翌日が属する月の前月まで です。
別の言い方をすると、産前産後休業の終了日が月末であればその月まで免除され、月の途中で終了した場合は原則として前月までが免除対象になります。
開始時は月の途中からでも開始月全体が免除されますが、終了時は終了日が月末かどうかによって取扱いが変わります。
この点が、産休の社会保険料免除で特に迷いやすいところです。
| 産休終了日 | 終了日の翌日 | 免除される最終月 | 終了月の保険料 |
|---|---|---|---|
| 5月20日 | 5月21日 | 4月分まで | 5月分は原則発生 |
| 5月30日 | 5月31日 | 4月分まで | 5月分は原則発生 |
| 5月31日 | 6月1日 | 5月分まで | 5月分も免除 |
月末終了か月途中終了かで変わる
たとえば、産前産後休業の終了日が5月31日であれば、終了日の翌日は6月1日です。
終了日の翌日が属する6月の前月である5月まで、社会保険料が免除されます。
一方、終了日が5月30日であれば、翌日は5月31日です。
翌日が属する月は5月であるため、その前月である4月までが免除期間となり、5月分の保険料は原則として発生します。
わずか1日の違いでも、1か月分の健康保険料と厚生年金保険料に影響する可能性があります。
ただし、休業日を社会保険料の負担だけで決めるものではありません。
法律上の産後休業期間、本人の健康状態、医師の判断、育児休業の開始日などを踏まえて適正に管理する必要があります。
給与明細への反映時期は会社ごとに異なる
社会保険料の免除対象月と、給与明細で保険料の控除が止まる月は必ずしも一致しません。
社会保険料は、前月分を翌月に支給する給与から控除する会社が多いためです。
たとえば、4月分の社会保険料が免除される会社で翌月控除を採用している場合、通常は5月支給の給与から4月分保険料の控除を止めます。
そのため、4月に産休へ入った後に支給された4月給与から社会保険料が控除されていても、それが3月分であれば誤りとは限りません。
反対に、当月分を当月給与から控除している会社では、4月分の免除を4月給与から反映させることがあります。
従業員への説明では、単に免除されていますと伝えるだけではなく、何月分の保険料を何月の給与から控除しているのかまで伝えると、行き違いを防ぎやすくなります。
給与計算上の控除月に注意してください。
給与明細に社会保険料が記載されているという事実だけでは、免除処理の誤りかどうかを判断できません。
対象となっている保険料の月、会社の控除方法、申出書の処理状況をセットで確認しましょう。
産休中に退職する場合
産休中に退職する場合は、退職日の翌日に健康保険と厚生年金保険の被保険者資格を喪失します。
産前産後休業の予定期間がその後も残っていたとしても、資格喪失後まで会社の健康保険料や厚生年金保険料が免除され続けるわけではありません。
退職月の保険料が発生するかどうかは、原則として資格喪失日が属する月との関係で判断します。
月末退職の場合は資格喪失日が翌月1日になるため、退職月分の保険料が発生します。
一方、月末より前に退職して資格喪失日も同月中となる場合は、その月分の保険料が原則として発生しません。
ただし、産前産後休業による免除との関係、給与からの控除方法、退職後の健康保険、出産手当金の継続給付など、複数の制度が関係します。
退職日だけを見て判断せず、個別の加入状況を確認することが大切です。
産休後すぐ育休に入る場合
多くのケースでは、産後休業が終了した翌日から育児休業が始まります。
この場合、産休による保険料免除が終わった後も、育児休業等取得者申出書を提出することで、育休中の社会保険料免除へ引き継ぐことができます。
ただし、産休の届出を出していれば自動的に育休の免除へ切り替わるわけではありません。
産前産後休業取得者申出書と育児休業等取得者申出書は別の書類です。
育休の申出書を出し忘れると、産休終了後の保険料が発生した状態で処理される可能性があります。
会社側の管理項目
- 産前休業開始日
- 出産予定日
- 実際の出産日
- 産後休業終了日
- 育児休業開始日
- 育児休業終了予定日
- 退職予定の有無
- 給与計算への反映月
これらを一つの管理表で確認すると、申請漏れや給与控除の誤りを防ぎやすくなります。
将来の年金額への影響

産休中に厚生年金保険料が免除されても、 将来の年金額が免除期間の分だけ減ることはありません。
免除期間は、厚生年金保険料を納めた期間として取り扱われるためです。
通常、厚生年金の年金額は、加入期間や標準報酬月額、標準賞与額などを基に計算されます。
産前産後休業期間中の保険料免除は、単に未納として扱われる制度ではなく、法律に基づく特別な免除です。
そのため、本人も会社も実際の保険料を負担していなくても、将来の年金額を計算する際は保険料を納付した期間として扱われます。
