社会保険・年金

雇用保険教育訓練給付金とは?給付率と申請方法のポイント

こんにちは。

もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

雇用保険の教育訓練給付金は、働く方の資格取得やスキルアップ、キャリア形成を支援するため、厚生労働大臣が指定する講座を受講した場合に、その費用の一部が支給される制度です。

「仕事に役立つ資格を取りたいけれど受講料が高い」「転職を見据えて専門的なスキルを身につけたい」というときに、条件を満たせば受講費用の負担を大きく抑えられる可能性があります。

在職中の会社員だけでなく、一定の要件を満たす離職者も利用できます。

また、パートやアルバイト、派遣社員であっても、雇用保険の加入期間などの要件を満たしていれば対象になる可能性があります。

正社員かどうかだけで判断する制度ではないところは、最初に押さえておきたいポイントです。

一方で、教育訓練給付金には一般教育訓練、特定一般教育訓練、専門実践教育訓練の3種類があり、それぞれ給付率や対象となる講座、必要な雇用保険の加入期間、受講前の手続きが異なります。

特に注意したいのは、「対象になりそうだから、とりあえず講座へ申し込んでから考えればよい」とはいかない点です。

特定一般教育訓練や専門実践教育訓練では受講開始前に必要な手続きがあり、対象講座の確認も必要になります。

この記事では、これから資格取得や学び直しを考えているあなたに向けて、3種類の制度の違いから対象者、支給額、対象講座の調べ方、ハローワークでの申請まで順番に解説します。

  • 教育訓練給付金3種類の違いと給付率
  • 対象者となる雇用保険の加入期間
  • 対象講座の確認方法と受講前の手続き
  • 離職中の利用条件と申請期限

雇用保険教育訓練給付金とは?給付率と申請方法を解説

雇用保険教育訓練給付金とは

雇用保険の教育訓練給付金を理解するときは、最初に「どの講座でも受講料が補助される制度ではない」という点を押さえておくことが大切です。

一定の雇用保険加入歴があり、厚生労働大臣が指定した教育訓練を受講することが基本的な条件になります。

さらに、教育訓練の種類によって必要な被保険者期間や給付率、申請方法が変わります。

制度を使えるかどうかは、「資格を取りたいか」という本人の目的だけでは決まりません。

雇用保険の加入歴、受講開始日、講座の指定状況、過去の教育訓練給付金の受給歴などを順番に確認する必要があります。

まずは3種類の教育訓練給付金について、給付率や対象となる教育訓練、必要な加入期間を整理していきましょう。

3種類の教育訓練給付金の違い

教育訓練給付制度には、 一般教育訓練、特定一般教育訓練、専門実践教育訓練 の3種類があります。

同じ教育訓練給付金という名前でも、制度の目的や対象講座、給付率がかなり異なります。

資格学校や大学などへ申し込む前に、自分が受講しようとしている講座がどの区分に指定されているのかを確認することが重要です。

大まかに整理すると、一般教育訓練は幅広い能力開発を支援する仕組み、特定一般教育訓練は早期の再就職やキャリア形成につながる講座をより手厚く支援する仕組み、専門実践教育訓練は中長期的な専門性の獲得を支援する仕組みと考えると分かりやすいでしょう。

種類 基本的な給付率 主な特徴
一般教育訓練 20% 幅広い資格取得や能力開発
特定一般教育訓練 40%・条件により最大50% 早期の再就職やキャリア形成
専門実践教育訓練 50%・条件により最大80% 中長期的な専門的キャリア形成

たとえば、一般教育訓練では比較的幅広い資格・能力開発講座が指定されています。

一定の民間資格や語学、IT関連など、仕事に必要な能力の向上につながる講座が対象になることがあります。

一方、特定一般教育訓練では業務独占資格や名称独占資格など、再就職やキャリア形成につながりやすい講座が中心です。

大型自動車免許など職業に直結しやすい教育訓練や、一定のデジタル関係講座などが指定されることもあります。

専門実践教育訓練になると、看護師、介護福祉士、保育士などの専門資格や専門学校、大学院、一定のデジタル分野など、より長期間の教育訓練も対象になります。

数か月で修了する講座だけではなく、数年単位で学ぶ課程が対象になることもあるのが特徴です。

ここで注意したいのは、資格の名前だけを見ても、一般・特定一般・専門実践のどれになるのか判断できないことです。

同じ資格を目指す講座でも、教育訓練施設やコースによって指定状況が異なる場合があります。

給付率だけで講座を選ぶのではなく、自分が取得したい資格や今後の働き方に合った講座かどうかを確認することが大切です。

私が制度を説明するときも、最初に「何の資格を取りたいか」だけでなく、「その資格を今の仕事で使うのか、転職に使うのか、将来の職種変更につなげるのか」を整理するようにしています。

最大80%という数字は魅力的ですが、給付金を受けること自体が目的になってしまうと、本来のキャリア形成からずれてしまうからです。

なお、教育訓練給付金は雇用保険の給付の一つです。

そもそも雇用保険がどのような場面で利用できる制度なのか整理したい場合は、 雇用保険とは?

