社会保険・年金

健康保険の資格喪失届とは?書き方・期限・添付書類を実務で確認

こんにちは。

もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

健康保険の資格喪失届は、従業員が退職したときなどに、会社が健康保険・厚生年金保険の資格を喪失させるために提出する重要な届出です。

手続きそのものは決められた様式に沿って進めますが、実務では「退職日と資格喪失日のどちらを書くのか」「資格確認書はどうするのか」「どこへ提出するのか」「資格喪失証明書も自動的に発行されるのか」といった点で迷いやすいです。

特に資格喪失年月日の誤りは、その後の健康保険や年金の切り替えにも影響するため注意が必要です。

この記事では、企業の人事・総務担当者が健康保険の資格喪失届を処理できるよう、必要になるケース、提出期限、提出先、添付書類、記入方法、60歳以上の同日得喪、75歳到達時の扱いまで実務の流れに沿って整理します。

  • 健康保険の資格喪失届が必要になるケース
  • 資格喪失日と提出期限の正しい考え方
  • 資格喪失届の書き方と添付書類
  • 同日得喪や75歳到達時の実務上の注意点

健康保険の資格喪失届とは?書き方・期限・添付書類を解説

健康保険証について基本から確認したい場合は、健康保険証廃止後の受診方法を整理した記事も参考にしてください。

健康保険の資格喪失届とは何か

健康保険・厚生年金保険の被保険者だった従業員が、退職や死亡、労働条件の変更などによって被保険者ではなくなった場合、事業主は資格喪失の手続きを行います。

正式には「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届/厚生年金保険70歳以上被用者不該当届」という名称の届書です。

まずは、どのような場面で届出が必要になり、いつまでにどこへ提出するのかという全体像から確認していきましょう。

資格喪失届が必要になる主なケース

健康保険の資格喪失届が最も多く使われるのは、従業員が会社を退職したときです。

ただし、資格喪失の原因は退職だけではありません。

死亡した場合や、雇用契約の変更によって社会保険の加入要件を満たさなくなった場合などにも手続きが必要になります。

企業実務で主に確認するケースは、次のとおりです。

  • 従業員が退職したとき
  • 従業員が死亡したとき
  • 契約変更などにより健康保険・厚生年金保険の加入要件を満たさなくなったとき
  • 75歳に到達して後期高齢者医療制度へ移行するとき
  • 60歳以上の従業員を退職後すぐに継続再雇用し、同日得喪を行うとき
  • 70歳以上被用者が退職や死亡などによって不該当となるとき

中小企業で特に判断に迷いやすいのが、パート・アルバイトの労働時間を変更したケースです。

例えば、フルタイムに近い働き方をしていた従業員が、本人の希望によって勤務日数や所定労働時間を大幅に減らす場合があります。

この場合、単に「今月は勤務時間が少なかった」という理由だけで資格を喪失させるのではなく、 今後の雇用契約上、社会保険の被保険者要件を満たさなくなったのか を確認することが大切です。

シフトの一時的な減少と、所定労働時間そのものの変更は分けて考えます。

資格喪失は、給与が減ったかどうかではなく、被保険者資格を失う事実が発生したかどうかで判断します。

また、70歳になると厚生年金保険の被保険者資格について特別な取扱いが生じますが、健康保険については原則として75歳まで加入が続きます。

「70歳になったから健康保険も資格喪失する」と一括して処理しないよう注意しましょう。

年齢到達や勤務条件変更の場合は、退職とは異なる判断が必要になることがあります。

会社側だけで判断しにくいケースでは、対象者の契約内容と資格喪失事由を整理したうえで年金事務所や社会保険労務士へ確認するのが安全です。

資格喪失届の提出期限と資格喪失日

資格喪失届の提出期限と資格喪失日

健康保険・厚生年金保険の資格喪失届は、原則として 事実発生から5日以内 に提出します。

退職者の処理では、退職日の翌日が資格喪失日になるため、この「退職日」と「資格喪失日」を混同しないことが非常に重要です。

資格喪失の原因 資格喪失日
退職 退職日の翌日 3月31日退職なら4月1日
死亡 死亡日の翌日 6月10日死亡なら6月11日
75歳到達 75歳の誕生日当日 8月20日誕生日なら8月20日