産休中の厚生年金保険料は、負担が免除されても、年金額の計算上は納付済みとして扱われます。
社会保険料の免除を受けることで、老齢厚生年金の計算上、不利益になる仕組みではありません。
国民年金の一般的な免除とは性質が異なる
厚生年金に加入している従業員の産休中の免除は、所得が少ない場合などに利用する国民年金保険料の一般的な免除制度とは性質が異なります。
国民年金の一般的な全額免除期間は、老齢基礎年金額を計算する際に、保険料を全額納めた場合とまったく同じ金額として評価されるわけではありません。
一方、厚生年金保険の産前産後休業期間中の免除は、将来の年金額の計算上、保険料を納めた期間として扱われます。
従業員へ説明する際に、保険料が免除されると年金が減るという一般的なイメージだけで説明すると、誤解を招くことがあります。
産休中の社会保険料免除は、仕事と出産の両立を支えるために設けられた特別な仕組みであることを伝えましょう。
被保険者資格も加入期間も継続する
産休中は、健康保険と厚生年金保険の被保険者資格を喪失するわけではありません。
会社に在籍し、社会保険の被保険者資格を維持したまま、対象期間の保険料負担だけが免除されます。
したがって、年金記録上も厚生年金保険の加入期間として扱われます。
産休期間があることで、その期間が年金記録から抜け落ちるわけではありません。
ただし、会社が必要な申出書を提出していなければ、年金事務所側では産前産後休業による免除処理を行えません。
制度の対象になることと、実際に記録へ反映されることは別です。
会社側の届出管理が重要になります。
免除後の標準報酬月額にも注意する
産休終了後に復職し、休業前より給与が下がった場合は、一定の要件を満たせば産前産後休業終了時報酬月額変更届を提出できることがあります。
この手続きを行うと、通常の随時改定よりも早い時期に、復職後の給与に応じた標準報酬月額へ改定できる可能性があります。
ただし、産後休業の終了日の翌日から引き続き育児休業へ入る場合は、産前産後休業終了時改定を利用する場面ではありません。
その後、育児休業から復職した際に、育児休業等終了時報酬月額変更届の対象になるかを確認します。
また、3歳未満の子を養育している期間に標準報酬月額が低下した場合は、養育期間標準報酬月額特例の対象になることもあります。
この特例は、将来の厚生年金額を計算する際に、一定の範囲で子の養育前の標準報酬月額を用いる制度です。
産休中の保険料免除だけを処理して完了とするのではなく、復職後の給与が下がる場合は、終了時改定や養育期間の特例まで確認することが実務上のポイントです。
従業員から申出が必要となる手続きもあるため、会社から制度を案内しておくと親切ですよ。
従業員から、保険料を払わないと将来の年金が少なくなるのではないかという質問を受けることは珍しくありません。
正式な産前産後休業期間中の免除を受けていれば、免除そのものを理由として年金額が減る心配は基本的にありません。
賞与の社会保険料も免除されるか
産前産後休業による社会保険料の免除期間に賞与が支給された場合は、 その賞与にかかる健康保険料と厚生年金保険料も免除対象となります。
たとえば、6月分が産前産後休業による保険料免除の対象月であり、会社が6月に賞与を支給した場合は、その賞与に対する健康保険料と厚生年金保険料も原則として免除されます。
毎月の給与にかかる社会保険料と同様に、従業員負担分だけでなく会社負担分も免除されます。
そのため、給与計算担当者は、賞与計算を行う時点で対象者の休業区分と免除対象月を正確に確認する必要があります。
産休と育休では賞与免除の条件が異なる
賞与の社会保険料免除で特に注意したいのが、産前産後休業と育児休業等の取扱いを混同しないことです。
育児休業等については、2022年10月1日以後に開始した育児休業等の場合、賞与が支給された月の末日を含む連続した1か月を超える育児休業等を取得していることが、賞与保険料の免除要件です。
一方、産前産後休業については、育児休業等に設けられている同じ1か月超の要件をそのまま適用するものではありません。
産前産後休業による保険料免除期間に支給された賞与であるかを確認します。
産休と育休の賞与免除要件を混同しないでください。
育児休業等の賞与免除には、賞与月の末日を含む連続した1か月を超える育児休業等という要件があります。
給与計算ソフト上で産休と育休を同じ休業区分として登録すると、賞与保険料を誤って控除したり、反対に免除要件を満たさない賞与を免除したりする可能性があります。
賞与支払届は免除対象者についても提出する
賞与の社会保険料が免除される場合でも、賞与支払届の提出そのものが不要になるわけではありません。
賞与を支給した場合は、免除対象となる従業員を含めて、原則として賞与支払届を提出します。
保険料がかからないのだから賞与支払届にも載せなくてよいと判断してしまうと、標準賞与額の記録に影響する可能性があります。