加入条件と給付を実務目線で社労士が解説も参考にしてください。

教育訓練給付制度全体については、厚生労働省も3種類に分けて対象や給付率を案内しています。

(出典: 厚生労働省「教育訓練給付金」

一般教育訓練の給付率と上限額

一般教育訓練の給付率と上限額

一般教育訓練給付金は、厚生労働大臣が指定する一般教育訓練を修了した場合に、本人が支払った教育訓練経費の一部が支給される制度です。

基本となる支給額は、 教育訓練経費の20%で、上限は10万円 です。

一般教育訓練は3種類の中では給付率が最も低いものの、対象となる教育訓練の範囲が比較的広く、在職中に仕事を続けながら資格取得やスキルアップをしたい方にとって利用しやすい制度の一つです。

たとえば、対象となる教育訓練経費が30万円であれば、20%に相当する6万円が一つの目安となります。

60万円の講座であれば20%は12万円ですが、上限が10万円であるため、支給額は原則として10万円までとなります。

教育訓練経費 20%相当額 支給額の目安
10万円 2万円 2万円
30万円 6万円 6万円
60万円 12万円 上限10万円

ただし、単純に学校へ支払った金額すべてが教育訓練経費として認められるとは限りません。

対象となる入学料や受講料などの範囲は制度上決められており、教育訓練と直接関係しない費用まで給付対象になるわけではありません。

また、教育訓練施設から割引を受けた場合や、受講料の一部について返金を受けた場合などには、実際に本人が負担した金額を基礎として取り扱われることがあります。

勤務先などから受講費用について補助を受けているケースでも、本人の実質的な負担額を確認する必要があります。

この点は、受講費用を比較するときに意外と見落とされやすいところです。

「定価30万円の講座だから6万円もらえる」と考えるのではなく、実際に教育訓練経費として認められる金額がいくらなのかを確認する必要があります。

さらに、教育訓練給付金は講座へ申し込んだ時点で支給されるものではありません。

原則として指定された教育訓練を適切に受講し、修了要件を満たしたうえで支給申請をする流れです。

学校へ申し込んだものの途中で受講しなくなった場合などは、当然に20%が支給されると考えないほうがよいでしょう。

一般教育訓練を検討するときは、「講座が指定されているか」「自分が支給要件期間を満たすか」「教育訓練経費として認められる額はいくらか」の3点を先に確認しましょう。

実務上は「30万円払ったから必ず6万円戻る」と先に計算してしまうより、 受講予定の講座が指定講座であることと、給付対象となる教育訓練経費の金額を確認してから資金計画を立てる ほうが安全です。

特に在職中の方は、給付金があることを前提に高額な講座へ申し込むのではなく、受講料をいったん自分で負担しても家計に問題がないかまで考えておくことをおすすめします。

支給までには受講・修了・申請という手順があるためです。

この記事で紹介する金額や給付率は制度上の一般的な目安です。

講座の指定状況や受講開始日、本人の支給要件期間、実際の教育訓練経費などによって取り扱いが異なる場合があります。

特定一般教育訓練の給付率と条件

特定一般教育訓練給付金は、特に労働者の速やかな再就職や早期のキャリア形成につながる教育訓練を対象とする制度です。

基本となる給付は、 教育訓練経費の40%、上限20万円 です。

一般教育訓練の20%と比較すると、給付率が高く設定されています。

さらに、2024年10月1日以降に受講を開始した一定の講座については、教育訓練を修了し、資格取得などをしたうえで一定の就職要件を満たすと、追加給付を受けられる仕組みがあります。