実務で最も多い間違いは、退職者の資格喪失年月日に退職日そのものを記入してしまうことです。

例えば3月31日に退職した場合、会社の健康保険を利用できるのは原則として3月31日までであり、資格喪失日は4月1日です。

最終出勤日ではなく、雇用契約上の退職日を確認すること も大切です。

有給休暇を消化している場合、最終出勤日が3月15日でも退職日が3月31日であれば、資格喪失日は原則として4月1日になります。

資格喪失届を長期間提出しないままにすることは避けてください。

健康保険法や厚生年金保険法では、事業主が正当な理由なく必要な届出をしない場合や虚偽の届出をした場合、罰則の対象となり得ます。

単純な数日の遅れが直ちに処罰されるという意味ではありませんが、「遅れても罰則はない」と考えて放置するのは適切ではありません。

手続きが遅れると、従業員側でも国民健康保険への加入や新しい勤務先での社会保険手続きが進みにくくなる場合があります。

会社に問い合わせが集中する原因にもなるため、退職が決まった段階で必要書類の回収と届出準備を始めておくのが実務的です。

提出期限や資格喪失日の詳細は、 日本年金機構の健康保険・厚生年金保険資格喪失手続き でも確認できます。

制度や様式は変更される可能性があるため、実際に提出する際は最新情報を確認してください。

資格喪失届の提出先と提出方法

資格喪失届の提出先は、会社が協会けんぽに加入しているのか、健康保険組合に加入しているのかによって確認方法が変わります。

協会けんぽに加入している一般的な事業所では、健康保険と厚生年金保険の資格喪失届を 日本年金機構の事務センターまたは管轄の年金事務所 へ提出します。

協会けんぽの資格喪失だからといって、通常の資格喪失届そのものを協会けんぽ支部へ直接提出するわけではない点は押さえておきましょう。

一方、健康保険組合に加入している企業の場合、厚生年金保険の手続きは日本年金機構へ行い、健康保険については加入している健康保険組合のルールに従って手続きを行います。

健康保険組合ごとに様式や添付書類、電子申請の方法などが異なることがあるため、組合の案内を確認してください。

提出方法は電子申請・郵送・窓口

日本年金機構への資格喪失届は、主に次の方法で提出できます。

  • 電子申請
  • 郵送
  • 年金事務所の窓口への持参

現在はe-Govなどを利用した電子申請のほか、日本年金機構の事業所向けオンラインサービスを利用できる手続きも整備されています。

一定規模以上の事業所では電子申請が義務化される手続きもあるため、自社の対象状況も確認しておきましょう。

退職手続きが毎月発生する会社では、電子申請を利用すると、郵送や窓口提出に比べて事務負担を減らしやすくなります。

資格取得届、資格喪失届、算定基礎届、月額変更届などを同じ運用にそろえておくと、担当者が変わった場合にも手続きが安定します。

私が実務で重視しているのは、「誰が提出するか」だけではなく、提出後の処理完了まで管理することです。

電子申請で送信しただけで終わりにせず、返戻がないか、決定通知が届いているかまで確認できる仕組みにしておくと漏れを防げます。

資格喪失届に必要な添付書類

資格喪失届に必要な添付書類

協会けんぽに加入している従業員の資格喪失届では、本人や被扶養者に交付されている資格確認書などを回収し、必要に応じて添付します。

日本年金機構では、協会けんぽ加入者について、交付されている場合には主に次の書類を添付する取扱いとしています。

  • 健康保険資格確認書
  • 健康保険高齢受給者証
  • 健康保険特定疾病療養受療証
  • 健康保険限度額適用認定証
  • 健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証