保険料の賦課対象になるかどうかと、賞与支払届の提出対象になるかどうかは、分けて考えてください。
給与計算ソフトから賞与支払届のデータを作成する場合は、免除対象者が出力対象から除外されていないかも確認しましょう。
ソフトの仕様によっては、保険料をゼロに設定したことで届出データから外れることがあります。
賞与の支給月と免除対象月を確認する
賞与にかかる社会保険料は、賞与の支給日が属する月を基に確認します。
査定期間が産休前であったとしても、賞与を実際に支給した月が産前産後休業の免除対象月であれば、原則として賞与保険料も免除対象です。
反対に、賞与の査定期間中の大部分が産休だったとしても、賞与支給月が免除対象月でなければ、通常どおり社会保険料が発生することがあります。
賞与が何の期間の成果に対して支払われるのかではなく、支給月と免除期間の関係を確認することが重要です。
| 確認項目 | 産前産後休業 | 育児休業等 |
|---|---|---|
| 毎月の給与にかかる保険料 | 産休の免除対象月で判定 | 月末を含む場合または同一月内14日以上などで判定 |
| 賞与にかかる保険料 | 産休の免除対象月に支給されたかを確認 | 賞与月末を含む連続1か月超の取得を確認 |
| 賞与支払届 | 原則として提出が必要 | 原則として提出が必要 |
賞与保険料の誤りは、従業員本人の手取り額だけでなく会社負担額にも影響します。
産休から育休へ切り替わる時期と賞与支給月が重なる場合は、どの休業制度による免除期間なのかを、届出記録と合わせて確認しましょう。
産休の社会保険料免除の手続き
産休中の社会保険料免除を受けるためには、会社が日本年金機構へ所定の申出書を提出します。
従業員本人が年金事務所へ直接申請する手続きではありません。
また、出産予定日と実際の出産日が異なった場合や、予定より早く産前産後休業を終了した場合には、変更届や終了届の提出が必要になることがあります。
ここからは、会社側の実務手続きを中心に、申請から給与計算への反映まで詳しく解説します。
産前産後休業取得者申出書とは
産休中の社会保険料免除を受ける際に使用する書類は、 健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書 です。
従業員から産前産後休業を取得する旨の申出を受けた後、事業主が日本年金機構へ提出します。
免除を受けるのは従業員ですが、年金事務所への申出主体は会社です。
従業員本人が年金事務所へ申出書を持参して直接処理してもらう仕組みではありません。
手続きの基本
- 提出者は事業主
- 提出先は事務センターまたは管轄の年金事務所
- 電子申請、郵送、窓口持参に対応
- 通常の申出では添付書類は原則不要
- 産休期間中または終了後1か月以内に提出
申出書に記載する主な内容
申出書には、事業所整理記号や事業所番号、被保険者整理番号、従業員の氏名、生年月日、個人番号または基礎年金番号、出産予定年月日などを記載します。
あわせて、産前産後休業の開始年月日と終了予定年月日を記載します。
出産前に提出する場合は出産予定日を基に期間を計算し、出産後に提出する場合は実際の出産日を記載します。
記載する休業期間は、単に会社を休む予定の全期間ではありません。
妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった、法令上の産前産後休業に該当する期間を記載します。
産前休業前に取得した通常の年次有給休暇や、産後休業終了後に取得する育児休業は分けて管理してください。
添付書類は原則不要
通常の申出では、母子健康手帳の写し、医師の診断書、出産予定日証明書などの添付は原則として求められていません。
ただし、添付不要だからといって、会社が本人から何も確認せずに日付を記載してよいわけではありません。
会社は、出産予定日、休業開始予定日、実際の出産日などを正確に確認し、その記録を社内に残しておくことが望ましいです。
実務では、本人が提出した産前産後休業申出書や、母子健康手帳の出産予定日が分かる部分を本人の同意を得て確認する方法があります。
必要以上の医療情報や個人情報を取得しないよう、確認する範囲にも配慮しましょう。
出産手当金などとは別手続き
社会保険料免除の申出書は、出産手当金や出産育児一時金の申請書とは別の書類です。
社会保険料の免除手続きが完了しても、出産手当金が自動的に支給されるわけではありません。
出産手当金は、健康保険の被保険者が出産のために仕事を休み、その期間について給与の支払いを受けられない場合などに支給される給付です。
申請書には本人、会社、医師または助産師が記載する欄があり、加入している健康保険へ提出します。
出産育児一時金は、出産費用の負担を軽減するための健康保険の給付であり、医療機関への直接支払制度が利用されることもあります。