追加給付まで要件を満たした場合には、教育訓練経費の 最大50%、上限25万円 まで支給対象となる可能性があります。

段階 給付率 上限
教育訓練修了 40% 20万円
資格取得・就職等の要件を満たした場合 最大50% 25万円

たとえば、教育訓練経費が40万円であれば、40%は16万円です。

その後、資格取得や就職など追加給付の要件を満たせば、50%相当の20万円まで支給される可能性があります。

この場合、最初の16万円に加えて、要件を満たした後に差額部分の給付を受けるというイメージです。

ここで重要なのは、 最初から必ず50%が支給される制度ではない という点です。

基本部分と追加部分を分けて理解しておく必要があります。

特定一般教育訓練では、業務独占資格や名称独占資格につながる講座、一定のデジタル関係講座などが指定されています。

仕事に直結しやすい資格や技能が多いため、「転職のために資格を取得したい」「現在とは別の職種へ移りたい」という方には検討しやすい制度です。

ただし、同じ資格を目指す講座であっても、すべての教育機関のコースが教育訓練給付制度の対象になるわけではありません。

たとえば、同じ資格学校の中でも通学コースは対象、別のオンラインコースは対象外ということもあり得ます。

必ず受講するコース単位で確認しましょう。

また、一般教育訓練との大きな違いとして、 特定一般教育訓練では受講開始前のキャリアコンサルティングや受給資格確認が必要 です。

私は、この受講前手続きが特定一般教育訓練で最も注意したいポイントの一つだと考えています。

資格学校の申込み期限とハローワークの手続期限は別物だからです。

学校への入学手続きを済ませたからといって、教育訓練給付金側の手続きまで完了したことにはなりません。

「講座を修了してからハローワークへ行けばよい」と考えると、必要な受講前手続きを行っていないことがあります。

特定一般教育訓練を利用する場合は、講座への申込みと並行して早めにハローワークへ確認することをおすすめします。

特に開講日が迫っている講座では、キャリアコンサルティングの予約も含めて余裕を持つ必要があります。

「対象講座だったのに手続きの順番で給付を受けられない」という事態は避けたいところです。

専門実践教育訓練は最大80%

専門実践教育訓練は最大80%

専門実践教育訓練給付金は、中長期的なキャリア形成につながる専門性の高い教育訓練を対象とした制度です。

2024年10月以降に開講する一定の講座では、条件を満たすことで教育訓練経費の 最大80% まで給付を受けられる仕組みになっています。

教育訓練給付制度の3種類の中でも、最も手厚い給付を受けられる可能性がある区分です。

ただし、「最大80%」という数字だけを見ると制度を誤解しやすいため、支給される段階を分けて理解しておきましょう。

まず、専門実践教育訓練を受講している期間については、教育訓練経費の50%が基本となり、年間上限は40万円です。

その後、教育訓練を修了して資格取得などを行い、修了後一定期間内に雇用保険の被保険者として雇用されるなどの要件を満たすと、給付率は70%まで引き上げられます。

さらに、一定の要件を満たしたうえで、訓練修了後の賃金が受講開始前と比べて5%以上上昇した場合には、追加給付によって最大80%となります。

支給段階 給付率 年間上限の目安
受講中 50% 40万円
資格取得・就職等 最大70% 56万円
賃金5%以上上昇 最大80% 64万円

専門実践教育訓練では、看護師、介護福祉士、保育士などの資格取得を目指す養成課程のほか、専門学校や大学院、一定のデジタル分野なども対象となっています。

長期間の学習を通じて専門職への転職を目指すようなケースでは、非常に重要な制度です。

金額だけを見ると非常に大きな支援ですが、 最初から受講料の80%が支給されるわけではありません。

たとえば、受講中の段階では50%部分が基本です。

その後、資格取得や就職などの条件を満たしたときに70%までの差額、さらに賃金上昇要件を満たした場合に80%までの差額が支給されるという仕組みです。

したがって、「受講料100万円だから80万円がすぐ戻ってくる」という資金計画を立てるのは危険です。

どの時点で、どの条件を満たせば、いくら支給される可能性があるのかを分けて考える必要があります。

また、専門実践教育訓練は受講期間が長いものもあり、給付金は受講開始日から原則6か月ごとの支給単位期間で申請します。

一般教育訓練のように、すべて修了してから一度だけ申請するというイメージではありません。

受講料の支払方法も教育訓練施設によって異なります。

一括払い、学期ごとの支払い、分割払いなどさまざまです。

給付金の支給時期と学校への支払時期が一致するとは限らないため、手元資金についても確認しておきましょう。