ここで現在の実務として重要なのが、 マイナ保険証と資格確認書を区別すること です。

マイナ保険証として利用しているマイナンバーカードそのものは、会社や健康保険者から貸与されているものではありません。

そのため、退職時に会社が回収するものではありません。

資格喪失処理が行われれば、その健康保険の資格情報は利用できなくなります。

一方、保険者から交付されている資格確認書は回収対象です。

従来の健康保険証は新規発行が終了し、経過措置も終了しているため、現在の退職手続きでは資格確認書の有無を確認する運用が中心になります。

関連して、健康保険は健康保険資格証明書とは?申請方法と有効期限を実務を解説した記事でも整理しています。

退職時の確認は「マイナンバーカードを返してもらう」ではなく、「資格確認書など会社経由で交付された証書が残っていないかを確認する」と整理すると分かりやすいです。

健康保険組合に加入している会社では、資格喪失届への添付書類や資格確認書の返却方法が組合ごとに異なる場合があります。

協会けんぽと同じだと思い込まず、加入している健康保険組合の案内を確認してください。

また、60歳以上の同日得喪については通常の退職とは異なる添付資料が必要になります。

この点は後ほど詳しく説明します。

資格確認書を回収できない場合の対応

退職者から資格確認書を回収できないケースは、実務では珍しくありません。

「紛失してしまった」「退職後に連絡がつかない」「本人は返送したと言っているが会社に届いていない」といった事情があります。

資格確認書を回収できない場合、資格喪失届そのものをいつまでも提出せず、本人からの返却を待ち続けるのは適切ではありません。

協会けんぽでは、資格確認書を添付できない場合に 健康保険資格確認書回収不能届 を提出する仕組みがあります。

資格確認書が戻ってこないことと、資格喪失届を提出できないことは別問題です。

回収できない事情を整理し、必要な回収不能届を添えて資格喪失手続きを進めます。

健康保険資格確認書回収不能届では、資格確認書を回収できない理由などを記載します。

例えば、紛失した場合、本人へ返却を求めても連絡が取れない場合など、その時点の事実関係を記載します。

実務では、会社側が回収に努めた記録も残しておくことをおすすめします。

退職案内メール、資格確認書の返却依頼、郵送での案内などを残しておけば、後から「会社から返却の説明を受けていない」という認識の違いも防ぎやすくなります。

退職時の案内書に、次のような項目を入れておくと管理しやすくなります。

  • 資格確認書を交付されている場合は退職時に返却すること
  • 被扶養者分の資格確認書も返却対象であること
  • 紛失している場合は会社へ申し出ること
  • マイナンバーカード自体は返却不要であること