こちらも、社会保険料免除とは目的も手続きも異なります。
手続きは一つではありません。
実務では、産休の申出、社会保険料免除、出産手当金、出産育児一時金、育児休業、育児休業給付を一つの手続きだと考えてしまうケースがあります。
それぞれ申請書、提出先、提出時期が異なるため、会社では手続きごとに進捗を管理しましょう。
電子申請にも対応している
産前産後休業取得者申出書は、電子申請にも対応しています。
社会保険の電子申請を導入している会社であれば、郵送や窓口持参をせずに手続きを進めることができます。
電子申請では、入力日や送信日が記録として残り、処理状況も確認しやすいという利点があります。
一方、入力した休業期間や出産予定日に誤りがあれば、そのまま申請されてしまいます。
紙の申請と同様に、送信前の確認が必要です。
申出書の様式、提出方法、記入上の注意事項は更新される可能性があります。
最新の様式は、 日本年金機構「保険料の免除等(産休・育休関係)」 から確認してください。
会社が行う申請の流れ

会社が行う社会保険料免除の手続きは、従業員から出産予定の報告を受けた段階から始まります。
申出書を提出するだけではなく、社内の休業管理、給与計算、出産後の変更確認、育休への切替えまで一連の業務として管理することが重要です。
- 従業員から出産予定日と産休取得予定を確認する
- 産前休業の開始予定日と産後休業の終了予定日を計算する
- 産前産後休業取得者申出書を作成する
- 事務センターまたは管轄の年金事務所へ提出する
- 給与計算で対象月の社会保険料控除を停止する
- 実際の出産日を確認し、必要に応じて変更届を提出する
従業員から必要事項を確認する
まず、従業員から出産予定日、単胎妊娠か多胎妊娠か、産前休業を開始する予定日、産後休業終了後に育児休業を取得する予定があるかを確認します。
出産予定日だけでは、実際の産前休業開始日は確定しません。
産前休業は本人の請求によって取得するため、出産予定日の6週間前から休むのか、それより後まで勤務するのかを確認する必要があります。
年次有給休暇を産前休業前に取得する場合は、有給休暇の期間と産前産後休業の期間を分けて記録します。
勤怠システム上でも、通常の有給休暇と産前産後休業を別の休暇区分として登録しておくと、その後の手続きが分かりやすくなります。
休業期間を正確に計算する
産前休業は、原則として出産予定日以前42日、多胎妊娠の場合は98日の範囲で本人が請求した期間です。
産後休業は、実際の出産日の翌日から56日間です。
出産当日は産前期間に含め、産後期間は出産日の翌日から数えます。
この数え方を間違えると、産後休業終了日が1日ずれ、その結果として社会保険料の免除最終月が変わる可能性があります。
日付の計算は給与計算ソフトや専用ツールだけに任せず、出産予定日、実際の出産日、産後56日目の日付を担当者が確認することをおすすめします。
月末付近の日付は、1日の違いが1か月分の保険料に影響することがあるためです。
申出書を提出する
申出書は、産前産後休業期間中、または産前産後休業終了日から起算して1か月以内に提出します。
出産前に出産予定日を基準として提出することも、出産後に実際の出産日が確定してから提出することも可能です。
出産前に提出すると、早い段階で免除処理を進められるため、給与計算へ反映しやすいという利点があります。
一方、実際の出産日が予定日と異なり、休業期間が変わった場合は、後日変更届が必要です。
出産後に提出すれば、実際の出産日を記載して申請できます。
ただし、提出までに給与計算や社会保険料の納付処理が行われると、一時的に保険料を控除してしまう可能性があります。
給与計算へ反映する
年金事務所へ申出書を提出した後は、給与計算上も対象月の健康保険料と厚生年金保険料を停止します。
申請担当者と給与計算担当者が異なる会社では、ここで情報が途切れやすいため注意が必要です。
申請済みであることだけを伝えるのではなく、産休開始日、免除開始月、免除終了予定月、給与から控除を止める支給月を明確に共有しましょう。
給与ソフトには、産休期間を登録すれば自動的に保険料が免除されるものもありますが、設定方法は製品ごとに異なります。
免除終了後に保険料控除を再開できるか、賞与計算にも免除が反映されるかを含めて確認してください。
届出と給与計算の両方を確認してください。
年金事務所への申請は済んでいるのに給与から保険料を控除していたり、反対に申請前から給与ソフトだけ免除設定にしていたりするケースがあります。
届出記録と給与計算結果を照合する運用が必要です。
申請が遅れた場合の対応
届出が遅れた場合でも、実際に要件を満たす産前産後休業を取得しており、申出書が受理されれば、過去の対象月について免除処理が行われることがあります。
すでに会社が年金事務所へ保険料を納付していた場合は、その後の保険料と相殺されたり、還付処理が行われたりします。