専門実践教育訓練を検討するときは、最終的な最大給付額だけでなく、受講中の自己負担額と給付金が入るタイミングまで確認することが重要です。

特に離職して長期間の専門実践教育訓練を受ける場合には、受講料だけでなく生活費も考える必要があります。

一定の離職者については後述する教育訓練支援給付金が関係する可能性があるため、併せて確認するとよいでしょう。

対象者と雇用保険の加入期間

教育訓練給付金を利用するには、対象講座を受講するだけではなく、一定の 支給要件期間 を満たす必要があります。

支給要件期間とは、簡単にいえば受講開始日までに雇用保険の被保険者として加入していた期間です。

会社で何年間働いていたかだけを見るのではなく、雇用保険の被保険者であった期間を確認するところがポイントです。

一定の条件を満たせば、転職前の会社で加入していた期間を通算できる場合もあります。

反対に、転職と転職の間が長期間空いているなど、過去の加入期間を単純にすべて足せないケースもあります。

教育訓練の種類 初めて利用する場合 原則的な支給要件期間
一般教育訓練 1年以上 3年以上
特定一般教育訓練 1年以上 3年以上
専門実践教育訓練 2年以上 3年以上

一般教育訓練と特定一般教育訓練は、初めて教育訓練給付を利用する場合には、支給要件期間が原則1年以上あれば対象となる可能性があります。

専門実践教育訓練については、初回利用の場合でも原則2年以上が必要です。

一般教育訓練と同じ感覚で「雇用保険に1年入っているから大丈夫」と判断しないようにしましょう。

また、過去に教育訓練給付金を受給したことがある方については、前回の受給時期なども含めた確認が必要になります。

制度を過去に利用している場合には、今回受講しようとする教育訓練の開始日との関係で支給要件を満たすかを確認する必要があります。

自分では「初めて使う」と思っていても、かなり前に資格講座で教育訓練給付を受けた経験があるケースもあります。

以前利用した時期が曖昧な場合には、ハローワークで確認するのが確実です。

また、正社員だけを対象とする制度ではありません。

パート、アルバイト、契約社員、派遣社員でも、雇用保険の被保険者として要件を満たしていれば対象になる可能性があります。

実際によくあるのが、「パートだから教育訓練給付金は使えないと思っていた」というケースです。

重要なのは雇用形態の名称ではなく、雇用保険の資格と加入期間です。

たとえば、長年同じ会社でパートとして働いていても、雇用保険の加入条件を満たしておらず被保険者になっていなければ、その勤務期間をそのまま教育訓練給付金の支給要件期間として考えることはできません。

反対に、パートであっても雇用保険に継続して加入しているのであれば、正社員ではないことだけを理由に対象外になるわけではありません。

「会社に何年勤めているか」と「雇用保険の被保険者期間が何年あるか」は同じとは限りません。

特に途中で勤務時間を変更した方や、複数回転職している方は注意してください。

なお、教育訓練給付金では在職者だけでなく、一定期間内の離職者も対象になる可能性があります。

その場合も、離職前の雇用保険加入期間と、離職してから受講を開始するまでの期間の両方を確認することになります。

自分の雇用保険加入期間が分からない場合には、手元の雇用保険被保険者証や離職票などを確認し、不明な場合は受講申込み前にハローワークで受給資格を確認しておくと安心です。

雇用保険教育訓練給付金の申請方法

教育訓練給付金では、受講する講座によって受講開始前の手続きと修了後の申請方法が異なります。

特に特定一般教育訓練と専門実践教育訓練は、受講開始前に行う手続きが重要です。

対象となる講座を見つけただけでは給付を受けられることが確定したわけではありません。

ここからは、離職後に利用するときの期限、対象講座の確認方法、受給資格確認、支給申請まで実際の流れに沿って整理します。

離職中は退職後いつまで対象か

教育訓練給付金は、在職中だけの制度ではありません。

雇用保険の被保険者資格を失った離職者でも、一定期間内に受講を開始すれば対象になる可能性があります。

原則として、 雇用保険の被保険者資格を喪失した日、一般的には離職日の翌日から受講開始日までが1年以内 であることが必要です。

ここで基準になるのは、講座へ「申し込んだ日」ではなく受講開始日です。

退職してから1年以内に学校へ申込みをしていても、実際の受講開始日が適用対象期間を過ぎていれば問題になる可能性があります。

たとえば、3月31日に退職して4月1日に雇用保険の資格を喪失した場合には、その後の受講開始日が制度上の適用対象期間内に入っているかを確認します。

離職後に資格取得を検討する方は、転職活動、失業手当、学費の準備などを同時に考えることが多いため、「まだ1年ある」と思っているうちに受講開始日が先になってしまうことがあります。