資格確認書回収不能届の最新様式や提出方法については、 全国健康保険協会の健康保険資格確認書回収不能届 で確認できます。

健康保険の資格喪失届の書き方と注意点

資格喪失届では、氏名や生年月日などの基本情報だけでなく、資格喪失年月日や喪失原因を正確に記入する必要があります。

特に退職日と資格喪失年月日の関係、75歳到達時の取扱い、60歳以上の同日得喪は間違えやすい部分です。

ここからは実際に届書を作成するときの確認ポイントを順番に解説します。

資格喪失年月日の正しい記入方法

資格喪失届を作成するとき、最も注意していただきたいのが「資格喪失年月日」です。

資格喪失年月日は、退職日や死亡日そのものを書く欄ではなく、 その人が健康保険・厚生年金保険の被保険者ではなくなった日 を記入する欄です。

例えば、従業員が3月31日に退職した場合を考えてみましょう。

  • 退職日:3月31日
  • 資格を利用できる最終日:原則3月31日
  • 資格喪失日:4月1日

したがって、資格喪失届の資格喪失年月日には4月1日を記入します。

「退職日の翌日が資格喪失日」 と覚えておくと、通常の退職処理では間違いを防ぎやすくなります。

死亡の場合も原則として考え方は同じで、死亡日の翌日が資格喪失日です。

一方で、75歳到達による健康保険の資格喪失では、75歳の誕生日当日が資格喪失日になります。

ここは実務上かなり重要です。

通常の退職・死亡では「翌日」と覚えている担当者ほど、75歳到達でも誕生日の翌日を入力してしまうことがあります。

最終出勤日と退職日は区別する

有給休暇を消化して退職する従業員についても注意してください。

例えば、3月10日が最後の出勤で、その後3月31日まで有給休暇を取得して退職する場合、退職日は3月31日です。

そのため資格喪失日は4月1日となります。

会社へ最後に来た日ではなく、雇用契約が終了した日を基準に判断する ということです。

退職届、退職辞令、労働者名簿、給与システムなどで退職日が異なっていると、社会保険だけでなく給与や雇用保険の処理にも影響します。

退職手続きを始める段階で基準日を統一しておきましょう。

資格喪失届の記入例と確認ポイント

資格喪失届の記入例と確認ポイント

資格喪失届では、事業所に関する情報と被保険者本人に関する情報を入力し、資格喪失年月日と喪失原因を登録します。

電子申請でも紙の届書でも、考え方は基本的に同じです。

主な項目 確認する内容 実務上の注意点
被保険者氏名 対象者の氏名 登録情報と一致しているか確認
個人番号・基礎年金番号 本人を特定する番号 死亡の場合など入力方法に注意
資格喪失年月日 被保険者でなくなった日 通常の退職は退職日の翌日
喪失原因 退職・死亡・75歳到達など 実際の事由に合うものを選択
70歳以上被用者不該当 該当者のみ入力 通常の退職者には使用しない

被保険者整理番号など、会社で管理している社会保険情報が必要になる場合もあります。

資格取得時の通知書や社会保険管理システムを確認し、別の従業員の番号を入力しないよう注意してください。

特に電子申請では、前回提出したデータをコピーして新しい届書を作成する運用もあります。

この方法は効率的ですが、氏名や整理番号、資格喪失年月日などの変更漏れには注意が必要です。

過去の資格喪失届をコピーして作成する場合は、対象者、資格喪失年月日、喪失原因、添付書類の4点を最低限チェックしてください。

資格取得届と資格喪失届を混同しない

名称が似ていますが、資格取得届は従業員が健康保険・厚生年金保険の被保険者になったときに提出する手続き、資格喪失届は被保険者ではなくなったときに提出する手続きです。

特に60歳以上の同日得喪では、この2つを同じタイミングで提出するため、通常の退職処理とは流れが異なります。

資格取得側の処理も確認したい場合は、社内で資格取得と資格喪失を一つの手続き一覧として管理しておくと分かりやすいでしょう。

60歳以上の同日得喪の手続き

60歳以上の従業員が定年退職した後、1日の空白もなく同じ会社で継続再雇用される場合には、いわゆる 同日得喪 という取扱いを利用できることがあります。

例えば、60歳の定年を迎えた従業員が3月31日でいったん退職し、4月1日から嘱託社員として再雇用されるケースです。

通常、同じ会社で働き続けているだけであれば社会保険資格もそのまま継続するように見えます。

しかし、60歳以上の退職後継続再雇用では、一定の取扱いとして資格喪失届と資格取得届を同時に提出できます。

この手続きを利用すると、再雇用された月から、 再雇用後の給与を基準として標準報酬月額を決定できる ことが大きなポイントです。

定年後再雇用では、正社員時代より基本給が下がることがあります。

通常の随時改定では給与変更後すぐに標準報酬月額が変わるとは限りませんが、同日得喪の取扱いを使えるケースでは再雇用後の報酬に応じた標準報酬月額に切り替えられます。

同日得喪では、 資格喪失届だけでは手続きが完了しません。

資格喪失届と資格取得届をセットで提出することが基本です。

同日得喪では添付書類も確認する

この取扱いを行う場合、日本年金機構では、退職したことと継続再雇用されたことを客観的に確認できる資料を求めています。

例えば、次の組み合わせです。

  • 退職日を確認できる就業規則や退職辞令の写し
  • 継続再雇用を確認できる雇用契約書の写し

または、退職日と再雇用日が記載された継続再雇用に関する事業主の証明書を使用できる場合があります。

定年再雇用の給与条件は本人の社会保険料にも関係します。

再雇用契約書を作成してから社会保険処理を考えるのではなく、定年到達前の段階で「同日得喪の対象になるか」「再雇用後の報酬はいくらか」を確認しておくと処理がスムーズです。