従業員の給与から本人負担分を控除していた場合は、会社から本人へ返金するか、後日の給与で精算する必要があります。
返金するときは、何月分の健康保険料と厚生年金保険料を返金するのか、給与明細や精算書に明記しておくことをおすすめします。
説明がないまま給与の支給額だけ増えると、従業員が内容を把握できません。
提出が大幅に遅れた場合は、休業の事実を確認するため、出勤簿や賃金台帳、遅延理由書などの追加書類を求められる可能性があります。
個別の取扱いは管轄の年金事務所へ確認してください。
実務上おすすめする管理方法
産休開始の1か月前、産休開始時、出産後、産後休業終了前、育休開始時という節目ごとに確認日を設けます。
人事、給与、社会保険手続きを一つのチェックリストで管理すると、届出漏れを防ぎやすくなります。
出産日が変わった場合の変更届
出産予定日と実際の出産日が異なり、産前産後休業期間が変わった場合は、 産前産後休業取得者変更(終了)届 を提出します。
出産日は予定どおりになるとは限りません。
予定日より早く出産することもあれば、予定日を過ぎてから出産することもあります。
出産前に予定日を基に産前産後休業取得者申出書を提出している場合は、実際の出産日が分かった時点で、届出済みの休業期間と実際の休業期間を照合しましょう。
出産が予定日より遅れた場合
出産予定日より実際の出産日が遅れた場合は、予定日を過ぎてから実際の出産日までの期間も産前休業に含まれます。
また、産後56日間は実際の出産日の翌日から数えるため、産後休業終了日も当初の予定より後ろへずれます。
たとえば、出産予定日が8月10日、実際の出産日が8月15日だった場合、産後休業は8月16日から数えます。
出産予定日を基に計算していた終了予定日より5日後ろへずれることになります。
この変更によって産後休業終了日が月末をまたぐと、社会保険料の免除最終月が変わる可能性があります。
単に出産日欄を直すだけではなく、終了日と免除期間を再計算してください。
出産が予定日より早かった場合
出産予定日より早く出産した場合は、実際の出産日までが産前期間となり、出産日の翌日から産後期間が始まります。
産後56日間の終了日も、当初の予定より早くなります。
ただし、産前休業を実際に開始した日が変わるわけではありません。
予定日より早く出産したことで、本来取得できた産前42日間のすべてを取得できなかったとしても、産前期間を出産後へ振り替えることはできません。
会社では、実際の出産日を確認した後、産後休業終了日、育児休業開始日、給与計算の免除終了月を一緒に見直しましょう。
予定より早く産休を終了した場合
出産日が変わった場合だけでなく、当初の産前産後休業終了予定日より前に休業を終了した場合も、変更(終了)届の対象になります。
産後は原則として8週間、女性を就業させることができません。
ただし、産後6週間を経過した女性本人が就業を請求し、医師が支障ないと認めた業務については、就業させることができます。
この例外により予定より早く復職した場合は、実際の休業終了日に合わせて社会保険料免除期間も変わる可能性があります。
本人が働きたいと希望しただけで直ちに復職させるのではなく、法令上の要件と医師の判断を確認してください。
変更届が必要になりやすいケース
- 実際の出産日が出産予定日と異なった
- 産前産後休業の終了予定日が変わった
- 予定より早く産前産後休業を終了した
- 申出書に記載した休業期間を訂正する必要が生じた
会社が出産後に確認する項目
従業員から出産の連絡を受けたら、会社は実際の出産日だけではなく、単胎か多胎か、産後休業終了日、育児休業開始予定日、育児休業の終了予定日も確認します。
本人へ確認する際は、出産直後の状況に配慮することも必要です。
出産後すぐに複数の書類を求めるのではなく、出産日の連絡を受けた後、必要な手続きと提出時期を整理して案内するとよいでしょう。
出産日を確認するための資料を会社が保管する場合は、必要な情報だけを取得し、社内で閲覧できる担当者を限定します。
出産に関する情報は従業員のプライバシーに関わるため、手続きに必要だからといって広く共有してよいものではありません。
変更届を出さないままにしないでください。
届出上の休業期間と実際の休業期間が一致しないと、社会保険料が過不足となる可能性があります。
給与控除、会社負担額、育休への切替えにも影響するため、出産後の再確認を手続きの標準工程にしましょう。
出産予定日を基準とする産休期間については、 産休は出産予定日からいつになるか でも詳しく解説しています。
有給休暇を使う場合の注意点
産前産後休業期間中の社会保険料免除については、 その期間の給与が有給か無給かだけで免除の可否が決まるわけではありません。
所定の産前産後休業を取得し、会社が申出書を提出していれば、会社独自の制度によって給与が支払われている期間でも社会保険料免除の対象になり得ます。