希望する講座が年1回しか開講されない場合などは特に注意が必要です。

一方、妊娠、出産、育児、疾病、負傷などの理由によって、資格喪失後の1年間に引き続き30日以上教育訓練を開始できない期間がある場合には、ハローワークへ申請することで適用対象期間を延長できることがあります。

一定の要件を満たす場合には、 教育訓練給付金の適用対象期間は最大20年まで延長される可能性があります。

最大20年というのは、誰でも退職から20年間利用できるという意味ではありません。

妊娠、出産、育児、疾病、負傷など、制度上認められる理由によって受講を開始できなかった期間について、所定の手続きをした場合の取り扱いです。

「退職して1年以上経っているから絶対に無理」と自己判断する必要はありませんが、延長できる事情がなければ原則の期間を超えて利用することはできません。

自分が延長対象になる事情に該当するか分からない場合には、ハローワークへ確認してください。

また、離職中に基本手当、いわゆる失業手当を受給している場合でも、教育訓練給付金とは制度上別の給付として確認することになります。

教育訓練給付金は主として講座費用を支援する制度であり、基本手当は再就職を目指す失業者の生活を支える給付です。

この2つは目的が違うため、「失業手当を受けているから教育訓練給付金は一切使えない」と単純に考えるものではありません。

さらに、自己都合退職の場合には、一定の教育訓練等を自ら受講することで、基本手当の給付制限について別の取り扱いが関係するケースもあります。

これは教育訓練給付金そのものの支給要件とは別の論点ですので、分けて確認しましょう。

失業手当との関係を確認したい場合は、 失業手当は自己都合退職でいつから?

給付制限1か月のポイントも確認してください。

退職後に教育訓練を考える場合は、「離職日」「雇用保険の資格喪失日」「講座の受講開始日」の3つの日付を確認することが重要です。

対象講座の調べ方と指定講座

対象講座の調べ方と指定講座

教育訓練給付金で最も大切な確認事項の一つが、 受講予定の講座が厚生労働大臣の指定を受けているか という点です。

有名な資格学校の講座だから対象になる、国家資格を目指す講座だから必ず対象になる、というわけではありません。

同じ資格を目指す講座でも、教育機関やコース、開講時期によって指定の有無が異なることがあります。

たとえば、「○○資格講座は教育訓練給付金対象」と広告されていても、あなたが申し込もうとしている通信コース、夜間コース、短期コースまで同じ指定を受けているとは限りません。

そのため、資格名だけで確認を終わらせず、 教育訓練施設名、講座名、実施方法、受講開始時期まで一致しているか を確認することが大切です。

対象講座は、厚生労働省の教育訓練給付制度の指定教育訓練講座検索システムで確認できます。

(出典: 厚生労働省「教育訓練給付制度 指定教育訓練講座検索システム」

検索するときは、取得したい資格名だけでなく、教育訓練施設、地域、通信・通学などの条件を絞り込むと探しやすくなります。

学校のホームページに教育訓練給付金対象と書かれていても、自分が申し込むコースと受講開始時期が指定対象になっているかまで確認することをおすすめします。

実務的には、講座選びの段階で「この資格を取れば給付金が使える」と考えるのではなく、「この教育訓練施設の、この指定講座を、この時期に受講する場合に対象になる」というところまで具体的に確認するのが安全です。

また、一般教育訓練、特定一般教育訓練、専門実践教育訓練のどの区分に指定されているかも確認してください。

区分が違えば給付率だけでなく、必要な支給要件期間や受講前の手続きも変わります。

講座の資料に「教育訓練給付金対象」とだけ書かれている場合には、一般・特定一般・専門実践のどれなのかまで確認するとよいでしょう。

受講料が同じように見える講座でも、指定区分によって給付率が異なります。

一方で、給付率が高い講座が必ずあなたにとって最適な講座とは限りません。

学習内容、取得できる資格、通学負担、受講期間も含めて比較してください。

また、教育訓練給付金と、ハローワークが行う公共職業訓練や求職者支援制度は別の仕組みです。

特に雇用保険に加入していない方の場合には、教育訓練給付金ではなく、求職者支援制度を利用できる可能性があります。

両者は名前や目的が似ていますが、対象者と給付の仕組みが異なります。

「職業訓練を受ければ教育訓練給付金が出る」と一括りに考えると混乱しやすいところです。

教育訓練給付金は雇用保険の給付、求職者支援制度は主として雇用保険の求職者給付を受けられない求職者を支える仕組みとして分けて理解しましょう。

雇用保険に加入していない場合の職業訓練については、 雇用保険なしで職業訓練は受けられる?