75歳到達時の資格喪失の注意点

従業員が75歳に到達すると、原則としてそれまで加入していた健康保険の被保険者資格を喪失し、後期高齢者医療制度へ移行します。

75歳到達時の資格喪失で最も重要なのは、 資格喪失日が75歳の誕生日当日になる ことです。

例えば、8月20日に75歳の誕生日を迎える従業員であれば、健康保険の資格喪失日は8月20日です。

退職の場合のように8月21日とするわけではありません。

退職・死亡は原則として翌日、75歳到達は誕生日当日です。

資格喪失年月日を入力するときは、この違いを必ず確認してください。

また、75歳になる従業員が引き続き同じ会社で働いている場合、「会社を退職したわけではないのに資格喪失届が必要なのか」と迷う担当者もいます。

健康保険の資格喪失は退職だけを原因とするものではありません。

75歳到達によって加入する医療保険制度そのものが切り替わるため、在職中でも健康保険側の資格喪失が発生します。

一方、厚生年金保険では原則として70歳到達で被保険者資格の取扱いが変わっています。

そのため75歳の従業員については、「健康保険」と「厚生年金保険」を同じ年齢基準で考えないことが大切です。

70歳と75歳を混同しない

実務上は、次のように整理すると分かりやすいです。

  • 70歳:厚生年金保険の被保険者資格について確認
  • 75歳:健康保険から後期高齢者医療制度への移行を確認

70歳以上でも一定の条件で働いている場合には、厚生年金保険の70歳以上被用者として届出が必要になることがあります。

単に「70歳で社会保険は全部終了」と処理しないよう注意してください。

年齢到達による手続きは本人の申出を待って行うものではないため、給与・人事システムなどで年齢到達者を事前に把握できる仕組みを作っておくことをおすすめします。

資格喪失届と資格喪失証明書の違い

資格喪失届と資格喪失証明書の違い

退職手続きで非常によく混同されるのが、「資格喪失届」と「健康保険資格喪失証明書」です。

名称は似ていますが、役割はまったく異なります。

書類 主な役割 主な利用者・提出先
資格喪失届 社会保険の資格喪失を届け出る 事業主から日本年金機構等
資格喪失証明書 以前の健康保険を喪失した事実を証明する 退職者が国保加入などに利用
雇用保険資格喪失届 雇用保険の被保険者資格喪失を届け出る 事業主からハローワーク