一方、年次有給休暇を使って産前休業より前から仕事を休んだ場合、その有給休暇期間が当然に産前産後休業になるわけではありません。
社会保険料免除の開始時期を判断するときは、休んでいるという事実だけでなく、どの制度に基づく休業なのかを確認する必要があります。
産前休業前の有給休暇
たとえば、法定の産前休業開始可能日が6月20日で、本人が6月1日から年次有給休暇を取得したとします。
6月1日から6月19日までは通常の年次有給休暇であり、6月20日から産前休業へ切り替えるのであれば、産前産後休業の開始日は6月20日です。
この例では、産前休業の開始月自体は6月であるため、6月分の社会保険料が免除される可能性があります。
しかし、仮に産前休業の開始可能日が7月に入り、有給休暇だけを6月から取得していた場合、6月は産前産後休業の開始月ではありません。
有給休暇を取得したという理由だけで、6月分まで免除されるわけではありません。
法定の産前休業開始可能日より前の有給休暇には注意が必要です。
単に年次有給休暇を使って早めに仕事を休んだ期間は、通常の有給休暇です。
産前産後休業の開始日を事実と異なる日付へ前倒しして届け出ることはできません。
産前産後休業期間中に給与を支払う場合
会社の就業規則や賃金規程で、産前産後休業期間の一部または全部を有給としている場合があります。
また、年次有給休暇とは別に、会社独自の出産休暇や特別休暇を有給で設けていることもあります。
産前産後休業に該当する期間について会社から給与が支払われていても、社会保険料免除の対象から直ちに外れるわけではありません。
社会保険料免除では、産前産後休業の対象期間であるか、実際に労務へ従事していないか、会社が必要な申出をしているかが重要です。
ただし、給与を支給する場合は、出産手当金の支給額に影響します。
社会保険料免除と出産手当金では判断基準が異なるため、一つの制度の結論をもう一方へそのまま当てはめないようにしましょう。
出産手当金との関係
出産手当金は、健康保険の被保険者が出産のため仕事を休み、会社から給与の支払いを受けられない場合に、一定の要件を満たして支給される給付です。
対象期間中に会社から給与が支払われている場合は、原則として出産手当金が支給されないか、給与の日額が出産手当金の日額より少ないときに差額が支給されます。
年次有給休暇を取得した日は、通常、会社から賃金が全額支給されます。
そのため、その日の給与額が出産手当金の日額以上であれば、出産手当金は支給されません。
一方、社会保険料免除は、産前産後休業期間に該当し、必要な届出が行われているかを基に判断します。
このため、 社会保険料免除の判断と出産手当金の支給判断は分けて考える必要があります。
| 確認項目 | 社会保険料免除 | 出産手当金 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 健康保険料・厚生年金保険料の負担軽減 | 休業中の所得補償 |
| 給与支給の影響 | 有給であることだけでは免除対象外にならない | 給与額により不支給または差額支給 |
| 申請主体 | 会社が年金事務所へ申出 | 本人が会社や医師の証明を受けて申請 |
| 提出先 | 事務センターまたは年金事務所 | 加入している健康保険 |
有給休暇を使うかは総合的に判断する
有給休暇を使えば通常は給与が支給されますが、その分、出産手当金が不支給または減額となる可能性があります。
一方、有給休暇を残しておけば、育児休業から復職した後に、子どもの体調不良や保育園の行事などで利用できる可能性があります。
どちらが有利かは、賃金額、出産手当金の日額、有給休暇の残日数、会社独自の休暇制度、復職後の働き方によって異なります。
社会保険料免除額だけを比較して決めるのではなく、休業期間全体の収入と復職後の休暇需要を踏まえて判断することが大切です。
会社側から特定の選択を強く勧めるのではなく、制度上の違いを説明したうえで、本人が判断できるよう案内するのが適切かなと思います。
給与が支給される日と出産手当金の対象日が重なる場合は、加入している健康保険による確認が必要です。
給与に含まれる手当の性質によって取扱いが変わることもあるため、実際の支給額を基に確認しましょう。
産休と有給休暇の基本的な関係については、 産休と有給の扱いに関する実務上の基準 も参考にしてください。
産休と育休の免除制度の違い

産休と育休は連続して取得することが多いため、社会保険料免除も同じ制度だと思われやすいのですが、対象期間、根拠となる休業制度、申出書、一部の免除要件が異なります。
産前産後休業は、出産する女性労働者の母体保護を目的とした制度です。
一方、育児休業は、原則として一定年齢までの子を養育する労働者が取得する制度であり、要件を満たせば男女とも取得できます。
| 項目 | 産前産後休業 | 育児休業等 |