求職者支援制度を解説で詳しく整理しています。

受講前に必要な受給資格確認

教育訓練給付金では、受講する種類によって受講前の手続きが異なります。

特に注意したいのが、 特定一般教育訓練と専門実践教育訓練 です。

これらの給付を受ける場合には、原則として受講開始前にジョブ・カードを作成し、訓練前キャリアコンサルティングを受けたうえで、ハローワークで受給資格確認を行います。

訓練前キャリアコンサルティングは、単に「給付金をもらうための面談」というより、自分の職業経験や能力、これから目指す仕事と受講予定の教育訓練との関係を整理するための手続きです。

ジョブ・カードを作成する過程では、これまでどのような仕事をしてきたか、どのような能力を身につけてきたか、今後どのような職業を目指すかを整理します。

「資格を取りたい」という希望だけでなく、その資格が今後の職業生活にどうつながるのかを考える機会にもなります。

現在の手続きでは、受給資格確認に必要な書類は、原則として 受講開始日の2週間前まで に提出することとされています。

特定一般・専門実践の基本的な流れ

  • 受講したい指定講座を確認する
  • ジョブ・カードを作成する
  • 訓練前キャリアコンサルティングを受ける
  • ハローワークで受給資格確認を行う
  • 教育訓練を受講開始する

受給資格確認では、雇用保険の被保険者期間だけでなく、受講しようとしている講座が対象となる教育訓練に指定されているかなども確認します。

つまり、受給資格確認は「講座を受講できるか」を学校側が判断する手続きではなく、雇用保険の教育訓練給付金を受けるための資格確認です。

そのため、学校への入学手続きとは別に進める必要があります。

ここは実務でも混同しやすいところです。

学校への申込み、受講料の支払い、ハローワークへの受給資格確認は、それぞれ別の手続きです。

実務的には、受講開始日の直前になってからハローワークへ相談するよりも、受講したい講座が決まった段階で早めに確認するほうが安全です。

キャリアコンサルティングには予約が必要になることもあります。

受講開始日の2週間前までに書類を出せばよいからと、2週間前になって初めて動き始めるのではなく、余裕を持って手続きを進めましょう。

特定一般教育訓練や専門実践教育訓練では、受講開始後に初めて制度を知っても、受講前に必要な手続きを行っていないことで給付を受けられない可能性があります。

一方、一般教育訓練については、特定一般・専門実践と同じ訓練前キャリアコンサルティングが一律に必要となる制度ではありません。

ただし、自分の支給要件期間に不安がある場合には、受講前にハローワークへ照会しておくことをおすすめします。

特に転職回数が多い方、離職期間がある方、以前教育訓練給付金を利用したことがある方は、自己判断だけでは支給要件期間を判断しにくいことがあります。

講座へ申し込む前に、「対象講座か」「自分に受給資格があるか」「受講前の手続きが必要か」の3点を確認してから進めると、手続きミスを防ぎやすくなります。

修了後の支給申請と期限

教育訓練給付金は、対象講座を受講しただけで自動的に口座へ振り込まれる制度ではありません。

受講前の要件を満たしていても、所定の期限までに支給申請を行わなければなりません。

講座を修了したことで安心してしまい、給付金の申請を忘れないように注意してください。

一般教育訓練と特定一般教育訓練では、原則として 受講修了日の翌日から1か月以内 に支給申請を行います。

たとえば、3月31日に教育訓練を修了した場合には、修了日を基準として申請期限を確認することになります。

資格試験そのものの受験日や合格発表日と、教育訓練施設が定める受講修了日が同じとは限らないため注意が必要です。

専門実践教育訓練については長期間の講座が多いため、受講開始日から6か月ごとの支給単位期間について申請を行い、それぞれ期間の末日の翌日から原則1か月以内に手続きします。

訓練修了時についても、修了日の翌日から原則1か月以内の申請が必要です。

教育訓練の種類 基本的な申請時期
一般教育訓練 修了日の翌日から原則1か月以内
特定一般教育訓練 修了日の翌日から原則1か月以内
専門実践教育訓練 6か月ごとの期間終了後および修了後