健康保険・厚生年金保険の資格喪失届は、会社が日本年金機構などへ提出する届書です。

原則として従業員本人へ渡すための書類ではありません。

これに対して健康保険資格喪失証明書は、退職後に従業員が国民健康保険へ加入するときなどに、以前の健康保険をいつ喪失したのかを確認するために使われる書類です。

ここでよくある誤解が、 「会社が資格喪失届を提出すれば、資格喪失証明書も自動的に本人へ郵送される」 というものです。

資格喪失届を提出したことと、退職者本人に資格喪失証明書を渡すことは別の手続きとして考えた方が分かりやすいです。

会社によっては、国民健康保険へ加入する人など、必要な従業員から申出を受けて証明書を発行する運用にしているケースもあります。

退職者から「資格喪失証明書が届かない」と問い合わせを受けた場合の対応については、 健康保険の資格喪失証明書が届かない時の対処法 でも詳しく整理しています。

雇用保険の資格喪失届とも別の手続き

もう一つ混同されやすいのが、雇用保険被保険者資格喪失届です。

健康保険・厚生年金保険の資格喪失届は日本年金機構等へ提出しますが、雇用保険の資格喪失届はハローワークへ提出します。

また、雇用保険の資格喪失手続きでは、被保険者でなくなった日の翌日から起算して10日以内が提出期限となるため、社会保険の5日以内とは期限も異なります。

退職時には社会保険、雇用保険、源泉徴収票、住民税、離職票など複数の処理が同時に発生します。

資格喪失届という名前だけを見て同じ書類だと思わないよう、手続きごとに提出先と期限を管理しましょう。

雇用保険側の具体的な記入方法は、 雇用保険資格喪失届の書き方と期限 で詳しく解説しています。

健康保険の資格喪失届を正しく提出するポイント

健康保険の資格喪失届は、退職手続きの中では比較的よく使う届書ですが、「日付を入力して提出すれば終わり」というものではありません。

会社側で最低限確認しておきたいのは、次のポイントです。

  • 本当に資格喪失事由が発生しているか
  • 退職日と資格喪失日を区別できているか
  • 資格喪失年月日を正しく入力しているか
  • 資格確認書などの回収対象を確認したか
  • 回収できない場合の回収不能届を確認したか
  • 提出期限内に処理できる状態になっているか
  • 資格喪失証明書が必要な退職者への案内をしたか
  • 提出後の返戻や処理結果まで確認したか

私が企業の手続きを見るときは、資格喪失届単体ではなく、退職手続き全体で管理することをおすすめしています。

例えば、従業員から退職届を受け取った時点で、退職日を人事システムへ登録し、資格確認書の返却案内、社会保険資格喪失、雇用保険資格喪失、離職票の希望確認、源泉徴収票の交付などを一つのチェックリストにします。

退職が決まった時点で準備を始め、退職日の翌日に資格喪失処理へ進める状態を作っておくこと が、最も手続き漏れを防ぎやすい運用です。

また、退職者本人にとっては、会社の資格喪失手続きが終わった後も健康保険の手続きが続きます。

次の勤務先ですぐ社会保険へ加入しない場合には、国民健康保険、協会けんぽ等の任意継続、家族の健康保険の被扶養者になる方法などを検討することになります。

特に国民健康保険へ切り替える予定の従業員には、資格喪失証明書が必要になる場合があることを退職時に伝えておくと、その後の問い合わせを減らせます。

具体的な切り替え手順は、 社会保険から国民健康保険への切り替え手順と必要書類 で詳しく解説しています。

会社側が退職後の健康保険を決める必要はありません。

ただし、「会社の健康保険はいつまで使えるのか」「資格喪失日はいつか」「資格喪失証明書はどう受け取るのか」といった事実関係を説明しておくと、退職後のトラブル防止につながります。

健康保険・厚生年金保険の手続きは、制度改正や様式変更、健康保険組合ごとの運用によって必要書類や提出方法が変わる場合があります。

この記事で紹介した期限や取扱いについても、実際に届出を行う際の一般的な実務として確認してください。

正確な情報は公式サイトをご確認ください。

また、勤務条件の変更による資格喪失、70歳以上の取扱い、60歳以上の同日得喪などは、個別の雇用契約や勤務状況によって判断が必要になることがあります。

判断に迷う場合は会社だけで結論を出さず、年金事務所などへ確認することをおすすめします。

最終的な判断は専門家にご相談ください。

健康保険の資格喪失届で最も重要なのは、資格喪失の事実と日付を正しく確認し、必要な添付書類をそろえ、期限内に確実に処理することです。

特に退職日の翌日が資格喪失日になること、75歳到達では誕生日当日が資格喪失日になること、資格確認書とマイナンバーカードを混同しないことは、実務担当者が押さえておきたいポイントです。

退職者が出るたびに一から確認するのではなく、社内の退職手続きとして流れを標準化しておけば、担当者が変わっても安定して処理できます。

健康保険の資格喪失届は、退職後の従業員の医療保険や年金にもつながる手続きです。

会社側で確実に処理できる体制を整えておきましょう。

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