|---|---|---|
| 主な対象期間 | 産前42日、多胎妊娠は98日、産後56日 | 原則として子が1歳になるまで |
| 対象者 | 出産する女性被保険者 | 要件を満たす男女の被保険者 |
| 提出する書類 | 産前産後休業取得者申出書 | 育児休業等取得者申出書 |
| 基本的な免除期間 | 開始月から終了日の翌日が属する月の前月まで | 開始月から終了日の翌日が属する月の前月まで |
| 同一月内の短期取得 | 育休の14日以上特例は適用されない | 同一月内に14日以上取得した場合の特例あり |
| 賞与保険料 | 産休の免除対象月に支給された賞与は原則免除 | 賞与月末を含む連続1か月超の取得が必要 |
毎月の給与にかかる保険料の違い
産休と育休のいずれも、基本的には休業開始日の属する月から、休業終了日の翌日が属する月の前月までの保険料が免除されます。
ただし、育児休業等については、開始日と終了日の翌日が同じ月に含まれる場合でも、その月に14日以上の育児休業等を取得すれば、給与にかかる社会保険料が免除される特例があります。
たとえば、7月10日から7月25日まで育児休業を取得し、同じ7月中に復職した場合、月末時点では育児休業中ではありません。
しかし、7月中に14日以上育児休業等を取得しているため、要件を満たせば7月分の毎月の給与にかかる社会保険料が免除されます。
この14日以上の特例は、産前産後休業には同じ形で設けられていません。
短期間の育休に関するルールを産休へそのまま当てはめないようにしてください。
賞与保険料の違い
育児休業等については、賞与月の末日を含む連続した1か月を超える育児休業等を取得した場合に限り、その賞与にかかる社会保険料が免除されます。
毎月の給与にかかる保険料について設けられている14日以上の特例は、賞与保険料には適用されません。
育休を14日以上取得しているだけでは、賞与保険料の免除要件を満たさないことがあります。
一方、産前産後休業による賞与保険料の免除では、育児休業等に設けられた1か月超の要件を同じように適用するものではありません。
賞与を支給する月が産前産後休業の免除期間に含まれるかを確認します。
産休から育休へ自動的には切り替わらない
産後休業が終わったからといって、社会保険料免除の手続きが自動的に育休へ切り替わるわけではありません。
引き続き育児休業を取得する場合は、会社が育児休業等取得者申出書を別途提出します。
産前産後休業取得者申出書に、育児休業の終了予定日まで記載することはできません。
産休の免除と育休の免除は、別々の申出に基づいて処理されます。
実務では、産後休業終了日の翌日から育児休業が始まるケースが多いため、産休の手続きを行った時点で、育児休業等取得者申出書の提出予定日も管理表へ登録しておくと安心です。
産休と育休の免除期間が重なる場合
育児休業等の保険料免除期間と産前産後休業の保険料免除期間が重複する場合は、産前産後休業期間中の保険料免除が優先されます。
たとえば、育児休業中に次の子を出産し、産前産後休業へ切り替わるケースでは、産前産後休業の開始後は産休による免除として取り扱われます。
休業の名称だけでなく、それぞれの開始日と終了日を正確に管理してください。
会社側で別々に管理するもの
- 産前産後休業の社内申出
- 産前産後休業取得者申出書
- 育児休業の社内申出
- 育児休業等取得者申出書
- 出産手当金の申請
- 育児休業給付の申請
名称が似ていても提出先や期限が異なります。
一つの書類でまとめて処理できるものではありません。
育児休業給付とも別制度
育児休業中の社会保険料免除と、雇用保険から支給される育児休業給付は別制度です。
社会保険料免除は会社が年金事務所へ申し出ますが、育児休業給付は会社を経由するなどしてハローワークへ申請します。
育児休業等取得者申出書を提出しただけで育児休業給付が支給されるわけではなく、反対に育児休業給付を申請しただけで健康保険料と厚生年金保険料が免除されるわけでもありません。
従業員へ案内するときは、産休中の給付と免除、育休中の給付と免除を分けて説明しましょう。
制度名と提出先を一覧にすると、初めて手続きを担当する方にも分かりやすくなります。
産休の社会保険料免除を正しく確認
産休中の社会保険料は、会社が必要な申出を行うことで、健康保険料と厚生年金保険料の本人負担分・会社負担分が免除されます。
免除は、原則として産前産後休業を開始した日の属する月から、休業終了日の翌日が属する月の前月までです。
休業終了日が月末の場合は、その終了月まで免除されます。
また、免除期間中も健康保険と厚生年金保険の被保険者資格は継続します。
将来の年金額を計算するときも、保険料を納めた期間として扱われるため、免除されたことを理由に将来の年金額が減る仕組みではありません。
最後に確認したい実務ポイント
- 免除手続きは従業員本人ではなく会社が行う