一般教育訓練では、教育訓練給付金支給申請書、教育訓練修了証明書、教育訓練施設が発行する領収書、本人確認関係書類、振込先が分かる書類などが必要になります。

必要書類は利用する教育訓練の種類や申請内容によって異なりますので、講座修了時に教育訓練施設から交付された書類はまとめて保管しておきましょう。

特に領収書や教育訓練施設から交付される証明書は、普段の学習教材と一緒にして紛失しないよう注意したいところです。

受講期間が1年以上になる講座では、入学時に受け取った書類と修了時の書類が離れてしまうため、一つのファイルへまとめて保管しておくと管理しやすくなります。

また、特定一般教育訓練や専門実践教育訓練の追加給付については、資格取得、就職、賃金上昇など、それぞれの条件を満たした段階で別途申請が必要になる場合があります。

つまり、専門実践教育訓練では「受講中に50%部分を申請して終わり」ではありません。

修了後の資格取得や就職、さらに賃金上昇について追加給付を受けたい場合には、その後の状況に応じた手続きを忘れずに行う必要があります。

教育訓練給付金では「受講前」「受講中」「修了後」「就職後」で必要な手続きが分かれることがあります。

申請期限をカレンダーなどに記録して管理しておくと安心です。

私なら、長期間の専門実践教育訓練を受ける場合には、学校への支払日だけでなく、6か月ごとの支給単位期間、修了予定日、資格取得時期、就職後の追加給付の確認時期まで一覧にしておくことをおすすめします。

給付額が大きくなるほど、期限管理も重要になります。

申請期限や必要書類は、受講している教育訓練の種類や追加給付の有無によって異なります。

自分のケースについては、教育訓練施設からの案内とハローワークの案内を必ず確認してください。

教育訓練支援給付金との違い

教育訓練支援給付金との違い

教育訓練給付制度を調べていると、教育訓練給付金のほかに 教育訓練支援給付金 という似た名前の制度が出てきます。

この2つは同じものではありません。

教育訓練給付金は、対象講座の 受講費用の一部を補助する制度 です。

一方、教育訓練支援給付金は、一定の要件を満たす離職者が専門実践教育訓練を受ける期間中の生活を支援するための給付です。

つまり、何に対して給付されるお金なのかが異なります。

「学校へ払うお金を補助するもの」と「学校へ通っている間の生活を支えるもの」を分けて理解すると分かりやすいでしょう。

制度 主な目的 主な対象
教育訓練給付金 受講費用の負担軽減 在職者・一定の離職者
教育訓練支援給付金 訓練中の生活支援 一定の専門実践教育訓練を受ける離職者

教育訓練支援給付金については、専門実践教育訓練給付金の受給資格があり、失業状態にあること、一定の年齢要件を満たすこと、昼間通学制の専門実践教育訓練を受けることなど、複数の要件があります。

そのため、専門実践教育訓練を受ければ誰でも教育訓練支援給付金まで受け取れるという制度ではありません。

2026年8月時点では、一定の要件を満たす場合、基本手当日額の60%に相当する額を基準とする教育訓練支援給付金が設けられています。

ただし、教育訓練支援給付金は暫定措置として設けられている制度であり、受講開始時期によって給付率などの取り扱いが異なる場合があります。

制度の存続期間にも注意してください。

特に、基本手当を受給できる期間について教育訓練支援給付金が同時に支給されるわけではない点には注意が必要です。

離職して2年程度の専門課程へ通う場合などは、受講料だけではなく、その間の住居費や食費なども大きな問題になります。

教育訓練給付金だけを見て進学を決めず、基本手当や教育訓練支援給付金を含めた生活費全体の見通しを立てておくことが重要です。

教育訓練支援給付金には年齢、失業状態、受講する専門実践教育訓練の形態など複数の要件があります。

「専門実践教育訓練なら生活費も必ず支給される」と考えないようにしてください。

教育訓練休暇給付金も別の制度

さらに、2025年10月からは 教育訓練休暇給付金 も創設されています。

教育訓練休暇給付金は、在職中の労働者が離職せずに教育訓練へ専念するため、就業規則などに基づいて一定期間の無給の教育訓練休暇を取得した場合に、生活費を支援する制度です。

教育訓練支援給付金が主として一定の離職者を対象としているのに対し、教育訓練休暇給付金は会社を辞めずに教育訓練のための休暇を取る方が対象になるという違いがあります。

また、一定の雇用保険加入期間などの要件があり、教育訓練給付金のように受講料そのものを補助する制度とは目的が異なります。

制度 主に支援するもの イメージ
教育訓練給付金 受講費用 資格学校などの費用負担を軽減
教育訓練支援給付金 離職中の生活 専門実践教育訓練中の生活を支援
教育訓練休暇給付金 在職中の休暇期間の生活 無給の教育訓練休暇中を支援

教育訓練休暇給付金については、会社側に教育訓練休暇の仕組みがあるか、休暇が無給であるか、本人の雇用保険加入歴が要件を満たしているかなどを確認する必要があります。

従業員の立場から見ると、似た名前の給付が増えて分かりにくく感じるところですが、「受講費を支えるのか」「離職中の生活を支えるのか」「会社に在籍したまま休暇を取る期間を支えるのか」で整理すると違いが見えやすくなります。

教育訓練給付金、教育訓練支援給付金、教育訓練休暇給付金は名称が似ていますが、それぞれ「受講費用」「離職者の訓練中の生活」「在職者が教育訓練休暇を取得する間の生活」を支える別の制度です。

制度を選ぶというより、あなたが在職中なのか離職中なのか、どの教育訓練を受けるのかによって関係する給付が変わります。

複数の制度が関係しそうな場合には、それぞれの受給条件を分けて確認してください。

雇用保険教育訓練給付金のまとめ

雇用保険の教育訓練給付金は、資格取得やスキルアップ、リスキリングにかかる費用負担を軽減できる制度です。

一般教育訓練では受講費用の20%、特定一般教育訓練では条件により最大50%、専門実践教育訓練では条件を満たすことで最大80%が支給対象となる可能性があります。

特に専門実践教育訓練は給付額が大きく、専門職への転職や長期的なキャリアチェンジを考えている方にとって大きな支援になる可能性があります。

一方で、最も大切なのは給付率だけを見ることではありません。

  • 雇用保険の支給要件期間を満たしているか
  • 受講する講座が厚生労働大臣の指定講座か
  • 受講開始前の手続きが必要か
  • 支給申請期限を過ぎていないか

まず、自分が雇用保険の被保険者としてどの程度の加入期間を持っているのかを確認します。

そのうえで、受講したい講座が一般教育訓練、特定一般教育訓練、専門実践教育訓練のどれに指定されているのかを確認してください。

特に特定一般教育訓練と専門実践教育訓練では、受講開始前に訓練前キャリアコンサルティングや受給資格確認が必要です。

受講料を支払ってから制度を調べ始めるのではなく、 講座を申し込む前の段階で給付対象になるか確認する ことをおすすめします。

教育訓練給付金を利用するときの基本は、「講座を探す→自分の受給資格を確認する→必要な受講前手続きをする→受講する→期限内に支給申請する」という順番です。

離職中の方についても、原則として離職後一定期間内であれば対象になる可能性があります。

また、妊娠、出産、育児、疾病、負傷などによって受講できなかった場合には、適用対象期間を延長できるケースがあります。

「退職して1年を過ぎたから使えない」とすぐに諦めず、延長要件に該当しないか確認してみるとよいでしょう。

長期間の専門実践教育訓練を受ける離職者では、教育訓練支援給付金が関係する可能性があります。

在職したまま無給の教育訓練休暇を取得する場合には、教育訓練休暇給付金という別制度もあります。

このように、現在の雇用保険には「失業したとき」だけではなく、「学び直して働き方を変えるとき」を支援する仕組みが複数用意されています。

社労士として制度を見ると、教育訓練給付金は単純な学費補助ではなく、働く人が次のキャリアを考えるときの選択肢を広げる制度だと感じます。

だからこそ、最大80%という給付率だけを見て判断するのではなく、「この講座を修了したあとに、自分はどのような仕事をしたいのか」まで考えたうえで利用することが大切です。

教育訓練給付制度は、制度改正や受講開始日、指定講座、本人の雇用保険加入歴などによって支給条件が変わることがあります。

この記事に記載した金額や給付率は一般的な目安としてご覧ください。

受講を決める際は、厚生労働省の教育訓練給付制度に関する最新情報や、住所地を管轄するハローワークで最新の条件を確認してください。

正確な情報は公式サイトをご確認ください。

また、雇用保険の加入期間や離職後の取り扱い、過去の教育訓練給付金の利用状況など、個別の事情によって判断が分かれる場合がありますので、 最終的な判断は専門家にご相談ください。

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