- 産休開始月から社会保険料免除の対象になる
- 月途中の開始でも開始月全体が免除対象になる
- 終了月は産休終了日が月末かどうかで変わる
- 免除期間中も将来の年金額は減らない
- 出産日が変わった場合は変更届を確認する
- 産休と育休では短期取得や賞与の要件が異なる
従業員が確認すること
従業員の立場で、産休に入った後も社会保険料が給与から控除されている場合は、まず会社の人事・労務担当者へ、産前産後休業取得者申出書の提出状況を確認してください。
あわせて、給与明細に記載された健康保険料と厚生年金保険料が何月分なのかを確認します。
会社が翌月控除を採用している場合は、産休開始後の給与から産休開始前の月の保険料が控除されることがあります。
控除が誤っていると分かった場合は、返金時期や精算方法も確認しましょう。
申出書の提出が遅れた場合でも、免除処理後に会社を通じて返金や相殺が行われることがあります。
また、社会保険料免除とは別に、出産手当金、出産育児一時金、育児休業給付などの申請が必要です。
会社がすべて自動的に手続きしてくれるとは限らないため、申請書類と提出時期を確認しておくと安心です。
会社が確認すること
会社の立場では、年金事務所への届出だけでなく、給与計算上の保険料控除停止、実際の出産日を受けた変更処理、育休へ移行する際の別手続きまで一連の業務として管理することが重要です。
特に注意したいのは、担当部署間の連携です。
人事担当者が休業申出を受け、社会保険担当者が申出書を提出し、給与担当者が保険料控除を止める会社では、どこか一つで情報が止まると誤りにつながります。
産休開始前に、対象従業員ごとの手続き一覧を作成し、担当者、提出期限、完了日を記録するとよいでしょう。
出産予定日が変わることを前提に、出産後の確認項目もあらかじめ設けておくのが実務的です。
| 確認時期 | 主な確認事項 | 会社側の対応 |
|---|---|---|
| 産休申出時 | 出産予定日、休業開始日、多胎の有無 | 休業期間の計算と申出書の準備 |
| 産休開始時 | 実際の休業開始日 | 免除開始月と給与控除を確認 |
| 出産後 | 実際の出産日、産後休業終了日 | 必要に応じて変更届を提出 |
| 賞与計算時 | 賞与支給月と免除期間 | 保険料免除と賞与支払届を確認 |
| 産休終了前 | 育児休業取得の有無 | 育児休業等取得者申出書を準備 |
| 復職時 | 復職後の給与額 | 終了時改定などの対象を確認 |
社会保険料が一時的に控除された場合
会社の申請時期や年金事務所の処理時期によっては、免除対象月の社会保険料が一時的に給与から控除されることがあります。
この場合、要件を満たす申出書が受理され、免除がさかのぼって反映されれば、会社が従業員から控除した本人負担分を返金または相殺します。
会社は、返金額の計算根拠を明確にし、給与明細へ社会保険料返金などの項目を表示することが望ましいです。
複数月分をまとめて返金する場合は、対象月ごとの健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料を一覧にすると分かりやすくなります。
従業員へは、申請が遅れた理由、免除対象月、返金予定日を説明しておくと、保険料を二重に負担しているのではないかという不安を減らせます。
個別判断が必要になりやすいケース
通常の産休取得であれば基本的な手続きは共通していますが、産休中の退職、出産予定日の大幅な変更、産後6週間経過後の早期復職、複数の事業所で社会保険へ加入している場合、役員が産前産後休業を取得する場合などは、個別の確認が必要です。
また、給与を支給しながら産休を取得する場合は、社会保険料免除だけでなく、出産手当金の支給調整も確認しなければなりません。
賞与支給月に産休から育休へ切り替わる場合も、どちらの免除制度が適用される期間かによって取扱いが変わる可能性があります。
会社独自の休職制度、特別休暇、給与補償制度がある場合は、就業規則や賃金規程の内容も確認してください。
社内制度上の休暇名称が産休となっていても、社会保険上の産前産後休業期間と一致するとは限りません。
制度の様式や実務運用は変更される可能性があります。
正確な情報は日本年金機構、厚生労働省、加入している健康保険などの公式サイトをご確認ください。
届出時点で使用できる最新様式と提出期限を確認したうえで手続きを行いましょう。
産休の社会保険料免除は、従業員にとっても会社にとっても負担を大きく軽減できる制度です。
しかし、産休に入っただけでは手続きは完了せず、申出書の提出、給与計算への反映、出産後の変更確認まで必要です。
休業期間の変更、退職、賞与支給、有給での休業、育休への切替えなど、個別事情によって処理が変わることもあります。
会社の給与計算や従業員本人の給付額に影響するため、 最終的な判断は専門家にご相談ください。